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第六章「悪魔のルコ」
50.ヴァーナとレスティア
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ラフェル王国から馬車に揺られて数日、ようやくヴェスタ公国首都に到着したレフォード達一行は馬車から降りると皆が手を上げて背伸びをした。
「あー、疲れた!! ハラ減った!! レフォ兄、メシにしようぜ。ヴェスタ魚食べてー」
ガイルは前回訪れてすっかり魅了された公国名物のヴェスタ魚を思い出し涎を垂らす。それを見たミタリアが言う。
「もぉ、汚いよ! ガイルお兄ちゃん!! それよりさ、ほら見て、あそこのお店。お洒落~」
ミタリアは通りにあるお洒落なカフェを指差し、今にもそこへ入ろうとしている。レフォードがため息をついて言う。
「おい、ふたりとも。遊びに来たんじゃねえぞ。自分の着ている服を見てみろ」
そう言ってふたりの真っ白なラフェル王国制服を指差す。外交用の制服。これを着ているだけでも十分目立つ。ガイルが言う。
「まあ、確かにこの服に魚こぼしたら怒られそうだからな。先に行くか、仕方ないけど」
ミタリアもこの制服に飲み物を落としたらどうしようと思いカフェは一旦断念する。早くラフェルに帰りたいとは言え、この制服を着て移動してきたことを今さらながら後悔する。無論それを決めたのはレフォード。
ミタリアがちょっとだけむっとして長兄を睨む。
「さ、行くぞ。ミタリア」
「え? あ、はーい、お兄ちゃん!!」
それでもミタリアの『お兄ちゃん愛』の前にはそんな気持ちも一瞬で消え失せる。前を歩くレフォードの腕に手を絡め一緒に歩き出す。
「こら、ミタリア! あまりくっつくな!!」
「いいじゃーん、お兄ちゃん~」
ミタリアは嬉しそうに街の中央にあるヴェスタ城へと歩き出した。
一方ラフェル王城の城門前。槍を持って警備する兵にそのビキニパンツの男が尋ねた。
「ねえ、あなた。レフォードって言う青髪の男に会いたんだけど、入ってもいいかしら?」
フード付きのコートにビキニパンツ。その隣にはやはりコートを着た女。この上なく怪しいふたり組に、警備兵が槍を構えて尋ねる。
「なんなんだ、貴様ら!! 怪しい奴め!!!」
城門を警備する彼らにとっては当然の対処である。しかしビキニパンツの男、ゲルチは笑顔のまま兵士に尋ねる。
「あらやだ。ラフェルの兵士って同盟を結ぼうとしている国の将校の顔も知らないのかしら??」
「え、同盟??」
兵士の顔が緊張に包まれる。現在同盟の話が出ているのは隣国ヴェスタ公国。兵士はビキニパンツの隣にいる真っ赤なタイトドレスを着た女を見て震えながら言う。
「ま、まさか、『業火の魔女』……!!??」
ヴァーナが被っていたフードを取り、真っ赤な髪を靡かせながら言う。
「早く入れろ。燃やすぞー」
「ひ、ひぃ!!! 少々お待ちを!!!!」
兵士はそう言い残すとすぐに城内に行き、すぐに現時点での軍最高責任者である副団長シルバーと一緒に戻って来た。シルバーが頭を下げて挨拶をする。
「正騎士団副団長シルバーです。現在団長が病の為、私が責任者を務めています」
ゲルチはエルクほどではないにしろ、真面目な好青年であるシルバーを見て声を上げる。
「あらやだ~、可愛い男ね~、私はゲルチ。こっちはヴァーナちゃん。よろしくね!」
そう言ってウィンクをするゲルチ。先日まで戦場でやり合った間柄。休戦し、これから同盟を結ぶ相手であってもさすがに緊張する。ヴァーナが尋ねる。
「レー兄はどこにいるの??」
「レー兄? ああ、レフォードさんのことですか? 彼は今、貴国に大使として行っているはずじゃ……」
シルバーの言葉にゲルチが驚く。
「あらやだ!? そうなの?? ざ~んねん。ヴァーナちゃん、行き違いだったみたいだわ」
せっかくヴェスタ公国からラフェルまでやって来たのに、会いに来た相手は自国にいるとは。ヴァーナがむっとして言う。
「なんなのそれ!! 許せないぞ!! 帰る!! ゲルチ、すぐに帰るぞ!!!」
すぐ背を向けて帰ろうとするヴァーナの肩を掴んでゲルチが言う。
「ちょっと待ってよ~、ヴァーナちゃん! 私、もうくたくたよ。今日だけ泊まって行って明日帰らない??」
「イヤだ。すぐにレー兄に会いたい!!」
首を振って拒否するヴァーナ。レフォードが居ないことを知り機嫌が悪い。ゲルチが言う。
「ほら、せっかく来たのだから、あなたのお兄さんの騎士団長さんにも会わなきゃ。聖女さんって言うお姉さんもいたでしょ?」
「どーでもいい。レー兄に早く会いたい」
そんなヴァーナを無視してゲルチがシルバーに言う。
「ねえ、いい男さん。今からあの子のお兄さんに会えるかしら?」
シルバーが困惑した顔で答える。
「お兄さんって、エーク団長のことですか?」
「そうよ」
「うーん……」
隣国の将校とは言え、約束無しの訪問で騎士団長に会いたいと言うのは正直対処に困る。ただ現在進行形で同盟交渉をしている幹部を門前払いしたとなれば両国の未来に関わることになりかねない。『業火の魔女』は団長の妹に当たると聞いている。シルバーが決断する。
「分かりました。どうぞお入りください」
「ありがと」
ゲルチが上機嫌でそれに答える。乗り気でないヴァーナの腕を掴んで無理やり一緒に城内へと入った。
「こんにちは~、ヴェスタの魔法隊副官のゲルチよ~、こっちはヴァーナちゃん。よろしくね!!」
シルバーに連れられ訪れた騎士団長室。広い部屋。重厚な家具、真っ赤な色鮮やかな絨毯。歴史的にも価値のある調度品が飾られたラフェル王国軍トップの騎士団長室。そこにその雰囲気とは相容れないような軽い雰囲気のゲルチが立つ。
「あ、ヴァーヴァー?」
「ん? レス姉」
部屋に来たヴァーナに気付いたレスティアが声を掛ける。お互いのことはレフォードから聞いていたふたり。十数年ぶりの再会となるが、物事にあまり関心を抱かない彼女らにとっては大したことではなかった。
「大きくなったね、ヴァーヴァー」
「レス姉も。ねえ、それってエル兄??」
ヴァーナがベッドの上で眠る金色の髪のエルクを見て尋ねる。レスティアが答える。
「そうだよ。今私が治療中。ダルいけど……」
そう言ってエルクの患部に手を当てるレスティア。突然の敵幹部の訪問に部屋に居たマリアーヌが驚き戸惑う。ゲルチがエルクの傍までやって来て言う。
「あらやだ!? 本当にイケメンだこと!! うっとりするような男よね~、私で良ければ添い寝しちゃおうかしら~」
その前にすかさずマリアーヌが立って言う。
「エーク様の治療の邪魔です。お下がりください」
真剣な表情のマリアーヌ。それを見たゲルチが苦笑し下がりながら言う。
「あらあら、もう大切な人がいらしたようね。ざ~んねん」
ふざけた態度のように見えるゲルチにマリアーヌが苛立つ。治療を続けるレスティアがヴァーナに言う。
「ヴァーヴァー、あなた随分暴れていたようね」
「暴れた? ああ、あれは私の趣味。どんどん燃やしたいぜ~」
「呆れた。そんなことして疲れないの?」
「滾る滾る、滾るぅうう!! 疲れるはずないだろ??」
今にも体から炎を放出しそうなヴァーナにゲルチが言う。
「ちょっとヴァーナちゃん! こんな場所でやめてよ」
「分かってる。レー兄にも言われた。我慢っ」
そう言いながら急速に萎んでいくヴァーナの魔力。ゲルチがレスティアに言う。
「それにしてもイケメンちゃんがずっと眠ってたなんて驚いたわ。まだしばらくかかりそうなの?」
レスティアがゆらりと頭の向きを変えて答える。
「あー、掛かるかな。ねえ、あなた。ダルいから代ってよ~」
「レスティア様!!!」
すぐに管理役のマリアーヌが声を出す。エルクの治療に関することには一切の手抜きは許さない。彼女のお陰でエルクの治療は成り立っていると言っても過言ではない。ゲルチが言う。
「添い寝なら私がやってあげてよ~」
「あなたは黙ってて!!」
すかさずマリアーヌが声を上げる。何だかよく分からない状況にシルバーが苦笑する。
「シルバー様っ!!!」
そこへひとりの兵士が顔色を変えて部屋に入って来る。
「どうした?」
兵は一礼してからシルバーの元へ行き話を伝える。同時に顔色が変わるシルバー。
「なあ、ゲルチ。もういいだろ? 帰るぞ、ヴェスタに」
やはり一刻も早くレフォードに会いたいヴァーナ。ラフェルで一泊するなど考えられない。ゲルチが言う。
「イヤよ。私移動でくたくたなの~、そこのイケメンちゃんと一緒に食事しなきゃ疲れとれなーい」
一体なんの生物なんだ、と首を振りながらその様子をマリアーヌが見つめる。神妙な顔をしたシルバーがゲルチに言う。
「ゲルチ殿、残念ながら本日のご帰還は難しくなりました」
「あら、どうして?」
シルバーが額に汗を流しながら皆に言う。
「ラフェル王城上空を無数の魔族に囲まれたとのことです」
「!!」
思わぬ凶報に静まる一同。ただその赤髪の女だけは憮然とした表情で言う。
「なにそれ? 私をここから出さないつもりなのー??」
「ヴァーナちゃん……」
心配そうな顔で自分を見つめるゲルチにヴァーナが言う。
「私の前に立つ奴は、全部燃やすぞおおお!!!! 燃えて燃えて、灰となれえええ!!! ギャはハハハッ!!!!」
ぶつかり合うふたつの強者。
『魔族長』対『業火の魔女』の戦いがこれより始まる。
「あー、疲れた!! ハラ減った!! レフォ兄、メシにしようぜ。ヴェスタ魚食べてー」
ガイルは前回訪れてすっかり魅了された公国名物のヴェスタ魚を思い出し涎を垂らす。それを見たミタリアが言う。
「もぉ、汚いよ! ガイルお兄ちゃん!! それよりさ、ほら見て、あそこのお店。お洒落~」
ミタリアは通りにあるお洒落なカフェを指差し、今にもそこへ入ろうとしている。レフォードがため息をついて言う。
「おい、ふたりとも。遊びに来たんじゃねえぞ。自分の着ている服を見てみろ」
そう言ってふたりの真っ白なラフェル王国制服を指差す。外交用の制服。これを着ているだけでも十分目立つ。ガイルが言う。
「まあ、確かにこの服に魚こぼしたら怒られそうだからな。先に行くか、仕方ないけど」
ミタリアもこの制服に飲み物を落としたらどうしようと思いカフェは一旦断念する。早くラフェルに帰りたいとは言え、この制服を着て移動してきたことを今さらながら後悔する。無論それを決めたのはレフォード。
ミタリアがちょっとだけむっとして長兄を睨む。
「さ、行くぞ。ミタリア」
「え? あ、はーい、お兄ちゃん!!」
それでもミタリアの『お兄ちゃん愛』の前にはそんな気持ちも一瞬で消え失せる。前を歩くレフォードの腕に手を絡め一緒に歩き出す。
「こら、ミタリア! あまりくっつくな!!」
「いいじゃーん、お兄ちゃん~」
ミタリアは嬉しそうに街の中央にあるヴェスタ城へと歩き出した。
一方ラフェル王城の城門前。槍を持って警備する兵にそのビキニパンツの男が尋ねた。
「ねえ、あなた。レフォードって言う青髪の男に会いたんだけど、入ってもいいかしら?」
フード付きのコートにビキニパンツ。その隣にはやはりコートを着た女。この上なく怪しいふたり組に、警備兵が槍を構えて尋ねる。
「なんなんだ、貴様ら!! 怪しい奴め!!!」
城門を警備する彼らにとっては当然の対処である。しかしビキニパンツの男、ゲルチは笑顔のまま兵士に尋ねる。
「あらやだ。ラフェルの兵士って同盟を結ぼうとしている国の将校の顔も知らないのかしら??」
「え、同盟??」
兵士の顔が緊張に包まれる。現在同盟の話が出ているのは隣国ヴェスタ公国。兵士はビキニパンツの隣にいる真っ赤なタイトドレスを着た女を見て震えながら言う。
「ま、まさか、『業火の魔女』……!!??」
ヴァーナが被っていたフードを取り、真っ赤な髪を靡かせながら言う。
「早く入れろ。燃やすぞー」
「ひ、ひぃ!!! 少々お待ちを!!!!」
兵士はそう言い残すとすぐに城内に行き、すぐに現時点での軍最高責任者である副団長シルバーと一緒に戻って来た。シルバーが頭を下げて挨拶をする。
「正騎士団副団長シルバーです。現在団長が病の為、私が責任者を務めています」
ゲルチはエルクほどではないにしろ、真面目な好青年であるシルバーを見て声を上げる。
「あらやだ~、可愛い男ね~、私はゲルチ。こっちはヴァーナちゃん。よろしくね!」
そう言ってウィンクをするゲルチ。先日まで戦場でやり合った間柄。休戦し、これから同盟を結ぶ相手であってもさすがに緊張する。ヴァーナが尋ねる。
「レー兄はどこにいるの??」
「レー兄? ああ、レフォードさんのことですか? 彼は今、貴国に大使として行っているはずじゃ……」
シルバーの言葉にゲルチが驚く。
「あらやだ!? そうなの?? ざ~んねん。ヴァーナちゃん、行き違いだったみたいだわ」
せっかくヴェスタ公国からラフェルまでやって来たのに、会いに来た相手は自国にいるとは。ヴァーナがむっとして言う。
「なんなのそれ!! 許せないぞ!! 帰る!! ゲルチ、すぐに帰るぞ!!!」
すぐ背を向けて帰ろうとするヴァーナの肩を掴んでゲルチが言う。
「ちょっと待ってよ~、ヴァーナちゃん! 私、もうくたくたよ。今日だけ泊まって行って明日帰らない??」
「イヤだ。すぐにレー兄に会いたい!!」
首を振って拒否するヴァーナ。レフォードが居ないことを知り機嫌が悪い。ゲルチが言う。
「ほら、せっかく来たのだから、あなたのお兄さんの騎士団長さんにも会わなきゃ。聖女さんって言うお姉さんもいたでしょ?」
「どーでもいい。レー兄に早く会いたい」
そんなヴァーナを無視してゲルチがシルバーに言う。
「ねえ、いい男さん。今からあの子のお兄さんに会えるかしら?」
シルバーが困惑した顔で答える。
「お兄さんって、エーク団長のことですか?」
「そうよ」
「うーん……」
隣国の将校とは言え、約束無しの訪問で騎士団長に会いたいと言うのは正直対処に困る。ただ現在進行形で同盟交渉をしている幹部を門前払いしたとなれば両国の未来に関わることになりかねない。『業火の魔女』は団長の妹に当たると聞いている。シルバーが決断する。
「分かりました。どうぞお入りください」
「ありがと」
ゲルチが上機嫌でそれに答える。乗り気でないヴァーナの腕を掴んで無理やり一緒に城内へと入った。
「こんにちは~、ヴェスタの魔法隊副官のゲルチよ~、こっちはヴァーナちゃん。よろしくね!!」
シルバーに連れられ訪れた騎士団長室。広い部屋。重厚な家具、真っ赤な色鮮やかな絨毯。歴史的にも価値のある調度品が飾られたラフェル王国軍トップの騎士団長室。そこにその雰囲気とは相容れないような軽い雰囲気のゲルチが立つ。
「あ、ヴァーヴァー?」
「ん? レス姉」
部屋に来たヴァーナに気付いたレスティアが声を掛ける。お互いのことはレフォードから聞いていたふたり。十数年ぶりの再会となるが、物事にあまり関心を抱かない彼女らにとっては大したことではなかった。
「大きくなったね、ヴァーヴァー」
「レス姉も。ねえ、それってエル兄??」
ヴァーナがベッドの上で眠る金色の髪のエルクを見て尋ねる。レスティアが答える。
「そうだよ。今私が治療中。ダルいけど……」
そう言ってエルクの患部に手を当てるレスティア。突然の敵幹部の訪問に部屋に居たマリアーヌが驚き戸惑う。ゲルチがエルクの傍までやって来て言う。
「あらやだ!? 本当にイケメンだこと!! うっとりするような男よね~、私で良ければ添い寝しちゃおうかしら~」
その前にすかさずマリアーヌが立って言う。
「エーク様の治療の邪魔です。お下がりください」
真剣な表情のマリアーヌ。それを見たゲルチが苦笑し下がりながら言う。
「あらあら、もう大切な人がいらしたようね。ざ~んねん」
ふざけた態度のように見えるゲルチにマリアーヌが苛立つ。治療を続けるレスティアがヴァーナに言う。
「ヴァーヴァー、あなた随分暴れていたようね」
「暴れた? ああ、あれは私の趣味。どんどん燃やしたいぜ~」
「呆れた。そんなことして疲れないの?」
「滾る滾る、滾るぅうう!! 疲れるはずないだろ??」
今にも体から炎を放出しそうなヴァーナにゲルチが言う。
「ちょっとヴァーナちゃん! こんな場所でやめてよ」
「分かってる。レー兄にも言われた。我慢っ」
そう言いながら急速に萎んでいくヴァーナの魔力。ゲルチがレスティアに言う。
「それにしてもイケメンちゃんがずっと眠ってたなんて驚いたわ。まだしばらくかかりそうなの?」
レスティアがゆらりと頭の向きを変えて答える。
「あー、掛かるかな。ねえ、あなた。ダルいから代ってよ~」
「レスティア様!!!」
すぐに管理役のマリアーヌが声を出す。エルクの治療に関することには一切の手抜きは許さない。彼女のお陰でエルクの治療は成り立っていると言っても過言ではない。ゲルチが言う。
「添い寝なら私がやってあげてよ~」
「あなたは黙ってて!!」
すかさずマリアーヌが声を上げる。何だかよく分からない状況にシルバーが苦笑する。
「シルバー様っ!!!」
そこへひとりの兵士が顔色を変えて部屋に入って来る。
「どうした?」
兵は一礼してからシルバーの元へ行き話を伝える。同時に顔色が変わるシルバー。
「なあ、ゲルチ。もういいだろ? 帰るぞ、ヴェスタに」
やはり一刻も早くレフォードに会いたいヴァーナ。ラフェルで一泊するなど考えられない。ゲルチが言う。
「イヤよ。私移動でくたくたなの~、そこのイケメンちゃんと一緒に食事しなきゃ疲れとれなーい」
一体なんの生物なんだ、と首を振りながらその様子をマリアーヌが見つめる。神妙な顔をしたシルバーがゲルチに言う。
「ゲルチ殿、残念ながら本日のご帰還は難しくなりました」
「あら、どうして?」
シルバーが額に汗を流しながら皆に言う。
「ラフェル王城上空を無数の魔族に囲まれたとのことです」
「!!」
思わぬ凶報に静まる一同。ただその赤髪の女だけは憮然とした表情で言う。
「なにそれ? 私をここから出さないつもりなのー??」
「ヴァーナちゃん……」
心配そうな顔で自分を見つめるゲルチにヴァーナが言う。
「私の前に立つ奴は、全部燃やすぞおおお!!!! 燃えて燃えて、灰となれえええ!!! ギャはハハハッ!!!!」
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