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第四章「偏食のレスティア」
28.偏食のレスティア
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レスティアは孤児院時代から少し特殊な力を持っていた。
「あ、痛てててっ……、おーい、レスティア。またここ頼むよ」
腕白だったガイル。よく外を駆け回ってはどこかを怪我し、その度にひとつ上の姉であるレスティアの元にやって来ていた。レスティアがガイルの黒くアザになった膝を見て言う。
「また、どこかで転んだの~? ダルいけど仕方ないわね」
そう言って彼女は黒くなったガイルの膝を撫でる。
ピンクの髪が美しいレスティア。彼女が撫でると怪我や病気の治りが不思議と早くなっていた。スキル【回復】、彼女が持っている特殊スキル。怪我や病気の治りを早くするレアスキルだ。ガイルが立ち上がって言う。
「レスティア、ありがとな! それっ!!」
「きゃっ!!」
立ち上がったガイルはレスティアが履いていたスカートを勢いよく捲る。露になるレスティアのピンクのパンツ。スカートを押さえながらレスティアが逃げるガイルに大声で叫ぶ。
「きゃあ!! 何するのよ、ふざけないでっ!!!」
「じゃあな~!!」
逃げるガイル。怒り心頭のレスティアに後ろから金色の髪のエルクがやって来る。
「レスティア、すまないがこれを頼む……、剣術の訓練で当たってしまって……」
そう言ってエルクが黒く酷いアザになった手を差し出す。レスティアが大声で怒鳴る。
「知らないよ、そんなの!!!!」
そう言ってひとり歩き出す。
「え、俺何かしたのか……??」
残されたエルクが怒りながら去り行くレスティアを見つめた。
そんな特殊スキルを持つレスティアだが、彼女は極端な偏食癖があった。
「レスティア、また野菜を残しているのか?」
孤児院での食事中、パンや肉だけを食べて全く野菜類を食べないレスティアに『見守り役』のレフォードが言った。野菜が嫌い、だけど甘い物が大好きで稀に出される甘菓子は目の色を変えて嬉しそうに食べる。注意されたレスティアが困った顔で言う。
「えー、そんなこと言ってもさあ、レーレー。野菜なんて美味しくないし、食べなくても平気だよ」
「何でも食べなきゃダメだ。野菜が食べられるだけでも有難いと思え」
「イヤだよ~、ダルいし……」
そう言って皿に残った野菜をフォークで刺して遊び出すレスティア。
ゴン!!
「痛ったーい!!」
すかさず落とされるレフォードのげんこつ。
「食べ物で遊ぶな!! 全部食べろっ!!」
叱られたレスティアの目に涙が溜まる。
「だって……」
レフォードがため息をつきながら言う。
「分かった。じゃあちょっと一緒に来い」
そう言ってレスティアの手を取り調理室へと歩き出す。
「お兄ちゃん、ミタリアも行く!!」
ミタリアも立ち上がり、ふたりの後に付いて行く。
「ミタリア、この野菜を細かく切ってくれ」
「はい!」
レフォードとミタリアは調理室へ行くと、レスティアの食べ残した野菜と他の野菜を細かく切り始めた。レスティアがぼんやりとした顔で言う。
「ねー、レーレー。何してんの?」
「いいから黙って待ってろ」
数分後、レフォードは細かく刻んだ野菜とすり潰した野菜を入れて煮込んだ『特製野菜スープ』を作り上げる。それを器に盛り、レスティアへ差し出して言った。
「ほら、食べてみな」
見た目は美味しそうなスープ。だけどそれが野菜だと知っているレスティアには食べる気が起こらない。
「食べなきゃ、もう一発落とすぞ」
そう言って拳を振り上げるレフォードにレスティアがすぐに言う。
「わ、分かった! 食べるから!!」
レスティアがスプーンでひと口スープを口に運ぶ。
「え!? 美味しい……」
野菜嫌いなレスティアでも食べられる味。レフォードに尋ねる。
「何を入れたの?」
「さあ、適当に作っただけだ。全部食べろよ」
「う、うん……、頑張るよ!」
この日よりレフォードに新たな仕事『レスティアの為の野菜スープ作り』が増えることになった。
「レフォード、レスティアの引受先が決まったわ」
いつかやって来る別れを告げる言葉。レスティアも例外なく孤児院から去ることとなる。
「どこですか?」
「ラリーコットにあるバースミン家よ。普通の商家かな。特に特徴はない家」
主任使用人のミーアがこっそり教えてくれたレスティアの引受先。ラリーコット自治区にあるありきたりな商家。使用人を探していたようで孤児院に声が掛かった。悪い場所でなければ断る必要はない。
その数週間後、レスティアの出発の日がやって来た。
「レ―レー、寂しいよ……」
迎えに来た馬車の前で珍しく弱音を吐くレスティア。見送りに来た兄弟達の代表でレフォードが言う。
「俺達もみんな寂しい。だけどしっかりやるんだ」
「うん……」
目を赤くしたレスティアが答える。
「ちゃんと好き嫌いせずに何でも食べるんだぞ」
「うん、頑張る……」
馬車に乗るレスティア。涙を流しながら手を振る彼女。しかしレフォードとのこの約束は果たされることはなかった。
「あなた、レスティアって凄い能力を持っているかも!!」
レスティアがバースミン家に使用人としてやって来て数年。面倒臭がり屋の彼女はあまり目立つことなく可もなく不可もなく仕事をこなして来たのだが、やがてその特殊スキル【回復】が家の者に知れることとなる。
「本当だ。これは凄い……」
バースミン家当主が怪我をした他の使用人を治療するレスティアを見て驚いて言った。この頃には彼女のスキルは【超回復】に進化しており、重い病気も好転させることが可能になっていた。これより彼女の生活が一変する。
「はい、次の方どうぞ……」
レスティアはその能力を使って様々な人の治療に当たった。
医師達が見捨てたような重患者でも彼女のスキルによって徐々に回復して行く。噂が噂を呼びレスティアはこの辺り一帯では皆が知る治療師となり、いつしか付いた呼び名が『聖女様』。彼女は自分の意思とは別に多忙の日々を送り始めた。
(体が重い。なんかダルい……)
この頃からレスティアの体に異常が現れ始める。
極度の倦怠感。寝ても覚めても消えない疲れ、体のだるさ。回復のスキルは皆が思う以上に彼女の体力を消費させていた。それに加えてレスティアの偏食がそれに拍車をかける。
「甘い物をもっと持って来て。甘い物を」
『聖女様』と呼ばれ皆から尊敬されていたレスティアはやがてその本性が露になって来る。食事は『体力を使うから』と言う理由で大好きなスイーツばかり。パンや肉すら食べなくなっていた。
それでも若さで仕事をこなしてきたレスティアにある日、思いがけぬ事態が起こる。
「聖女レスティアをうちで預かることにする」
それはラリーコット自治区のトップ、自治区長の発した言葉。彼の娘が大病に罹り、それをレスティアが治療したことから彼の目に留まった。
小さな商家であるバースミン家は断ることなどできず、僅かな金と引き換えにレスティアを区長の家に向かわせること渋々承諾させられた。自治区長はレスティアをとある街の豪邸に住まわせてから言った。
「お前は我らの宝だ。何不自由なく過ごすがいい」
この言葉によりレスティアの自堕落な生活がさらに加速する。そしてそれは結果的に、彼女が聖女と呼ばれることになった【回復】の力をどんどんと失わせて行くこととなった。
(治療ができない……)
それに気付いたのは数年前のこと。
怠惰な生活を送っていたレスティアに治療の力は少しずつ消えて行った。それでも彼女は変わらない。
「ちょっと最近疲れ気味だから治療は控えるわ」
ついに治療をしなくなったレスティア。そんな彼女に最初の引き受け元であるバースミン家から連絡が入る。
「旦那様が倒れてしまって。レスティア、すぐに来て!!」
世話になったバースミン家の当主。高齢で体が弱かったのだが、レスティアが自治区長の屋敷に行ってから更に体調を悪化させていた。
「すぐに行くわ!」
自身も体が重いレスティア。無理をして訪れたバースミン家でその辛い現実を知ることなる。
(ダメ、全く治せない……)
完全に消え去ってしまっていた治癒の力。苦しむ当主を前に何もできない自分が情けなくなる。
「治療をし過ぎて、今は力が……、また来ます……」
結局何もできないままバースミン家を出たレスティア。この日より全く誰の治療もしない彼女の生活が始まる。
(たくさん力を使い過ぎたからできないだけ。治療を止めればきっとまた治せるはず!!)
そして糖分が必要だと判断した彼女は、更に大好きなスイーツばかりを口にするようになる。
だがそれは崩壊への序章。破壊への下り道。極端な偏食が彼女の体を更に蝕んでいく。レスティアを心配した使用人が栄養のある食事を持って来て言う。
「レスティア様、これを食べて元気に……」
「うるさいっ!!」
レスティアは甘くてエネルギーある食べ物こそが自分を取り戻せると信じていた。
この頃には『聖女』としてある意味崇められていた彼女に意見する者はいなくなり、更に偏食が進む。自治区長もどうしていいのか分からずに手を上げる始末。体力が衰え立って歩くことすら疲れるレスティアは、自分そっくりな影武者のセレナを代わりに表に出して訪問客の相手をさせた。
「レスティア様、お夕飯です」
髪の綺麗な中年の女がそう言ってクリームたっぷりのパンケーキをテーブルに置く。飲み物はこれまた彼女が大好きな砂糖がたっぷり入った果実ジュース。
「ありがとう。置いておいて」
レスティアは横になったままそれに答える。ダルくて疲れる。話す事すら億劫に感じる。それでも彼女は思っていた。
(早く元気になって当主様を治療したい……)
レアスキル【超回復】を持つレスティア。だけど今の自分自身の治療はできない。
治療の力を失い、日々体力を失っていくレスティアが暮らすラリーコット自治区。そこにレフォード達がエルクの治療ができる女を探してやって来たのはちょうどこの頃である。
「あ、痛てててっ……、おーい、レスティア。またここ頼むよ」
腕白だったガイル。よく外を駆け回ってはどこかを怪我し、その度にひとつ上の姉であるレスティアの元にやって来ていた。レスティアがガイルの黒くアザになった膝を見て言う。
「また、どこかで転んだの~? ダルいけど仕方ないわね」
そう言って彼女は黒くなったガイルの膝を撫でる。
ピンクの髪が美しいレスティア。彼女が撫でると怪我や病気の治りが不思議と早くなっていた。スキル【回復】、彼女が持っている特殊スキル。怪我や病気の治りを早くするレアスキルだ。ガイルが立ち上がって言う。
「レスティア、ありがとな! それっ!!」
「きゃっ!!」
立ち上がったガイルはレスティアが履いていたスカートを勢いよく捲る。露になるレスティアのピンクのパンツ。スカートを押さえながらレスティアが逃げるガイルに大声で叫ぶ。
「きゃあ!! 何するのよ、ふざけないでっ!!!」
「じゃあな~!!」
逃げるガイル。怒り心頭のレスティアに後ろから金色の髪のエルクがやって来る。
「レスティア、すまないがこれを頼む……、剣術の訓練で当たってしまって……」
そう言ってエルクが黒く酷いアザになった手を差し出す。レスティアが大声で怒鳴る。
「知らないよ、そんなの!!!!」
そう言ってひとり歩き出す。
「え、俺何かしたのか……??」
残されたエルクが怒りながら去り行くレスティアを見つめた。
そんな特殊スキルを持つレスティアだが、彼女は極端な偏食癖があった。
「レスティア、また野菜を残しているのか?」
孤児院での食事中、パンや肉だけを食べて全く野菜類を食べないレスティアに『見守り役』のレフォードが言った。野菜が嫌い、だけど甘い物が大好きで稀に出される甘菓子は目の色を変えて嬉しそうに食べる。注意されたレスティアが困った顔で言う。
「えー、そんなこと言ってもさあ、レーレー。野菜なんて美味しくないし、食べなくても平気だよ」
「何でも食べなきゃダメだ。野菜が食べられるだけでも有難いと思え」
「イヤだよ~、ダルいし……」
そう言って皿に残った野菜をフォークで刺して遊び出すレスティア。
ゴン!!
「痛ったーい!!」
すかさず落とされるレフォードのげんこつ。
「食べ物で遊ぶな!! 全部食べろっ!!」
叱られたレスティアの目に涙が溜まる。
「だって……」
レフォードがため息をつきながら言う。
「分かった。じゃあちょっと一緒に来い」
そう言ってレスティアの手を取り調理室へと歩き出す。
「お兄ちゃん、ミタリアも行く!!」
ミタリアも立ち上がり、ふたりの後に付いて行く。
「ミタリア、この野菜を細かく切ってくれ」
「はい!」
レフォードとミタリアは調理室へ行くと、レスティアの食べ残した野菜と他の野菜を細かく切り始めた。レスティアがぼんやりとした顔で言う。
「ねー、レーレー。何してんの?」
「いいから黙って待ってろ」
数分後、レフォードは細かく刻んだ野菜とすり潰した野菜を入れて煮込んだ『特製野菜スープ』を作り上げる。それを器に盛り、レスティアへ差し出して言った。
「ほら、食べてみな」
見た目は美味しそうなスープ。だけどそれが野菜だと知っているレスティアには食べる気が起こらない。
「食べなきゃ、もう一発落とすぞ」
そう言って拳を振り上げるレフォードにレスティアがすぐに言う。
「わ、分かった! 食べるから!!」
レスティアがスプーンでひと口スープを口に運ぶ。
「え!? 美味しい……」
野菜嫌いなレスティアでも食べられる味。レフォードに尋ねる。
「何を入れたの?」
「さあ、適当に作っただけだ。全部食べろよ」
「う、うん……、頑張るよ!」
この日よりレフォードに新たな仕事『レスティアの為の野菜スープ作り』が増えることになった。
「レフォード、レスティアの引受先が決まったわ」
いつかやって来る別れを告げる言葉。レスティアも例外なく孤児院から去ることとなる。
「どこですか?」
「ラリーコットにあるバースミン家よ。普通の商家かな。特に特徴はない家」
主任使用人のミーアがこっそり教えてくれたレスティアの引受先。ラリーコット自治区にあるありきたりな商家。使用人を探していたようで孤児院に声が掛かった。悪い場所でなければ断る必要はない。
その数週間後、レスティアの出発の日がやって来た。
「レ―レー、寂しいよ……」
迎えに来た馬車の前で珍しく弱音を吐くレスティア。見送りに来た兄弟達の代表でレフォードが言う。
「俺達もみんな寂しい。だけどしっかりやるんだ」
「うん……」
目を赤くしたレスティアが答える。
「ちゃんと好き嫌いせずに何でも食べるんだぞ」
「うん、頑張る……」
馬車に乗るレスティア。涙を流しながら手を振る彼女。しかしレフォードとのこの約束は果たされることはなかった。
「あなた、レスティアって凄い能力を持っているかも!!」
レスティアがバースミン家に使用人としてやって来て数年。面倒臭がり屋の彼女はあまり目立つことなく可もなく不可もなく仕事をこなして来たのだが、やがてその特殊スキル【回復】が家の者に知れることとなる。
「本当だ。これは凄い……」
バースミン家当主が怪我をした他の使用人を治療するレスティアを見て驚いて言った。この頃には彼女のスキルは【超回復】に進化しており、重い病気も好転させることが可能になっていた。これより彼女の生活が一変する。
「はい、次の方どうぞ……」
レスティアはその能力を使って様々な人の治療に当たった。
医師達が見捨てたような重患者でも彼女のスキルによって徐々に回復して行く。噂が噂を呼びレスティアはこの辺り一帯では皆が知る治療師となり、いつしか付いた呼び名が『聖女様』。彼女は自分の意思とは別に多忙の日々を送り始めた。
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極度の倦怠感。寝ても覚めても消えない疲れ、体のだるさ。回復のスキルは皆が思う以上に彼女の体力を消費させていた。それに加えてレスティアの偏食がそれに拍車をかける。
「甘い物をもっと持って来て。甘い物を」
『聖女様』と呼ばれ皆から尊敬されていたレスティアはやがてその本性が露になって来る。食事は『体力を使うから』と言う理由で大好きなスイーツばかり。パンや肉すら食べなくなっていた。
それでも若さで仕事をこなしてきたレスティアにある日、思いがけぬ事態が起こる。
「聖女レスティアをうちで預かることにする」
それはラリーコット自治区のトップ、自治区長の発した言葉。彼の娘が大病に罹り、それをレスティアが治療したことから彼の目に留まった。
小さな商家であるバースミン家は断ることなどできず、僅かな金と引き換えにレスティアを区長の家に向かわせること渋々承諾させられた。自治区長はレスティアをとある街の豪邸に住まわせてから言った。
「お前は我らの宝だ。何不自由なく過ごすがいい」
この言葉によりレスティアの自堕落な生活がさらに加速する。そしてそれは結果的に、彼女が聖女と呼ばれることになった【回復】の力をどんどんと失わせて行くこととなった。
(治療ができない……)
それに気付いたのは数年前のこと。
怠惰な生活を送っていたレスティアに治療の力は少しずつ消えて行った。それでも彼女は変わらない。
「ちょっと最近疲れ気味だから治療は控えるわ」
ついに治療をしなくなったレスティア。そんな彼女に最初の引き受け元であるバースミン家から連絡が入る。
「旦那様が倒れてしまって。レスティア、すぐに来て!!」
世話になったバースミン家の当主。高齢で体が弱かったのだが、レスティアが自治区長の屋敷に行ってから更に体調を悪化させていた。
「すぐに行くわ!」
自身も体が重いレスティア。無理をして訪れたバースミン家でその辛い現実を知ることなる。
(ダメ、全く治せない……)
完全に消え去ってしまっていた治癒の力。苦しむ当主を前に何もできない自分が情けなくなる。
「治療をし過ぎて、今は力が……、また来ます……」
結局何もできないままバースミン家を出たレスティア。この日より全く誰の治療もしない彼女の生活が始まる。
(たくさん力を使い過ぎたからできないだけ。治療を止めればきっとまた治せるはず!!)
そして糖分が必要だと判断した彼女は、更に大好きなスイーツばかりを口にするようになる。
だがそれは崩壊への序章。破壊への下り道。極端な偏食が彼女の体を更に蝕んでいく。レスティアを心配した使用人が栄養のある食事を持って来て言う。
「レスティア様、これを食べて元気に……」
「うるさいっ!!」
レスティアは甘くてエネルギーある食べ物こそが自分を取り戻せると信じていた。
この頃には『聖女』としてある意味崇められていた彼女に意見する者はいなくなり、更に偏食が進む。自治区長もどうしていいのか分からずに手を上げる始末。体力が衰え立って歩くことすら疲れるレスティアは、自分そっくりな影武者のセレナを代わりに表に出して訪問客の相手をさせた。
「レスティア様、お夕飯です」
髪の綺麗な中年の女がそう言ってクリームたっぷりのパンケーキをテーブルに置く。飲み物はこれまた彼女が大好きな砂糖がたっぷり入った果実ジュース。
「ありがとう。置いておいて」
レスティアは横になったままそれに答える。ダルくて疲れる。話す事すら億劫に感じる。それでも彼女は思っていた。
(早く元気になって当主様を治療したい……)
レアスキル【超回復】を持つレスティア。だけど今の自分自身の治療はできない。
治療の力を失い、日々体力を失っていくレスティアが暮らすラリーコット自治区。そこにレフォード達がエルクの治療ができる女を探してやって来たのはちょうどこの頃である。
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