君が好き過ぎてレイプした

眠りん

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後半

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 そんな事出来ないよ!
 湊也をレイプした犯人はぼくなんだから。

 ここで告白してしまう? いやいや、湊也を失いたくない。
 ぼくは幸せになれるんだ。このまま、湊也が事件を忘れてくれれば。

「うん、分かった。湊也の為だ、ぼくはどんな事でもする」

「そう言ってくれると思ったよ。さすが俺の彼氏。んじゃ、頑張ってね~」

 湊也はキラキラした笑顔で行ってしまった。どうしよう。犯人はぼくなのに。
 意気消沈していると、話しかけてきたのは優希君だった。

「おーい。柚月、元気ないな? どうした?」

「ゆ、ゆ、ゆ……優希君!! どうしよう!! ぼくどうしたらいいか分からなくて!!」

 なんて人に頼ってしまったんだろう。パニックを起こしたからといって、こんな女好きの最悪な人に縋ってしまった。

「とりあえずさ、詳しい話聞かせろよ」

 優希君は男らしい顔でぼくを屋上に連れて行った。
 屋上は立ち入り禁止だ。優希君は不良なんだって改めて実感。

「ぼくと湊也が付き合ってるのは……」

「知ってるよ。でもお前、湊也と付き合いだしてから、男らしくなったよな。
 前まではドン臭くて、オドオドしてて、結構ウザい系だったのに」

「そんな風に思っていたの?」

「あはは、悪い悪い。でも今のお前、嫌いじゃないぜ。どんどん良くなっていってるし」

「それは全部湊也のお陰なんだ。ぼくの為に頑張ってくれて。
 でも、ぼくは湊也に最低な事をしたんだ」

「何したの?」

「レイプしたんだ。教室で寝てる隙に、目隠しして、後ろから襲って……」

「は!? マジそれ言ってる?」

「マジ」

「お前がそんな冗談言えるわけないもんな?」

「そうなんだ。湊也はぼくが犯人って知らない。でも、湊也は……ぼくに犯人探しをしてくれって。
 そうしたら、ぼくはもっと湊也の理想の彼氏に近付けるんだ」

「待て待て。どうしてそうなった。教師とか警察とか親とか、頼れるところ沢山ありそうなもんだけどな。
 それをお前にだけ話して、しかも犯人探ししろって?
 それさぁ、湊也はお前が犯人って分かってるんじゃないのか?」

「ま、まさかぁ……」

 そんなまさか。レイプした犯人と付き合って、苦手を克服させて、犯人だって分かっているのに犯人探ししろって?
 そんな事する意味が分からないよ。

「で、お前どうするんだよ。俺の意見だけどさ、きちんと謝った方がいいぜ。
 湊也も本気で反省してる人に、許さない事はないから」

「嫌だよ。ぼく、絶対言えない。
 そうだ、それなら優希君が柚月を襲った事にしてくれないかな?」

「はあ!? 俺ぇっ!?」

 何驚いた顔してるんだよ。優希君ならレイプしてもおかしくなさそうだし。
 湊也を初めて見た時「めちゃ俺のタイプ」とか言って、湊也困らせてただろ?

「優希君が犯人なら、湊也も怒らないと思うよ」

「かもな。まぁいいけど。で、俺はどうすりゃいいの?」

「今日の放課後、湊也に君が犯人だって引き渡すから、上手く合わせてよ」

「仕方ねぇなぁ」

 良かった。これでぼくは、このまま湊也と恋人同士のままでいられるんだ。
 もう昔のぼくじゃない。悪い過去は優希君に任せて精算して、新しい人生を再スタートさせるんだ。

 ぼくの隣には湊也がいて、幸せになるんだ。


 放課後、湊也と校舎裏で待ち合わせをした。ぼくは優希君を連れて向かっていった。

「柚月! 話って何?」

「湊也。優希君がレイプの犯人だったんだよ」

「わりぃ、最近女とヤれてなかったから、つい女顔のお前を襲っちまったんだよ。
 もうしないから、許して?」

 湊也はポカンとした顔をして、優希君を見つめた。ビックリした? でも、これで犯人に怯える必要はなくなる。
 これで湊也が優希君を許して、ぼくは犯人を見つけたから認めてもらえるでしょ?
 良いことしかないよ。そうでしょ、湊也?

「ふーん。へぇ~。優希がねぇ?」

 優希君をジロジロと見ている湊也は、犯人に怯えているような態度じゃない。
 やっぱり、ずっと仲良くしてきた友達だし、信じられないのかな?

「なんだよ、悪かったって。柚月にバレてさ、説教されて改心したんだ。もうしないって」

「うん。犯人が分かって良かったよ。優希の事許してあげる。帰っていいよ。
 俺、柚月と話あるから」

「おう、分かった。じゃーな」

「うん、ばいばーい」

 二人はいつも通りって感じで手を振り合ってた。ぼくはその中に入れなかった。
 冷や汗が背中を伝う。どうしてか知らないけど、湊也が怒っているように見えた。

「そ、湊也。約束通り、犯人見つけたし、君の求める彼氏像に近付けたかな?」

 湊也は急にぼくを睨みつけた。なんだ? なんで睨んでいるんだろう?

「俺、最初に言ったよな? 俺の好きな男のタイプは誠実な人だって。
 なんで真逆の事するの?」

「なっ、何が?」

「俺、知ってんだよ。柚月……お前が俺の事レイプしたって」

「ななななんの事!? してない! してないよ。好きな人にそんな事……」

「そうやって嘘つくんだ。そうだよね、テストでカンニングしたり、オロオロすると人に罪着せるお前だもん。
 誠実な人になってもらいたくて、色々頑張ったけど、無理だったみたい。
 お前みたいな卑怯者、今まで見た事ねぇよ」

「ぼ、ぼくのどこが卑怯だって言うんだよ。
 君の言う通り、犯人見つけた。君の為になんでも頑張った。何が悪いって言うんだ!?」

「あのさぁ……レイプされた時、目隠しのネクタイが少しズレてさ、見えたんだよね。
 柚月の親指にあるホクロが」

 ぼくは手の表をサッと見た。忌々しい、親指の付け根あたりにある、変なホクロ。
 これのせいでからかわれた事もある。

「じゃあなんで最初から言わないの!?」

「柚月が打ち明けてくれるって信じてた。
 でも、あの時の柚月は自信なくて、オドオドしてて、不誠実で卑怯者で無責任な人なの分かってた。
 だから、頑張って柚月に自信つけさせる為に勉強に付き合ったし、早朝マラソンに誘ったんだ。
 俺の好みに合わせて誠実になってくれるって信じて。
 全部! 罪の告白をさせる為だ!」

「じゃ……じゃあ、湊也はぼくの事……好きじゃなかったのか……?」

 それならぼくは、あんなに大変な思いをして湊也の好みに合わせる必要なかったんじゃ?

「好きだよ! 初めて会った時から好きだった。好きなタイプだったんだよ!
 でも、柚月は友達になってみると、男として嫌な部分ばかり見えてきて、付き合うのはちょっと嫌だなって思ってた。
 そこにきてあのレイプだろ、むしろ嫌いになったよ!」

 それじゃあなんで……。

「でも、俺が更生させて、心を入れ換える事が出来たら、反省して謝ってくるかなって期待したんだよ。
 そしたら許そうって。このまま付き合っていこうって思ってた。
 なのに優希を身代わりにして逃げようとするなんて。
 本当、最低な野郎だな。柚月、今日でお前とは終わりだ。後は好きに卑怯に生きるなりしてくれ。
 あんまり他人に迷惑かけるなよ」

「ま……待って!」

 湊也が怒り顔のままぼくの元から立ち去ろうとしている。
 すぐに追いかけて腕を掴むけど、振り払われる。

「ごめん……ごめんなさい! 湊也っ、湊也ぁっ! ごめんなさい!! 許して、許して!!」

 涙がボロボロ溢れて、零れていく。これまでの人生でこんな泣いた事ない。
 湊也を失う事は不幸だ。死にたくなるくらいの不幸だよ。

 待って。お願い。ぼくを捨てないで──!

「湊也ぁっ。もうしません! もう、もうしないからっ、ねっ、お願い!」

 言葉とは裏腹に、ぼくの手は湊也の両腕を無理矢理掴んで右手だけで固定していた。
 地面に寝かせて、湊也の腰の上に座って身動きが出来ないように、背中は左手で押さえ付けた。
 あのレイプの時と同じように……。

「お前なぁっ、謝りながらやる事がこれかよっ! ったく、全然成長しねぇ」
 
「ぐすっ、ぐすんっ……ひっく、捨てないで、お願い、湊也、ぼく湊也の事が好きだよ。またぼくの面倒見て欲しい」

「俺になんのメリットがあってお前の世話焼かなきゃならねんだ」

「湊也の求める彼氏になる。誠実になって欲しいなら、これからぼくの行動、全部管理して。湊也の言う事ならなんでも聞く。
 もう嘘つかないって約束する。お願い。お願いします。
 ぼくの人生、全部湊也にあげるからぁっ!」

 大泣きしながら、自分でも訳分からない事言って喚いた。
 すると、今まで抵抗していた湊也の身体の力が抜けていった。

「じゃあまず俺の手を自由にしろ。俺から降りろ」

「はいっ」

 言われた通り、ぼくは湊也から離れた。湊也は怠そうな顔で汚れた制服をはたいた。

「いいか。これから本気でお前の改造をしてやる」

「はい!」

「何か一つでも俺に嘘ついた時点で別れてもらうからな? いいな?」

「湊也の言う事は絶対聞く!」

「よし。なら初の命令だ。まずレイプの犯人がお前だって認めた上で、誠心誠意謝罪しろ」

 初めての命令……きちんとやらなきゃ。湊也な気に入られるようにしなきゃ。

「ぼくが、湊也をレイプした。湊也が好き過ぎて、仕方なくて。手に入らないなら少しの時間、君の身体が欲しかったんだよ。
 ごめんなさい。もうしません。ごめんなさい!」

 土下座をした。誠心誠意ってどうすれば良いのか分からない。
 でも一番重い謝罪は土下座なんだと思う。

「うん。顔を上げて、柚月」

 土下座の姿勢のまま顔を上げると、片膝立ちで、ニッコリ微笑んでいる湊也が俺の頬に手を添えた。

「そ、湊也……」

「うん。上手に出来たご褒美だよ」

 チュッ……? き、キスされた。口に。湊也との初キス!
 湊也が神様みたいに神々しく見える、!

「湊也、もうしない。君が誘ってくれるまで、手は出さないよ」

「うん、そうして。俺が命令しないのに、柚月から俺に身体に触れたら別れるからね」

「うん!」

「じゃあ立ち上がって」

 言われるがまま立ち上がる。ぼくは、もう湊也の命令通りにしか動けないから。
 湊也はぼくに手を差し出した。

「手ぇ繋いでよ。一緒に帰ろ」

「うん!」

 繋いだ手はあったかい。 これからはずっと湊也がぼくを繋いで、君好みのぼくに変えてくれ。言われた事はなんだってするから。
 もう捨てないで。


───────────────────
あとがき

 後編が長くなってしまいました。
 バランス悪くてすみません。

 書いててキモいなーコイツ、とか思っていました。柚月さん、なんか気持ち悪くないですか?
 私はクズ男が泣きながら縋り付く様に興奮する質なので、こんなシーンが多いです。
 キモいと思いつつ書けたのは、泣き縋るシーンが書ける! というご褒美(?)があるからに過ぎません。
 じゃなきゃ、ただの拷問ですよこれ。

 まぁこの作品は、過去の自分が、片思いしている相手に「あなたの将来が私のものにならないなら、一度だけ身体を交わしたっていいじゃないか」なんて思った事があるのを思い出したからなんですがね。
 過去の自分がキモすぎて辛いです。

 思っていただけで、実際手は出しておりませんよ。一応フェミニストなもので。
 女性を大切にするのは男性(女ですが、当時はレズでタチでした)の義務だと思っていましたからね。

 そんなこんなで出来上がったのがこれです。少しでも暇潰しになれば幸いです。
 それでは。
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