不倫して別れた元妻が、久々に会ったら酷い事になっていた

眠りん

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不倫して別れた元妻が、久々に会ったら酷い事になっていた

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 俺は自分で言うのもなんだが、一流企業勤めで収入が良く、サラリーマンの中ではエリートの方だ。
 
 共働き夫婦が増えている中、俺は二十五歳にして、妻を一人で養っている。
 俺は妻の由利江を愛している。彼女に苦労させない為ならどんな事でも頑張れる……そう思って仕事に励んでいた。

 今思えば、家庭を顧みない夫になっていたのかもしれない。
 そんな夫婦生活が二年目に差し掛かる頃、由利江の様子がなんだかおかしくなった。

 由利江は俺より二歳年上の、二十七歳だ。
 職場で知り合ったのだが、その頃から由利江は大人しく、清楚で、いつもニコニコと微笑んでいる女性だった。

 大声で笑ったりしないし、食事の所作も優雅で、見ただけでお嬢様なのだと分かる。
 実際、由利江の両親は会社経営をしており、裕福な家庭だ。

 だが、そんな由利江が元気がない日が続いた。俺は「悩みでもあるのか?」と聞いたが、顔を青くして首を横に振るだけだ。
 かと思いきや、急に声を上げて笑い出す時もあったり、俺に不満げな顔を向ける時もあった。

 俺は女性とはそういうものだと思っていた。特に俺の母親が、俺がまだ幼少期に情緒不安定で、急に怒り出したりする事があったからだ。
 今まで由利江は無理していたのだろうから、家や俺の前でくらい感情を爆発させても受け入れよう……俺はそんな風に思っていたんだ。

 だが、それは間違いだった。それから由利江は夜間の外泊が多くなった。
 最初は友人とお泊まりだと言ったり、実家に帰省すると言ったりしていたが、それが週に一~二回と頻繁なのだ。

 俺は興信所に依頼し、由利江の素行調査を依頼した。結果は真っ黒だった。
 友人との泊まりは、ガラの悪そうな男とラブホテルにお泊まりで、家を出る時は落ち着いた化粧なのに、途中公園によって化粧直しをして、色っぽい化粧にしてから男と会っていたのだ。

 ショックが大きくて、泣き出したくなった。俺は知らない男と、愛する妻を共有させられていたのだ。
 気持ちが悪くてどうにかなりそうだ。

 俺はすぐに俺の両親と、由利江の両親を呼び、四人で話し合った。

「由利江、なんでこんな事をしたんだ?」

 まず俺は由利江に聞いた。理由があれば知りたかった。
 俺にも責任はあると思ったからだ。もっと早く気付いていれば……、ずっと後悔していた。

「……全部、私が悪いのよ。
 二ヶ月前かな、友達に無理に誘われて飲みに行ったの。彼はそこで……」

 由利江は言いにくいのか言葉が途切れた。

「そこで知り合ったんだな? ナンパされて付いて行ったのか?」

「うん……。私、断れなくて、男の人が怖くて、言う事を聞いてしまったの。
 友達も、それくらい皆やってるって……。バレなきゃ大丈夫だよって言われて……」

 由利江はたどたどしく説明をする。確かに由利江は大人しい性格だ。
 働いていた時も、人からの頼みを断れずに仕事を抱え込んでいた。
 俺が由利江の仕事を手伝い始めた事で距離が縮まったのも確かだ。

 だが、どんな事情があるにせよ、不倫は事実だ。俺はどうしても許す事が出来なかった。

「どうして断ってくれなかったんだ?」

「友達に嫌われたらどうしようって……。断って男の人に暴力を受けたらと思うと怖かったの」

「俺に嫌われるとは思わなかったのか?
 男に乱暴されたのか?」

 俺は責めるように問い詰めた。だが、由利江は泣いてしまって話にならない。
 俺の両親も、義父母も暗い顔で、俺達の話を聞きながら、義父母は俺に何度も謝っていた。

 とにかく今事実として、由利江が不倫をした事は分かっている。
 それなら答えは一つしかなかった。

「由利江、離婚だ。俺は不倫するような人をもう信用出来ないし、今後一緒に人生を歩めると思えない。
 君の優しく奥ゆかしい性格が好きだったけれど、男に誘われて断れない人だとは思わなかった。
 財産分与はしない代わりに、慰謝料は要らない。だから何も言わずに離婚してくれ」

 由利江が頷くと、俺は席を立ち、その話し合いから離脱した。
 
 それから俺の行動は早かった。翌日には、離婚届をテーブルに置いて家を出た。
 しばらくはホテル暮らしをしながら仕事をしていたが、ここは由利江との思い出が多過ぎる。

 どうしても辛くて、俺は会社に退職届を出し、辞めた後は遠く後へと旅立った。
 後に親から、由利江が離婚届を提出したと報告があった。

 慣れない土地での新しい環境。それは傷付いた俺の心を癒すにはちょうど良かった。
 新しい職場は一流企業ではなかったが、そこそこ大手の企業に入れたし、残業が殆どない職種なので、趣味に映画鑑賞をするようになり、空いた時間を有意義に過ごしていた。

 そんな生活も三年。俺は二十代後半にさしかかった。周りからも、良い女性を見つけて再婚したら? と言われる。
 俺は再婚は考えられなかった。
 まだ胸の奥には由利江がいて、まだ夢に見るんだ。
 俺と由利江が温かい家庭を築いていて、不倫なんて事実は存在しなかった。

 そんな幸せな夢を見ては、朝現実に戻ると落胆している。

 あの時、一度だけでも不倫を許していたら、と考えては否定する。
 俺は他の男に抱かれた由利江をもう愛する事は出来ない。
 きっと由利江に触れる度に、他の男の影がチラついて、もう抱く事は出来ない。

 ある休日の日の事。俺はレンタルビデオ屋にでも行こうと外をプラプラ歩いていた。
 閑静な住宅街を歩いていると、前から女性が歩いてきた。
 その隣をトコトコと歩き慣れない様子で、二歳程の男の子が歩いている。
 女性は男の子に合わせながら前に進んでおり、

「あんよが上手、あんよが上手」

 微笑ましい母子の一場面。だが、俺は彼女を見て身体が硬直した。
 その女性は由利江だったから……。

 俺が呆然と二人を見つめていると、由利江も俺に気付いた。
 その瞬間──、由利江は子供を抱きかかえ、俺に背を向けた。

「ごめんなさい。私の顔なんか見たくないのに……。でも、あなたがここにいるなんて知らなかったの。本当よ。
 私、西区の方に住んでるの。こっちの方にはもう来ないから。
 ごめんなさい」

 由利江は何度も謝ってきた。
 ここは俺や由利江の実家からも遠く、会う筈がなかった。
 だから一瞬、由利江が俺に会いに来てくれたのかと思いそうになったが、違うようだ。

「由利江はなんでここに?」

「だ、旦那の転勤で……」

「子供は一、二歳くらいか? 俺と離婚した後に出来たんだな?
 不倫相手との子かよ?」

 俺は何故か由利江に質問攻めをしていた。
 もう離婚した他人だ。気にする必要のなんかないのに。
 

「ごめんなさい。もう行くね。これからは擦れ違っても、知らない人のフリをしよう。
 あなたには本当に悪い事をしたと思ってる」

 由利江はそう言うと、子供を抱いたまま来た道を戻って行った。
 俺はまだ聞きたい事がたくさんあった。

 今なら落ち着いて由利江の話を聞いてあげられる余裕がある。
 あの時、何故不倫をしたのか? あれからどうやって生きてきたのか? 子供はなんていう名前をつけたのか? 今の旦那とは上手くやれているのか?

 今、君は幸せか?

 不倫した女なんて、もうどうだっていい筈だ。許す気なんて一切ない。
 それなのに、まだ由利江に未練でもあるのか。

 それからは由利江を見掛ける事は一切なかった。西区に住んでいると言っていたが、俺の職場は奇しくも西区にある。
 だが、出勤や退勤時に由利江を見掛ける事はなかった。


 それから三年程が経った。由利江と出くわす事もなく、俺は平穏に暮らしていた。
 合コンで知り合った女性、沙織とLINEでやり取りをするようになり、もう少し慣れてきたら交際を申し込もうかと思っていた。

 そんなある日、職場の後輩から仕事で相談があると言われ、退勤後に後輩の行きつけの居酒屋に寄った。
 散々愚痴を聞き、泣き始めてしまった後輩を慰めて、解散した。
 帰りは、普段通る事のない道を歩いた。

 住宅地を抜ければ知っている道に辿り着くだろう、そう思い歩いていると、アパートの一室から怒号が響いた。
 物が壊れるような音、悲鳴に、俺の足は止まった。

 その後すぐに、問題の部屋と思われる一室のドアがバンッと開き、女性が子供を抱きかかえて出てきた。
 その女性の顔は痣だらけで、身体は痩せ細っていて、見るだけで痛々しい。
 俺はそれが由利江だとすぐに分かった。

 由利江は俺に気付かず、すぐ側を横切って走っていった。
 抱えている子供は、三年前に会った時の子だろう。小学生前と思われる幼児だった。

 気付けば俺は走っていた。由利江を追いかける。
 意外と由利江の足は速く、運動不足の俺ではなかなか追い付けない。
 だが、由利江は小さい公園に着くと、足を止めた。

「ゆ……由利江……」

 俺が声を掛けると、由利江は驚いた顔で振り返った。
 その瞬間顔が真っ青になり、涙を流し始めた。

「由利江? どうしたんだ?」

「ごめんなさい! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

 身体を震わせて泣きながら何度も謝る。地面に下ろされた子供は、由利江を見て驚き、

「お母さん、大丈夫? 痛い?」

 と、心配している。

「もう謝るな。怒ってないから」

 俺は由利江を抱き締めていた。
 他人の男に抱かれた身体など、もう触れないと思っていたのにもかかわらず、気付けば触れていた。

 由利江が汚いとは思えなかった。こんなにも小さく震えて、あまりにも哀れだった。

「駄目。あなただけは私を怒らなきゃ。
 私、あなたに酷い事をしたの。許されない罪を犯した。
 だから……」

「うん。怒るかどうかは俺が決める。それより、君の話が聞きたいよ」

 それから由利江は、子供……高志君に公園で遊ぶように言った。
 高志君が視界に入る位置にあるベンチに、並んで座った。

「実はね、高志はあなたの子なの」

 由利江は怯えた顔で俺に告白した。さすがに俺も驚く。

「な、なんだって!?」

「ごめんなさい。本当は離婚した時、私妊娠してるの分かってたの。
 その時はもう妊娠三ヶ月だったし、不倫していたのは二ヶ月間だけだったから、あなた以外に有り得ないのよ」

「どうして言わなかった?」

 なるべく責めないようにゆっくりした口調で聞く。

「だって、子供が出来たらあなたを縛りそうで、言えなかった。
 あれだけあなたを傷付けたのに、子供がいるから養育費を払わせるなんて……、あなたに負担を強いる事はしたくなかったの」

「それは今の旦那は知っているのか?」

「ええ。あなたと離婚した時に言ったわ。
 不倫がバレて離婚したけど、お腹には夫の子がいるって。
 どうしたらいいだろう? って相談したの。
 そしたら、じゃあ俺と結婚して、俺の子として育てていいって。
 だから、私、その通りにしてしまったの」

 由利江の話をそのまま信じる事は出来ない。
 間男はなんだってそんな要求をしたのか、理解出来ないからだ。

 由利江を本当に愛しているから、自分の子でなくとも、一緒に育てる覚悟を決めたという様にも見えるだろう。

 だが、現に今その間男は、由利江を苦しめ、高志君も幸せに出来ているとは思えない。

「なんだってそんな事……」

「ごめんなさい。全部私のせいなの。
 今じゃ、子供を認知してやったよな? って言って、無茶苦茶な要求ばかりされるのよ」 

「無茶苦茶な要求?」

「家事と育児は全て私一人でやれとか。子育ての分の費用は、私が働いて稼げとか。
 スマホは旦那と仕事以外の連絡先は入れてはいけないとか……。
 旦那の命令は絶対に聞かないと、殴られるようになった」

 要するに、モラハラとDVを受けているという事だ。
 酷い内容に、俺は顔を顰めた。

「でもね、私が旦那の言う事を聞けば、子供には何もしないって言ってくれてるの。
 それにこうなったのは、全部私の自業自得だし、こんな状況を受け入れてるんだ」

 俺は心のどこかで、由利江が俺に助けを求めてくれるのではないか、そう思っていた。
 だが、由利江は俺に救いを求めちゃいなかった。
 高志君を見て微笑んでいる。笑える状況でもないだろうに、全ての不幸を受け入れ、それが当然だとでも思っているかのように……。

 由利江を追い詰めたのは誰だ? 不倫相手である今の旦那か? それとも俺か?

 由利江は大人しい性格だ。仕事でも、人に頼まれたら断れなくて、終わらない仕事を抱えて残業するような、不器用な人だ。

 不倫したのだって、元々は友人に飲みに誘われ、その時にナンパされて、断りきれずに抱かれたと言っていた。

 本当は由利江は断ったんじゃないか? でも、無理矢理誘われて、恐怖で断れなかったんじゃないか?

「由利江。本当は、不倫じゃなかったんじゃないか?
 例えば……乱暴された、とか……」

 俺が恐る恐る聞いてみると、由利江は悲しそうに笑った。

「もう。たっくんは優し過ぎるよ」

 たっくん……。離婚するまで由利江が呼んでいた俺のあだ名だ。
 一瞬にして、由利江と愛し合っていた頃の時間に戻ったような錯覚に陥った。

「例え乱暴されて、写真を撮られて、それをネタにされたとしても……私はたっくんに相談しなかった。
 嫌われるのが怖くて、相手の言われるがままに要求を受け入れ続けたんだよ。
 旦那は、私を不幸にしたいんだって。
 私は覚えてないんだけどね、学生時代に彼が私に告白したんだって。
 私が男の人が苦手だからって言って振ったのに、たっくんと結婚したから、ずっと復讐したかったんだって」

 例え話……じゃないよな。これはあの不倫について話し合いをした時、由利江が言おうと思って言えなかった事だ。

 だとしたら、由利江は悪くないじゃないか。
 全てはあの男が悪かったのだ。
 何故由利江は全てを受け入れているんだ? こんな不幸があっていいわけがないのに。

「どうして、今更そんな話……」

「うん。だからね、もう私の事は忘れて。たっくんはたっくんの幸せを見つけて欲しい」

 気付いたら、俺の目からはボタボタ涙が零れては落ちて、ズボンに吸い込まれていった。
 すると、高志君が俺の前まで来ていた。

「おじさん、大丈夫?」

 オロオロと俺を心配しているようだ。確かによくよく見てみれば、高志君の目元とか、俺によく似ている。

「大丈夫だよ」

「お母さんとケンカしたの?」

「ううん。俺が君のお母さんに酷い事をしたんだ」

「じゃあ、あやまって仲直りだね」

 俺は「そうだね」と言って頷いた。由利江は、高志君に、

「違うよ。私が悪い事をしたんだよ。謝っても、もう許されない悪い事をしたの」

「あやまっても?」

「そう。だから、私は幸せになっちゃいけないんだ。でもね、高志は悪い事してないから、あなただけは私が幸せにするからね」

 由利江はまた高志君を抱っこすると、その場から立ち去った。

「たっくん、もう私に関わらないでね」

 そんな言葉を残して……。

 俺はどこで間違えたのだろうか。由利江の為と言いながら、一流企業でバリバリ働く自分に酔って、由利江をずっと一人きりにさせていた。

 由利江がおかしくなっても、女性だからよくある事だろうと放置した。

 あんなに分かりやすい外泊を続けていたのは、俺にSOSを伝えようとしていたのではないか?

 それなのに俺は何をした?

 興信所に頼って、由利江の不倫の証拠を押さえて、責めた。
 本当は乱暴されて、心も身体も傷付いていたのは由利江の方だったのに。


 俺はその翌日、午前休をもらった。予め用意しておいた物を持って、由利江のアパート前で待つ。
 間男が仕事に出たのを確認し、ごみ捨てに出てきた由利江を捕まえた。

「由利江!」

「あっ……」

 由利江は俺から目を逸らして、知らないフリをしようとした。
 そんな由利江の手を掴んだ。そして、袋を手渡す。

「この中に小型監視カメラと、小型のボイスレコーダが入ってる。
 俺の連絡先も。これでモラハラやDVの証拠を掴め。それでさっさと別れろ。
 養育費くらい俺が出す。つか、俺の子なら、俺に養育義務があるんだ。
 全部片付いたら、連絡くれよ」

 伝えたい事を全て話し、たちさろうとすると、由利江が、

「どうしてここまでしてくれるの?」

 と聞いてきた。

「お前の家の家庭環境じゃ俺の子供が不幸になるだろ。
 せめて子供くらいは幸せにしてくれよな」

 変なプライドが邪魔をして、そんな言い方になってしまった。
 本当は、由利江と高志君は大事な人だから、このまま放置出来るわけないだろ、と言ってあげたかったが。


 それから一ヶ月が過ぎた。俺は合コンで知り合った沙織に「好きな人が出来た」と言って、別れを告げた。
 と言っても、まだ付き合ってすらいなかったが。

 だが、半年が過ぎても、由利江からは何も連絡はこない。
 俺は由利江の家に足を運んだが、既に空き室になっていた。
 隣の部屋の人に聞いたところ、モラハラ夫は逮捕され、過去にも色々やらかしていたようで、実刑判決が下ったそうだ。
 その流れで、由利江が高志君を連れて実家に戻ったという情報を得られた。

 由利江に連絡しようと思ったが、由利江や、由利江の実家の連絡先を知らない。
 離婚の時に傷心で全て消してしまったのだ。

 俺は母に連絡をする事にした。
 母なら由利江の実家の連絡先を知っていると思ったからだ。
 だが、母も知らないらしい。

 俺は、数日有給を取得し、地元へ帰ってきた。
 実家へは戻らずに、すぐに由利江の実家に向かった。

 チャイムを鳴らし、出てきた元義母は俺を見て驚いた顔をしていた。

「どうしたんですか?」

 と、聞いてくる元義母に俺は膝を着き、土下座をした。

「以前は大変申し訳ありませんでした!!」

「一体どうしたんです? 謝るのはこちらの方……」

「いえ! 由利江さんの件、悪いのは全面的に私です!
 娘さんを不幸にしてしまい、大変申し訳ありませんでした!
 ですが、もう一度だけ、たった一度でいいですから、俺にチャンスを下さい!
 由利江さんを幸せにするチャンスを…!」

 俺の声で気付いたのか、由利江が家の奥から走って出てきた。

「たっくん……!」

「私は今度こそ由利江さんを幸せにしたいのです。高志君も一緒に。
 今度こそ間違えません。家族を大事にすると誓います!」

 俺の必死の叫びは、近所中に聞こえていたらしく、由利江は顔を真っ赤にしていて、俺も恥ずかしかった。

 そこで俺は由利江に婚約指輪を渡した。

「また俺と結婚してください!」

 そう叫んで……。由利江は泣きながら、何度も頷いていた。


 それから俺と由利江は夫婦に戻った。高志もすぐに俺に懐いてくれて、仲良し家族だ。
 結婚するにあたって、俺と由利江は約束事を交わした。

 何かあったら必ず相談する事。この約束だけは必ず守るように決めた。
 それから由利江は些細な事でも俺になんでも聞くようになった。

 俺が家にいる時は、俺の傍を離れようとしないのだ。可愛くて、愛しくて……俺は由利江への愛が止まらなくなった。
 そんな俺と由利江を高志が茶化してくる。

 だから、俺と由利江とで、高志を挟んで抱き締めた。
 君は俺と由利江の大事な宝なのだよ、そう言いながら──。



───────────────────

お読みいただき、ありがとうございます。
どんな理由があるにせよ不倫を許すのは読者が嫌がるので…とボツになった作品です。
当人がいいなら別にいいと思うんですが。結構過激な考えの方も多いのも事実。
こちらに投稿させていただきました。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

ジャック
2021.12.28 ジャック

不倫(復讐によるレイプと脅迫)自体が飲みに行った友人も共犯の計画犯罪なんじゃないかね。

眠りん
2021.12.28 眠りん

ありがとうございます。
元々5000文字以内の作品だったので、そこまで考えていませんでした。
そう言われてみれば、そうですねぇ。
その場合、友人が共犯である証拠掴まないと訴えられないので、難しいところですね。

解除

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