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八話 復讐

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 響生の懺悔の声は笑うしかなかった。本人が必死なところが、また俺の笑いのツボを刺激する。

『ママ、どうしよう、また和泉に酷い事しちゃった。和泉がエロ可愛いからって、なんであんな事……。
 絶対嫌われてるよ。どうしたらいいかな?』

『ママ、俺、和泉に認めてもらいたくて就活してみたんだけど……やっぱりダメだったよ。
 俺、もう社会に受け入れてもらえないみたいなんだ。
 和泉に慰めてもらいたいのに、多分、また虐めちゃいそうだ』

『どうしよう! 和泉が、凄く可愛い。優しくしたいよ。前にアナルで感じてくれてたから、酷い事してもアナルを弄ってあげれば、好感度下がらなくなるかな?』

 再生している間、俺は笑いが止まらなかった。
 ママって! ママって!
 しかも見当違いにも程があるでしょ。アナルは感じてないっつーの! 苦しいし、気持ち悪いし、アナル我慢するのが一番キツいんだけど!

「いや、お前、これはないでしょ。バカでしょ? 本当、響生ってバカ!」

「ぅぅぅぅっ。そうだよ! 悪いかよ! 俺はバカだよ!!」

「あぁ、おっかし。でも、この録音のお陰で、俺、響生に虐められるの楽しくなってきてさ」

「マジ!?」

「うん。あ、でも家の中で虐めてくんの、もうやめてくれない?」

「分かりました。もうしません」

「ママの仏壇の前じゃないとやめられなくても、この録音聞かせればさすがにやめるでしょ?
 オイタした時は再生させるからね」

「分かりました! それだけはやめて下さい!」

 必死に懇願してくる響生が楽しすぎる。
 安心していいよ。響生には、一生後悔するような復讐計画を考えてるんだ。

 もう俺を止める事は出来ないし、お前の人生終わらせてやるよ。

「あぁ、でも。別にイジメをやめろなんて言わないよ。外でのプレイは結構楽しかったし?
 今まで通り、俺に偉っそうに命令して、外でのプレイを強要してね」

「その方がいいのか?」

「うん!」

 それから響生は俺の言うとおりに、俺に命令していった。そのやり取りは、今までのイジメとなんら変わらないやり取りだ。

 寧ろ、俺がイジメの内容を考えるから、前より過激になっていった。

「ねぇ、これ粉砂糖なんだけど。薬物強要するプレイしてよ。俺は最後まで嫌がるから、無理矢理吸わせるって設定でさ。
 その後好きに犯していいよ」

 響生は俺がシチュエーションプレイが好きなドMだと思ってるみたい。
 俺を喜ばせる為に必死で頑張ってた。

 乳首のピアスもそう。俺が嫌がってるのを無理矢理押さえ付けて、ピアスを付けるってプレイにして、響生にやらせたの。
 あの時の響生、ビビって可愛かったな。


 俺は俺で、ヒーローになってくれる人を探した。
 困ってる人見捨てられないような人で、イジメの事実を隠してるのを暴いて世間に公表してくれる人。
 男でも女でもどっちでもいい、俺に都合のいい奴が良い。

 まぁそんな人はなかなか現れない。だから可哀想な子を演じて、俺を救おうと頑張ってくれる人を探した。
 下手に虐められてるって広められるのも嫌だから、大人しそうに見えて正義感強そうな人。

 そして見つけた。つばさを。
 つばさは、元カノがイジメで自殺したらしくて、イジメには敏感に反応する。
 そして、俺を助けようと必死に動こうとしてくれている。

 けど、一つ難点があった。つばさは、響生に直接文句を言おうとしているのだ。
 なんでも、元カノを虐めていた人達は、元カノが自殺した後酷く後悔をしていたらしい。
 響生にも同じ思いをさせたくないそうだ。

 加害者にもお優しいこと。俺、つばさのそういうところ嫌いだな。
 ま、響生を社会的に殺したらつばさとも終わり。そもそも、俺、女の子大好きなんだよね。
 何が楽しくて男相手にしなきゃいけないの?


 だから、もうそろそろいいだろう。つばさが本格的に響生に近付く前に、動こう。
 この前はつばさが響生の車に近付いて、何か話してたから危なかったし。


 休日につばさをもう一度自宅に招いた。俺は響生を三時間は戻らないよう言いつけて外出させておく。
 響生は俺の言う事は絶対聞くから。

 つばさを部屋に案内して、すぐに録音の音声を聞かせた。

「これが俺が被害にあった証拠の音声。
 つばさが俺に良くしてくれるから、俺も考えを改めたよ。もうこれ以上、響生からイジメを受けない努力をするつもり」

「うん」

「それもこれも、つばさのお陰だよ」

 俺はつばさの胸に寄りそった。すると、つばさが俺を抱きしめる。
 こうして二人になるのもこれで最後だ。

 餞別に抱かせてやってもいいと思った。

「つばさ、しよっか?」

「いや。それはこの戦いが終わったらにしよう。
 伯父さんにこれまでの事全部話して、録音聞かせて、俺が和泉がどれだけ辛い思いしてたか証言すればいいんだよね?」

「うん! じゃあ終わったらそのお祝いに、しようね」

「ああ!」

 バーカ。これが最後のチャンスだっつーの。
 響生の事が終わったら俺も出ていくんだから。こんな気持ち悪い家、本当はもう一日だっていたくないんだから。


 その二日後。久々に伯父さんが休みで朝から家にいた。
 俺はつばさを招いて、伯父さんの書斎に入った。

「伯父さん、ちょっと話があるんですが」

「なんだ? 気軽に相談しなさい」

 伯父さんは曲がった事が大嫌いだ。犯罪を犯したら息子だろうと容赦しないと、何年か前にニュースを見ながら言っていた。
 実際、響生が小学生の時、万引きをした事があったらしいけど、伯父さんは響生を殴って叱り、被害が遭った店に響生を連れて土下座をしたという話は有名だ。

 三年にもわたって、両親を亡くして一人になった親戚を執拗に虐めぬいた。
 その事実を知れば、伯父さんは絶対に許さないだろう。家から追い出してくれたら一番いいな。
 生活力ないし、ホームレスとかになって、俺を虐めた事を一生後悔して欲しい。


 俺は内心平静状態で、泣きながら事の経緯を話した。
 この家に来てから響生にイジメを受けていた事。イジメの内容。
 恥ずかし写真を撮られて、ずっと言えなかった事。
 証拠がある事。そして、証拠の音声を流した。

 伯父さんはみるみるうちに顔が真っ赤になった。

「響生ぃぃっ!! 許さん!! 絶対に許してなるものか!!」

 伯父さんは書斎を出ていった。リビングに入ると、響生は暗い顔でソファーに座っていて、何故か少しも驚いていない様子だった。

「響生っ!! 聞いたぞ!! お前、和泉になんて事を!!」

 伯父さんの怒号。俺は笑みを隠すのに必死になっていた。

「伯父さん、そこまでにしてくださいっ! 今まで言えなかった俺が悪いんですから……」

「そんな事はない! 和泉が気弱だからと、お前は卑怯にも、こんな酷い事がよく出来たな!? 警察に行くぞ! 罪を償うんだ!」

 俺は泣き真似をしてつばさに身体を預けた……けど、つばさは俺の両肩を一度支えただけで、俺を押し退けて一歩前に出た。
 そして──

「和泉の伯父さん。……っていうのが、和泉が響生さんを陥れる計画です」

 ──と。はっきりとそう言った。
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