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二十八話 最大級の後悔
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中学二年生の春、彼女は俺のクラスに転校生としてやってきた。
名前は関原風花ちゃん。皆、陰で可愛い可愛いって言ってたんだ。
彼女は大人しいけど、奥ゆかしくて、普通の人の手に届かない高嶺の花のようだった。
綺麗だった。話し掛ける機会をずっと窺ってた。
その機会が訪れたのは、球技大会での事だ。
ドッヂボールは球技が得意じゃない人か、ドッヂボールが好きだという人に分かれ、温度差が半端なかった。
俺はバスケ部だけど、うちの中学の球技大会は自分が入っている部活と同じ競技に出てはいけない決まりがあったから。
他に出たい競技もなかったので、渋々ドッヂボールに。でも不幸中の幸いで、そこには風花ちゃんがいたんだ。
彼女は運動はあまり得意ではない。投げられたボールをキャッチしたまま尻もちついて転んでしまう程の運動音痴だ。
俺は、彼女を守れるなら──! なんて思って試合をしていた。
けれど、その時奇跡が起こったのだ。
敵チームから投げられたボールを、珍しく風花ちゃんがキャッチ。
投げるのが得意な味方にパスすればいいものの、風花ちゃんは「えいや」と敵の内野にボールを投げた。
多分、本人は自分のクラスの外野に投げようとしたんだろうなぁ。身体の向きは外向いてたから。
けど、彼女が投げたボールを敵チームのリーダー格がキャッチしようとしたら、その手を弾いてボールは外野へ飛んで行った。
俺はすかさず風花ちゃんに激励した。
「すげーじゃん! カッコよかったぜ!!」
みるみる赤くなる彼女の顔に、俺も体温上昇。やべ。マジで惚れたかも。
それからは毎日風花ちゃんの姿を追いかけた。彼女が俺に顔を向けると、目が合う。俺が惚れてるってバレてるのかもしれない。
モヤモヤ落ち着かない時間がずっと過ぎていく。
部活仲間から「うぜーからはよ告れ!」といわれた。俺が悶々して静かだから調子狂うとか。
だって風花ちゃんの事で頭いっぱいなんだ。
そして迎えたXデー。
部活の皆でトランプのゲームをしていたんだけど、俺は駆け引きとか心理戦とか苦手で、すぐに負けてしまった。
「負けた人は罰ゲームな! じゃあ、橋村は好きな人に告ってこいよ!」
「はぁ?」
「そうだぞ。そろそろスッキリさせてやるよ!」
仲間がニヤニヤと笑っていた。そんなにウジウジしている俺が嫌なのか。
俺は意を決して風花ちゃんを呼び出す事にした。
「うーん。でも、どこで告れば良いんだろう?」
「あ、あの桜の下が良いんじゃね?」
バスケ部の一人がそう言い出した。なんで桜の下? 少女漫画かっつーの。
「桜の下?」
「知らねーの? あそこで告白すると、振られないんだよ。俺の両親もあの桜の下で付き合い始めたって」
「あ、聞いた事ある。親世代からそう言われてるって。あれ、でも振られないんじゃなくて……」
「振られないんだよ!!」
最初の言い出しっぺがやけに桜の下をゴリ押しする。まぁ振られないなんて事はないんだろうけど、せめて失敗する確率下げたいもんなぁ。
「分かった。そこで告白するよ」
告白なんて余裕だと思った。
確かに、昔から好きな女の子につい意地悪してしまって、暴言吐いたり、いじめたりして、嫌われる事は多かったけれど。
告白するって決断して挑むんだ。これはバスケの試合と一緒だ!!
そう思って、桜の下で待っている風花ちゃんの目の前に立った。彼女は可愛く頬を染めて俺を見つめていた。
「……──」
告白しようとしたが、上手く声に出ない。
なんで? なんで? なんで? どうして声出ないんだ?
そうだ、これは罰ゲームだ。無理にやらされたって思い込め。
本当は告白したくないんだ。なのにあいつらが告白しろって言うから仕方なく……そう! 仕方なく告るんだ。
「関原さん! 好きです! 付き合ってください!」
言えた!!
よっしゃ、よっしゃ、言えた。
風花ちゃん、受け入れてくれるかな……?
……ハッ!! 振られる? いや、ここ桜の下だし、振られないらしいし。
でも振られたら?
彼女の口がゆっくり開かれた。
その口で何を言う?
橋村如きが私に釣り合うと思わないでよ──……。
なんて言ってくる気がした。
「罰ゲームだよ、お前みたいなブスに誰が告るかよ!」
──あ、俺……なんて事……。
気付いた時には、すぐさま逃げ出した後だった。
早く戻れ、早く戻れ。戻って訂正するんだ。
風花ちゃんがこの世で一番可愛いよ。転校してきた日からずっと好きだった。大好きだよ!! 早く戻って言えよ!!
なんて心の中で叫んでも俺の足は戻ってくれなかった。
その次の日から、風花ちゃんは俺の顔も見なくなり、距離はどんどん遠くなっていったんだ。
名前は関原風花ちゃん。皆、陰で可愛い可愛いって言ってたんだ。
彼女は大人しいけど、奥ゆかしくて、普通の人の手に届かない高嶺の花のようだった。
綺麗だった。話し掛ける機会をずっと窺ってた。
その機会が訪れたのは、球技大会での事だ。
ドッヂボールは球技が得意じゃない人か、ドッヂボールが好きだという人に分かれ、温度差が半端なかった。
俺はバスケ部だけど、うちの中学の球技大会は自分が入っている部活と同じ競技に出てはいけない決まりがあったから。
他に出たい競技もなかったので、渋々ドッヂボールに。でも不幸中の幸いで、そこには風花ちゃんがいたんだ。
彼女は運動はあまり得意ではない。投げられたボールをキャッチしたまま尻もちついて転んでしまう程の運動音痴だ。
俺は、彼女を守れるなら──! なんて思って試合をしていた。
けれど、その時奇跡が起こったのだ。
敵チームから投げられたボールを、珍しく風花ちゃんがキャッチ。
投げるのが得意な味方にパスすればいいものの、風花ちゃんは「えいや」と敵の内野にボールを投げた。
多分、本人は自分のクラスの外野に投げようとしたんだろうなぁ。身体の向きは外向いてたから。
けど、彼女が投げたボールを敵チームのリーダー格がキャッチしようとしたら、その手を弾いてボールは外野へ飛んで行った。
俺はすかさず風花ちゃんに激励した。
「すげーじゃん! カッコよかったぜ!!」
みるみる赤くなる彼女の顔に、俺も体温上昇。やべ。マジで惚れたかも。
それからは毎日風花ちゃんの姿を追いかけた。彼女が俺に顔を向けると、目が合う。俺が惚れてるってバレてるのかもしれない。
モヤモヤ落ち着かない時間がずっと過ぎていく。
部活仲間から「うぜーからはよ告れ!」といわれた。俺が悶々して静かだから調子狂うとか。
だって風花ちゃんの事で頭いっぱいなんだ。
そして迎えたXデー。
部活の皆でトランプのゲームをしていたんだけど、俺は駆け引きとか心理戦とか苦手で、すぐに負けてしまった。
「負けた人は罰ゲームな! じゃあ、橋村は好きな人に告ってこいよ!」
「はぁ?」
「そうだぞ。そろそろスッキリさせてやるよ!」
仲間がニヤニヤと笑っていた。そんなにウジウジしている俺が嫌なのか。
俺は意を決して風花ちゃんを呼び出す事にした。
「うーん。でも、どこで告れば良いんだろう?」
「あ、あの桜の下が良いんじゃね?」
バスケ部の一人がそう言い出した。なんで桜の下? 少女漫画かっつーの。
「桜の下?」
「知らねーの? あそこで告白すると、振られないんだよ。俺の両親もあの桜の下で付き合い始めたって」
「あ、聞いた事ある。親世代からそう言われてるって。あれ、でも振られないんじゃなくて……」
「振られないんだよ!!」
最初の言い出しっぺがやけに桜の下をゴリ押しする。まぁ振られないなんて事はないんだろうけど、せめて失敗する確率下げたいもんなぁ。
「分かった。そこで告白するよ」
告白なんて余裕だと思った。
確かに、昔から好きな女の子につい意地悪してしまって、暴言吐いたり、いじめたりして、嫌われる事は多かったけれど。
告白するって決断して挑むんだ。これはバスケの試合と一緒だ!!
そう思って、桜の下で待っている風花ちゃんの目の前に立った。彼女は可愛く頬を染めて俺を見つめていた。
「……──」
告白しようとしたが、上手く声に出ない。
なんで? なんで? なんで? どうして声出ないんだ?
そうだ、これは罰ゲームだ。無理にやらされたって思い込め。
本当は告白したくないんだ。なのにあいつらが告白しろって言うから仕方なく……そう! 仕方なく告るんだ。
「関原さん! 好きです! 付き合ってください!」
言えた!!
よっしゃ、よっしゃ、言えた。
風花ちゃん、受け入れてくれるかな……?
……ハッ!! 振られる? いや、ここ桜の下だし、振られないらしいし。
でも振られたら?
彼女の口がゆっくり開かれた。
その口で何を言う?
橋村如きが私に釣り合うと思わないでよ──……。
なんて言ってくる気がした。
「罰ゲームだよ、お前みたいなブスに誰が告るかよ!」
──あ、俺……なんて事……。
気付いた時には、すぐさま逃げ出した後だった。
早く戻れ、早く戻れ。戻って訂正するんだ。
風花ちゃんがこの世で一番可愛いよ。転校してきた日からずっと好きだった。大好きだよ!! 早く戻って言えよ!!
なんて心の中で叫んでも俺の足は戻ってくれなかった。
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