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四章
四話 ストレートな誘惑
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「瑞希、車で待っててくれる? 柊さんが俺に話があるんだって」
「いいよ~。ゆっくりしてきてもいいよ。伊吹とエッチしたいのかもしれないしね」
「あの人はそういうのないと思うよ。なんでもかんでもエロネタに繋げんなって」
「はぁい」
瑞希が手を振って伊吹を見送った。伊吹はまた翠の実家まで戻る。
チャイムを鳴らしてまた入れてもらう。
「柊が自分の部屋で待ってるそうです」
母親がそう言いながら、二階の柊の部屋に案内すると、伊吹を促した。
「ありがとうございます」
部屋の前に立ち、ノックをすると中からドアが開いた。
「篠さん。待ってました」
部屋で二人きりになる。部屋の中はほぼ何も無い。ベッドも布団の類は一切なく、何も物が置かれていない机と、セットの椅子だけだ。部屋の隅に大きなバッグがある。
「部屋の中何もないんですね?」
「今日出て行くんですよ」
「本気だったんですね」
「ええ。この一週間で少しずつ荷物を新居に移動して、あとはこの鞄と、クローゼットの中に入ってるダンボール箱だけです」
「どういう心境の変化ですか」
「俺も翠みたいに家を出て、もう少し視野を広げようと思ったんです。篠さんの味方をする為に今日まで残ってたんですよ」
「それは……ありがとうございます」
「いえ。俺が一人暮らしするの、篠さんはどう思います?」
何故そんな質問をするのか、意図が分かりかねる。伊吹は少し悩んでからありきたりな返事をする。
「良いんじゃないですかね。一度は一人暮らしを経験すると良いと言いますし」
「落ち着いたら篠さんを招いてもいいですか?」
「俺ですか? まぁいいですけど。でも翠の事が聞きたいなら、これからは柊さん自身が会えばいい事で……」
「そうですね」
柊の様子がおかしい。この家に来てからずっと、何かおかしいと思っていた。
だが、味方をしてくれたから何かしらの心境の変化があったのかもしれないと、納得させる事にしたのだが。
「どうしたんです? 俺に恨み言の一つでもあるのかなぁなんて思ってたんですけど」
「恨み言……ないわけではないですが、今非常に困っている事があるんです。翠を傷付けた俺を篠さんが助けてくれるのか、疑問ではありますが。
救ってはもらえないでしょうか? 嫌なら拒否してもいいです」
「どうしたんですか? 翠に何をしたとかは置いておいて、俺は純粋に人が困ってたら嫌いな人でも助けますよ。
あ、柊さんが嫌いってわけじゃないですよ」
「はい。すみません。実は、篠さんに脅しの写真を撮られてから、尻に何かを入れて……その……自慰行為をする事に歯止めが効かなくなってしまって……毎日……」
「毎日アナルオナニーしてるんですか?」
ビクリと柊の身体が揺れる。
「はい……」
柊はクローゼットを開いて、ダンボール箱を開いてみせた。
中には数々のアナル用の大人の玩具が揃っている。
「二週間でここまで買ってしまいました。身体が……身体がおかしいんです。
どうしたら治まってくれるんですか?」
「それは、ほんとー、申し訳ありません」
伊吹は冷や汗をダラダラと流し、腰を直角に曲げて謝罪をする。
以前、自慰行為はしないと言っていた。そんな彼をここまでにしてしまったのは伊吹の責任だ。
「謝罪は要求していません。篠さんのペニスを求める内容の言葉を口にしながら尻にこれらの道具を入れないと、眠れないんです」
「それは病院に行ったらどうですか? 俺は不眠の専門じゃないですよ」
「自慰行為をしなくても眠れます。でもその時は起きてから自慰行為をしないと会社に出勤出来ないんですよ。不眠で悩んでません」
「それは俺にも分かりませんよ。多分、いきなり強い快楽を受けたから、身体が求めてしまうんでしょうね。
慣れるしかないと思います」
オナニーを覚えたての中学生かな、と伊吹は考えた。今まで生理的欲求を押さえ付けていた反動でもきたのだろう。
自慰に慣れれば、それは刺激ではなくなる。いずれは常識の範囲内での処理で普通に生活出来るだろう。
「慣れ……」
「尻に入れずにオナニー出来ないですか?」
「はい。尻に物を入れないとイけないんです。でも勃起も治まらなくて、非常に困ってます」
柊は第一ボタンまでしっかりと留めたボタンを全て外し、服を脱ぎ始める。
「ちょ、ちょっと!? 柊さん!?」
止める間もなくズボンも脱ぐと下着姿になる。
前の股間だけを隠し、後ろは紐だけで尻が丸見えの下着だ。
「……柊さん」
「篠さん。いや、伊吹さん。ずっとあなたを待ってました。
伊吹さんの……おちんちん、ください」
伊吹はキュンと何かに胸を締め付けられた。翠より背は低いが伊吹よりも高く、可愛げのない顔をした年上でも、少し心が揺らぐ。
そんな台詞を言われたら男としての本能が目覚めそうだ。
だが、今はまだ理性が勝っている。
「でも婚約者がいるんですよね? 数ヶ月で結婚とか言ってたような?」
「破談する運びとなりました。実は相手には懇意にしている人がいたようで。正直、相手の方はかなり苦手だったので願ったり叶ったりです」
「でもご両親や相手のご家族は納得しないでしょう?」
「破談の旨は相手からですし。私ももうこの家とは縁を切るので関係ありません」
「本気なんですね?」
「はい。あれからずっと伊吹さんの事を考えているんです。責任……取ってくれますか?」
重い責任だ。とりあえず逃げようと思い「後日連絡します」と答えようとしたその時。
ピンポーンとチャイムが鳴った。また来客だろうか、下ではバタバタと動く音が聞こえた。
少し考える時間が出来てしまったからだろうか。
翠に「自分の発言に責任持つべきじゃないんですか?」と言われた事を思い出した。
思い出してしまった、というべきか。
一度呼吸を落ち着けてから、柊に向き直った。
「確かにそれは俺の責任です。良い風俗を紹介しますよ。女性相手でも男性相手でも。
俺は翠の恋人ですから、さすがにお兄様に手は出せません」
「嘘ですよね? 伊吹さんはそういう倫理観ないって報告受けてます」
「俺をなんだと……。さすがに躊躇しますって。恋人の兄と浮気なんて出来ません!」
「でも、伊吹さんは翠と付き合いながら、さっきの佐々木さんとも付き合ってるんですよね?
三人目が増えても良いんじゃないですか?」
何故それを知っているのか、と問いたいが、特に隠していたわけでもないので、調べようと思えば分かる事だ。
「それは! 翠が良いって言ってくれたから、それに甘えさせてもらってるだけですよ。
瑞希と付き合うにあたって、一度翠には別れを促してるんです」
「つまりウチの弟より、佐々木さんの方が良いと?」
「違いますっ! 論点ズレてますよっ! どっちがいいとか無いんです。ただ、俺は瑞希にだけは絶対逆らえないのもありますし……」
「それなら……佐々木さんに頼んだ方が良かったかもしれませんね。伊吹さんに、俺と性行為をするよう佐々木さんに言ってもらいます」
「やめてください。確かに俺は常識的な倫理観は持ち合わせちゃいません。けど、浮気はしないです! 勿論、彼氏の近親者とセフレにもなりません」
「じゃあ、せめて気持ちだけでも聞いてもらえますか?」
「気持ち?」
「俺、あなたの事が気になってしまいました。恋……なのかもしれません」
「この前のSMショー見たなら分かるでしょ? 俺はドMなんですよ。相性が合わないですよ」
「でも……」
その時だ。コンコンと、ドアのノック音がした。ドッキーン! と、心臓が飛び跳ねる。
(やっべー! ご両親にこれ見られたら……)
伊吹は焦って柊に服を持たせてクローゼットに隠そうとした。
「柊さん、伊吹。僕、瑞希だけど入っていいかな?」
瑞希の声にホッとした。先程のチャイムも瑞希だったのだ。
柊からの誘いから逃げられると期待する。
「瑞希! 親御さん一緒にいたりするか?」
「ううん。僕案内したら下に戻ったよ」
伊吹は安心して瑞希を中に促す。
「入ってきていい。なるべくドア大きく開かないように」
「ん? うん?」
瑞希は部屋に入って扉を閉めると、開口一番。
「やっぱり僕が言った通りになったじゃん」
ニマニマと楽しそうに笑った。
「瑞希ぃぃっ!」
伊吹は瑞希に抱きついた。きっと今までで一番瑞希を欲している。
それほど柊に困惑していた。
「伊吹が可愛くなってる。どうしたの?」
「柊さんが……柊さんが……」
瑞希が抱きついたままの伊吹を宥めながら、柊に視線を向けた。伊吹には分かる、今瑞希は最高に嬉しそうな笑顔を浮かべていると。
「面白い事になってたらいいなって期待して来てみたら……期待通りで嬉しいです」
「伊吹さんは佐々木さんに言われたら断れないと聞きました。俺の尻にペニスを入れるよう頼んではくれませんか?」
柊は至って真面目だ。顔を真っ赤にしながら真剣に頼んできている。
「いいですねぇ。柊さん、良いキャラしてますよ。
ここだとゆっくり出来ませんし。荷物持って移動しません? ゲイ専用ホテルもある事ですし」
「瑞希、助けてくれないのかよ」
「なんで拒否してんの? 伊吹らしくない」
「だって翠の兄貴だぞ?」
「誰と血が繋がっていようが、人間である事には変わりないよね。今まで伊吹が翠君や僕と付き合いながらも、色んな人とエッチしてたのとどこか違いでもある?」
そう言われると反論が出来ない。相手が翠の兄。拒否反応を起こしている点はそこだけである。
「柊君、伊吹のおチンポじゃなきゃ駄目なんですか?」
「はい、出来れば……伊吹さんがいいです」
「伊吹モッテモテだね!」
「嬉しくねぇよ」
「ですが……伊吹さんがそこまで嫌がるなら、無理強いはしませんよ」
「そこも含めて、どうするか考えましょう? とりあえず服着て。一緒に行きましょう」
瑞希が手を差し伸べると、柊はその手を取った。瑞希が急いで柊の服を着せて、元のピッチリとした真面目な青年姿に戻す。
柊が鞄を持ち、瑞希は玩具が入ったダンボール箱を持って、両親に挨拶してから三人で家を出たのだった。
「いいよ~。ゆっくりしてきてもいいよ。伊吹とエッチしたいのかもしれないしね」
「あの人はそういうのないと思うよ。なんでもかんでもエロネタに繋げんなって」
「はぁい」
瑞希が手を振って伊吹を見送った。伊吹はまた翠の実家まで戻る。
チャイムを鳴らしてまた入れてもらう。
「柊が自分の部屋で待ってるそうです」
母親がそう言いながら、二階の柊の部屋に案内すると、伊吹を促した。
「ありがとうございます」
部屋の前に立ち、ノックをすると中からドアが開いた。
「篠さん。待ってました」
部屋で二人きりになる。部屋の中はほぼ何も無い。ベッドも布団の類は一切なく、何も物が置かれていない机と、セットの椅子だけだ。部屋の隅に大きなバッグがある。
「部屋の中何もないんですね?」
「今日出て行くんですよ」
「本気だったんですね」
「ええ。この一週間で少しずつ荷物を新居に移動して、あとはこの鞄と、クローゼットの中に入ってるダンボール箱だけです」
「どういう心境の変化ですか」
「俺も翠みたいに家を出て、もう少し視野を広げようと思ったんです。篠さんの味方をする為に今日まで残ってたんですよ」
「それは……ありがとうございます」
「いえ。俺が一人暮らしするの、篠さんはどう思います?」
何故そんな質問をするのか、意図が分かりかねる。伊吹は少し悩んでからありきたりな返事をする。
「良いんじゃないですかね。一度は一人暮らしを経験すると良いと言いますし」
「落ち着いたら篠さんを招いてもいいですか?」
「俺ですか? まぁいいですけど。でも翠の事が聞きたいなら、これからは柊さん自身が会えばいい事で……」
「そうですね」
柊の様子がおかしい。この家に来てからずっと、何かおかしいと思っていた。
だが、味方をしてくれたから何かしらの心境の変化があったのかもしれないと、納得させる事にしたのだが。
「どうしたんです? 俺に恨み言の一つでもあるのかなぁなんて思ってたんですけど」
「恨み言……ないわけではないですが、今非常に困っている事があるんです。翠を傷付けた俺を篠さんが助けてくれるのか、疑問ではありますが。
救ってはもらえないでしょうか? 嫌なら拒否してもいいです」
「どうしたんですか? 翠に何をしたとかは置いておいて、俺は純粋に人が困ってたら嫌いな人でも助けますよ。
あ、柊さんが嫌いってわけじゃないですよ」
「はい。すみません。実は、篠さんに脅しの写真を撮られてから、尻に何かを入れて……その……自慰行為をする事に歯止めが効かなくなってしまって……毎日……」
「毎日アナルオナニーしてるんですか?」
ビクリと柊の身体が揺れる。
「はい……」
柊はクローゼットを開いて、ダンボール箱を開いてみせた。
中には数々のアナル用の大人の玩具が揃っている。
「二週間でここまで買ってしまいました。身体が……身体がおかしいんです。
どうしたら治まってくれるんですか?」
「それは、ほんとー、申し訳ありません」
伊吹は冷や汗をダラダラと流し、腰を直角に曲げて謝罪をする。
以前、自慰行為はしないと言っていた。そんな彼をここまでにしてしまったのは伊吹の責任だ。
「謝罪は要求していません。篠さんのペニスを求める内容の言葉を口にしながら尻にこれらの道具を入れないと、眠れないんです」
「それは病院に行ったらどうですか? 俺は不眠の専門じゃないですよ」
「自慰行為をしなくても眠れます。でもその時は起きてから自慰行為をしないと会社に出勤出来ないんですよ。不眠で悩んでません」
「それは俺にも分かりませんよ。多分、いきなり強い快楽を受けたから、身体が求めてしまうんでしょうね。
慣れるしかないと思います」
オナニーを覚えたての中学生かな、と伊吹は考えた。今まで生理的欲求を押さえ付けていた反動でもきたのだろう。
自慰に慣れれば、それは刺激ではなくなる。いずれは常識の範囲内での処理で普通に生活出来るだろう。
「慣れ……」
「尻に入れずにオナニー出来ないですか?」
「はい。尻に物を入れないとイけないんです。でも勃起も治まらなくて、非常に困ってます」
柊は第一ボタンまでしっかりと留めたボタンを全て外し、服を脱ぎ始める。
「ちょ、ちょっと!? 柊さん!?」
止める間もなくズボンも脱ぐと下着姿になる。
前の股間だけを隠し、後ろは紐だけで尻が丸見えの下着だ。
「……柊さん」
「篠さん。いや、伊吹さん。ずっとあなたを待ってました。
伊吹さんの……おちんちん、ください」
伊吹はキュンと何かに胸を締め付けられた。翠より背は低いが伊吹よりも高く、可愛げのない顔をした年上でも、少し心が揺らぐ。
そんな台詞を言われたら男としての本能が目覚めそうだ。
だが、今はまだ理性が勝っている。
「でも婚約者がいるんですよね? 数ヶ月で結婚とか言ってたような?」
「破談する運びとなりました。実は相手には懇意にしている人がいたようで。正直、相手の方はかなり苦手だったので願ったり叶ったりです」
「でもご両親や相手のご家族は納得しないでしょう?」
「破談の旨は相手からですし。私ももうこの家とは縁を切るので関係ありません」
「本気なんですね?」
「はい。あれからずっと伊吹さんの事を考えているんです。責任……取ってくれますか?」
重い責任だ。とりあえず逃げようと思い「後日連絡します」と答えようとしたその時。
ピンポーンとチャイムが鳴った。また来客だろうか、下ではバタバタと動く音が聞こえた。
少し考える時間が出来てしまったからだろうか。
翠に「自分の発言に責任持つべきじゃないんですか?」と言われた事を思い出した。
思い出してしまった、というべきか。
一度呼吸を落ち着けてから、柊に向き直った。
「確かにそれは俺の責任です。良い風俗を紹介しますよ。女性相手でも男性相手でも。
俺は翠の恋人ですから、さすがにお兄様に手は出せません」
「嘘ですよね? 伊吹さんはそういう倫理観ないって報告受けてます」
「俺をなんだと……。さすがに躊躇しますって。恋人の兄と浮気なんて出来ません!」
「でも、伊吹さんは翠と付き合いながら、さっきの佐々木さんとも付き合ってるんですよね?
三人目が増えても良いんじゃないですか?」
何故それを知っているのか、と問いたいが、特に隠していたわけでもないので、調べようと思えば分かる事だ。
「それは! 翠が良いって言ってくれたから、それに甘えさせてもらってるだけですよ。
瑞希と付き合うにあたって、一度翠には別れを促してるんです」
「つまりウチの弟より、佐々木さんの方が良いと?」
「違いますっ! 論点ズレてますよっ! どっちがいいとか無いんです。ただ、俺は瑞希にだけは絶対逆らえないのもありますし……」
「それなら……佐々木さんに頼んだ方が良かったかもしれませんね。伊吹さんに、俺と性行為をするよう佐々木さんに言ってもらいます」
「やめてください。確かに俺は常識的な倫理観は持ち合わせちゃいません。けど、浮気はしないです! 勿論、彼氏の近親者とセフレにもなりません」
「じゃあ、せめて気持ちだけでも聞いてもらえますか?」
「気持ち?」
「俺、あなたの事が気になってしまいました。恋……なのかもしれません」
「この前のSMショー見たなら分かるでしょ? 俺はドMなんですよ。相性が合わないですよ」
「でも……」
その時だ。コンコンと、ドアのノック音がした。ドッキーン! と、心臓が飛び跳ねる。
(やっべー! ご両親にこれ見られたら……)
伊吹は焦って柊に服を持たせてクローゼットに隠そうとした。
「柊さん、伊吹。僕、瑞希だけど入っていいかな?」
瑞希の声にホッとした。先程のチャイムも瑞希だったのだ。
柊からの誘いから逃げられると期待する。
「瑞希! 親御さん一緒にいたりするか?」
「ううん。僕案内したら下に戻ったよ」
伊吹は安心して瑞希を中に促す。
「入ってきていい。なるべくドア大きく開かないように」
「ん? うん?」
瑞希は部屋に入って扉を閉めると、開口一番。
「やっぱり僕が言った通りになったじゃん」
ニマニマと楽しそうに笑った。
「瑞希ぃぃっ!」
伊吹は瑞希に抱きついた。きっと今までで一番瑞希を欲している。
それほど柊に困惑していた。
「伊吹が可愛くなってる。どうしたの?」
「柊さんが……柊さんが……」
瑞希が抱きついたままの伊吹を宥めながら、柊に視線を向けた。伊吹には分かる、今瑞希は最高に嬉しそうな笑顔を浮かべていると。
「面白い事になってたらいいなって期待して来てみたら……期待通りで嬉しいです」
「伊吹さんは佐々木さんに言われたら断れないと聞きました。俺の尻にペニスを入れるよう頼んではくれませんか?」
柊は至って真面目だ。顔を真っ赤にしながら真剣に頼んできている。
「いいですねぇ。柊さん、良いキャラしてますよ。
ここだとゆっくり出来ませんし。荷物持って移動しません? ゲイ専用ホテルもある事ですし」
「瑞希、助けてくれないのかよ」
「なんで拒否してんの? 伊吹らしくない」
「だって翠の兄貴だぞ?」
「誰と血が繋がっていようが、人間である事には変わりないよね。今まで伊吹が翠君や僕と付き合いながらも、色んな人とエッチしてたのとどこか違いでもある?」
そう言われると反論が出来ない。相手が翠の兄。拒否反応を起こしている点はそこだけである。
「柊君、伊吹のおチンポじゃなきゃ駄目なんですか?」
「はい、出来れば……伊吹さんがいいです」
「伊吹モッテモテだね!」
「嬉しくねぇよ」
「ですが……伊吹さんがそこまで嫌がるなら、無理強いはしませんよ」
「そこも含めて、どうするか考えましょう? とりあえず服着て。一緒に行きましょう」
瑞希が手を差し伸べると、柊はその手を取った。瑞希が急いで柊の服を着せて、元のピッチリとした真面目な青年姿に戻す。
柊が鞄を持ち、瑞希は玩具が入ったダンボール箱を持って、両親に挨拶してから三人で家を出たのだった。
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