114 / 139
四章
三話 虐待の後遺症
しおりを挟む
伊吹は責めるような目を瑞希に向けた。
瑞希は判も押されたから安心したのだろう。安心した瑞希が次にやる事は、人を小馬鹿にするようなおふざけだ。昔からそうだった。
分かっていたのに忘れていた。
「瑞希、それは言わなくていい」
「でも。伊吹は肝心な事言ってないよね。
ご両親方は、翠君が今何してるか分かって伊吹に託そうとしてるんですか?
知らないかもしれないですが、翠君は僕達と、三人でSMショーをやってるんですよ。
縛られて、鞭打たれて、蝋燭垂らされて。客からは劣情を向けられてるんです。
今後、翠君Sをやるんですけどね。今、人縛る練習してますよ。
あ、もう判押しちゃったからどうにも出来ませんね? あはは」
「知ってますよ」
見下すように笑う瑞希を相手に、真面目な顔で答えたのは柊だ。
「実は……先週の日曜の、翠が最後にMをやるというSMショーに、変装して行き、観客席で見せてもらった」
伊吹も瑞希も目を丸くした。舞台から観客席を見たが、その中に柊がいたとは気付いていなかった。
「あんなの、下品なんてものじゃなかった。あんな最低な見世物は初めてだ。
頭がおかしいとしか言いようがない」
柊の顔はどんどん赤くなっていく。それ以上は口にするのも憚られるようだ。
その後を父が繋げた。
「調査員からの報告で大体の事は知っている。その上で篠さんに任せると言っているのだ。
佐々木さんと言ったね、君は、翠とはどういう関係ですか?」
「僕は講師として翠君に緊縛を教えています。緊縛とは何かというと、歴史は古いのですが……」
「瑞希! 緊縛の話はストップ!」
瑞希はSMの中でも緊縛に関しては、話し出すと長くなる。伊吹は無理矢理にでも止めた自分を内心褒めた。
「ゴホン。知ってるとは思いますが、僕はプロのサディストとして、普段から風俗で働いてます。
この伊吹が超が付く程のドMで、そんな伊吹にベタ惚れの翠君が、伊吹を喜ばせたい一心で、僕にSMの責め方を教えて欲しいと言ってきまして。
僕は少ない頻度でSMの講師もしていまして、初心者のSを相手に教室を開いてるんです。翠君はかなりの格安で、マンツーマンで教えてます。
そんな関係です」
「翠がお世話になってます」
「いいえ~こちらこそ。翠君は素直で可愛いですよね。昨日も一生懸命、僕の身体で色んな縛り方を試してて~」
「瑞希、余計な事言うなよ」
「えぇ? だって、親御さんなら子供の成長は知りたいでしょ?」
「緊縛の成長は知りたくないだろ」
父親は無表情だが、母親の方は複雑な顔をしている。そんな二人に、瑞希は真面目に話を続けた。
「翠君は好きな人の為ならなんでもしようとしてしまうところがありますよね。
それはご両親も身をもって知っているのでは?
僕はあまり翠君に好かれていませんが、僕も翠君の味方をしたいと思っています」
「あ……あなたも翠が好きなの?」
困り果てた母親が問う。すると、瑞希はあっけらかんと答えた。
「正直、嫌いですね」
伊吹は聞き違いかと、何度も瞬きをして瑞希を見る。
だが、表情はいつもと同じで変わらない。
「翠君の事可愛いとは思いますよ。
弟とはまた違った可愛さ、と言いますか。翠君を自分の思い通りにしたいご両親の気持ちって、多少分かるんですよねぇ。
でも、翠君は僕の大事なものを奪っていくので嫌いです」
「おい、瑞希」
「そうか……。それなのに味方をすると?」
もう父親は瑞希を睨んでいた。友好的になりかけていたのだが、瑞希が壊した。
「はい。僕は自分がやりたいようにしたいだけですから。嫌いな人の為に尽くすのも一興でしょう?
多分ね、翠君も僕の事嫌いですよ。どんなに取り繕っても、態度や言動でよく分かります」
「瑞希、そんな風に思ってたのか。多分どこかでお互い何か勘違いとか、行き違いをしてるんだ。
今度二人でよく話し合ってみろよ」
「うん。そうしてみるね? まぁお互い本音は語らないと思うけど。僕と翠君は似た者同士だからさ。
あは、水差しちゃってごめんなさい。僕は先に退出します」
瑞希が立ち上がろうとした時、父親が優しい目を瑞希に向けていた。
伊吹は、友好関係は破綻しただろうと危惧していたが、相手は自分が思う以上に大人だった。
「普通嫌いな人の面倒は見れないものだ。佐々木さんは、翠を本当に心から嫌いなわけではないんだろう?」
「さぁ、どうでしょうかね」
「SMをしようと考えたのも、きっと翠の望んだ道です。佐々木さん。どうか、宜しくお願い致します」
父親は頭を下げた。それは息子を大事にしている父親の姿だった。
瑞希も納得すると思ったが、まだ軽蔑の眼差しを両親に向けた。
「あぁ、あと最後に。この伊吹も、子供を支配するような、虐待をする父親に小学生の時まで育てられていました。
酷い虐待をされたのは三日程度でしたけど、それでもすぐに救わないと伊吹が壊れると、僕は思いました。
伊吹の父親、自分の子供に何したと思います?」
「ちょっと、それ言うなよ」
「……暴力とか……?」
「伊吹を性奴隷にしたんですよ。家事を全部やらせて、性行為を強要したんです。抵抗すれば殴られます。
たった三日でも、伊吹にとっては苦痛な事で、今でも思い出してしまうくらいトラウマになってます」
「そこまでじゃねぇって」
「黙って! 伊吹は自分の痛みに鈍感過ぎるよ。本当は翠君から実家の話聞いた時、自分と重ねたんでしょ?
だから身体の痛みを欲したんじゃないの? 本当は感じたくない胸の一番苦しい痛みを誤魔化す為に、翠君に刺傷の跡を責めさせたんじゃないの?
それで病院送りになったんでしょ!?」
翠が、柊に家に帰るよう脅迫された時の事だ。初デートの日に、翠が夏鈴に喧嘩を売るような行為をした後でもある。
あの時は、急に豹変した翠に腹の刺傷を握るように痛めつけられ、それで感じてしまったところから始まった。
瑞希は勘違いをしているのだろう。だがそのまま話を続けた。
「親からの虐待って、本当に大人になっても苦しめるんですよ。翠君だって絶対辛さを今も抱えてる筈です。
その痛みが取り除けるまで、どれだけかかるかは人それぞれですからね。少し間が開けば帰ってくるだろうなんて期待しないで待ってくださいね。
伊吹は十年経った今も苦しんでるんですから。人生の大半を虐待されてた翠君はどうでしょうね?
じゃあ僕は本当に失礼します!」
瑞希は深々と頭を下げて客間から出ていった。伊吹はそれを追いかけるように頭を下げて出ていこうとする。
「俺も、失礼します」
だが、柊が伊吹を引き止めた。焦った様子だ。
「篠さん! 待ってください」
「はい?」
「ちょっと、二人きりで話があります。また戻ってきてもらえますか?」
「あっ、はい。瑞希と話したら戻ります」
「待ってます」
柊が頷くと、伊吹はすぐに走り出して瑞希を追いかけた。柳川の家を出て、コインパーキングに停めた車へと歩いている。
腕を掴んで瑞希を止めた。
「瑞希! さっきの……瑞希の勘違いだよ。あの時、俺、別に親父の事思い出して、翠に痛めつけるよう頼んだとかじゃないんだ」
「じゃあ翠君からしたの?」
「そうだよ。多分、俺が痛いの好きだと思って、それで気持ち良くしてくれようとしたんだ」
瑞希は納得したらしく頷いたが、反論もした。
「その時の事だけを言ってるんじゃないよ。伊吹はお母さんが出ていったのを自分のせいだって思ってるでしょ?
伊吹がお父さんから受ける筈の痛みをお母さんが全部肩代わりしてたから、これからは自分がお母さんの痛みを代わるんだって言ってたよね。
痛みを感じるとお母さんを守ってる気がするとかなんとか。
痛みが精神安定剤になってるの、絶対お父さんのせいだもん。僕、間違った事言ってないよ。
翠君の両親にも知ってもらいたかったの。実際に虐待されて、長年後遺症に苦しんでる人は多いよ。人の一生を狂わせる事をしたんだって自覚して欲しかったの」
「ごめんな」
小さい瑞希の身体を抱き締める。瑞希は優し過ぎる程に優しい。
人を容赦なく傷付けられる側面もあるが、本当のところは、誰かに傷付けられて苦しんでいる人がいたら、自分の事のように思い悩むような性格だ。
だから他人を傷付ける人には、サディストとしてではなく、佐々木瑞希として特に容赦ない痛みを与える。どうしても許せないのだ。人を傷付ける人が。
伊吹はそれを知っているからこそ謝る。
「どうして伊吹が謝るの?」
「俺のせいで、苦しめてごめん。これは俺の問題だ。瑞希は関係ない」
「関係大アリだよ! 僕の大事な人を傷付けた人なんて許せない。絶対許せないの!
伊吹を置いて出てったお母さんも、伊吹をお母さん代わりにしようとしたお父さんも」
「うん……」
「僕、多分、翠君の両親も許せないんだと思う」
「瑞希にとって翠は大事な人?」
「うん。正直、嫌いだけど、大事な人だよ」
「はは。なにその矛盾。でも瑞希らしいや」
気が済むまで瑞希を抱き締めた。今までお互いたくさん傷付けて、傷付けられた。それでも、一番の支えになっていた事には変わりない。
この人がいたからこそ今の自分があるのだと、手元から離れないように強く。
───────────────────
※瑞希が途中で言っていた、翠から実家の話聞いた時のくだりですが、
二章十三話「アテが外れて」の内容です。
そこから繋がっているのですが、投稿したのが去年の8月。
絶対覚えちゃいないですよね。
瑞希は判も押されたから安心したのだろう。安心した瑞希が次にやる事は、人を小馬鹿にするようなおふざけだ。昔からそうだった。
分かっていたのに忘れていた。
「瑞希、それは言わなくていい」
「でも。伊吹は肝心な事言ってないよね。
ご両親方は、翠君が今何してるか分かって伊吹に託そうとしてるんですか?
知らないかもしれないですが、翠君は僕達と、三人でSMショーをやってるんですよ。
縛られて、鞭打たれて、蝋燭垂らされて。客からは劣情を向けられてるんです。
今後、翠君Sをやるんですけどね。今、人縛る練習してますよ。
あ、もう判押しちゃったからどうにも出来ませんね? あはは」
「知ってますよ」
見下すように笑う瑞希を相手に、真面目な顔で答えたのは柊だ。
「実は……先週の日曜の、翠が最後にMをやるというSMショーに、変装して行き、観客席で見せてもらった」
伊吹も瑞希も目を丸くした。舞台から観客席を見たが、その中に柊がいたとは気付いていなかった。
「あんなの、下品なんてものじゃなかった。あんな最低な見世物は初めてだ。
頭がおかしいとしか言いようがない」
柊の顔はどんどん赤くなっていく。それ以上は口にするのも憚られるようだ。
その後を父が繋げた。
「調査員からの報告で大体の事は知っている。その上で篠さんに任せると言っているのだ。
佐々木さんと言ったね、君は、翠とはどういう関係ですか?」
「僕は講師として翠君に緊縛を教えています。緊縛とは何かというと、歴史は古いのですが……」
「瑞希! 緊縛の話はストップ!」
瑞希はSMの中でも緊縛に関しては、話し出すと長くなる。伊吹は無理矢理にでも止めた自分を内心褒めた。
「ゴホン。知ってるとは思いますが、僕はプロのサディストとして、普段から風俗で働いてます。
この伊吹が超が付く程のドMで、そんな伊吹にベタ惚れの翠君が、伊吹を喜ばせたい一心で、僕にSMの責め方を教えて欲しいと言ってきまして。
僕は少ない頻度でSMの講師もしていまして、初心者のSを相手に教室を開いてるんです。翠君はかなりの格安で、マンツーマンで教えてます。
そんな関係です」
「翠がお世話になってます」
「いいえ~こちらこそ。翠君は素直で可愛いですよね。昨日も一生懸命、僕の身体で色んな縛り方を試してて~」
「瑞希、余計な事言うなよ」
「えぇ? だって、親御さんなら子供の成長は知りたいでしょ?」
「緊縛の成長は知りたくないだろ」
父親は無表情だが、母親の方は複雑な顔をしている。そんな二人に、瑞希は真面目に話を続けた。
「翠君は好きな人の為ならなんでもしようとしてしまうところがありますよね。
それはご両親も身をもって知っているのでは?
僕はあまり翠君に好かれていませんが、僕も翠君の味方をしたいと思っています」
「あ……あなたも翠が好きなの?」
困り果てた母親が問う。すると、瑞希はあっけらかんと答えた。
「正直、嫌いですね」
伊吹は聞き違いかと、何度も瞬きをして瑞希を見る。
だが、表情はいつもと同じで変わらない。
「翠君の事可愛いとは思いますよ。
弟とはまた違った可愛さ、と言いますか。翠君を自分の思い通りにしたいご両親の気持ちって、多少分かるんですよねぇ。
でも、翠君は僕の大事なものを奪っていくので嫌いです」
「おい、瑞希」
「そうか……。それなのに味方をすると?」
もう父親は瑞希を睨んでいた。友好的になりかけていたのだが、瑞希が壊した。
「はい。僕は自分がやりたいようにしたいだけですから。嫌いな人の為に尽くすのも一興でしょう?
多分ね、翠君も僕の事嫌いですよ。どんなに取り繕っても、態度や言動でよく分かります」
「瑞希、そんな風に思ってたのか。多分どこかでお互い何か勘違いとか、行き違いをしてるんだ。
今度二人でよく話し合ってみろよ」
「うん。そうしてみるね? まぁお互い本音は語らないと思うけど。僕と翠君は似た者同士だからさ。
あは、水差しちゃってごめんなさい。僕は先に退出します」
瑞希が立ち上がろうとした時、父親が優しい目を瑞希に向けていた。
伊吹は、友好関係は破綻しただろうと危惧していたが、相手は自分が思う以上に大人だった。
「普通嫌いな人の面倒は見れないものだ。佐々木さんは、翠を本当に心から嫌いなわけではないんだろう?」
「さぁ、どうでしょうかね」
「SMをしようと考えたのも、きっと翠の望んだ道です。佐々木さん。どうか、宜しくお願い致します」
父親は頭を下げた。それは息子を大事にしている父親の姿だった。
瑞希も納得すると思ったが、まだ軽蔑の眼差しを両親に向けた。
「あぁ、あと最後に。この伊吹も、子供を支配するような、虐待をする父親に小学生の時まで育てられていました。
酷い虐待をされたのは三日程度でしたけど、それでもすぐに救わないと伊吹が壊れると、僕は思いました。
伊吹の父親、自分の子供に何したと思います?」
「ちょっと、それ言うなよ」
「……暴力とか……?」
「伊吹を性奴隷にしたんですよ。家事を全部やらせて、性行為を強要したんです。抵抗すれば殴られます。
たった三日でも、伊吹にとっては苦痛な事で、今でも思い出してしまうくらいトラウマになってます」
「そこまでじゃねぇって」
「黙って! 伊吹は自分の痛みに鈍感過ぎるよ。本当は翠君から実家の話聞いた時、自分と重ねたんでしょ?
だから身体の痛みを欲したんじゃないの? 本当は感じたくない胸の一番苦しい痛みを誤魔化す為に、翠君に刺傷の跡を責めさせたんじゃないの?
それで病院送りになったんでしょ!?」
翠が、柊に家に帰るよう脅迫された時の事だ。初デートの日に、翠が夏鈴に喧嘩を売るような行為をした後でもある。
あの時は、急に豹変した翠に腹の刺傷を握るように痛めつけられ、それで感じてしまったところから始まった。
瑞希は勘違いをしているのだろう。だがそのまま話を続けた。
「親からの虐待って、本当に大人になっても苦しめるんですよ。翠君だって絶対辛さを今も抱えてる筈です。
その痛みが取り除けるまで、どれだけかかるかは人それぞれですからね。少し間が開けば帰ってくるだろうなんて期待しないで待ってくださいね。
伊吹は十年経った今も苦しんでるんですから。人生の大半を虐待されてた翠君はどうでしょうね?
じゃあ僕は本当に失礼します!」
瑞希は深々と頭を下げて客間から出ていった。伊吹はそれを追いかけるように頭を下げて出ていこうとする。
「俺も、失礼します」
だが、柊が伊吹を引き止めた。焦った様子だ。
「篠さん! 待ってください」
「はい?」
「ちょっと、二人きりで話があります。また戻ってきてもらえますか?」
「あっ、はい。瑞希と話したら戻ります」
「待ってます」
柊が頷くと、伊吹はすぐに走り出して瑞希を追いかけた。柳川の家を出て、コインパーキングに停めた車へと歩いている。
腕を掴んで瑞希を止めた。
「瑞希! さっきの……瑞希の勘違いだよ。あの時、俺、別に親父の事思い出して、翠に痛めつけるよう頼んだとかじゃないんだ」
「じゃあ翠君からしたの?」
「そうだよ。多分、俺が痛いの好きだと思って、それで気持ち良くしてくれようとしたんだ」
瑞希は納得したらしく頷いたが、反論もした。
「その時の事だけを言ってるんじゃないよ。伊吹はお母さんが出ていったのを自分のせいだって思ってるでしょ?
伊吹がお父さんから受ける筈の痛みをお母さんが全部肩代わりしてたから、これからは自分がお母さんの痛みを代わるんだって言ってたよね。
痛みを感じるとお母さんを守ってる気がするとかなんとか。
痛みが精神安定剤になってるの、絶対お父さんのせいだもん。僕、間違った事言ってないよ。
翠君の両親にも知ってもらいたかったの。実際に虐待されて、長年後遺症に苦しんでる人は多いよ。人の一生を狂わせる事をしたんだって自覚して欲しかったの」
「ごめんな」
小さい瑞希の身体を抱き締める。瑞希は優し過ぎる程に優しい。
人を容赦なく傷付けられる側面もあるが、本当のところは、誰かに傷付けられて苦しんでいる人がいたら、自分の事のように思い悩むような性格だ。
だから他人を傷付ける人には、サディストとしてではなく、佐々木瑞希として特に容赦ない痛みを与える。どうしても許せないのだ。人を傷付ける人が。
伊吹はそれを知っているからこそ謝る。
「どうして伊吹が謝るの?」
「俺のせいで、苦しめてごめん。これは俺の問題だ。瑞希は関係ない」
「関係大アリだよ! 僕の大事な人を傷付けた人なんて許せない。絶対許せないの!
伊吹を置いて出てったお母さんも、伊吹をお母さん代わりにしようとしたお父さんも」
「うん……」
「僕、多分、翠君の両親も許せないんだと思う」
「瑞希にとって翠は大事な人?」
「うん。正直、嫌いだけど、大事な人だよ」
「はは。なにその矛盾。でも瑞希らしいや」
気が済むまで瑞希を抱き締めた。今までお互いたくさん傷付けて、傷付けられた。それでも、一番の支えになっていた事には変わりない。
この人がいたからこそ今の自分があるのだと、手元から離れないように強く。
───────────────────
※瑞希が途中で言っていた、翠から実家の話聞いた時のくだりですが、
二章十三話「アテが外れて」の内容です。
そこから繋がっているのですが、投稿したのが去年の8月。
絶対覚えちゃいないですよね。
0
お気に入りに追加
309
あなたにおすすめの小説



体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる