乱交パーティー出禁の男

眠りん

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三章

十四話 特別扱い

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 土曜日の乱交パーティー開催日。全裸の上にバスローブを身に付けた男達八人を前に、伊吹は隣に瑞希を伴い、向かい合った。

「お久しぶりです。私事で前回不在となりまして、皆様にはご迷惑おかけしました。
 今日から通常通りに戻ります。ですが、まだ刺された傷が治っていないので、俺は不参加で皆様の監視だけさせていただきます」

 参加者は瑞希の方を見ながらも、伊吹の言葉にうんうんと頷きながら聞いている。
 伊吹の不参加に文句を言う人は誰一人いない。ここでは伊吹がルールで、そのルールに反する者は参加資格を失うだけだ。

「プレイを開始する前に、皆様にお許し頂きたい事があります。──俺、篠伊吹は皆様ご存知、この瑞希と付き合う事になりました。
 俺がいつも口酸っぱく言っているルール四の、プライベートの俺に話し掛けたら出禁のルールを、瑞希だけ除外させていただけないでしょうか?」

 本来であれば、瑞希は既にルール違反をしている為、制裁の公開制裁としてのSMショーを開催する必要があった。
 だが、瑞希はもう伊吹の恋人だ。恋人がプライベートで一緒にいるのは当然の事なので、制裁など加えられる筈がない。
 伊吹は続けた。

「お許しいただけなければ、瑞希は今後一切、乱交パーティーには参加させません」

「あっははは」

 一人の男性が急に笑い始めた。伊吹は身構える。怒りを通り越して笑うしかなくなっている状態なのかと──。
 だが、予想は良い意味で裏切られた。

「そもそも、伊吹さんと瑞希さんは幼馴染みなんでしょ? 寧ろ、友達同士なのにここでしか会えない事が不思議でしたよ」

「ですね! 我々はともかく、瑞希君は特別扱いしたところで誰も怒りませんって」

 と、二十代前半の若者も同調し、他の面々も頷いた。

「それに、こんな事で瑞希君を出禁にしたら、伊吹君を許せなくなりますよ。私は瑞希君目当てですから!」

「この乱パって、大体の参加者は瑞希君の紹介でしょ? 出禁になったら皆来なくなると思うよ」

「確か、瑞希君がやりたいから伊吹君が開催してるんだよね? なら、瑞希君も主催側って事でいいんじゃない?」

 と、参加者がそれぞれ瑞希を擁護する。

「……って事は、僕タダで参加してもいいってこと?」

 参加者の言葉を自分の都合のいいように解釈した瑞希は、キラキラとした期待の眼差しで伊吹を見つめた。

「瑞希。それ言ったら主催者側としてこの乱パの準備と、参加者の管理、メルマガや重要内容の通知、売上管理、この乱パが外に知れない為の隠蔽工作とか色々、雑事を手伝わせるぞ?」

「えー。それはヤダな。僕、参加者のままがいい~」

 瑞希が走り出して、参加者の中でも特に仲良くしている常連の男、佐竹の後ろに逃げ込んだ。
 佐竹は四十代で落ち着いた物腰の男だ。普段は大学教授をしており、企業の研究にも携わっている……と伊吹は認識している。

「だと思った。それに、SMショーに一回参加毎に乱パの参加料一回無料にしてるだろ。それで我慢してくれ。
 では、時間も押してますのでいつものルール説明は省きます。パーティー開始しましょう」

 伊吹の言葉で参加者がそれぞれベッドへと向かった。だが佐竹は動かない。瑞希も一緒に立ったままでいる。
 瑞希は佐竹のバスローブの袖をグイグイと軽く引っ張った。

「佐竹さん? 行かないの?」

「ふふ、瑞希君は可愛いですね」

「えー? そんなおだてられたら、僕勢い余って浮気しちゃうかも~」

 瑞希がチラリと伊吹に視線を向けた。

「……だそうだよ? 伊吹君。あんまり厳しくしたら付き合ったばかりで浮気されてしまうよ?」

 それの何が悪いのだろうか、と伊吹は首を傾げた。瑞希は乱交パーティーに参加し、これから恋人が見ている目の前で何人もに犯されるのだ。今更浮気くらい騒ぐ程の事ではない。

「浮気くらい好きにしたらいいんじゃないか? 瑞希の楽しみを奪おうなんて思わねぇよ。
 俺一人だけでお前の相手が務まるとは思ってないしな」

「翠君と浮気するなって言ってくるのに!?」

「翠は別。アイツは俺しか知らないからな。他の男の味を覚えさせるのが勿体ないだけだ」

「はぁー、へー、ふーん? じゃあ僕が逆レイプしちゃおうかなぁ?
 さすがに伊吹も無視できないでしょ?」

「普通にレイプはダメだろうが」

 二人で言い合いをしていると、佐竹が少し焦った様子を見せた。

「ちょっと待って、伊吹君。翠君と別れたんじゃないの!?」

 その言葉に、プレイを開始しようとしていた面々が全員伊吹と瑞希に視線を向けた。

「えっと、別れるつもりだったんですけど、翠が……翠と付き合ったまま瑞希と付き合ってもいいって。自分にそうねだれって言ってきて、言葉に甘えさせてもらってる感じです」

「別れたから次の日曜のSMショーがなくなったのかと思ったんだ。にしても、君、二人と付き合うなんて羨ましい限りだ」

「再来週には三人でSMショーやるよ。今、翠君を仕込み中なの。楽しみに待っててね!」

 返事に窮していると、瑞希が明るい声で全員に聞こえるように宣伝をした。見に来れる者は嬉しそうにしていたが、来れない者は「見たかったなぁ」と残念がっている。

「ってわけで、伊吹は僕と翠君と付き合ってるけど、僕と翠君は付き合ってないし、お互い恋愛関係は一切ないんだ。
 皆羨ましいかもしれないけど、伊吹を嫌わないであげてね。じゃ、プレイ再開しよ~」

「ちょっ、瑞希!」

 瑞希の言葉で締め括りとなり、参加者達はプレイを再開した。瑞希と佐竹もその輪に入っていった。
 始まってしまうと、意図的に止めるのは参加者達の不満に繋がる。それ以上の話し合いを諦めた伊吹は、近くのソファーに座ってスマホをいじり始めた。
 見るとラインの通知が来ていた。送信者の名前は加藤と表示されている。
 伊吹のアドレスに登録されている加藤は二人いる。苗字だけなのでどちらがどちらか分からなくなってしまった。
 元同級生か、匂いフェチの変態のオッサンか──。

(……加藤……そういや、俺が退院した時に瑞希が加藤のうちに泊まったとか言ってたな。
 やっぱりこっちの加藤か?)

 あまり好きな相手ではない。それは加藤も同じだ。伊吹を、瑞希と一緒にいる金魚のフンとでも思っていたに違いない。それだけ、お互い会話もろくにした事がなかった。
 渋々メッセージ画面を開いた。

『加藤だ。久しぶり。元気にしているか?
 昨日瑞希がうちにきて少し話したんだが。
 少し元気ない様子だった。少しは気にかけてやれよ。彼氏なんだろ』

  やはり元同級生の方だったと、眉間の皺が深まる。
 出会って三年程度の加藤が分かる事くらい──。

「俺が気付かないわけないだろ」

 ボソリと呟く。視線の先の瑞希は、仰向けになって気持ち良さそうにフェラをしながら、尻穴でも男性器を受け入れている。
 瑞希は仕事では相手に合わせるプレイをするが、プライベートでは騎乗位で自分のペースに周りを合わせさせるプレイが好みだ。

 主導権を握られるのが嫌いだからである。
 どんなに複数人で輪姦されようとも、主導権を握るのは自分でなければ気が済まないのが瑞希だ。
 だから、そんな瑞希を(プレイとして)レイプをして、その仕返しにSMプレイでお仕置きを受けるのが通例なのだが。

 その反面、気分が落ち込んでいる時は正常位で、受け身になっている。
 あんなやる気なく回されているのは、悩み事があって集中出来ていないからだと、見ればすぐに分かる。

『余計なお世話だ』

 と、伊吹は返信をした。するとすぐに加藤から電話がかかってきた。
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