乱交パーティー出禁の男

眠りん

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三章

八話 フェラ

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 その頃、講座受講の同意書にサインをし、受講料の一万円を瑞希に支払った翠は瑞希に男性の性器の形をしたディルドを見せられていた。

「新品だから心配しないで、これでフェラの練習してみて」

「びっくりしました。てっきり瑞希さんのフェラしろって言ってくるかと」

「そんな事言わないよ。伊吹以外のペニス嫌でしょ?」

「そうですね」

 瑞希はニコニコと楽しそうに笑いながらディルドの先端を翠の口元にズイッと差し向けた。

「ほらほら、お口おっきく開いて」

 翠は言われた通りに口を開くと、中にディルドを入れられた。ゴム製の為、少しの弾力があり、ゴム特有の臭いが鼻についた。

「口窄めて、吸い込むみたいにね」

 口に力を入れて窄めると、瑞希がディルドを前後にゆっくり動かした。唾液に塗れた肉棒が口から出たり入ったりする様子が見える。
 何度か繰り返すと、ディルドが口の中から出された。

「どう?」

「なんか、意外と難しくなさそうですね」

「でしょ。フェラも色々テクニックを磨けばバキュームも、ローリングも、ディープスロートも出来るようになるから」

「え?」

「はい、次は裏筋舐めね。このペニスを伊吹のだと思って裏筋ぺろぺろしてごらん。
 子供がキャンディぺろぺろするみたいにさ」

 翠は眉間に皺を寄せ、恐る恐るディルドの裏筋に舌を這わせた。

「そうそう、そんな感じ。このまま十分間裏筋舐めと、顔面スロートークしてね」

「顔面スロー……え?」

「顔面スロートーク。さっきは僕が動かしたけど、次は翠君が自分で頭を前後させてフェラしてみて。はい、始め」

 瑞希からディルドを手渡され、教わったやり方でフェラをする。口に含み、窄めながら前後をさせたり、裏筋を舐めたりする。

「裏筋以外を舐めてもいいし。尿道口を集中させて舐める鈴口集中ってやり方もあるよ。
 特に伊吹はソコ感じやすいし、やってあげたら喜ぶんじゃないかな」

「はい」

 翠は舐めながら答え、言われたやり方を全て試した。

「十分経ったよ」

 口を離すと、顎が痛くなっていた。頬の筋肉も突っ張るような感覚があり、口周りに疲労を感じている。

「疲れたでしょ。今日はここまで。そのディルド……本当は伊吹に使う予定だったんだけど、翠君にあげる。練習してみてね。
 次回は縄の縛り方を教えるね」

「フェラは今日で終わりですか?」

「伊吹とやりながら成長していってね。フェラは数こなしてなんぼ。習うより慣れろってね」

「分かりました」

「じゃあ僕はお風呂入ってゆっくりしたら出るよ。先帰っていいよ~」

 瑞希が翠に向かって手を振って洗面所へと向かった。翠は荷物をまとめて部屋を出た。
 ふと、伊吹が気になり地下へと向かってみる。エレベーターを使えばすぐだ。

 地下のイベント会場の出入口には、受付があり、テーブルの前にスタッフが一人座っていた。受付にいたスタッフとは別の、今日のイベントの為にシフトに組まれたバイトだ。

「あれ、翠さん?」

 スタッフは翠の顔を見ると、少し驚いた顔をする。

「緊縛ショーってもう始まってるんですよね?」

「はい。始まって三十分ほど経ってますよ。見て行かれます? 途中からでも五千円いただきますが……翠さんなら五百円値引きしますよ。
 本当はフライヤー提示で値引きなんですけど」

「伊吹さんも中にいるんですよね?」

「いえ、今日は副店長が監督してますよ。伊吹さんは……なんか来客があったらしくて」

「来客?」

「はい。たまにあるんですよ。備品関係の営業の方とか」

「店長じゃなく、伊吹さんが対応するんですね?」

「そりゃあ、伊吹さんが責任者ですから」

 スタッフは当たり前だろうという顔をしている。それは翠も分かるのだが、何か腑に落ちない部分がある。それが何かが分からず考えるが、頭を悩ませても分からない。

「ショーはまたの機会に見る事にします」

「それは残念です」

「失礼しました」

 翠はエレベーターで一階に降りて、受付の前を通って外へと向かった。「どうも」と受付スタッフに頭を下げて帰った。

 変な違和感を感じているが、それが何か分からないまま夜空を眺めながら駅に向かい、電車に乗り、自宅の最寄り駅で降りる。
 自宅アパートまで歩いている途中で、翠は足を止めた。

「営業がこんな夜に営業しに来るなんて事、あるか? しかも突発的に?」

 社会経験は高校時代のアルバイトだけで実社会の事は知らないが、おかしいと思いスマホを取り出すと伊吹に電話をかけた。
 数コールで伊吹は電話に出た。

「伊吹さん?」

「翠、どうした?」

 いつも通りの伊吹の声だ。少し安心しながらも恐る恐る疑問を口にした。

「あの、あの後地下のイベントに行ったんですけど、伊吹さん来客があっていないって聞きました。何かあったんですか?」

「いや、何も。業者の人が営業に来ただけ」

「夜に? いきなり来るものですか?」

「俺が約束してたの忘れてたんだ。こっちの問題だよ、翠には関係ない事だ」

「すみません、出しゃばりが過ぎましたね」

「いや、心配してくれてありがとう。もう家に帰ったのか?」

「はい、そろそろ着きます」

「お疲れ様。翠は何も心配せず、自分の事優先しな」

 伊吹の言い方に多少不満が湧き上がる。本当は伊吹の事だけを考えて生きたいのだ。自分を優先にと言われても困る話である。

「俺の一番の優先事項は伊吹さんだって事、忘れないで下さいね」

「あはは、分かったよ。じゃあ、また……あれ、会えるのって来週の月曜だっけ?」

「いえ、来週は……」

「ごめん、ちょっと忙しいからまたかけ直す」

「は、はいっ! また後で!」

 伊吹の身に何かが起こったわけではなかったのだ。忙しそうだしあまり迷惑をかけてはいけないと、電話を切ろうとした瞬間──。

「……翠」

 電話の奥から微かに、伊吹ではない別の男の翠を呼ぶ声が聞こえた気がした。

「伊吹さん?」

 ブツリと電話が切れた。迷いはなかった。翠は来た道を走って戻った。
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