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番外編
⑮世間知らず
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比較的賑わっている駅で降りた。翠に土地勘はなく、気分で降りるところを決めた。
駅前は飲食店が並び、大きな商業施設もある。カラオケ、漫画喫茶、ゲームセンター、学校帰りに寄り道してみたいと思っていた店が目の前にある。
今、翠を止める者はいない。ワクワクした高揚感を胸を押さえ、まずの、高校の入学祝いで買ってもらったスマホで周辺の店を探し、おおよそを把握すると電源を切った。
先にメンズショップで服を買い、制服から着替えた。
そして深夜になるまで遊び尽くし、コンビニで好きな食べ物を買い漁ってからビジネスホテルに止まった。それでもまだ八万は残っている。
明日は学校だが、それもサボる気満々だ。
帰りの電車賃を残すまで遊ぶと決めている。それまでは家に帰らない。
コンビニで買ったビールを飲んだ。背が高いからか、運が良かったからか、年齢を聞かれる事はなかった。
初めて飲むビールは不味く、最初は顔を顰めたが、悪い事をしているという背徳感が不味さを喜びに変える。
夜、勉強もせずに遊ぶのは初めてだ。楽しくて仕方がない。
だが、酔い始めると次第に涙がこぼれた。今まで家族からされた仕打ちを思い出すと自分を憐れまずにはいられない。
「俺は、もっと、友達作って、遊んだりしたかった!」
酒を飲んで叫ぶ。
今まで口に出した事のなかった本音を口に出して、肩で息をした。少し理性が戻ってきた。あまり騒ぐと追い出されるかもしれない。
ボロボロと泣きながら酒を飲んで眠ったのだった。
翌日、ホテルを出てまた遊び回った。今まで出来なかった、したかった事を沢山。
ゲームセンターに入って三時間入り浸り、カラオケで知っている歌を歌った。音楽も触れる機会がなかったので、学校で習った歌しか詳しく分からない。
ジャンクフードを食べた。家での味気ない栄養の整った食事より何故か美味しく感じられた。
そんな風に遊び回っている内に、いつの間にか夕方になり、気付けば駅前とは雰囲気の違う場所に来ていた。
看板にR18の文字が入る店が多く、大人の玩具を扱った店、ラブホテルばかりが立ち並んでいる。
翠は息を飲んだ。健全な高校生だ。興味がないわけがない。
自慰すらたまにしか出来ず、夢精しても家では洗えずに公園の水道で洗って隠していた。
(童貞……卒業したい)
翠は迷わずに近くの店に入った。
所持金は五万。プレイ料金は一時間一万五千円だ。余裕があった。
この時、翠は風俗にも種類がある事を知らなかった。本番行為が出来るのはソープであるのだが、翠が入ったのはオナクラである。
女性が自慰行為をサポートしてくれるソフトな風俗店だ。勿論本番行為はNGである。
女の子は十代後半の、産まれたての子猫のような可愛らしい子だ。特に好きなタイプ等はなかったが、女性に飢えている翠には相手が「女性」というだけで興奮材料だ。
何も知らない翠は部屋に案内されると、女の子を押し倒した。
「……えっ? あの?」
女の子は困惑している。
興奮しきって周りの見えていない翠は、嫌がる女の子のパンツを脱がせると、いきり立ったペニスを女の子の陰部に擦り付けた。
「やっ、やめて! やめて下さい! 人呼びますよ!?」
翠は挿れ方も、何もかも知識がない。擦るだけで入れる為の穴を見付けられず腰を振った。
「あれっ、なんで? えっ?」
「ヤメロッつってんだよ!!」
そうこうしている内に、女の子の張り手が翠の頬を打った。
翠が驚いて呆然と座り込んでいる間に、女の子は逃げていった。そして、目の前に厳つい顔をした怖いお兄さんがやってきた。
「お前ぇ、ウチの子にナニしてくれとんじゃ!!」
翠に怒鳴りつけ、引きずって店の裏口から追い出されると、殴られた。
「女の子への慰謝料込みで三十万! 今すぐ払えよ!」
「そっ……そんな金……持ってまひぇん」
「ああ? テメェ、バラして海に捨てたろうか!?」
「ごめんなさい、もうしません。女の子にもちゃんと謝りますから」
「なら金払えや!!」
こんな事は日常茶飯事なのだろうかと思える程、周囲を歩く人達は見て見ぬふりで去っていく。
誰も翠を助けようという人はいない。
殺される──! と思った時だった。
「やほー。俺、二キロ程先にあるホテル"ラブピーチ"の者なんだけど、そんなところで男二人でイチャつくんなら、ホテル利用しませんか? ゲイカップル専用ホテルです」
ヘラヘラした笑顔を貼り付けた男が近寄ってきたのだった。
駅前は飲食店が並び、大きな商業施設もある。カラオケ、漫画喫茶、ゲームセンター、学校帰りに寄り道してみたいと思っていた店が目の前にある。
今、翠を止める者はいない。ワクワクした高揚感を胸を押さえ、まずの、高校の入学祝いで買ってもらったスマホで周辺の店を探し、おおよそを把握すると電源を切った。
先にメンズショップで服を買い、制服から着替えた。
そして深夜になるまで遊び尽くし、コンビニで好きな食べ物を買い漁ってからビジネスホテルに止まった。それでもまだ八万は残っている。
明日は学校だが、それもサボる気満々だ。
帰りの電車賃を残すまで遊ぶと決めている。それまでは家に帰らない。
コンビニで買ったビールを飲んだ。背が高いからか、運が良かったからか、年齢を聞かれる事はなかった。
初めて飲むビールは不味く、最初は顔を顰めたが、悪い事をしているという背徳感が不味さを喜びに変える。
夜、勉強もせずに遊ぶのは初めてだ。楽しくて仕方がない。
だが、酔い始めると次第に涙がこぼれた。今まで家族からされた仕打ちを思い出すと自分を憐れまずにはいられない。
「俺は、もっと、友達作って、遊んだりしたかった!」
酒を飲んで叫ぶ。
今まで口に出した事のなかった本音を口に出して、肩で息をした。少し理性が戻ってきた。あまり騒ぐと追い出されるかもしれない。
ボロボロと泣きながら酒を飲んで眠ったのだった。
翌日、ホテルを出てまた遊び回った。今まで出来なかった、したかった事を沢山。
ゲームセンターに入って三時間入り浸り、カラオケで知っている歌を歌った。音楽も触れる機会がなかったので、学校で習った歌しか詳しく分からない。
ジャンクフードを食べた。家での味気ない栄養の整った食事より何故か美味しく感じられた。
そんな風に遊び回っている内に、いつの間にか夕方になり、気付けば駅前とは雰囲気の違う場所に来ていた。
看板にR18の文字が入る店が多く、大人の玩具を扱った店、ラブホテルばかりが立ち並んでいる。
翠は息を飲んだ。健全な高校生だ。興味がないわけがない。
自慰すらたまにしか出来ず、夢精しても家では洗えずに公園の水道で洗って隠していた。
(童貞……卒業したい)
翠は迷わずに近くの店に入った。
所持金は五万。プレイ料金は一時間一万五千円だ。余裕があった。
この時、翠は風俗にも種類がある事を知らなかった。本番行為が出来るのはソープであるのだが、翠が入ったのはオナクラである。
女性が自慰行為をサポートしてくれるソフトな風俗店だ。勿論本番行為はNGである。
女の子は十代後半の、産まれたての子猫のような可愛らしい子だ。特に好きなタイプ等はなかったが、女性に飢えている翠には相手が「女性」というだけで興奮材料だ。
何も知らない翠は部屋に案内されると、女の子を押し倒した。
「……えっ? あの?」
女の子は困惑している。
興奮しきって周りの見えていない翠は、嫌がる女の子のパンツを脱がせると、いきり立ったペニスを女の子の陰部に擦り付けた。
「やっ、やめて! やめて下さい! 人呼びますよ!?」
翠は挿れ方も、何もかも知識がない。擦るだけで入れる為の穴を見付けられず腰を振った。
「あれっ、なんで? えっ?」
「ヤメロッつってんだよ!!」
そうこうしている内に、女の子の張り手が翠の頬を打った。
翠が驚いて呆然と座り込んでいる間に、女の子は逃げていった。そして、目の前に厳つい顔をした怖いお兄さんがやってきた。
「お前ぇ、ウチの子にナニしてくれとんじゃ!!」
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「ああ? テメェ、バラして海に捨てたろうか!?」
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