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二章
おまけ①、②
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おまけ①
翠と瑞希との関係が定まった翌日。伊吹は大学で夏鈴に声をかけた。
ちょうど一人でいるところを狙った。
「あの……坂本さん」
夏鈴は振り返ると、一度伊吹を睨みつけたが、そのまま無視をして通り過ぎようとした。
「待って!」
「……何?」
夏鈴が溜息をつきながら嫌そうに振り向くと、既に伊吹は頭を九十度下げていた。
「この度は、本当に申し訳ありませんでした!」
「反省してるのね?」
「はい。俺がした行為がどれたけ坂本さんを傷付けたか、考えました。もう、あなたには関わりません。サークルも辞めます。
今回はただ謝罪がしたくて声を掛けました。許されない事は分かっていますが……」
「許すよ?」
「え……ええっ!?」
まさかの許しに、驚いた伊吹は顔を上げた。ぼろっと涙が流れた。伊吹自身、涙が出ると思ってもみなかったので、焦って目を手で擦った。
当然夏鈴は困惑する。
「ちょっ……なんで泣いてんの!?」
「許して、くれるのか?」
「反省したんでしょ。誠意をもって謝ってきた人をこれ以上責めないよ。付き合ってたわけでもないしね。
篠君って、意外と真面目なんだね?」
夏鈴の言葉が幻聴なのではないかと思えた。伊吹は必死に確認を重ねる。
伊吹は瑞希の件で偏った学習をした。人を本気で怒らせるという事は、相手に「死ぬまで許さない」と思わせる事であり、簡単に許されるものではないと。
復讐をされるのが当たり前な事だと信じていた。
「ほんとに? ほんとに許してくれるのか?」
「だから許すって言ってるじゃない」
「ほんと? 一生恨もうとしたり、復讐しようとしてきたりしない?
許すって言った後に、ただし条件が……とか言わない?」
「ないってば! そこまで怒ってないわ!」
「良かったー……良かったー」
「私も、叩いてごめんね」
「ううん。叩かれて当然だったと思うし」
安心すると余計にポロポロと涙が零れる伊吹。情けない姿に、夏鈴は呆れていた。
「はぁ~、振られて良かった気がする。篠君ってカッコイイ人なんだって勝手に思ってたけど、本当は泣き虫でダサいんだね」
「そうかな?」
伊吹は少し照れたように笑った。
「いや、なんでそこ嬉しそうなの?」
夏鈴は知らない。伊吹が貶されて喜んでしまうドMであると。
伊吹は袖で涙を拭くと、気を取り直して夏鈴に向き合った。
「許してくれてありがとう。じゃあね」
伊吹はもう一度夏鈴に頭を下げて、背を向けた。夏鈴も伊吹に背を向ける。その表情はスッキリしたような笑顔だ。
友達に戻れる未来はそう遠くない。
おまけ②
翠が監視役をした事に対しての罰をすると決めたのは、瑞希の実家からラブピーチに帰るまでの道中だった。
その間に流れも決めてしまう。伊吹は退院したばかりなので、簡単なプレイだけする事になり、縛りや鞭打ちなど、体力のいる仕事は瑞希がする事になった。
「これが三人でやる最後のSMになるかもしれない」
伊吹は暗い表情をしていた。だが、もう瑞希を選ぶと決めた。その言葉を覆す事はしない。
「本気で? 前に翠君と別れてもSMだけ続ければいいとか言ってなかった?」
「そんな事言ってた時期もあったな。恋して分かったよ、それは無理だ。別れた人とビジネスでSMを続けるなんて。楽しくSMを出来そうにない」
「そっか。じゃあ翠君がショーを続けたいって言ったら?」
「その時は、翠の意見を尊重する。俺はワガママ言っちゃいけない立場だからな」
「ごめんね。それでも僕は伊吹を手放してあげられない」
伊吹は頷いた。拒否出来ないのは伊吹も同じだ。瑞希を受け入れ、翠の希望を全て通すと決めた。
そして、三人だけのSMショーが始まった。
翠が伊吹にフェラをされて完全に勃った後、客席に戻ったように見せて、実は尿道プレイは伊吹がしていた。
伊吹が尿道プラグを弄ったり、痛めつけたりしながら、声は瑞希が担当していた。
翠の痛がる様子を見て、十分満足をしていた伊吹だったが、瑞希がヒートアップしそうだったので、無理にでも止めて尿道プラグを引いた。
「ちょ……ちょっと待ってください! 抜いたら出ちゃいます」
「出しなよ。伊吹におもらしするところ、見てもらえばいいじゃん?」
そして、伊吹はゆっくりと尿道プラグを抜いたのだ。当然、翠から放たれた尿を伊吹がモロに被ってしまった。
唇にかかった尿を、伊吹は舐めとる。さすがに舌の届かない部分は服の袖で拭いた。
「い……伊吹さん。ごめんなさい」
「最後まで耐えられて偉かったな」
最大の賞賛だ。翠が耐えられない筈がない。伊吹の為に耐えてくれた、それが一番嬉しい事だった。
敬意を表し、伊吹の想いも込めて、餞別のキスをした。
その後が大変であった。翠が気絶してしまうと、体を支えていた右脚の力も抜けてしまい、完全に吊り状態となった。
身体を支える為の縛りを十分にしていないので、胸部と二の腕周りに強い負荷がかかる。
「翠? ……翠? おい、翠!」
「翠君!?」
伊吹と瑞希で起こそうとするが、力の抜けた翠は重く、二人で身体を支えるのがやっとだ。
すると、すぐに舞台袖に控えていた店長がすぐにやってきた。
「私が翠さんを支えるので、早く縄を解いてください」
瑞希が脚立に上り、吊っている縄を解いた。
吊るされていた縄から開放された翠の身体は、最後まで店長が支えて床の上に寝かせた。
すぐに伊吹が翠の身体を縛る縄を解く。
「瑞希……また面倒な縛り方して。今日は簡単なのでいいって言ったのに」
「綺麗に縛るのはMに対する敬意。そこを雑にするのはMに対して失礼な事だよ」
と、瑞希はよく分からない持論を唱えており、伊吹は呆れて溜息をついた。
「Mからは背中でどんな縛り方してるかなんて見えないんだけど」
その後は翠の身体を洗い、尿で汚れた伊吹もシャワーを浴びた。傷口にお湯が触れないように気を付けていても、どうしても濡れてしまった。
痛みから、伊吹の性器は反射で勃ってしまう。
浴室から出ると、何故か裸になっている瑞希が伊吹の性器を見て、目を輝かせた。
「伊吹のそれ、おいしそうだね?」
「は? って、ちょっと!?」
瑞希は、伊吹の前で膝をつくとフェラをし始めた。ディープスロートからのバキュームフェラに射精欲求が高まる。瑞希の頭を掴んで前後に揺すり、喉の奥までついた。
「……も、出る!」
瑞希の喉奥に精を吐き出した。瑞希は当然であるかのように、それを飲み込み、伊吹に抱き着いてキスをした。
「伊吹……好き」
「俺も。瑞希が好き」
「でも、翠君も好きなんでしょ?」
「うん……。本当は翠が一番好き」
「残念。そんな伊吹も、翠君は許してくれるのかなぁ?」
「分からない。拒まれると思ってる」
「僕か翠君なら、僕を選ぶんだね? 伊吹は本当にそれでいいの?」
「言ったろ、俺はお前を拒めないって」
それは前日の夜、瑞希の告白の返答であった。好きだからではなく、拒めないから受け入れたのだ。
翠への恋心よりも勝る、長年培われた条件反射のようなものである。
「僕を受け入れた理由それだもんねぇ。翠君可哀想~」
「仕方ねぇだろ」
「翠君が起きたら……今後の話、しないとね」
そして、翠を真ん中にして二人はその両脇に、翠に抱き着くように横になったのだった。
翠と瑞希との関係が定まった翌日。伊吹は大学で夏鈴に声をかけた。
ちょうど一人でいるところを狙った。
「あの……坂本さん」
夏鈴は振り返ると、一度伊吹を睨みつけたが、そのまま無視をして通り過ぎようとした。
「待って!」
「……何?」
夏鈴が溜息をつきながら嫌そうに振り向くと、既に伊吹は頭を九十度下げていた。
「この度は、本当に申し訳ありませんでした!」
「反省してるのね?」
「はい。俺がした行為がどれたけ坂本さんを傷付けたか、考えました。もう、あなたには関わりません。サークルも辞めます。
今回はただ謝罪がしたくて声を掛けました。許されない事は分かっていますが……」
「許すよ?」
「え……ええっ!?」
まさかの許しに、驚いた伊吹は顔を上げた。ぼろっと涙が流れた。伊吹自身、涙が出ると思ってもみなかったので、焦って目を手で擦った。
当然夏鈴は困惑する。
「ちょっ……なんで泣いてんの!?」
「許して、くれるのか?」
「反省したんでしょ。誠意をもって謝ってきた人をこれ以上責めないよ。付き合ってたわけでもないしね。
篠君って、意外と真面目なんだね?」
夏鈴の言葉が幻聴なのではないかと思えた。伊吹は必死に確認を重ねる。
伊吹は瑞希の件で偏った学習をした。人を本気で怒らせるという事は、相手に「死ぬまで許さない」と思わせる事であり、簡単に許されるものではないと。
復讐をされるのが当たり前な事だと信じていた。
「ほんとに? ほんとに許してくれるのか?」
「だから許すって言ってるじゃない」
「ほんと? 一生恨もうとしたり、復讐しようとしてきたりしない?
許すって言った後に、ただし条件が……とか言わない?」
「ないってば! そこまで怒ってないわ!」
「良かったー……良かったー」
「私も、叩いてごめんね」
「ううん。叩かれて当然だったと思うし」
安心すると余計にポロポロと涙が零れる伊吹。情けない姿に、夏鈴は呆れていた。
「はぁ~、振られて良かった気がする。篠君ってカッコイイ人なんだって勝手に思ってたけど、本当は泣き虫でダサいんだね」
「そうかな?」
伊吹は少し照れたように笑った。
「いや、なんでそこ嬉しそうなの?」
夏鈴は知らない。伊吹が貶されて喜んでしまうドMであると。
伊吹は袖で涙を拭くと、気を取り直して夏鈴に向き合った。
「許してくれてありがとう。じゃあね」
伊吹はもう一度夏鈴に頭を下げて、背を向けた。夏鈴も伊吹に背を向ける。その表情はスッキリしたような笑顔だ。
友達に戻れる未来はそう遠くない。
おまけ②
翠が監視役をした事に対しての罰をすると決めたのは、瑞希の実家からラブピーチに帰るまでの道中だった。
その間に流れも決めてしまう。伊吹は退院したばかりなので、簡単なプレイだけする事になり、縛りや鞭打ちなど、体力のいる仕事は瑞希がする事になった。
「これが三人でやる最後のSMになるかもしれない」
伊吹は暗い表情をしていた。だが、もう瑞希を選ぶと決めた。その言葉を覆す事はしない。
「本気で? 前に翠君と別れてもSMだけ続ければいいとか言ってなかった?」
「そんな事言ってた時期もあったな。恋して分かったよ、それは無理だ。別れた人とビジネスでSMを続けるなんて。楽しくSMを出来そうにない」
「そっか。じゃあ翠君がショーを続けたいって言ったら?」
「その時は、翠の意見を尊重する。俺はワガママ言っちゃいけない立場だからな」
「ごめんね。それでも僕は伊吹を手放してあげられない」
伊吹は頷いた。拒否出来ないのは伊吹も同じだ。瑞希を受け入れ、翠の希望を全て通すと決めた。
そして、三人だけのSMショーが始まった。
翠が伊吹にフェラをされて完全に勃った後、客席に戻ったように見せて、実は尿道プレイは伊吹がしていた。
伊吹が尿道プラグを弄ったり、痛めつけたりしながら、声は瑞希が担当していた。
翠の痛がる様子を見て、十分満足をしていた伊吹だったが、瑞希がヒートアップしそうだったので、無理にでも止めて尿道プラグを引いた。
「ちょ……ちょっと待ってください! 抜いたら出ちゃいます」
「出しなよ。伊吹におもらしするところ、見てもらえばいいじゃん?」
そして、伊吹はゆっくりと尿道プラグを抜いたのだ。当然、翠から放たれた尿を伊吹がモロに被ってしまった。
唇にかかった尿を、伊吹は舐めとる。さすがに舌の届かない部分は服の袖で拭いた。
「い……伊吹さん。ごめんなさい」
「最後まで耐えられて偉かったな」
最大の賞賛だ。翠が耐えられない筈がない。伊吹の為に耐えてくれた、それが一番嬉しい事だった。
敬意を表し、伊吹の想いも込めて、餞別のキスをした。
その後が大変であった。翠が気絶してしまうと、体を支えていた右脚の力も抜けてしまい、完全に吊り状態となった。
身体を支える為の縛りを十分にしていないので、胸部と二の腕周りに強い負荷がかかる。
「翠? ……翠? おい、翠!」
「翠君!?」
伊吹と瑞希で起こそうとするが、力の抜けた翠は重く、二人で身体を支えるのがやっとだ。
すると、すぐに舞台袖に控えていた店長がすぐにやってきた。
「私が翠さんを支えるので、早く縄を解いてください」
瑞希が脚立に上り、吊っている縄を解いた。
吊るされていた縄から開放された翠の身体は、最後まで店長が支えて床の上に寝かせた。
すぐに伊吹が翠の身体を縛る縄を解く。
「瑞希……また面倒な縛り方して。今日は簡単なのでいいって言ったのに」
「綺麗に縛るのはMに対する敬意。そこを雑にするのはMに対して失礼な事だよ」
と、瑞希はよく分からない持論を唱えており、伊吹は呆れて溜息をついた。
「Mからは背中でどんな縛り方してるかなんて見えないんだけど」
その後は翠の身体を洗い、尿で汚れた伊吹もシャワーを浴びた。傷口にお湯が触れないように気を付けていても、どうしても濡れてしまった。
痛みから、伊吹の性器は反射で勃ってしまう。
浴室から出ると、何故か裸になっている瑞希が伊吹の性器を見て、目を輝かせた。
「伊吹のそれ、おいしそうだね?」
「は? って、ちょっと!?」
瑞希は、伊吹の前で膝をつくとフェラをし始めた。ディープスロートからのバキュームフェラに射精欲求が高まる。瑞希の頭を掴んで前後に揺すり、喉の奥までついた。
「……も、出る!」
瑞希の喉奥に精を吐き出した。瑞希は当然であるかのように、それを飲み込み、伊吹に抱き着いてキスをした。
「伊吹……好き」
「俺も。瑞希が好き」
「でも、翠君も好きなんでしょ?」
「うん……。本当は翠が一番好き」
「残念。そんな伊吹も、翠君は許してくれるのかなぁ?」
「分からない。拒まれると思ってる」
「僕か翠君なら、僕を選ぶんだね? 伊吹は本当にそれでいいの?」
「言ったろ、俺はお前を拒めないって」
それは前日の夜、瑞希の告白の返答であった。好きだからではなく、拒めないから受け入れたのだ。
翠への恋心よりも勝る、長年培われた条件反射のようなものである。
「僕を受け入れた理由それだもんねぇ。翠君可哀想~」
「仕方ねぇだろ」
「翠君が起きたら……今後の話、しないとね」
そして、翠を真ん中にして二人はその両脇に、翠に抱き着くように横になったのだった。
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