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二章
二十七話 軽い吊り
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手錠を外され、白装束を脱がされた。翠は殆ど全裸に褌だけの姿だ。
そのまま両手首は背中の後ろのまま麻縄で固定された。
縄は胸の前を乳首の上と下を二回ずつ巻かれ、背中に固定される。
「あっ、今日は目隠ししてもらおうねぇ」
途中で瑞希は縛る作業をやめて、黒い布で翠の目を三回巻いて頭の後ろでぎゅっと固定した。真っ暗な闇だ。繊維の隙間など存在しないかのように、電球の明かりすら感知できない。
縄は右肩から、胸の前に巻いた下の縄をくぐらせ、左肩へと通らせた。
背中でグイグイ引っ張られる感覚がしている。瑞希が縛りの強さを確認したり、綺麗に魅せる為に奮闘しているのだろうと予想が出来た。
「今日はすこーしだけ吊りに似た感じにするね」
縄が上に引っ張った。脚立に上るギシという音から、カラビナに通して上の方で結び目を作ったのだろうと想像をする。
だがその時、翠の身体が少し持ち上げられた。と、言っても両足は地面に付いている。ギリギリ浮くか浮かないかの微妙なところだ。
縄で縛られた全体が痛みを訴えていた。少し浮くだけでも痛むのに、本当に吊るされたら……翠の額に汗が浮かぶ。
瑞希が脚立から降りた音がした。そして、翠の左脚を持ち上げて膝関節を曲げると、新しい麻縄で膝関節の上を二回、下を二回ずつ巻いた。
左の膝は曲げられて上に上げられた。そのまま足が吊り上がっている事からカラビナに固定されたのだと分かった。
「よし。これで縛りはオッケー。本当は脚も綺麗に縛りたかったんだけどねぇ。
伊吹が簡単で良いとか言うからさぁ」
翠は自分が縛られている事と、瑞希の声以外の情報が何も入ってこない。不安になる。
人が闇を恐れる理由を考える程に、今翠の中では恐怖心が強くなっている。
無防備に晒されている右脚の内腿に、軽くパシンと何かがぶつかった。
すぐに瑞希が鞭で合図を送ったのだと理解したが……。
(おかしい。いつもはもっと当たる面積が広いはずなのに……)
確かに、バラ鞭のように広がっている部分はある様だが、それは先端のみだ。しかもかなり小さい。
二度、三度と軽い鞭さばきで合図を送られると、さすがの翠でも気付く。この鞭は一本鞭だ。
「やっ、やめ──」
翠は全身の血の気が引いた。咄嗟にやめるよう訴えそうになり、口を噤む。その直後。
ヒュンっと風を切る音の後に、ピシャン! と右の内腿を鞭で打たれた。
あまりの痛みに翠の右は宙を浮いた。一気に両腕と胸部、手首に全体重がのしかかる。
重みと痛み。すぐに右脚を地面に下ろして自身を支えるが。
翠が脚を地面に付けている間、瑞希は鞭を打ち続けた。
強い打ち方をしているのに、そこを何度も何度も打たれると、生理的な涙が浮かんだ。
「いっ……! み、瑞希さんっ、ストップ!」
「いいの?」
「……え?」
「別にやめてあげてもいいけど。伊吹からのご褒美はもらえないよ? 折角、二人で罰の内容考えて、最後までやりきりたいと思ってたのに」
「残念だな」
そんな落胆の声が、客席から聞こえた。伊吹だ。
いつもなら「ストップ」と言えば良かった。今も強制ではない。翠が本気で「ストップ」と言えば、瑞希は止めるだろう。
だが、翠にとってその安全装置は今は機能しないも同然だ。
セーフワードを言ったが最後。伊吹に捨てられるのだと理解した。
「……瑞希さんの好きにして……下さい」
「そう? じゃあ遠慮なく続けるね」
右脚は段々と鞭で打たれる感覚がなくなってきた。痛みしか感じられないのだ。
打たれようが打たれまいが、痛い事には変わりない。翠は右脚を曲げて完全に浮かせた。
それならば、まだ吊るされる上半身の痛みの方がマシだ。瑞希は、足を浮かせている時は打ってこない。
だが、次に左脚の内腿を打ってきた。左脚は縛られていて、完全に逃げ場がない。右足を地面につかせて、体を支える。
瑞希は左脚を執拗に打ち続けた。
「ひっ……ぐぅ……」
歯を食いしばって痛みに耐える他なかった。汗が滲む。それでも瑞希は何度も何度も翠の内腿を打った。
「ねぇ、翠君。今何発目か分かる?」
「……えっ?」
「右脚と左脚、それぞれ三十発打つ予定だったんだけど。分からなくなっちゃった。
ごめんね? 翠君なら分かるよね?」
「すみません。数えていませんでした」
「はぁ?」
その時、右脚の内腿に強烈な痛みが炸裂した。
「いっ、ぎゃああああああっ!!」
先程まで鞭で打たれて、まだ痛みの引かない右の内腿を爪で引っかかれたのだ。
「もー。一からやるから。次はちゃんと数えなさい」
瑞希の冷たい声。頭に浮かぶのは絶望の二文字。鞭を打たれる度に、翠は数を数えていったのだった。
あまりに痛い両足の内腿。ぎゅっと目を瞑って耐えた。三十回数え終わると、鞭の嵐は鳴り止んだ。
「さてと。今回のメインに入ろうかな」
瑞希は翠が穿いている褌をハサミで切って強引に脱がせた。完全に全裸になった。
「ちょっ……」
「あは、ちっさいね。萎んじゃってるじゃん。やっぱり翠君ってこういう痛みで感じるようなドMじゃないんだよね」
瑞希が翠の男性器を大事そうに摘んだ。
「それ出したら……」
「非正規のショーだし。観客が伊吹だけなら問題ないでしょ」
翠には抵抗する術がない。男性としての一番大事な部分を無防備にさらけ出しているのだ。
それだけでも不安感が大きい。伊吹が相手ならまだしも、今命運を握っているのは翠が心底嫌っている瑞希だ。
肝が冷える気持ちで、セーフワードを言わないよう唇を噛んだ。
「さて、少し大きくしようかな」
にゅる、と自身の性器が生暖かいものに包まれた。舌だ。瑞希の口の中にすっぽりと根元まで咥えられた性器が、歯や舌、頬肉で弄ばれる。
「いやだっ! やめて下さいっ!! そこだけは勘弁してくださいっ!! そこは伊吹さんだけの……」
「伊吹から許可もらってるんだよね。翠君、伊吹の命令なんだから、黙って僕にちんぽを委ねなよ」
「ひっ……う……うぅ、うっ」
本気で泣いた。伊吹の命令ならば聞けないわけではないが、まだ伊吹にフェラもしてもらった事がないのに、先に瑞希にしゃぶられるのは、悲しかった。
本気で耐えられない。「ストップ」と、翠が言ってしまおうと決意した時だった。
翠の頭の後ろの結び目は解かれ、視界が明るくなった。
───────────────────
表紙を描いていただいている右京 梓様にイラスト描いていただきました(´ー`)
今回縛りで無茶ぶりしたなぁとちょっと反省です。
章につき、一枚入れる予定です。
忘れてたら入らないかもしれません。
そのまま両手首は背中の後ろのまま麻縄で固定された。
縄は胸の前を乳首の上と下を二回ずつ巻かれ、背中に固定される。
「あっ、今日は目隠ししてもらおうねぇ」
途中で瑞希は縛る作業をやめて、黒い布で翠の目を三回巻いて頭の後ろでぎゅっと固定した。真っ暗な闇だ。繊維の隙間など存在しないかのように、電球の明かりすら感知できない。
縄は右肩から、胸の前に巻いた下の縄をくぐらせ、左肩へと通らせた。
背中でグイグイ引っ張られる感覚がしている。瑞希が縛りの強さを確認したり、綺麗に魅せる為に奮闘しているのだろうと予想が出来た。
「今日はすこーしだけ吊りに似た感じにするね」
縄が上に引っ張った。脚立に上るギシという音から、カラビナに通して上の方で結び目を作ったのだろうと想像をする。
だがその時、翠の身体が少し持ち上げられた。と、言っても両足は地面に付いている。ギリギリ浮くか浮かないかの微妙なところだ。
縄で縛られた全体が痛みを訴えていた。少し浮くだけでも痛むのに、本当に吊るされたら……翠の額に汗が浮かぶ。
瑞希が脚立から降りた音がした。そして、翠の左脚を持ち上げて膝関節を曲げると、新しい麻縄で膝関節の上を二回、下を二回ずつ巻いた。
左の膝は曲げられて上に上げられた。そのまま足が吊り上がっている事からカラビナに固定されたのだと分かった。
「よし。これで縛りはオッケー。本当は脚も綺麗に縛りたかったんだけどねぇ。
伊吹が簡単で良いとか言うからさぁ」
翠は自分が縛られている事と、瑞希の声以外の情報が何も入ってこない。不安になる。
人が闇を恐れる理由を考える程に、今翠の中では恐怖心が強くなっている。
無防備に晒されている右脚の内腿に、軽くパシンと何かがぶつかった。
すぐに瑞希が鞭で合図を送ったのだと理解したが……。
(おかしい。いつもはもっと当たる面積が広いはずなのに……)
確かに、バラ鞭のように広がっている部分はある様だが、それは先端のみだ。しかもかなり小さい。
二度、三度と軽い鞭さばきで合図を送られると、さすがの翠でも気付く。この鞭は一本鞭だ。
「やっ、やめ──」
翠は全身の血の気が引いた。咄嗟にやめるよう訴えそうになり、口を噤む。その直後。
ヒュンっと風を切る音の後に、ピシャン! と右の内腿を鞭で打たれた。
あまりの痛みに翠の右は宙を浮いた。一気に両腕と胸部、手首に全体重がのしかかる。
重みと痛み。すぐに右脚を地面に下ろして自身を支えるが。
翠が脚を地面に付けている間、瑞希は鞭を打ち続けた。
強い打ち方をしているのに、そこを何度も何度も打たれると、生理的な涙が浮かんだ。
「いっ……! み、瑞希さんっ、ストップ!」
「いいの?」
「……え?」
「別にやめてあげてもいいけど。伊吹からのご褒美はもらえないよ? 折角、二人で罰の内容考えて、最後までやりきりたいと思ってたのに」
「残念だな」
そんな落胆の声が、客席から聞こえた。伊吹だ。
いつもなら「ストップ」と言えば良かった。今も強制ではない。翠が本気で「ストップ」と言えば、瑞希は止めるだろう。
だが、翠にとってその安全装置は今は機能しないも同然だ。
セーフワードを言ったが最後。伊吹に捨てられるのだと理解した。
「……瑞希さんの好きにして……下さい」
「そう? じゃあ遠慮なく続けるね」
右脚は段々と鞭で打たれる感覚がなくなってきた。痛みしか感じられないのだ。
打たれようが打たれまいが、痛い事には変わりない。翠は右脚を曲げて完全に浮かせた。
それならば、まだ吊るされる上半身の痛みの方がマシだ。瑞希は、足を浮かせている時は打ってこない。
だが、次に左脚の内腿を打ってきた。左脚は縛られていて、完全に逃げ場がない。右足を地面につかせて、体を支える。
瑞希は左脚を執拗に打ち続けた。
「ひっ……ぐぅ……」
歯を食いしばって痛みに耐える他なかった。汗が滲む。それでも瑞希は何度も何度も翠の内腿を打った。
「ねぇ、翠君。今何発目か分かる?」
「……えっ?」
「右脚と左脚、それぞれ三十発打つ予定だったんだけど。分からなくなっちゃった。
ごめんね? 翠君なら分かるよね?」
「すみません。数えていませんでした」
「はぁ?」
その時、右脚の内腿に強烈な痛みが炸裂した。
「いっ、ぎゃああああああっ!!」
先程まで鞭で打たれて、まだ痛みの引かない右の内腿を爪で引っかかれたのだ。
「もー。一からやるから。次はちゃんと数えなさい」
瑞希の冷たい声。頭に浮かぶのは絶望の二文字。鞭を打たれる度に、翠は数を数えていったのだった。
あまりに痛い両足の内腿。ぎゅっと目を瞑って耐えた。三十回数え終わると、鞭の嵐は鳴り止んだ。
「さてと。今回のメインに入ろうかな」
瑞希は翠が穿いている褌をハサミで切って強引に脱がせた。完全に全裸になった。
「ちょっ……」
「あは、ちっさいね。萎んじゃってるじゃん。やっぱり翠君ってこういう痛みで感じるようなドMじゃないんだよね」
瑞希が翠の男性器を大事そうに摘んだ。
「それ出したら……」
「非正規のショーだし。観客が伊吹だけなら問題ないでしょ」
翠には抵抗する術がない。男性としての一番大事な部分を無防備にさらけ出しているのだ。
それだけでも不安感が大きい。伊吹が相手ならまだしも、今命運を握っているのは翠が心底嫌っている瑞希だ。
肝が冷える気持ちで、セーフワードを言わないよう唇を噛んだ。
「さて、少し大きくしようかな」
にゅる、と自身の性器が生暖かいものに包まれた。舌だ。瑞希の口の中にすっぽりと根元まで咥えられた性器が、歯や舌、頬肉で弄ばれる。
「いやだっ! やめて下さいっ!! そこだけは勘弁してくださいっ!! そこは伊吹さんだけの……」
「伊吹から許可もらってるんだよね。翠君、伊吹の命令なんだから、黙って僕にちんぽを委ねなよ」
「ひっ……う……うぅ、うっ」
本気で泣いた。伊吹の命令ならば聞けないわけではないが、まだ伊吹にフェラもしてもらった事がないのに、先に瑞希にしゃぶられるのは、悲しかった。
本気で耐えられない。「ストップ」と、翠が言ってしまおうと決意した時だった。
翠の頭の後ろの結び目は解かれ、視界が明るくなった。
───────────────────
表紙を描いていただいている右京 梓様にイラスト描いていただきました(´ー`)
今回縛りで無茶ぶりしたなぁとちょっと反省です。
章につき、一枚入れる予定です。
忘れてたら入らないかもしれません。
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