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二章
七話 久々のイベント
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ラブピーチの七階、ワンフロアのだだっ広い室内。
元気のない顔を浮かべている伊吹は、高校時代に使っていたジャージを上下に身に付けている。
そして、裸の上にバスローブのみを身に着けた男達十人を前にしていた。
一週間ぶりの乱交パーティーだ。急遽開催したにも関わらず、再開を待っていた客達はすぐに応募した為、十人も集まった。
もちろん瑞希もおり、嬉しそうに他の客と談笑していた。
「えー、お久しぶりです。皆様にはご心配とご迷惑をお掛けしました」
最初の挨拶をすると、中年男性が心配そうに伊吹を見つめて問いかけた。
「お腹刺されたんだって? 大丈夫?」
「ええ。傷が浅くて内臓も傷付いていなかったので、少し縫って退院出来ました。
でも、まだ抜糸してないので、俺はしばらく参加出来ません。室内にはいますが、絡めないので、俺に性的なちょっかいをしかけてきたら、その時点で出禁にします」
伊吹の声は冷たい。やる気のなさそうな態度に、参加者全員のテンションが下がった。
「伊吹。何を機嫌悪くしてるのか知らないけど、皆楽しみにしてたんだから、態度に出すの良くないよ。主催者なんだからさぁ」
瑞希がフォローをした。いつもなら有難い筈なのだが、それすら苛立ちを感じている。
だが、グッと堪えて苦笑いを見せた。
「ごめんなさい。俺も参加したいのに、出来なくて……」
「あーなるほどねぇ。欲求不満なんでしょ、後で口で抜いてあげる。あははっ」
瑞希が笑うと、周りも釣られるように笑った。そのお陰で空気が少し明るくなった。それに便乗するように、伊吹は笑いながら答えた
「ははっ、さっきの聞いてた? 性的なちょっかいしたら、瑞希であっても出禁ね」
「そ、そんなぁ~!」
「ここじゃ伊吹君がルールだからねぇ」
と、瑞希は周りの者に慰められていた。
「久しぶりなので、いつものルール説明をさせていただきます。
この乱交パーティーは、四つのルールを守って頂く事に了承している方のみ参加を許しています。
まず一つ目、ゴムを着ける事。
二つ目、無理矢理しない事。
三つ目、乱パの内容をネットに書き込むの禁止。
四つ目、主催者である俺、篠伊吹にプライベートで話しかけない事。止むを得ない事情の場合以外。
ルールを破った方には制裁として公開SMプレイをした後、乱交パーティー出禁になるのでご注意下さい」
聞き飽きている参加者達は、黙って伊吹の説明が終わるのを苦行のように待っている。
「それでは、二十時から二十三時までの三時間、楽しく過ごして下さい。俺の事は構わず」
いつものように乱交パーティーが始まった。伊吹は開催者として、何か起きても対応出来るように室内にはいるものの、見ているとムカムカしてきた。
参加出来ないのはもどかしい。
自慰行為するわけにもいかず、イライラした様子でソファーに座ってスマホを弄る事にした。
暇潰し用のゲームをしようとしたのだが、大学の友人何人もからチャットが届き、返信に忙しくなる。
今日久々に大学に行った。それまでもチャットは届いていたが、全部無視していたのだ。
実家の都合で地元に帰っていたと嘘をついて謝罪し、心配かけたお詫びに次のサークルの飲み代は伊吹が出すと言ったら、全員が喜んでいた。
基本、何かあっても飲み代出すと言っておけばどうにでもなると思っている。腹を刺された事も言っていないし、そもそも信用も信頼もしていない。
ただ一人、他の人とは違う目で伊吹を見る女性がいる。大学デビューでもしたのだろう、似合わない茶髪に眼鏡から覗くキツい吊り目。
彼女だけが他の友人とは違う内容を送り付けてきた。
『本当は何があったの?
実家に帰ったなんて思えないの』
真面目が取り柄みたいな女性。チャット名には「りん」と書いてあるが、正直名字等は記憶していない。
よく伊吹に突っかかってきては、プリプリと怒っているのだが、困っている時に助けてくれる。以前、翠が教室内で話しかけてきた時も、牽制してくれたのはこの「りん」だ。
彼女が伊吹に好意を持っている事は知っている。だが、応える事は出来ないので放置していた。
『俺の事好きだからって、家の事情にまで口出すなよ。もしかして、俺と結婚したいの?』
そう返すと、案の定照れ隠しの返事が返ってきた。
『バカじゃないの』
「誰とメールしてるの? 彼女?」
スマホの画面を覗きながら、伊吹の隣に座ったのは常連の男だ。
中年太りをしている、典型的なサラリーマンのオッサンだ。
「いや俺は女は無理…………って! ソラさん!!」
翠の事を考えて苛立っていた為忘れていたが、ソラには聞きたい事があったのだ。
声を荒らげた為、ソラは驚いて一瞬目を丸くした。
「ビックリした、ど、どうしたの?」
「翠って、ソラさんの紹介で乱パに参加しましたよね? 詳しく聞きたいんですけど」
「うん。今日はその話をする為に参加したんだよ」
ソラは気まずそうな顔で説明を始めた。
元気のない顔を浮かべている伊吹は、高校時代に使っていたジャージを上下に身に付けている。
そして、裸の上にバスローブのみを身に着けた男達十人を前にしていた。
一週間ぶりの乱交パーティーだ。急遽開催したにも関わらず、再開を待っていた客達はすぐに応募した為、十人も集まった。
もちろん瑞希もおり、嬉しそうに他の客と談笑していた。
「えー、お久しぶりです。皆様にはご心配とご迷惑をお掛けしました」
最初の挨拶をすると、中年男性が心配そうに伊吹を見つめて問いかけた。
「お腹刺されたんだって? 大丈夫?」
「ええ。傷が浅くて内臓も傷付いていなかったので、少し縫って退院出来ました。
でも、まだ抜糸してないので、俺はしばらく参加出来ません。室内にはいますが、絡めないので、俺に性的なちょっかいをしかけてきたら、その時点で出禁にします」
伊吹の声は冷たい。やる気のなさそうな態度に、参加者全員のテンションが下がった。
「伊吹。何を機嫌悪くしてるのか知らないけど、皆楽しみにしてたんだから、態度に出すの良くないよ。主催者なんだからさぁ」
瑞希がフォローをした。いつもなら有難い筈なのだが、それすら苛立ちを感じている。
だが、グッと堪えて苦笑いを見せた。
「ごめんなさい。俺も参加したいのに、出来なくて……」
「あーなるほどねぇ。欲求不満なんでしょ、後で口で抜いてあげる。あははっ」
瑞希が笑うと、周りも釣られるように笑った。そのお陰で空気が少し明るくなった。それに便乗するように、伊吹は笑いながら答えた
「ははっ、さっきの聞いてた? 性的なちょっかいしたら、瑞希であっても出禁ね」
「そ、そんなぁ~!」
「ここじゃ伊吹君がルールだからねぇ」
と、瑞希は周りの者に慰められていた。
「久しぶりなので、いつものルール説明をさせていただきます。
この乱交パーティーは、四つのルールを守って頂く事に了承している方のみ参加を許しています。
まず一つ目、ゴムを着ける事。
二つ目、無理矢理しない事。
三つ目、乱パの内容をネットに書き込むの禁止。
四つ目、主催者である俺、篠伊吹にプライベートで話しかけない事。止むを得ない事情の場合以外。
ルールを破った方には制裁として公開SMプレイをした後、乱交パーティー出禁になるのでご注意下さい」
聞き飽きている参加者達は、黙って伊吹の説明が終わるのを苦行のように待っている。
「それでは、二十時から二十三時までの三時間、楽しく過ごして下さい。俺の事は構わず」
いつものように乱交パーティーが始まった。伊吹は開催者として、何か起きても対応出来るように室内にはいるものの、見ているとムカムカしてきた。
参加出来ないのはもどかしい。
自慰行為するわけにもいかず、イライラした様子でソファーに座ってスマホを弄る事にした。
暇潰し用のゲームをしようとしたのだが、大学の友人何人もからチャットが届き、返信に忙しくなる。
今日久々に大学に行った。それまでもチャットは届いていたが、全部無視していたのだ。
実家の都合で地元に帰っていたと嘘をついて謝罪し、心配かけたお詫びに次のサークルの飲み代は伊吹が出すと言ったら、全員が喜んでいた。
基本、何かあっても飲み代出すと言っておけばどうにでもなると思っている。腹を刺された事も言っていないし、そもそも信用も信頼もしていない。
ただ一人、他の人とは違う目で伊吹を見る女性がいる。大学デビューでもしたのだろう、似合わない茶髪に眼鏡から覗くキツい吊り目。
彼女だけが他の友人とは違う内容を送り付けてきた。
『本当は何があったの?
実家に帰ったなんて思えないの』
真面目が取り柄みたいな女性。チャット名には「りん」と書いてあるが、正直名字等は記憶していない。
よく伊吹に突っかかってきては、プリプリと怒っているのだが、困っている時に助けてくれる。以前、翠が教室内で話しかけてきた時も、牽制してくれたのはこの「りん」だ。
彼女が伊吹に好意を持っている事は知っている。だが、応える事は出来ないので放置していた。
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そう返すと、案の定照れ隠しの返事が返ってきた。
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