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番外編
⑦壊れた関係
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それから瑞希は無口になってしまった。
何も文句を言わず、伊吹に誘われるがまま殆ど毎日先輩達に犯されていた。
表情は暗くなり、光の入らなくなった虚ろな目は、伊吹を見ようとしない。
そんな状態ではあったが、その乱交パーティーは何日も続いた。
その日は輪姦が終わった後、伊吹と瑞希は帰り道を二人で歩いていた。
毎日無言で帰るのがいたたまれなくなった伊吹は、上辺だけの謝罪を述べた。
「瑞希、ごめんね? そんなに元気なくなるとは思わなくてさ。
瑞希の事だから利子つけて倍にして仕返しするとか言いだすと思ったんだけどな。
ほら、仕返しする相手が俺だけなら問題ないでしょ。俺ならどんな事してもいいし、な?」
呑気な伊吹は瑞希の心情まで見ようとはしなかった。自分の事しか考えていなかったのだ。
唯一心を開いていた友達を傷付け、心まで踏みにじっている事など気付きもしない。
「瑞希? まだ怒ってる? でも乱パに参加してくれてるよね? それって瑞希も良いと思ってるからじゃねぇの?」
「……ざけんな」
「あ、ようやく喋ってくれたね? 久々のセリフがざけんなって。やっぱ怒ってるんじゃないか」
怒りを見せるように、瑞希はゆっくりと伊吹に視線を向けた。
「怒ってる……? は? 何言ってんのお前?」
「どうした?」
「どうしたじゃねぇよ。お前の事は殺したいくらい憎んでる。本当はあんな事したくない。引きこもりにでもなろうかって何度も考えた。
でも……僕の身体おかしいんだ」
「おかしい?」
「初めて回された日から、ずっとアイツらに犯される事ばかり考えてる。身体が、輪姦されたがってんの。
昼も思い出して勃起して、クラスの男子にいじめられたりしてんだぞ。それなのに、僕、クラスメイトにも犯されたいって思う事あって……。
最近、全然勉強にも集中出来ない。思い出すとオナニーしてんだよ。
お前が巻き込まなきゃ、こんな事にならなかった。お前のせい、全部、お前のせい」
「そ、そんな事になってるなんて……悪かったよ」
「許さない。本気でお前の事許さないからな。
一度の仕返しで済むと思うなよ。人生かけて、お前に復讐してやる」
その恨み言に肝を冷やしていた伊吹。だが、瑞希は伊吹の胸ぐらを掴んでキスをした。
舌や上顎を舐められて、伊吹は快楽から喘いでしまう。
「ん……あっ、みず……はぁ……んっ」
「好きだったよ。伊吹の事。でも、もう……お前には憎悪しかない。
お前はこれから、こんな風にした僕に償い続けろ。僕が許すって言うまで」
「……償わなかったらどうするの?」
「その時は伊吹を殺して僕も死んでやる。本気だ」
その時、瑞希はポケットから出したカッターを手にした。ギチギチギチ、と刃を出すと躊躇なく手首を切った。刃は皮膚を破りながら真っ直ぐ線を引いた。
「やめろって、瑞希!」
「これが僕の本気」
手首からは血が滴り落ちて、アスファルトをポタポタと濡らす。
「まずは、僕がいいって言うまで乱パ以外で僕に近寄らない事。シラフの時にお前の顔、見たくねぇわ」
「わ、分かった」
伊吹は瑞希の腕から流れる血がトラウマとなった。血なんて自分のもので見慣れているのに、瑞希から流れる血は別物だ。
まるで命の欠片が流れて、死んでしまうのではないかと恐怖した。
その日の夜、瑞希の母親から電話が鳴った。
「伊吹、久しぶりね。元気?」
「あっおばさん。久しぶり。俺は元気だけど、どうしたの?」
「瑞希が……リストカットをしたみたいなの。何か知らない?」
あれだけ血が出ていたら隠せないだろう。瑞希は手首を切った理由を話さなかったのだと推測した。
伊吹は全てを知っている。まして、瑞希の母親は伊吹にとって大事な存在だ。嘘をつくか悩んだ。
「……伊吹?」
「瑞希が言うの待った方がいいかなって、思う」
「そう。もう少し様子を見てみるわ」
その後も何度か瑞希の母親とやり取りをしたが、伊吹は知らないふりを続けた。
自分のせいで瑞希が傷付いたのだと知られたくなかったのだ。瑞希もどうせ言わないだろうからと、そのままにした。
それからは生きた心地がしなかった。常に憎悪をぶつけてくる瑞希の目を気にしながらも、先輩達の暴行には逆らえない。
瑞希の母親からの電話にも怯えていたが、段々と伊吹は連絡を無視するようになった。
そして、先輩達が卒業して伊吹と瑞希は解放された。その後は伊吹だけ呼び出されては乱交をしたりもしていたが、それぞれ忙しくなり自然と集まらなくなった。
一番悲惨だったのは瑞希だ。疼く身体を持て余し、毎日のように複数人と関係を持つようになった。何度も補導され、両親に怒られるもやめる事が出来ない。
高校生になってから援助交際をし始めた。
その頃伊吹はSMプレイのパートナーを見付けて、ドMの身体に開発されていった。
瑞希がバレた原因や瑞希の行動を見て、どうしたら祖父や学校、友人にバレないかを考えて行動し、上手く隠れていた。
伊吹自身がバレそうになると、瑞希を隠れ蓑にして逃げた。
結局、伊吹は母親にした事と同じ事を瑞希にしていたのだ。
そんな状態が続き、二人は高校三年生になった。六年ぶりに伊吹と瑞希は同じクラスになった。
何も文句を言わず、伊吹に誘われるがまま殆ど毎日先輩達に犯されていた。
表情は暗くなり、光の入らなくなった虚ろな目は、伊吹を見ようとしない。
そんな状態ではあったが、その乱交パーティーは何日も続いた。
その日は輪姦が終わった後、伊吹と瑞希は帰り道を二人で歩いていた。
毎日無言で帰るのがいたたまれなくなった伊吹は、上辺だけの謝罪を述べた。
「瑞希、ごめんね? そんなに元気なくなるとは思わなくてさ。
瑞希の事だから利子つけて倍にして仕返しするとか言いだすと思ったんだけどな。
ほら、仕返しする相手が俺だけなら問題ないでしょ。俺ならどんな事してもいいし、な?」
呑気な伊吹は瑞希の心情まで見ようとはしなかった。自分の事しか考えていなかったのだ。
唯一心を開いていた友達を傷付け、心まで踏みにじっている事など気付きもしない。
「瑞希? まだ怒ってる? でも乱パに参加してくれてるよね? それって瑞希も良いと思ってるからじゃねぇの?」
「……ざけんな」
「あ、ようやく喋ってくれたね? 久々のセリフがざけんなって。やっぱ怒ってるんじゃないか」
怒りを見せるように、瑞希はゆっくりと伊吹に視線を向けた。
「怒ってる……? は? 何言ってんのお前?」
「どうした?」
「どうしたじゃねぇよ。お前の事は殺したいくらい憎んでる。本当はあんな事したくない。引きこもりにでもなろうかって何度も考えた。
でも……僕の身体おかしいんだ」
「おかしい?」
「初めて回された日から、ずっとアイツらに犯される事ばかり考えてる。身体が、輪姦されたがってんの。
昼も思い出して勃起して、クラスの男子にいじめられたりしてんだぞ。それなのに、僕、クラスメイトにも犯されたいって思う事あって……。
最近、全然勉強にも集中出来ない。思い出すとオナニーしてんだよ。
お前が巻き込まなきゃ、こんな事にならなかった。お前のせい、全部、お前のせい」
「そ、そんな事になってるなんて……悪かったよ」
「許さない。本気でお前の事許さないからな。
一度の仕返しで済むと思うなよ。人生かけて、お前に復讐してやる」
その恨み言に肝を冷やしていた伊吹。だが、瑞希は伊吹の胸ぐらを掴んでキスをした。
舌や上顎を舐められて、伊吹は快楽から喘いでしまう。
「ん……あっ、みず……はぁ……んっ」
「好きだったよ。伊吹の事。でも、もう……お前には憎悪しかない。
お前はこれから、こんな風にした僕に償い続けろ。僕が許すって言うまで」
「……償わなかったらどうするの?」
「その時は伊吹を殺して僕も死んでやる。本気だ」
その時、瑞希はポケットから出したカッターを手にした。ギチギチギチ、と刃を出すと躊躇なく手首を切った。刃は皮膚を破りながら真っ直ぐ線を引いた。
「やめろって、瑞希!」
「これが僕の本気」
手首からは血が滴り落ちて、アスファルトをポタポタと濡らす。
「まずは、僕がいいって言うまで乱パ以外で僕に近寄らない事。シラフの時にお前の顔、見たくねぇわ」
「わ、分かった」
伊吹は瑞希の腕から流れる血がトラウマとなった。血なんて自分のもので見慣れているのに、瑞希から流れる血は別物だ。
まるで命の欠片が流れて、死んでしまうのではないかと恐怖した。
その日の夜、瑞希の母親から電話が鳴った。
「伊吹、久しぶりね。元気?」
「あっおばさん。久しぶり。俺は元気だけど、どうしたの?」
「瑞希が……リストカットをしたみたいなの。何か知らない?」
あれだけ血が出ていたら隠せないだろう。瑞希は手首を切った理由を話さなかったのだと推測した。
伊吹は全てを知っている。まして、瑞希の母親は伊吹にとって大事な存在だ。嘘をつくか悩んだ。
「……伊吹?」
「瑞希が言うの待った方がいいかなって、思う」
「そう。もう少し様子を見てみるわ」
その後も何度か瑞希の母親とやり取りをしたが、伊吹は知らないふりを続けた。
自分のせいで瑞希が傷付いたのだと知られたくなかったのだ。瑞希もどうせ言わないだろうからと、そのままにした。
それからは生きた心地がしなかった。常に憎悪をぶつけてくる瑞希の目を気にしながらも、先輩達の暴行には逆らえない。
瑞希の母親からの電話にも怯えていたが、段々と伊吹は連絡を無視するようになった。
そして、先輩達が卒業して伊吹と瑞希は解放された。その後は伊吹だけ呼び出されては乱交をしたりもしていたが、それぞれ忙しくなり自然と集まらなくなった。
一番悲惨だったのは瑞希だ。疼く身体を持て余し、毎日のように複数人と関係を持つようになった。何度も補導され、両親に怒られるもやめる事が出来ない。
高校生になってから援助交際をし始めた。
その頃伊吹はSMプレイのパートナーを見付けて、ドMの身体に開発されていった。
瑞希がバレた原因や瑞希の行動を見て、どうしたら祖父や学校、友人にバレないかを考えて行動し、上手く隠れていた。
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結局、伊吹は母親にした事と同じ事を瑞希にしていたのだ。
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