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一章
二十三話 本番
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SMショー当日。十二時には翠と瑞希にラブピーチに集合するように伝えており、伊吹は午前中には会場の準備を始めていた。
開催時間は午後一時だ。日曜日は昼間の方が集まりやすい。
以前、翠にした乱交パーティーメンバーのみが参加可能なクローズドイベントとは違い、今回はネットでも大々的に告知している。
伊吹は壇上に上がり、縄を吊るす為の金属の輪に、カラビナを二つほど付けた後に、自分が届くよう調整していた。
設営を手助けしているホテルの従業員が、パイプ椅子を置き終えると伊吹の元へ走ってきた。
二十代半ばの気の弱そうなフリーターだ。
「伊吹さん、椅子もう少し増やしておきますか?」
椅子は二十席用意している。ゲイのみが入れるホテルのSMイベントにそんなに人が来るとは思えない。
予約も十五人である。当日に何人来るか予測が付かないので、念の為五席増やしたが。当日キャンセルも有り得る。
「いや、人増えたら椅子増やしていけばいいかな。そこは店長に任せてるので、その指示に従ってください」
「分かりました」
フリーターの男は、すぐに店長の元へ走っていった。
仕事に慣れてきた彼に、そろそろイベントの準備を一任しても良さそうだと思いながら、伊吹は道具の準備等を始めた。
準備が終わる頃に翠と瑞希が地下にやってきた。瑞希に密着でもひているかのように、翠が近い上に瑞希をじっと見ている。
「こんにちは」
「伊吹、来たよ~」
「よっ! 二人は奥の控え室で着替えてきて」
何故か瑞希に近い翠に違和感を覚えたが、気にしないようにして、会場全体を見渡した。
イベントがある時にいつもしている事だ。一応責任者として、危険がないかを確認している。
終わると店長の元へ行った。ヤクザのようにも見える厳つい顔をしたガタイのいい店長だ。
「店長、後の事は任せました。今日は俺がキャストで会場全体には気を配れないので、何かあったら店長の一存で対処して下さい」
「かしこまりました」
店長は口数は少ないが、頼りになる人物だ。安心して任せた。
そして、ショーが始まる。
会場には二十人と少し、伊吹の想像以上の人が椅子に座ってまだかまだかと期待の表情で待っていた。
伊吹はレザーのベストにレザーの長ズボン、ショートブーツを履いており、カッチリとした装いだ。
瑞希もレザーのベストだが、丈が短いので臍が出ている。今日に合わせてへそピアスをしており、へその真ん中に綺麗な赤い石が見えている。レザーのズボンは一部丈のショートパンツで、ブーツは足関節より長いロングブーツだ。
そして、翠は白装束を身にまとっている。下着は褌で、男性器やアナルが見えないようになっている。足は白足袋だ。
伊吹と瑞希の衣装はそれぞれ自分で用意したものだが、翠は伊吹が用意している。
「どう? 翠、初めてちゃんとしたショーに出るのは?」
伊吹は翠に声をかけた。
「す、少し緊張しています」
「だろうな。慣れてる俺と、瑞希がフォローするから、翠はいつも通りやればいい」
「頑張ろうね!」
いつも通り笑顔の瑞希を見れば、少しは安心するだろうと思ったのだが、翠は瑞希を見て少し不安げな顔をした。
「大丈夫、瑞希がヘマしても。お客さん瑞希のツテが多いから、寧ろ喜ばれる」
「なにそれぇ、僕がヘマする前提で話さないでよね。伊吹も~、ヘマしたらひどーいお仕置きしちゃうからね」
「へぇ、どんなの?」
「伊吹を縛って動けなくしてから、目の前で翠君と僕がエッチするとか」
伊吹は嫌そうに眉に皺を寄せた。翠も少し困ったような表情になる。
「はあっ!? そんなんお仕置きにもならねぇよ」
「ほらほら、もう時間でしょ? 行こっ」
会場に音楽が流れた。ポップなノリの曲で会場全体が陽気な空気になった。
壇上には真ん中に翠、右側に伊吹、左側に瑞希が立った。
伊吹の隣には長テーブルが置かれてあり、そこには本日使用する道具と共にワイヤレスマイクが置かれている。
伊吹はマイクを持って司会を始めた。
「お待たせしました! 今日は皆お待ちかねのイケメン翠君のドMなところを、わたくし伊吹と、皆の人気者瑞希君とお披露目しまーす!」
テンションの高いノリで挨拶をする伊吹。会場は拍手に包まれた。期待も相まって歓声も響く。「伊吹さん!」「伊吹君!」と叫んでいる人もいる。
伊吹は瑞希にマイクを渡した。
「瑞希でーす。翠君は初心者なので、ハードなプレイはしないけど、ギリギリ責めるつもりなので楽しんでね」
瑞希が手を振ると、一部の熱狂的な瑞希ファンが拍手して「瑞希ー!」「瑞希ちゃん!」と叫んでいた。
次に瑞希が翠にマイクを渡す。
「す、翠です……よろしくお願いします」
客からは「頑張れー」「翠くーん」等と声が響く。伊吹がマイクを机の上に置くと、曲が変わった。
世間で人気のある、落ち着いた雰囲気の曲だ。それがインストゥルメンタルで流れる。
翠がその場に正座して、その後ろに瑞希が立った。
それからは一切声は出さない。瑞希が無言で麻縄を翠に這わせていく。両腕を後ろで縛り、胸の前を巻いていく。時折、縄で乳首を擦ると翠は耐えるように唇を噛んだ。
腕を縛られているので何をされても抵抗は出来ない。
縄が余った状態で上半身を縛り終えると、瑞希は翠の白装束の襟を首から肩へと下ろして、はだけさせた。
胸の部分も、縄を無視して広げると、翠の左右の乳首が露わとなり、腹部も若干見えている。
伊吹が近くに来て翠の右の乳首を摘むと、強く抓った。
「ううっ……」
左側の乳首も抓り、翠は痛みに喘ぐ。
「うああっ、いっ……」
「翠君立って」
瑞希の合図で、伊吹は乳首を弄るのをやめる。翠はゆっくりと立ち上がった。次は伊吹が余った縄を上に吊るされたカラビナに引っ掛けた。
その縄をまた背中の縄に通し、また上のカラビナに引っ掛ける。余った縄を二重になった縄に巻き付けるように縛り、固定した。
次に翠の右足の関節を縄で縛り、足を曲げたままの状態にして上にあげる。余った縄をカラビナに引っ掛け、胴体を支えている縄と同じように固定した。
翠の右足は限界まで上げられ、褌が見えている状態だ。左足のみで自重を支えている。
その間に瑞希が革製の厚手のバラ鞭を持って翠の後ろに立った。
ペシャン……と、尻に何度か優しく撫でるように打つ、とすぐにバシンッと強い音をさせて鞭を打った。
「ああぁっ!!」
バシンッ、バシンッ、バシンッ!
何度も打ち付けられる度にしなやかに身を踊らせる翠。
鞭は尻だけでなく、背中も打っていく。肉のある尻より皮膚の薄い背中の方が痛みは強い。
翠は涙を浮かべ、声を荒らげて叫んだ。
そして、伊吹が赤い低温蝋燭を用意し、芯に火をつけて翠に視線を向ける。すぐに気付いた翠と目が合い、お互い頷きあうと伊吹はすぐに翠の胸の中心に蝋燭を垂らした。
「ひぎゃああぁぁっ!!」
翠は体をのけぞらせて叫んだ。
逃げ場がない。背中には鞭を打たれ、胸には蝋燭がポタポタと流れる。どちらへ身体を動かしても、痛みから逃れられないのだ。
伊吹と瑞希が場所を交代する。何かをする時はお互い目を見て合図してからだ。
伊吹が白装束の上から背中に蝋燭を垂らし、瑞希が神経が多く敏感な内腿を鞭で打つと、また翠の悲鳴が響く。
今までとはまた違う痛みだ。逃れられない翠は終わるまで苦痛に耐え、泣き叫んだのだった。
開催時間は午後一時だ。日曜日は昼間の方が集まりやすい。
以前、翠にした乱交パーティーメンバーのみが参加可能なクローズドイベントとは違い、今回はネットでも大々的に告知している。
伊吹は壇上に上がり、縄を吊るす為の金属の輪に、カラビナを二つほど付けた後に、自分が届くよう調整していた。
設営を手助けしているホテルの従業員が、パイプ椅子を置き終えると伊吹の元へ走ってきた。
二十代半ばの気の弱そうなフリーターだ。
「伊吹さん、椅子もう少し増やしておきますか?」
椅子は二十席用意している。ゲイのみが入れるホテルのSMイベントにそんなに人が来るとは思えない。
予約も十五人である。当日に何人来るか予測が付かないので、念の為五席増やしたが。当日キャンセルも有り得る。
「いや、人増えたら椅子増やしていけばいいかな。そこは店長に任せてるので、その指示に従ってください」
「分かりました」
フリーターの男は、すぐに店長の元へ走っていった。
仕事に慣れてきた彼に、そろそろイベントの準備を一任しても良さそうだと思いながら、伊吹は道具の準備等を始めた。
準備が終わる頃に翠と瑞希が地下にやってきた。瑞希に密着でもひているかのように、翠が近い上に瑞希をじっと見ている。
「こんにちは」
「伊吹、来たよ~」
「よっ! 二人は奥の控え室で着替えてきて」
何故か瑞希に近い翠に違和感を覚えたが、気にしないようにして、会場全体を見渡した。
イベントがある時にいつもしている事だ。一応責任者として、危険がないかを確認している。
終わると店長の元へ行った。ヤクザのようにも見える厳つい顔をしたガタイのいい店長だ。
「店長、後の事は任せました。今日は俺がキャストで会場全体には気を配れないので、何かあったら店長の一存で対処して下さい」
「かしこまりました」
店長は口数は少ないが、頼りになる人物だ。安心して任せた。
そして、ショーが始まる。
会場には二十人と少し、伊吹の想像以上の人が椅子に座ってまだかまだかと期待の表情で待っていた。
伊吹はレザーのベストにレザーの長ズボン、ショートブーツを履いており、カッチリとした装いだ。
瑞希もレザーのベストだが、丈が短いので臍が出ている。今日に合わせてへそピアスをしており、へその真ん中に綺麗な赤い石が見えている。レザーのズボンは一部丈のショートパンツで、ブーツは足関節より長いロングブーツだ。
そして、翠は白装束を身にまとっている。下着は褌で、男性器やアナルが見えないようになっている。足は白足袋だ。
伊吹と瑞希の衣装はそれぞれ自分で用意したものだが、翠は伊吹が用意している。
「どう? 翠、初めてちゃんとしたショーに出るのは?」
伊吹は翠に声をかけた。
「す、少し緊張しています」
「だろうな。慣れてる俺と、瑞希がフォローするから、翠はいつも通りやればいい」
「頑張ろうね!」
いつも通り笑顔の瑞希を見れば、少しは安心するだろうと思ったのだが、翠は瑞希を見て少し不安げな顔をした。
「大丈夫、瑞希がヘマしても。お客さん瑞希のツテが多いから、寧ろ喜ばれる」
「なにそれぇ、僕がヘマする前提で話さないでよね。伊吹も~、ヘマしたらひどーいお仕置きしちゃうからね」
「へぇ、どんなの?」
「伊吹を縛って動けなくしてから、目の前で翠君と僕がエッチするとか」
伊吹は嫌そうに眉に皺を寄せた。翠も少し困ったような表情になる。
「はあっ!? そんなんお仕置きにもならねぇよ」
「ほらほら、もう時間でしょ? 行こっ」
会場に音楽が流れた。ポップなノリの曲で会場全体が陽気な空気になった。
壇上には真ん中に翠、右側に伊吹、左側に瑞希が立った。
伊吹の隣には長テーブルが置かれてあり、そこには本日使用する道具と共にワイヤレスマイクが置かれている。
伊吹はマイクを持って司会を始めた。
「お待たせしました! 今日は皆お待ちかねのイケメン翠君のドMなところを、わたくし伊吹と、皆の人気者瑞希君とお披露目しまーす!」
テンションの高いノリで挨拶をする伊吹。会場は拍手に包まれた。期待も相まって歓声も響く。「伊吹さん!」「伊吹君!」と叫んでいる人もいる。
伊吹は瑞希にマイクを渡した。
「瑞希でーす。翠君は初心者なので、ハードなプレイはしないけど、ギリギリ責めるつもりなので楽しんでね」
瑞希が手を振ると、一部の熱狂的な瑞希ファンが拍手して「瑞希ー!」「瑞希ちゃん!」と叫んでいた。
次に瑞希が翠にマイクを渡す。
「す、翠です……よろしくお願いします」
客からは「頑張れー」「翠くーん」等と声が響く。伊吹がマイクを机の上に置くと、曲が変わった。
世間で人気のある、落ち着いた雰囲気の曲だ。それがインストゥルメンタルで流れる。
翠がその場に正座して、その後ろに瑞希が立った。
それからは一切声は出さない。瑞希が無言で麻縄を翠に這わせていく。両腕を後ろで縛り、胸の前を巻いていく。時折、縄で乳首を擦ると翠は耐えるように唇を噛んだ。
腕を縛られているので何をされても抵抗は出来ない。
縄が余った状態で上半身を縛り終えると、瑞希は翠の白装束の襟を首から肩へと下ろして、はだけさせた。
胸の部分も、縄を無視して広げると、翠の左右の乳首が露わとなり、腹部も若干見えている。
伊吹が近くに来て翠の右の乳首を摘むと、強く抓った。
「ううっ……」
左側の乳首も抓り、翠は痛みに喘ぐ。
「うああっ、いっ……」
「翠君立って」
瑞希の合図で、伊吹は乳首を弄るのをやめる。翠はゆっくりと立ち上がった。次は伊吹が余った縄を上に吊るされたカラビナに引っ掛けた。
その縄をまた背中の縄に通し、また上のカラビナに引っ掛ける。余った縄を二重になった縄に巻き付けるように縛り、固定した。
次に翠の右足の関節を縄で縛り、足を曲げたままの状態にして上にあげる。余った縄をカラビナに引っ掛け、胴体を支えている縄と同じように固定した。
翠の右足は限界まで上げられ、褌が見えている状態だ。左足のみで自重を支えている。
その間に瑞希が革製の厚手のバラ鞭を持って翠の後ろに立った。
ペシャン……と、尻に何度か優しく撫でるように打つ、とすぐにバシンッと強い音をさせて鞭を打った。
「ああぁっ!!」
バシンッ、バシンッ、バシンッ!
何度も打ち付けられる度にしなやかに身を踊らせる翠。
鞭は尻だけでなく、背中も打っていく。肉のある尻より皮膚の薄い背中の方が痛みは強い。
翠は涙を浮かべ、声を荒らげて叫んだ。
そして、伊吹が赤い低温蝋燭を用意し、芯に火をつけて翠に視線を向ける。すぐに気付いた翠と目が合い、お互い頷きあうと伊吹はすぐに翠の胸の中心に蝋燭を垂らした。
「ひぎゃああぁぁっ!!」
翠は体をのけぞらせて叫んだ。
逃げ場がない。背中には鞭を打たれ、胸には蝋燭がポタポタと流れる。どちらへ身体を動かしても、痛みから逃れられないのだ。
伊吹と瑞希が場所を交代する。何かをする時はお互い目を見て合図してからだ。
伊吹が白装束の上から背中に蝋燭を垂らし、瑞希が神経が多く敏感な内腿を鞭で打つと、また翠の悲鳴が響く。
今までとはまた違う痛みだ。逃れられない翠は終わるまで苦痛に耐え、泣き叫んだのだった。
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