乱交パーティー出禁の男

眠りん

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一章

十九話 エロスイッチ

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 翠のストーカー発言に、伊吹は内心モヤモヤしている。なんでコイツと関わりを持ってしまったのだろうかと。
 いっそ、乱交パーティーに紹介されて来た時に断れば良かったのだ。でなければ、こんな犯罪者、懐に入れる事もなかっただろう。

「そういや。こんな大事な事忘れちゃいけなかったんだが。
 お前、どうやって乱パの情報仕入れたんだ? どこから知った?」

「それは秘密ですよ」

 翠は事の重要性が分からないのだろう。ニコニコと子供が玩具を隠すような、イタズラっぽく笑う。
 伊吹からすれば冗談ではない。伊吹やホテルの今後を左右する大問題だ。

 押し倒されたままだが、伊吹は翠を押し退けて下から這い出た。ベッドに座ったまま翠を睨む。

「おい、ちゃんと答えろ。場合によっては拷問にかけるぞ」

「今の日本社会で拷問って……」

「冗談や脅しじゃねぇよ。口を割らせる為ならなんでもする。
 乱パが外部に漏れる事だけはマズい。瑞希に乱パイベントを提供出来なくなる」

「また瑞希さんですか」

「そうだよ。まぁ、瑞希からすれば俺が逮捕されても別に問題ないんだろうけど」

「それって……。いえ、じゃあ教えますね。俺以外には漏れてないと思うんで、大丈夫です。
 あ、友達にはチラッと話しましたけど。俺もそいつも、それに関してちょっと犯罪じみた事したんで、乱パの事を告げ口とかはしませんよ」

 翠が何かを言いかけた事も気になるが、乱交パーティーの存在が外部に漏れた理由の方を優先させる。

「早く言ってくれ」

「高校時代、夏休みと冬休みと春休みの間、ずっとラブピーチを監視してました。観察してると分かるもんなんですよね。
 火、木、土の十九時半頃から、一人客が入っていくのが増えたんですよ」

「参加者達か」

「そうですね。でも、彼らは帰りには二人組で帰っていくんです。何かあると思うじゃないですか。まぁ、それから色々と探った結果乱パやってるんだろうなって推測しました。
 だから……実は瑞希さんの事も知ってたんですよね。すみません」

「……そうか。それでソラさんに近寄ったのか?」

「えぇまぁ。本当にソラさんの事責めないで下さいね。俺も乱パの存在知ってる感じで近付いたんで。騙すような感じで招待させたんです」

「それなら普通にバレる事はなさそうかな。まさかストーカーされてたなんて、気付きもしなかったし」

「すみませんでした。やっぱり怒ってますよね?」

 翠はショボンと肩を落とした。嫌われるような事をした自覚があったから、話したくなかったのだろう。
 伊吹がそんな事で怒りはしない事を、翠は知らないのだ。

「別に。つーかお前、俺のどこが好きなんだよ? ストーカーまでしやがって」

 今一度、一番の疑問を問いかける。
 これで翠の恋愛感情が勘違いだと分かれば、伊吹に執着する事もなくなる。そうすれば、さっさと帰るだろうと。

「好きに理由はいらないそうですよ」

 だが、翠はにっこりと答えにならない回答をした。

「あっそ。じゃあ俺を嫌いになるよう仕向けてやるだけだ。
 ちなみに、俺と別れてもSMショーは最低でも三ヶ月は続けてもらう」

「大丈夫です。伊吹さんになら、どんな酷い事されても許します。あなたについていけます」

「バカバカしい。こんな恋愛があってたまるか。だいたい信用出来ないんだよ、お前が俺を好きだなんて」

「へぇ。伊吹さんにも恋愛観があったんですね。特に何も考えず付き合ったりするかなって思ってました。
 恋愛に特別な意味を持ってましたか?」

 伊吹は内心ギクリとした。伊吹にとって誰かと付き合う事は特別な意味を持つ。
 瑞希との事がなければ、最高のご主人様を見つけ、恋人兼SMパートナーになるのが一番の理想だ。
 そんな相手と恋がしたかった。勿論初恋もまだである。

 初めて付き合う相手がSMも初心者、SかMかもよく分からないストーカーとは思いもよらなかった。
 翠にはまだ心を許してはいない。プイと顔を逸らして適当にあしらった。

「知らねーよ」

「それなのに、誰とでもセックスするんですねぇ。不思議です。
 そういえば知ってます? 人って謎めいたものに惹かれやすい生き物なんですよ。
 ほらミステリアスな人って、モテたりするじゃないですか。あれって人間の好奇心を擽ってるんですよね。
 知らない部分が多ければ多い程追いたくなるそうですよ」

「ならお前は最高にミステリアスだな。何がしたいのかも分からねぇ、なんで俺を好きなのかもわからねぇ、何が言いたいのかも分からねぇよ。
 俺は別に追いたくならねぇけど」

「それは残念です。
 俺も知れば知る程、あなたの事が分からなくなりますよ。
 知りたいと思って、近付きたくて、こんなに執着していって……ここまで近付いたのに、まだ分からない事だらけで、もっと好きになりました」

 翠はまたズイっと伊吹に近寄ると、服のボタンを外した。押し倒すと、ズボンの前も開いた。
 伊吹はされるがままだ。このまま犯されるのだと、他人事のように翠の動きを黙って見ている。

 だが、翠はそのまま伊吹に覆い被さって抱きしめてきた。

「俺の事が分かったら、興味もなくなるんだろうな」

「きっとその頃には恋は愛に変わってますね。愛って、恋の上位互換なんですよ」

「キモい」

 伊吹は一瞬ゾワッと腕に鳥肌が立ったように感じた。寒い事を言う翠に気持ち悪さを感じたのだろう。

 その後は一切の会話もしなかった。翠に全裸にされ、全身を舐められ、身体の力が抜けたところで半勃ちしている肉棒を舐められる。
 快楽には勝てない。脳が快楽でぼーっとしている。
 下手くそなフェラでも、焦らしプレイだと思えば興奮出来る。

 今、キスをされたら抵抗は出来ない。だが翠は唇には一切触れなかった。
 伊吹にとって唇も快楽を得る為の一部分だ。急にキスがしたくなる。上半身を起こし、翠の頭を掴んでフェラを止めさせる。
 顔を近付けてキスをしようとした。

 初めてのキスは伊吹からしろと、翠が言ったからだ。自分からすればいいのだろうと。だが──。

「ストップですよ、伊吹さん」

 伊吹の唇は翠の手が押さえていてキスが出来ない。

「なんで? 俺からしろって」

「こういうノリでするのは違うんですよ。俺には俺の恋愛観っていうのがありまして」

「そんなの聞いてない」

「快楽を得る為のキスは本当の意味でのキスじゃないと思うんです。
 恥ずかしながら、俺はキスを神聖なものだと思っています。だから、伊吹さんが本当に俺を好きだと思った時、伊吹さんからして欲しいです」

「キス、したい。口が寂しいんだ。なんでもするから……」

「困りましたね。キスは出来ないので、じゃあ俺のココ舐めてもらえます?
 そうすれば伊吹さんの唇もお口の中も満足しますかね?」

「うん、する」

 伊吹はトロンと目を潤ませて、割座のまま上半身を伏せて一心不乱に翠の男性器をしゃぶった。
 それは、翠のものを勃たせようというわけでも、翠を悦ばせる為でもない。
 自分の感じる口を満足させたいが為だ。

 そんな伊吹の頭を撫でて、翠はクスリと笑った。

「ほら、またあなたの事が分からなくなりましたよ。そうやって俺を夢中にさせてるって気付いてないんでしょうね」

 伊吹はしゃぶる事に真剣で翠の声など聞こえていない。翠は両手で伊吹の頭を掴んで、顔を上げさせた。
 舐め足りないのか、発情したままの伊吹は口を開いて涎を垂らしている。

「翠……ねぇ、翠」

「どうしたんですか?」

「……このまま、俺の口をオナホだと思って、使って?」

「俺、SM初心者なんですよ。なのでこれから先はどうすればいいのか俺に命令して下さいね。
 たくさん虐めてあげますから」

 伊吹は今まで翠に絶対に見せなかった緩んだ笑顔で「はい」と頷いた。 
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