乱交パーティー出禁の男

眠りん

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一章

十七話 縛り

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 大学での講義が終わり、伊吹は真っ先にラブピーチに帰る。ラブピーチ前で待ち合わせをしていた翠と合流し、ホテル内へと入った。

「ただいま」

 自宅に帰宅したように受付に座っているバイトスタッフに挨拶する。

「あ、伊吹さん! 翠さんも、お疲れ様です」

「お、お疲れ様です」

 翠が慌てて挨拶した。

「瑞希さん先に来てますよ、七階へ向かいました」

「えっ、早いな。分かりました。ちょっと店長達に言う事あるから、翠はちょっとここで待っててな」

「はい」

 店長室へ入り、水曜の地下イベントを店長と副店長に任せた。
 受付近くで待っていた翠と共に七階へ向かう。
 部屋の中には既に瑞希が待っており、二人の顔を見ると手を振ってきた。

「あ、やっほー!」

 伊吹と翠もそれぞれ返事をする。

「よっ、お待たせ!」

「こんばんは」

 瑞希は床の上に大人の玩具を広げている。点検やら手入れをしていたようだ。

(人の部屋で何してんだ?)

 伊吹は内心不満に思いながらも、口には出さない。出せないと言った方が正しいだろうか。
 負い目がある為、瑞希がする事に意見出来ないのだ。
 扉近くで靴を脱ぐ。三人の靴が横に並んだ。

 瑞希がやる事を終えたのだろう、道具をしまうとニヤニヤした顔で茶化してきた。

「遅かったねぇ。もしかして、二人でエッチしてから来たの?」

「バカ言うなって。俺が講義終わった後ダチに捕まってただけだ」

「えー? 翠君はエッチしたいでしょ?」

 瑞希がそう聞くと、翠は顔を真っ赤にした。

「そ、そりゃ……したいですけど……」

「焦ってする事でもないだろ。なんでもかんでも話を下ネタに繋げんなよ。
 翠、とりあえず上だけ脱いでこっちに立ってろ」

 伊吹はクローゼットの扉を開いた。五つのスーツケースがあるが、それは伊吹専用の玩具だ。  それとは別にボストンバッグが入っており、それを手に取る。
 中身はわざわざ翠の為に用意しておいたものだ。ベッドの上に中身を広げた。

 SMで使う道具達だ。数本の纏められた縄と蝋燭、数種類の鞭、数種類の拘束具、口枷等。

「後ろで手組んで」

 伊吹が命じると、翠はその通りにした。

「じゃあここからは僕がやるね」

 と、瑞希が代わった。縄の扱いは瑞希が上だ。伊吹は椅子に座って二人を見た。

 瑞希は縄を真ん中で折って、二重にしてから翠の手首を縛り始めた。残った縄で胸の前を二周させる。
 女性なら乳房が浮き出るが、男なのでそうはならない。それでもしっかりと強めに縄を巻いていく。
 途中で縄が足りなくなり、追加して縄化粧を施す。

「とりあえず簡単な縛りをしたんだけど。どう? 痛いとか、気持ち悪いとかある?」

「いえ?」

「あまりキツくは縛ってないけど、縛られてみてどんな感じ?」

 翠は少し困った顔付きになった。どう答えていいか唸っている。

「縛られてるなぁって感じですかね?」

「そっか。慣れたら吊りをしても良さそうかな。その方がこっちとしては助かるんだけどね」

「吊り、ですか?」

 瑞希は天井を指さした。見ると一箇所、鉄製の輪っかがある。

「あそこから翠君を吊るすんだよ。地下のイベント会場にもあるよ」

「へぇー! 気付かなかったです」

 翠が上を見上げていると、伊吹が補足説明をすた。

「普段は天井見てもなにこれ? 程度で済まされるしな」

 翠が納得すると、次は瑞希が伊吹に話しかけてきた。

「ねー、今日は縛りの練習だけ? 蝋燭とか、鞭とかやるんなら、僕がやろうか?」

「二人で責めるし、それだけじゃなくて乳首責めとか、精神的な責めもいいよな」

「うんうん。健気で素直そうな子だし、調教するの楽しみ。反抗的な子より全然いいよね」

「そうか? 反抗してくる奴いたぶる方が好きだけど」

「ほんと、趣味合わないよねぇ」

「本当にな。そういや、NGプレイ決まった?」

 前回、どこまでがNGなのかまでは決めていなかったので、翠に何が嫌かを次回までに考えてくるよう課題を出していた。
 翠は淡々と答えた。

「とりあえず、浣腸して我慢とか、あと針で刺されるのは嫌です。SMのサイトとか色々見たんですけど、玉責めは怖いです。チンコ痛いのもキツいです」

 不安気な表情を浮かべる翠。伊吹は安心させるように努めて頷いた。


「了解。絶対しないと約束するから安心してくれ」

「もし伊吹がNG行為をしそうなら、僕が止めるから安心してね」

「はい」

 翠が瑞希を見て安心したような顔を浮かべると、瑞希はそのまま続けた。

「それと、やってて本当に嫌だったらストップって言って。セーフワードっていってね、それ言われたら僕達は絶対に止めるから」

「分かりました」

「嫌とか、ダメぇは止めないからね。安全なSMプレイを心掛けてね。
 もし口を塞いでてセーフワード言えない時は、態度で示して」

「それで分かるんですか?」

 翠の表情が暗くなった。不安になったようだ。
 伊吹が答える。

「信頼関係っていうのはそういう事だ。言われなくともお前の反応見て、無理そうならやめるし。俺らが翠に慣れるまでは口塞いだりしないから」

 伊吹がジッと翠を見つめると、翠の頬が赤くなった。不安げな顔は一瞬にして恋する顔に変化する。

「わ、分かりました」

 そんな妙な空気を打破したのは瑞希だった。ハイテンションで仕切ってくる。
 伊吹も翠に期待している。気持ちは瑞希と同じだ。

「よーし! じゃあ今日は鞭打ちをしようね。どうせショーは来週からでしょ。それまでに翠君を立派なMちゃんにしなきゃ」

 瑞希は翠のズボンを脱がせてパンツ一枚にすると、ベッドの上に翠を突き飛ばした。
 縛られている為に動けないでいる翠を、瑞希が動かして体勢を整えさせる。うつ伏せの状態で、両肩を支えに膝立ちをさせた。背中が反り返って尻が上に向いている状態だ。

「まずは初心者向けのバラ鞭からね。バラ鞭にも色々種類があるんだけど、今日は軽いヤツだから安心して」

 瑞希は中でも一番小さくて軽い、スエード製のバラ鞭を手に取った。

「ちょっと待て、瑞希がやんのか?」

 今日鞭打ちをするのは自分だと思っていただけに伊吹は瑞希を止めた。理由の分からない苛立ちと、焦燥から眉間に皺を寄せた。

「えっ。だって、伊吹は公開処刑でやってるでしょ?」

「ちゃんとしたのはやってねぇよ」

「えーでも二回も責めてるんでしょ? 僕、翠君の事一度も責めてないから、どんな反応するかとか、どこまで耐えられるかとか、見ないといけないし」

「そうか」

「そーでしょ~? 急に怒り出してビックリした。何、ヤキモチ?」

「そんなんじゃねぇよ」

「どうだか。今日は僕が翠君と遊ぶよ。ね? いいでしょ?」

「仕方ねぇな。瑞希終わったら俺な」

「翠君疲れちゃうよ。ねぇ? 翠君?」

「終わったら伊吹さんに代わってもらっても良いですか? 最後に残る感触は伊吹さんがいいんで。
 瑞希さんで終わるとか嫌ですよ」

 翠は結構自分の意見をはっきり言うタイプなようだ。反抗的ではないが、瑞希は好まないタイプだろう。
 笑顔を作りながらも、口の端が歪んでいる。

「ふぅん? まぁいいよ。君の事少し分かった気がするし。健気なのは伊吹に対してだけで、良い意味でも悪い意味でも素直なんだねぇ。
 言わない方が良い事言っちゃうタイプの。
 ちょっと生意気かなぁ?」

「おい、瑞希?」

「覚悟してね、翠君。ちょーーーーっとだけ、優しく出来ないかもしれないからね」

 バラ鞭を握り潰しそうな勢いで握った瑞希を、止められる術は伊吹にはない。

(今謝ればまだ怒りを鎮めてくれるかもしれない!)

 伊吹は慌てて翠に「翠、謝った方がいい」と言おうとしたのだが、もう遅かった。

「え? でもセーフワード言えば止めてくれるんですよね? 優しく出来なくても、俺が拒めば問題ないと思いますけど。
 あれだけ安心してって言ってたのに、朝令暮改ですか」

「ちょう……? 意味分かんないけどバカにされたって事だけは理解した。
 ねぇ伊吹、この子壊してもいいかなぁ?」

 瑞希の手には何故か、バラ鞭ではなく伊吹が用意していない浣腸用の注入器が握られており、グリセリンを用意しようとしていた。
 伊吹は慌てて翠に注意する。

「瑞希何してんの!? 翠! 謝れ、マジでコイツ怒らすと、面倒でしかないんだよ。
 今、後ろで浣腸しようとしてるからな」

「えっ!? すみません! すみません!」

「許さない」

「生意気言いました。許してください。もう言いません。態度も改めます」

 瑞希はまだ納得してないようだが、渋々浣腸器とグリセリンをしまい、バラ鞭に持ち替えた。

「今回は許すよ。次はないからね。
 SM中は練習であっても僕の事をご主人様って呼んで」

「はい、ご主人様」

「次生意気言ったら、浣腸ね。NGは浣腸して我慢だもんね? 我慢させなければ何度入れても良いって事でしょ?
 ケツが開ききってユルユルになるまで色んな液体入れてやるから。グリセリン原液とか、牛乳とか、炭酸水入れてもいいよねぇ」

「ひぃっ!」

「分かったら反抗しない事」

「すみませんでした」

 ようやく瑞希の機嫌が直った。伊吹はホッと胸をなで下ろした。その後は瑞希の責めを監視していた。
 何が「伊吹がNG行為をしそうなら止める」だ。瑞希こそ、NG行為はせずとも想像すらしていなかった酷い事をしでかしそうで恐ろしい。
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