乱交パーティー出禁の男

眠りん

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一章

十四話 三人集結

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「なっ、キャストになろ? 俺と二人で翠君いじめるの楽しいと思わねぇ?」

 瑞希は困惑した表情をしているが、伊吹には通用しない。やりたいが、乱交パーティーに参加する暇がなくなる事を考えて悩んでいるのだと分かる。

「楽しそうだけど。僕も忙しいからなぁ。
 普段はSMデリヘルと普通のデリヘル掛け持ちして、乱パ参加してさ。たまにSM講座の講師として教えたりしてるし。
 日曜だけ休みにしてるけど緊縛ショー見に行きたいから休みにしてるだけで、ショーがない時はお客さんとデートしたりしてるしぃ」
 
「そんな事言わずにさぁ。じゃあ参加してくれたら乱パの参加費無料にしてあげる。一回ショーに出たら乱パの参加一回無料。
 ちゃんとキャストとしての報酬も支払うし、なっ? どうだ?」

「キャストの報酬はどれくらい?」

「収益の二割でどう? 例えば一回あたり五万だとしたら、一万が瑞希の取り分。
 客が増えればその分収入も増えるよ」

「スイ君の取り分は?」

「三割の予定。残り五割が店の売上。瑞希は報酬とプラス乱パ一回無料だから一番得してるんじゃないかな」

「一番得してんのは店だろ」

「何言ってるの。運営費だってかかってるんだから実益はそうでもねぇよ」

「まぁそうか。いいよそれで手を打つ」

「契約書は後で作るから明日の夕方またここに来れる? 翠も来るから顔合わせ兼ねて」

「いいよ」

 瑞希はリュックを背負った。その顔には少し疲れが出ている。

「その翠君がSでお前を管理してくれたら良いんだけどねぇ。僕も迷惑被らなくて済むし。
 暇そうに見えるかもしれないけど、僕これから仕事なんだよ。SMのさ。深夜から明け方までお前みたいなドMを調教して、いたぶらなきゃいけないの。
 お前の突発的なドM発動、マジで勘弁だよ」

「すげー体力。それでも付き合ってくれるなんて優しいよな」

「別に。僕もいじめたくなっちゃったし、金もらったからこれ以上文句言わないよ。じゃーねぇ」

「うん」

 お互い手を振り合うと、瑞希は帰っていった。


 翌日の夕方。大学の授業が終わり校門を出ると翠が立っていた。

「あれ、翠? なんでいるの?」

「恋人を迎えに来たんですよ」

「へぇ。ありがとう」

「今日も伊吹さんは綺麗ですね」

「褒めたってプレイで手加減しないぞ」

「分かってますよ」

 優しい年下彼氏。それだけなら伊吹も恋愛ごっこを楽しめたのだろうが。翠に対しては遊びの付き合いだとしてもあまり気分が良くない。
 嫌いとは違う。だからといって好きでもない。初めて出来た彼氏がそんな相手というのが残念でならない。

「体の調子は? 竿と玉、まだ痛む?」

「まだ痛いですよ」

「ごめん。あんまり痛みが引かないようなら病院行って、診断書もらってきて。医療費は払うから」

「えっ、いや大丈夫ですよ。少しずつ引いてきてるんで。病院行く程じゃないです」

「それならいいけど。それでさ、SMショーのキャストなんだけど、翠だけじゃなくてもう一人俺の助手として、瑞希って奴が加わる事になったから」

「えっ!? なんでですか!?」

「なんで……って。瑞希は理性的だし、責め方も俺みたいに欲望に任せるようなやり方じゃなく、あくまでM主体でやってくれる。
 それに……この前みたいに俺が暴走した時歯止めになってくれるからな」

「酷いです。俺と伊吹さん初の共同作業が……」

「共同作業ならもうしてるだろ。公開処刑でさ」

「それもそうですね!」

 無理に納得させてホテル「ラブピーチ」へと帰った。七階フロアに入って瑞希を待つ事にする。
 ソファーに対面で座って適当に過ごしていると、翠が質問をしてきた。

「瑞希さんってどんな方なんですか?」

「超童顔。初めて見た人は子供が紛れ込んでるって勘違いするよ」

「えっと……内面は?」

 外見は特に興味がなさそうだ。翠はあまり人の容姿にこだわらない人なのかもしれない。

「結構粘着質かな。変わり者だよ。三度の飯よりSMが好きで、輪姦される事に関しては、人生かけてるってくらい輪姦願望強い。けど主導権は自分が握ってないと気が済まない支配欲強いタイプ。
 知り合った男とは、とりあえずセックスしたいって言ってる超ビッチ。でもって超が付くほどのドS。SMに関してはプロ中のプロだけどな。
 超絶倫で、体力有り余りすぎてる変態」

「うーん。エッチな人なんですね?」

「その一言で片付けちゃったよ」

「もしかして俺が初めて乱パ来た時いました?」

「いたよ。輪姦されてた。ちなみに奴とは小学三年生の頃からの付き合いだ」

「長いですね……。伊吹さんに近しい人だから会うの楽しみです」

 そんな会話をしていると、チャイムが鳴った。伊吹が扉を開き、瑞希を招き入れた。
 翠と瑞希はお互い向かい合って立ち、挨拶を交わした。

「初めまして、伊吹から聞いてると思うけど、僕佐々木瑞希です! 瑞希って呼んでねぇ」

「柳川翠です。瑞希さんでいいですか?」

「いいよ~。ね、翠君。話は伊吹から聞いてるよ。健気で可愛いって。ねーっ!」

「おい、そんな事言ってないぞ」

「顔に書いてあった」

 瑞希は、翠をベッドに座るよう促してからその隣に座った。翠は困惑気味で、瑞希をチラチラ見ている。
 それが伊吹には何故か気に入らない。

「僕、中学生くらいだと思った?」

「あっ、見た目は……でも、伊吹さんから聞いてましたから」

「年下の男の子可愛い~。いつもオッサン相手ばっかだから、年下って新鮮だねぇ」

 瑞希はクスクスと笑った。翠もつられてか微笑んでいる。
 瑞希なら誰とでも上手くやれるだろうと思っていたので、想定内だ。伊吹は安心して書類を用意し、話を始めた。

「二人が仲良くなれそうで良かったよ。とりあえずこれ、契約書と、報酬の受け取り先の口座情報記入して、あと誓約書と、この規約と……」

「なんかバイトみたいですね?」

 バインダーに挟んだ紙をそれぞれ翠と瑞希に渡すと、瑞希は慣れたようにスラスラ書いていたが、翠は困惑した様子だ。

「そりゃ、バイトみたいなものだし」

「そうなんですか!?」

「キャストになるって事はつまり、当ホテルが主催する公式のSMショーのイベントキャストになるって事だ。
 報酬を与える以上、契約は結んでもらうよ。完全歩合制で翠は個人事業主って事になるね。つまり業務委託契約を結ぶ感じだな」

「聞いてないですよ!」

 翠は驚いて声を荒らげた。今まで伊吹に一度も文句を言った事はなかったが、今回に関しては不満な様子だ。

「じゃあやめる?」

「うわ、また説明してなかったの? 伊吹、オーナーとか社長とか絶対向いてないよ。ブラック企業って社長さんが作るんだねぇ?」

 既に洗礼を受けた事のある瑞希はやれやれという顔で文句を言い始めた。

「そ、そんな事ないぞっ。言ってなくて悪かった。言い忘れていたというか、分かってるものだと思い込んでたんだ。
 翠はやめたいか? 報酬は一度の売上の三割だ、悪い話じゃないだろ?」

「そもそも俺は伊吹さんに命令されたら断れないですから、契約しますよ。次からは説明してくださると嬉しいです」

 翠が少し文句を漏らしながら書類に記入を始めた。
 ここで頓挫するかと思い、内心焦った伊吹はその姿を見て安堵したのだった。
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