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一章
十話 翠への敬意
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※読んでいて無理だと感じたら退出して下さい。
それから何度乳首に針を刺そうが、翠は黙って耐えていた。彼の額からは汗が滝のように流れて落ちる。絶対に声を上げまいと噛み締めた唇からは血が滲んでいた。
両乳首には上下左右の四本ずつ針が貫かれている。
伊吹は翠が初心者の為、これでもまだ手加減をしていたつもりでいた。
声を出してはならないというルールは、出ないわけがないという計算の元からだ。
最初に明かしているが、今回の公開処刑の終着点はフィストである。
絶対不可能なミッションを課していて、出来なければ最終的には自分の腕を入れるときちんと明言している。
翠はそんな意図には気付かなかったのだろう。伊吹も、翠がここまで耐えてしまうとは想像していなかった。
きちんと叫んでくれていれば、針もここまで刺すつもりはなかったのだ。
伊吹は乳首以外に苦痛を感じられそうな場所を考える。
……──と、ここで悪い考えが伊吹の頭をよぎった。
(……性器への針責め……いやいやいや、さすがにそれは反則だよな)
ペニスの包皮や亀頭や陰嚢に針を刺すのはドMでも、どこかぶっ飛んでいる人でなければ快楽など味わえないだろう。特に陰嚢は下手をすれば精巣を傷付けてしまう恐れもあるので、下手に刺せる場所ではない。
上級者ともなると、肉棒を横から針で貫通させる者もいる。
生殖器の痛みを享受出来るのは、命知らずな自分の命も軽んじるようなド変態のみだ。
初心者相手にそこまでは出来ない。
だが、このままでは乳首への針責めの後、鞭を十回打って終わりになってしまう。
それでは客が楽しめない。また甘い責めをしているとクレームがくるだろう。
時折、尻穴にはまっているバイブの振動を強くしたり、中でグリグリ動かしたりしているが、それにも声を上げる事がなかった。
客席を見ると、退屈そうにしている客の顔が見えた。
この舞台上で負けるなど、許し難い屈辱だったが、もう時間もない。
負けを認めると決断した。だが、ただ負けを認めるだけでは終わらせない。
「スイ君って、本当に我慢強いんだね!
俺もう降参~。最後に鞭打ちだけ十回耐えてもらいましょう!
スイ君、鞭の時は叫んでいいよ」
と、伊吹はバラ鞭を手にした。
「ここまでしておいてですが、スイ君初心者なのでバラ鞭で勘弁してあげます」
客席は眠そうにしている者もいる。バラ鞭で尻を十回叩くくらい、初心者相手でも甘い方だからだ。
バラ鞭はスエード素材。それでもしっかりとした造りなので、十分痛みを与えられるが、見慣れている客達には少し物足りなく感じる。
伊吹が罰を与えると言うのなら、棒のように一本に伸びた先端が平べったくなっている乗馬鞭か、持ち手の先から細いレザー製の紐が伸びている一本鞭だろうと、伊吹を知っている常連は想像する。……そう確信している事だろう。
ニッコリと、伊吹はエックス字に拘束したままの翠に鞭を構えた。だが、何をされるか理解した翠の表情は引き攣っている。
これは翠との勝負だ。前回のように帰す時に翠に余裕の顔を見せられたら伊吹は負けるのだ。
矜持が傷付けられる。
容赦ない目で、伊吹は鞭を翠の男性器目掛けて渾身の力で振るった。バシンッと鈍い音が響く。
痛みを与える為の打ち方だ。
「ぎゃああああああああっ!!」
マイクが拾った音が会場内に響き、キィィンとハウリングが起こった。裏で音響の管理をしている店長が慌てて音量を小さくする。
元々勃つ気配のなかった翠の男性器だが、針責めにより完全に萎ませていた。
そこ打たれると、当然だが同時に睾丸にも鞭が当たる。その激痛は受けた者のみしか分からない。
伊吹はその痛みより更なる痛みを知っている。Mであるが故に、この程度はまだまだレベルが低いと思ってしまいがちだが、初心者相手に手加減する事は念頭に置いておく。
それでもSMに興味のない一般男性が耐えられないレベルの痛みは与えるつもりだ。
もう翠に対して怒りの感情はなかった。ルール違反も、痴漢も、伊吹な対する無礼も、全て許せる。
それほどまでに翠に興奮している。
「二回目いっくよ~」
もう一度同じく肉棒と睾丸へと鞭を打つ。
「ひぃぎっ、あああっ、い、伊吹さん……もうやめっ、ごめんなさい! ごめんなさい! もうしませんっ!」
苦痛の叫び声が心地良い。もっとその声を聞きたくなる。
確かに伊吹は肉体的にはドMだが、精神的にはSの一面もある。ドMだからといって、一概にSの要素はないとは言えない。
「またまたぁ。乳首の針責め耐えられたんだから、どうって事ないでしょ?」
「なっ、これと乳首とじゃ痛みの度合いが全然……はぁ、はぁっ……」
叫んだ為か息が切れたようだ。翠は肺を大きく上下させている。
「痛いよねぇ。分かる分かる。あはは」
余計に痛みを与えたくなった伊吹は、翠の赤く腫れたペニスと睾丸を一気に掴むと、握り潰すように力を入れた。
「ふっ、ぎゃあああああああっ!!」
「このまま玉潰してやろうか?」
「やめっ……やめぇぇっ……ひゃめて、くだひゃいぃ」
「あははっ、冗談に決まってるじゃん。握ったのは鞭打ちとは別だからな。あと八回、耐えろよ」
バシン、バシン、とペニスと陰嚢に当たるように鞭を打っていった。その度に翠は絶叫し、鼻水が流れ、口からは涎が垂れている。目隠しをしている黒い布は、汗か涙か、びっしょり濡れている。
観客も最初は歓喜していたが、翠の痛がり様に、段々ハラハラしてきている様子だ。
「うぅぅ。伊吹さん……ごめんなさい……もう、やめてください。そこ、打たないでください。
俺、何でもしますから、ごめんなさい」
「うーん。頑張ってあと残り五回耐えてよ、そしたらスイ君のお願い事を一つだけ叶えてあげようかな?」
「え……? 伊吹さんが、そんな事……」
「普段の俺なら絶対言わないよ。
でも、ここまで耐えてくれたスイ君をリスペクトしてるんだよね。
最後まで耐えられたら俺が何でもひとつ願いを叶えてあげる。ここで中断するなら今後俺に接触しないって書面で誓約してもらう。
どっちがいい?」
観客達が息を飲み注目する中。伊吹の甘い誘いに、翠は迷う事なく答えた。
「分かりました。俺のチンコ、あなたに任せます」
「よく言った。それでこそ、俺のストーカーだ」
伊吹はまた容赦なく打つ。
打つ度に翠は泣き叫んだ。ようやく十回打ち終わると、翠が安堵に溜息を漏らした瞬間……。
バシンッ!! と伊吹は大きく鞭打った。
翠の陰嚢に激しく当たり、背中を大きく仰け反らせた。
「ぃっぎゃああああああっ!!」
終わったと思い、完全に気が抜けていたのだろう。
「なっ、なんで……もう、十回、終わったんじゃ……?」
「えー? 俺数えてなかったからなぁ。
まだ五回しか打ってなくない? あと五回だな」
「そっ、そんな!」
「いいか? 今この場はルール違反の制裁の為の公開処刑場なわけ。どんな理不尽要求されたって、お前に逃げる権利ねぇの。
どうするの? あと五回耐えて願いを叶えるか。今すぐやめて、チンポに針刺すか、今選べよ」
「うぅ……あと五回、打ってください」
「ちゃんと数えろよ。口に出して数えてない分はカウントしないからな」
ここまでして、ようやく翠に勝てた気がした。その嬉しさから笑みが零れる。
伊吹は今までで一番強く男性器目掛けて鞭を打った。
「ひぃぎゃああああああっ! っ……い……ちぃ……」
「カウント前に俺が打ったらノーカンだからな。次ぃっ!」
「にー……いだぁぁぁぁあああっ!!」
「今の聞こえなかったな、次二回目だな。ちゃんと数えろよ」
「そんなぁっ、いやぁぁあああああっ! にっ! に!! にぃ!!」
「あはははっ!」
翠の口からはボタボタと涎が垂れた。叫び過ぎて喉もやられたようで、声が掠れてきている。
それすらも責める理由にする。掠れて数が聞こえなかったからもう一回と……。
気付けば翠は気絶していたのだった。
それから何度乳首に針を刺そうが、翠は黙って耐えていた。彼の額からは汗が滝のように流れて落ちる。絶対に声を上げまいと噛み締めた唇からは血が滲んでいた。
両乳首には上下左右の四本ずつ針が貫かれている。
伊吹は翠が初心者の為、これでもまだ手加減をしていたつもりでいた。
声を出してはならないというルールは、出ないわけがないという計算の元からだ。
最初に明かしているが、今回の公開処刑の終着点はフィストである。
絶対不可能なミッションを課していて、出来なければ最終的には自分の腕を入れるときちんと明言している。
翠はそんな意図には気付かなかったのだろう。伊吹も、翠がここまで耐えてしまうとは想像していなかった。
きちんと叫んでくれていれば、針もここまで刺すつもりはなかったのだ。
伊吹は乳首以外に苦痛を感じられそうな場所を考える。
……──と、ここで悪い考えが伊吹の頭をよぎった。
(……性器への針責め……いやいやいや、さすがにそれは反則だよな)
ペニスの包皮や亀頭や陰嚢に針を刺すのはドMでも、どこかぶっ飛んでいる人でなければ快楽など味わえないだろう。特に陰嚢は下手をすれば精巣を傷付けてしまう恐れもあるので、下手に刺せる場所ではない。
上級者ともなると、肉棒を横から針で貫通させる者もいる。
生殖器の痛みを享受出来るのは、命知らずな自分の命も軽んじるようなド変態のみだ。
初心者相手にそこまでは出来ない。
だが、このままでは乳首への針責めの後、鞭を十回打って終わりになってしまう。
それでは客が楽しめない。また甘い責めをしているとクレームがくるだろう。
時折、尻穴にはまっているバイブの振動を強くしたり、中でグリグリ動かしたりしているが、それにも声を上げる事がなかった。
客席を見ると、退屈そうにしている客の顔が見えた。
この舞台上で負けるなど、許し難い屈辱だったが、もう時間もない。
負けを認めると決断した。だが、ただ負けを認めるだけでは終わらせない。
「スイ君って、本当に我慢強いんだね!
俺もう降参~。最後に鞭打ちだけ十回耐えてもらいましょう!
スイ君、鞭の時は叫んでいいよ」
と、伊吹はバラ鞭を手にした。
「ここまでしておいてですが、スイ君初心者なのでバラ鞭で勘弁してあげます」
客席は眠そうにしている者もいる。バラ鞭で尻を十回叩くくらい、初心者相手でも甘い方だからだ。
バラ鞭はスエード素材。それでもしっかりとした造りなので、十分痛みを与えられるが、見慣れている客達には少し物足りなく感じる。
伊吹が罰を与えると言うのなら、棒のように一本に伸びた先端が平べったくなっている乗馬鞭か、持ち手の先から細いレザー製の紐が伸びている一本鞭だろうと、伊吹を知っている常連は想像する。……そう確信している事だろう。
ニッコリと、伊吹はエックス字に拘束したままの翠に鞭を構えた。だが、何をされるか理解した翠の表情は引き攣っている。
これは翠との勝負だ。前回のように帰す時に翠に余裕の顔を見せられたら伊吹は負けるのだ。
矜持が傷付けられる。
容赦ない目で、伊吹は鞭を翠の男性器目掛けて渾身の力で振るった。バシンッと鈍い音が響く。
痛みを与える為の打ち方だ。
「ぎゃああああああああっ!!」
マイクが拾った音が会場内に響き、キィィンとハウリングが起こった。裏で音響の管理をしている店長が慌てて音量を小さくする。
元々勃つ気配のなかった翠の男性器だが、針責めにより完全に萎ませていた。
そこ打たれると、当然だが同時に睾丸にも鞭が当たる。その激痛は受けた者のみしか分からない。
伊吹はその痛みより更なる痛みを知っている。Mであるが故に、この程度はまだまだレベルが低いと思ってしまいがちだが、初心者相手に手加減する事は念頭に置いておく。
それでもSMに興味のない一般男性が耐えられないレベルの痛みは与えるつもりだ。
もう翠に対して怒りの感情はなかった。ルール違反も、痴漢も、伊吹な対する無礼も、全て許せる。
それほどまでに翠に興奮している。
「二回目いっくよ~」
もう一度同じく肉棒と睾丸へと鞭を打つ。
「ひぃぎっ、あああっ、い、伊吹さん……もうやめっ、ごめんなさい! ごめんなさい! もうしませんっ!」
苦痛の叫び声が心地良い。もっとその声を聞きたくなる。
確かに伊吹は肉体的にはドMだが、精神的にはSの一面もある。ドMだからといって、一概にSの要素はないとは言えない。
「またまたぁ。乳首の針責め耐えられたんだから、どうって事ないでしょ?」
「なっ、これと乳首とじゃ痛みの度合いが全然……はぁ、はぁっ……」
叫んだ為か息が切れたようだ。翠は肺を大きく上下させている。
「痛いよねぇ。分かる分かる。あはは」
余計に痛みを与えたくなった伊吹は、翠の赤く腫れたペニスと睾丸を一気に掴むと、握り潰すように力を入れた。
「ふっ、ぎゃあああああああっ!!」
「このまま玉潰してやろうか?」
「やめっ……やめぇぇっ……ひゃめて、くだひゃいぃ」
「あははっ、冗談に決まってるじゃん。握ったのは鞭打ちとは別だからな。あと八回、耐えろよ」
バシン、バシン、とペニスと陰嚢に当たるように鞭を打っていった。その度に翠は絶叫し、鼻水が流れ、口からは涎が垂れている。目隠しをしている黒い布は、汗か涙か、びっしょり濡れている。
観客も最初は歓喜していたが、翠の痛がり様に、段々ハラハラしてきている様子だ。
「うぅぅ。伊吹さん……ごめんなさい……もう、やめてください。そこ、打たないでください。
俺、何でもしますから、ごめんなさい」
「うーん。頑張ってあと残り五回耐えてよ、そしたらスイ君のお願い事を一つだけ叶えてあげようかな?」
「え……? 伊吹さんが、そんな事……」
「普段の俺なら絶対言わないよ。
でも、ここまで耐えてくれたスイ君をリスペクトしてるんだよね。
最後まで耐えられたら俺が何でもひとつ願いを叶えてあげる。ここで中断するなら今後俺に接触しないって書面で誓約してもらう。
どっちがいい?」
観客達が息を飲み注目する中。伊吹の甘い誘いに、翠は迷う事なく答えた。
「分かりました。俺のチンコ、あなたに任せます」
「よく言った。それでこそ、俺のストーカーだ」
伊吹はまた容赦なく打つ。
打つ度に翠は泣き叫んだ。ようやく十回打ち終わると、翠が安堵に溜息を漏らした瞬間……。
バシンッ!! と伊吹は大きく鞭打った。
翠の陰嚢に激しく当たり、背中を大きく仰け反らせた。
「ぃっぎゃああああああっ!!」
終わったと思い、完全に気が抜けていたのだろう。
「なっ、なんで……もう、十回、終わったんじゃ……?」
「えー? 俺数えてなかったからなぁ。
まだ五回しか打ってなくない? あと五回だな」
「そっ、そんな!」
「いいか? 今この場はルール違反の制裁の為の公開処刑場なわけ。どんな理不尽要求されたって、お前に逃げる権利ねぇの。
どうするの? あと五回耐えて願いを叶えるか。今すぐやめて、チンポに針刺すか、今選べよ」
「うぅ……あと五回、打ってください」
「ちゃんと数えろよ。口に出して数えてない分はカウントしないからな」
ここまでして、ようやく翠に勝てた気がした。その嬉しさから笑みが零れる。
伊吹は今までで一番強く男性器目掛けて鞭を打った。
「ひぃぎゃああああああっ! っ……い……ちぃ……」
「カウント前に俺が打ったらノーカンだからな。次ぃっ!」
「にー……いだぁぁぁぁあああっ!!」
「今の聞こえなかったな、次二回目だな。ちゃんと数えろよ」
「そんなぁっ、いやぁぁあああああっ! にっ! に!! にぃ!!」
「あはははっ!」
翠の口からはボタボタと涎が垂れた。叫び過ぎて喉もやられたようで、声が掠れてきている。
それすらも責める理由にする。掠れて数が聞こえなかったからもう一回と……。
気付けば翠は気絶していたのだった。
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