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四章 少年売買契約
五話 狂気の山下
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春哉と柳瀬は校内を走った。山下がいそうな場所を探したのだが、見当たらない。
時間だけが刻一刻と進んでいった。
二手に分かれて探したが、見つからずに教室に戻った。もうホームルームも終わって教室は誰一人いない。
「須賀! 山下いたか?」
「ううんっ、どこ行ったんだろう?」
山下が行きそうなところはあらかた探したし、行かなさそうなところも探したのだが、どうしても見当たらない。
「ねぇ。山下は僕に嫌がらせしようと思ったんじゃない?」
「だと思う。なんで須賀を目の敵にするのか知らねぇけど」
「だよね。僕らが山下を仲間外れにしたって理由なら、柳瀬が何も無いのはおかしいしね」
「仲間外れ?」
春哉の言葉に柳瀬はキョトンと口を開いた。当然仲間外れにした自覚はない。
「してたんだよ。ほら、柳瀬が僕に告白してから、僕と柳瀬の距離感ってちょっと縮まったじゃない」
「告……ってその話蒸し返すなって」
「いや、大事な話! 多分山下から見て、僕と柳瀬の距離感が近いから、山下一人が疎遠になったように見えてもおかしくない筈」
「なるほど。お前……入学当初は全然周り見えてなかったのに。成長早いな」
「感心してる場合じゃないよっ」
「悪い。でもまだ山下の鞄はあるし、校内にはいる筈だよな! もう一度探そう!」
「うん!」
また二手に分かれて探そうと、教室から出ようとした時だった。
ガラララと、ゆっくりと教室の引き戸を開ける音がして、暗い顔をした山下が教室に入ってきた。
「山下! 探したぞ、どこ行ってたんだよ!」
柳瀬が山下に問い詰めようとしたが、山下は無視をして、他に男子生徒五名を引き連れて教室に入ってきた。
「山……下……?」
「うるさいな。皆、この二人好きにしていいよ」
山下がそう言うと、五人の男子は春哉と柳瀬に向かって走り出した。
ガタイが良い柳瀬には三人が襲いかかり、比較的華奢な春哉に二人が襲いかかる。
「テメェらなんだよ!」
殴られそうになる柳瀬だが、拳を作って応戦しようとした。
「待って、柳瀬! 殴っちゃダメだ!」
春哉の声に驚いて手が止まった柳瀬は、一人に殴られると転倒し、三人に蹴り付けられた。
「あっ、ぐぅっ……!」
暴力に慣れていない柳瀬は体を丸めるしか方法が分からずに、ただ痛みに耐えている。
春哉も同じ様に殴られたり蹴られたりしていた。
「柳瀬っ! 反撃はダメだ、絶対! 試合出れなくなる!」
柳瀬は来月試合に出る予定だ。一年生の中で数人だけが抜擢されて、有望選手だとコーチや先輩からも期待されている。
中学時代は試合にあまり出させて貰えなかったレベルだったが、今は中学の時にレギュラーだった者達と張り合える程レベルアップした。
ここで問題を起こす訳にはいかなかった。
「く、クソ……」
「君達、お金で雇われてるんでしょ!?」
春哉が大きい声でそう叫んだ。その声で五人の男子達は暴行を止めた。
「良いのかな? 僕達が訴えれば、最悪高校退学だよ。一時の利益に目が眩んで、将来潰されてもいいの?」
「知るかよ! テメェらが訴えられないようにすればいいんだろうが! おい、二人とも服脱がせ!」
この高校は私立高校で比較的上流家庭の子供が多い。だが、中には不良のような者達もいる。
一人はスマホを持って写真を撮る準備を始めたので、弱味を握って脅せば言う事を聞くだろうという考えなのは春哉にもすぐに分かった。
不良達の手が伸びる前に春哉が大声で笑った。全員が動きを止める。
「それは出来ないよ。恥ずかしい写真とか、動画でも撮って脅すつもり?
いいよ、好きにすれば。僕は見られて恥ずかしい事なんてない。それより君達の今後の話でもしようか?」
不良の男子達は完全に動きを止めて春哉に注目していた。
慌てて山下が怒鳴った。
「お、おい! そいつの言葉なんか無視しろ! 金渡さないぞ!」
「そのお金は僕のだよね? 僕のお金盗んで、人を雇って暴行させるくらい僕と柳瀬が嫌いなの?」
「ああそうだよ! 目障りなんだよ、お前らなんか! おいっ金はやるから早くやれって言ってんだ!」
不良の一人が拳を振ろうとしたところで春哉がニヤッとした笑みで問う。
「ねぇ、そのお金もうもらった?」
春哉の言葉に不良達の動きは止まった。
不思議だろう、殴られる寸前だというのに余裕のある態度なのは。
狼狽える不良達を待たずに春哉は続けた。
「山下、嘘つきだし。本当にもらえるのかな? そのお金」
「なんだと?」
不良は五人とも山下の方を向いた。
「払う! なら今払う! こっち……」
不良が山下の方に近寄っていったので、柳瀬と春哉は身体が自由になった。
すかさずスマホを持った春哉が、それを耳に当てて大声で叫んだ。
「あ、もしもし! 先生、須賀です!! 早く一年Aクラスの教室に来てください!! 怖い人に殺されそうなんです!!」
その声を聞いた瞬間不良達は
「冗談じゃねぇよ!! 金は要らねぇ、俺ら関係ないからな!!」
と逃げていった。
残ったのは、立ち尽くしている山下と、床に座り込んだままの春哉と柳瀬だけとなった。
時間だけが刻一刻と進んでいった。
二手に分かれて探したが、見つからずに教室に戻った。もうホームルームも終わって教室は誰一人いない。
「須賀! 山下いたか?」
「ううんっ、どこ行ったんだろう?」
山下が行きそうなところはあらかた探したし、行かなさそうなところも探したのだが、どうしても見当たらない。
「ねぇ。山下は僕に嫌がらせしようと思ったんじゃない?」
「だと思う。なんで須賀を目の敵にするのか知らねぇけど」
「だよね。僕らが山下を仲間外れにしたって理由なら、柳瀬が何も無いのはおかしいしね」
「仲間外れ?」
春哉の言葉に柳瀬はキョトンと口を開いた。当然仲間外れにした自覚はない。
「してたんだよ。ほら、柳瀬が僕に告白してから、僕と柳瀬の距離感ってちょっと縮まったじゃない」
「告……ってその話蒸し返すなって」
「いや、大事な話! 多分山下から見て、僕と柳瀬の距離感が近いから、山下一人が疎遠になったように見えてもおかしくない筈」
「なるほど。お前……入学当初は全然周り見えてなかったのに。成長早いな」
「感心してる場合じゃないよっ」
「悪い。でもまだ山下の鞄はあるし、校内にはいる筈だよな! もう一度探そう!」
「うん!」
また二手に分かれて探そうと、教室から出ようとした時だった。
ガラララと、ゆっくりと教室の引き戸を開ける音がして、暗い顔をした山下が教室に入ってきた。
「山下! 探したぞ、どこ行ってたんだよ!」
柳瀬が山下に問い詰めようとしたが、山下は無視をして、他に男子生徒五名を引き連れて教室に入ってきた。
「山……下……?」
「うるさいな。皆、この二人好きにしていいよ」
山下がそう言うと、五人の男子は春哉と柳瀬に向かって走り出した。
ガタイが良い柳瀬には三人が襲いかかり、比較的華奢な春哉に二人が襲いかかる。
「テメェらなんだよ!」
殴られそうになる柳瀬だが、拳を作って応戦しようとした。
「待って、柳瀬! 殴っちゃダメだ!」
春哉の声に驚いて手が止まった柳瀬は、一人に殴られると転倒し、三人に蹴り付けられた。
「あっ、ぐぅっ……!」
暴力に慣れていない柳瀬は体を丸めるしか方法が分からずに、ただ痛みに耐えている。
春哉も同じ様に殴られたり蹴られたりしていた。
「柳瀬っ! 反撃はダメだ、絶対! 試合出れなくなる!」
柳瀬は来月試合に出る予定だ。一年生の中で数人だけが抜擢されて、有望選手だとコーチや先輩からも期待されている。
中学時代は試合にあまり出させて貰えなかったレベルだったが、今は中学の時にレギュラーだった者達と張り合える程レベルアップした。
ここで問題を起こす訳にはいかなかった。
「く、クソ……」
「君達、お金で雇われてるんでしょ!?」
春哉が大きい声でそう叫んだ。その声で五人の男子達は暴行を止めた。
「良いのかな? 僕達が訴えれば、最悪高校退学だよ。一時の利益に目が眩んで、将来潰されてもいいの?」
「知るかよ! テメェらが訴えられないようにすればいいんだろうが! おい、二人とも服脱がせ!」
この高校は私立高校で比較的上流家庭の子供が多い。だが、中には不良のような者達もいる。
一人はスマホを持って写真を撮る準備を始めたので、弱味を握って脅せば言う事を聞くだろうという考えなのは春哉にもすぐに分かった。
不良達の手が伸びる前に春哉が大声で笑った。全員が動きを止める。
「それは出来ないよ。恥ずかしい写真とか、動画でも撮って脅すつもり?
いいよ、好きにすれば。僕は見られて恥ずかしい事なんてない。それより君達の今後の話でもしようか?」
不良の男子達は完全に動きを止めて春哉に注目していた。
慌てて山下が怒鳴った。
「お、おい! そいつの言葉なんか無視しろ! 金渡さないぞ!」
「そのお金は僕のだよね? 僕のお金盗んで、人を雇って暴行させるくらい僕と柳瀬が嫌いなの?」
「ああそうだよ! 目障りなんだよ、お前らなんか! おいっ金はやるから早くやれって言ってんだ!」
不良の一人が拳を振ろうとしたところで春哉がニヤッとした笑みで問う。
「ねぇ、そのお金もうもらった?」
春哉の言葉に不良達の動きは止まった。
不思議だろう、殴られる寸前だというのに余裕のある態度なのは。
狼狽える不良達を待たずに春哉は続けた。
「山下、嘘つきだし。本当にもらえるのかな? そのお金」
「なんだと?」
不良は五人とも山下の方を向いた。
「払う! なら今払う! こっち……」
不良が山下の方に近寄っていったので、柳瀬と春哉は身体が自由になった。
すかさずスマホを持った春哉が、それを耳に当てて大声で叫んだ。
「あ、もしもし! 先生、須賀です!! 早く一年Aクラスの教室に来てください!! 怖い人に殺されそうなんです!!」
その声を聞いた瞬間不良達は
「冗談じゃねぇよ!! 金は要らねぇ、俺ら関係ないからな!!」
と逃げていった。
残ったのは、立ち尽くしている山下と、床に座り込んだままの春哉と柳瀬だけとなった。
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