少年ペット契約

眠りん

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十九話 嘘みたいな話

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 その翌日、お母さんは保険金殺人の事で出頭した。加担した証拠があったみたいで、結城っちも逮捕された。
 お母さんは結婚詐欺の事も話したんだけど、何故か被害者達が被害届を取り下げたそうで、殺人罪のみ起訴された。

 拓音が峰岸さんの力で揉み消したらしいよって言い出した。
 あの人がなんでそこまでしてくれんの? 理由ないじゃん。
 どうせ須賀さんが何かしたでしょ。絶対拓音も知ってて隠したんだろうな。

 それで、一審で実刑判決も下されて、お母さんは控訴しなかった。
 結城っちは控訴も上告もしたけど、結局上告審で実刑判決になってた。
 オレの好きな人みんな檻の中だよ。あー笑えない。
 大昔の犯罪なんて隠し通せば良かったじゃん。なんでみんなオレを置いていくかな?

 折角拓音の部屋で、雪夜を待ちながら毎日ゴロゴロ出来ると思ってたのにな。
 お母さんが出てくるまでに、守る準備しないと。その為に出来る事って勉強するしか出来ないのが悲しい。早く大人になりたいな。

 最近、自分の人生のエッセイなんかを少しずつSNSで発信してる。フォロワーも増えて、少し書くのが楽しくなってきた。
 中には嘘つくなって言ってくる人もいるけどね。でも、見てくれたからそういう感想が出てくるわけで。
 理屈は納得出来るけど、感情はそういうわけにはいかなくて。やっぱり批判されると傷付く。
 それでも続けようと思えたのは、応援してくれる人がいるからかも。


 色々悩んでる事をどうにかしたくて、拓音と夜ご飯を一緒にしてる時に相談してみる事にした。

 今晩のメニューはイタリアン風。スモークサーモンのカルパッチョと、ナスとベーコンをオリーブオイルで炒めたものと、カニ缶を使ったアーリオオーリオ。拓音には白ワインを用意したあげたよ。

 テーブルの上を今見て気付いた。ほぼオリーブオイルばっかだ。それだけ悩みが思考の殆どを占めたみたい。

「ねぇ拓音」

「どうした?」

「オレ拓音に借金返したいし、雪夜とかお母さんが出所したら、支えになってあげたいからお金を稼ぎたいんだけど……」

「借金? 別に貸したなんて思ってねぇよ。自分が飼ってる猫の母猫が困ってたから助けただけ。そんなもんに借金だなんだって騒ぐ奴はそもそも飼い主の資格なんかない」

「ペット扱いしてくれるのは嬉しいけど、それじゃオレの気が済まないよ。結城さんに振り込まれた二百万、そのまま拓音に返すよ。
 残りの百万は分割とかで払うし」

「いや、いいよ。それは、フミが頑張って俺んちで働いてくれた対価なんだから、ちゃんと受け取る事。
 あ、そうだ! 高校卒業したらホストになるか? 俺の店で働けよ。お前なら可愛い系で売れると思うし」

「雪夜に大学行けって言われてるから、ホストに就職はしないけど、バイトでやってみるのは良いかも。
 拓音みたいにたくさんの女性に愛されるホストってのもかっこいいだろうなぁ」

「おう。女性はいいぞ。綺麗で、可愛くて、いい匂いするし、柔らかいし。どんな女性でも喜ばせてやりたくなる」

「そうなんだ。オレ女の人に慣れてないけど大丈夫かな?」

 栞ちゃんなら慣れてるけど。お客さんが皆栞ちゃんみたいな人じゃないだろうし。
 学校の女子とか話した事ないや。

「やってりゃ慣れてくるさ。フミは男相手の方がいいのか?」

「ううん。好きになる人は男の人が多いけど、女性だから嫌っていうのはないよ」

「やってみて無理なら辞めればいい」

「うん。一度やってみるね! 高校卒業したらよろしくお願いします」

 オレは軽く頭を下げた。本当は面接してからじゃないと働けないもんね。
 コネって凄いなぁ。コネって思われないように頑張ろう。

「ああ、よろしく」

「あとさ……やっぱり、せめてお礼させて欲しいよ。拓音は何もする必要なかったのに、助けてくれて、お金返さなくていいって言ってくれて。
 何かオレに出来る事があればなんでもするよ。例えば、オレの身体とかどう?」

「男の身体に興味ないんだよ。まぁ確かにフミは可愛いし、フミを抱こうと思えば出来ると思う」

「それなら」

「フミは俺に抱かれたいの?」

 言葉が詰まる。本音としては抱かれたくない。オレは雪夜にしか触られたくない。

 落ち着いて考えてみると、ここまで大事にしてくれた人に、お礼が出来ないから身体を差し出しますって言うのって、その方がなんか無礼なような。

 身体だけじゃなくて魂まで安売りしてるみたいな、ぞわぞわした不快感があって気持ち悪い。
 お礼に身体を差し出すって事自体、良くない考えなのかも。

「フミ安心しろ。ペットとヤリたいバカはいねぇだろ。俺も同じだ。
 そういうのは一番大事な人とするもんだ」

 拓音からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。もしかして意外とピュアなのかな?
  初めては大事な人に取っておく派だったり。

「もしかして、拓音って童貞?」

「んなわけねぇだろ! なんだってそんな疑いをかけられたんだ。初めては十代の時だし、最近だと、お前の母親が出頭する前に抱いてるっつーのに」

「はあ!? お母さんと!? そんな時間あった?」

「フミが学校行った後」

「は? 人の母親に手ぇ出さないでよ!」

「美智子さん良いよな。悲壮感あって、俺の好み。近々婚姻届出すんだ。出所したら結婚式挙げようって約束してさ。だから、余計にフミとは寝れない」

「えっ? 何が? 一体何が起きてるの?」

 いやいや、何がどうしたらオレがいない数時間の間にそんな事になるんだろう?
 お母さんって確か四十二歳だよね? 拓音は何歳だ?

「オレに一言あっても良くない?」

「なんで? フミは堂島さんの息子だろ」

「養子になっても、お母さんはオレのお母さんだよ!」

「じゃあ今許しをもらおうかな。美智子さんの息子の文和君。お母さんとの結婚を許してください」

 拓音が真面目な顔して頭を下げてきた。オレがペットだって事を忘れて、お母さんの息子としてのオレに言ってるんだね。

「許します。反対する理由ないし。お母さんがもし今後再婚するなら悪い男に引っ掛からないようにオレが見張らないとって思ってたから。
 それなら拓音は合格だし」

「よしっ! これからもよろしくな。俺の息子として。第二のお父さんと思ってくれたらいいし」

「第二どころか、第四のお父さんなんじゃないかなぁ」

 拓音がどういう事だ? と首を傾げていたから、詳しく教えてあげた。
 そしたら拓音までネットで批判してくる人達みたいに信じてくれなかったんだけど!


 それから受験勉強が始まった。
 夢のゴロゴロ生活は諦めなきゃいけないかなって思ってたけど、拓音がゴロゴロする時間作ればいいじゃんって提案してくれた。

 だから週に一日、昼間に拓音とニ時間ベッドでゴロゴロする時間を作った。この時間が至福のひと時。
 どんなに忙しくなっても、この習慣は守っていきたいなぁって思う。

 毎日は忙しくなったけど、それなりに充実していたある日。
 放課後は、家に帰っても集中出来ないから、毎日学校に残って図書室で勉強をしてる。
 予備校とか通ってない人は残ってる人が多いから席を取るのが大変。
 集中して勉強するともう十八時だ。学校を出ると、校門で須賀さんが待っていた。

「やぁ、文和君。久しぶり」

 最初は嫌いになったけど、今は超絶信頼してるし、すごく好きな人だ。


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※ちなみに拓音は三十三歳です
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