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十二話 家政夫
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拓音の家はマンションだった。オレ、マンションに住むの初めて!
タワーマンションってやつ? 高層マンションで見た目も綺麗。
部屋は三十階だ。これ、停電になったら大変じゃないのかな?
あ、こういうマンションって予備電力あるんだっけ。
部屋の中は、キッチンやダイニング、リビング以外に四部屋もあった。4LDKって一人暮らしにしては広すぎじゃないかな!!
拓音がリビングのソファーにドカッと座っちゃったし、部屋の確認をしておこうかな。
寝室と、趣味の部屋と、衣装部屋と……誰かの部屋? 同居人でもいるのかな?
「拓音、今日は仕事は?」
時間は十五時だ。
ホストだったらこれから仕事だよね?
「今日は休みだよ。君を迎えに行く為にわざわざ休みにしたんだ。
部屋も使えるように用意してあるよ」
誰かの部屋だと思ってた部屋がオレに用意された部屋だった。
オレの人身売買の話は昨日出たばかりの筈だ。昨日の今日ですぐに準備をしてくれたんだ。
用意してもらった部屋の中に入る。シンプルにベージュと白で色が統一されていて、上品な雰囲気だ。女性が好みそうな。
雪夜の家のオレの部屋より広い。
ダブルベッドに、机と椅子が用意されていて、テレビも設置されている。他にも本棚やタンスもあって、中は空だから好きに入れて良いみたい。
「よく昨日の今日で用意できたね?」
「まぁな! 俺の世話してくれる人の部屋だと思ったからさ。
でも結城さんが全然説明してくれなくて、勝手に女の子だと思ってたんだ。インテリアとか、気に入らなかったら新しいものに替えてもいい」
「いや、拓音、ここまでされるとさすがに悪いよ。全然このままでいいし。
オレ、どうしたら三百万円分の仕事が出来るかな? 本当にエッチな事しなくていいの?」
心配になって拓音に再度確認した。だって、大金支払って、家事だけやってくれればいいだなんて、お人好しすぎる気がするんだけど。
後で変な要求されたりしないよね? されたとして断れないけど。
「いいんだよ。ちょっと元気過ぎる男の子でビックリしたけど、俺はフミの事ちょっと気に入ったし。
フミの要望通り、夜ご飯までゴロゴロしようか」
「やった!」
オレの部屋で拓音と布団に入ってゴロゴロした。拓音は「どこが楽しいのか分からない」なんて言ってる。
「こうやって、のんびーり好きな人と布団の中で過ごすのが、オレにとって一番の幸せなの」
「俺の事も好きって事?」
「拓音は優しいから好きだよ! オレの好きな人リスト増えていって嬉しい!」
「そっか。良い子だなぁ。でも、年上には敬語使った方がいいかもよ?
敬語使えないとこれから困るよ」
「あ、すみません。敬語の方が良いですよね? ちゃんと敬語使えますよ!」
てか、拓音に会った時ドン引きしたから、コイツには敬語じゃなくていっか、とか思ったんだよね。
社会出たらそうはいかないよね。オレが間違ってたな。
「いや、今までと同じでいいよ。敬語使われる方が落ち着かない」
「うん、じゃあそうする!」
やっぱり拓音の事は好きになれそう。良かった。
これで雪夜が出所するまでのんびりと待てるね。その頃はオレは十八歳か。雪夜は四十七歳になってるなぁ。
ちょっと将来の事は想像出来ないや……すやぁ……。
いつの間にか寝てたみたい。起きたら拓音いないし。一時間くらい寝ちゃってたっぽい。
部屋から出ると、拓音はリビングのソファーに座ってテレビを見てた。
「拓音、ごめんね、寝ちゃったみたいで」
「んーん。いいんだよ~。こっちおいで」
拓音が自分の膝をポンポンと叩いた。
そこに寝るように促されて、頭を拓音の膝に乗せた。
「俺、恋人とこーやって一緒にテレビ見んの好きなんだよね」
「オレ、恋人じゃないけど」
「じゃあテレビ見る時間は恋人のフリしててね。フミの仕事だよ」
「分かったよ。本当の恋人とはしないの?」
「仕事柄、恋人は作らない事にしてるんだ。色々面倒でね。もう五年フリーだよ。
でも恋人がいたらなって思う時も多いよ。こうして一人でいる時間とか」
「一人は寂しいよね」
それから二十時になるまで一緒にテレビを見た。ニュースの時は二人で議論を交わして、アニメの時は熱中した。バラエティーの時は二人で笑って、テレビを見終わってからオレは夜ご飯を作り始めた。
冷蔵庫には適当な食材が入ってたから、おかずを作って、夜ご飯を提供した。
これに関しては栞ちゃんの仕事手伝ったりしてて良かったな。
栞ちゃんは料理がそこまで得意じゃなかったお陰で、オレが調べたり、練習したりして、結局オレが栞ちゃんに教えたんだっけ。
「家庭料理で悪いけど、これで足りるかな?」
和食メインだ。サッと作ったから味が染みてない肉じゃがとか、ほうれん草のおひたしとか、もやし炒めとか、簡単なものを作った。ご飯も炊いたし、味噌汁も作った。
「十分だよ。作ってくれるだけで有難い」
「良かった。オレは拓音の後で食べた方がいいかな?」
「いや、一人で食べるより二人で食べた方が絶対美味いと思う」
「オレも同じ考え! じゃあ遠慮しないよ。オレ達、割と気が合うかもね」
「そうだな」
二人で向かい合って食事をした。やっぱり、誰かと食べるご飯は美味しいなぁ。
その後お風呂の用意して、拓音が入浴中にタオルとか着替えとか用意してあげた。
ベッドメイキングもバッチリ! 寝室に加湿器あったから一応水足して電源つけておいた。
ベッドサイドランプは埃被ってるのに、加湿器は埃被ってないから常用してるっぽいし。
今の内にランプやベッドヘッドの埃は綺麗にしておこう。他は明日やる。
拓音が風呂から上がって、パジャマ姿で出てきた。髪が全部下を向くと雰囲気が変わるなぁ。
イケメンに磨きがかかってるけど、好青年って感じでホストらしさはない。
オレはこっちの方が好きだな。
「フミ、お前意外と気が利くな」
「そうかな? あと、水を用意しておいたよ。良かったら飲んでね」
拓音はマグカップを持って一口飲むと、少し悩んだような顔をした。
「風呂上がりで暑いし冷たい飲み物がいいんだけど。氷入れてもらえる?」
「え? 風呂上がりに冷たいもの飲んだら身体に悪いんだよ? 本当は温かいハーブティーとかが良いんだけど、なかったから水にしたんだ。
風呂上がりに身体を冷やすのは健康に悪いよ」
栞ちゃんに教わったんだけど、間違ってない筈。本にもそう書いてあったし。
水、白湯、ハーブティーあたりがいいんだよね。でも今日は気温も高かったし、暑いだろうから常温の水にした。
拓音の好みに合わせるべき? でも、冷たいのはあんまり良くないんだけどな。
「それでも拓音が冷たい方が良いって言うなら氷入れるね。ごめんなさい、生意気だったね。
オレ、拓音の言う事全部聞くって言ったのに」
「いや、折角フミが俺の為に用意してくれたから飲むよ。ありがとう」
拓音がヨシヨシと頭を撫でてくれた。
凄く良い人じゃない? 器が広いんだろうなぁ。長生きしてもらいたいし、これからも拓音の健康に良い生活を送ってもらえるように、オレが全部お世話してあげるね。
タワーマンションってやつ? 高層マンションで見た目も綺麗。
部屋は三十階だ。これ、停電になったら大変じゃないのかな?
あ、こういうマンションって予備電力あるんだっけ。
部屋の中は、キッチンやダイニング、リビング以外に四部屋もあった。4LDKって一人暮らしにしては広すぎじゃないかな!!
拓音がリビングのソファーにドカッと座っちゃったし、部屋の確認をしておこうかな。
寝室と、趣味の部屋と、衣装部屋と……誰かの部屋? 同居人でもいるのかな?
「拓音、今日は仕事は?」
時間は十五時だ。
ホストだったらこれから仕事だよね?
「今日は休みだよ。君を迎えに行く為にわざわざ休みにしたんだ。
部屋も使えるように用意してあるよ」
誰かの部屋だと思ってた部屋がオレに用意された部屋だった。
オレの人身売買の話は昨日出たばかりの筈だ。昨日の今日ですぐに準備をしてくれたんだ。
用意してもらった部屋の中に入る。シンプルにベージュと白で色が統一されていて、上品な雰囲気だ。女性が好みそうな。
雪夜の家のオレの部屋より広い。
ダブルベッドに、机と椅子が用意されていて、テレビも設置されている。他にも本棚やタンスもあって、中は空だから好きに入れて良いみたい。
「よく昨日の今日で用意できたね?」
「まぁな! 俺の世話してくれる人の部屋だと思ったからさ。
でも結城さんが全然説明してくれなくて、勝手に女の子だと思ってたんだ。インテリアとか、気に入らなかったら新しいものに替えてもいい」
「いや、拓音、ここまでされるとさすがに悪いよ。全然このままでいいし。
オレ、どうしたら三百万円分の仕事が出来るかな? 本当にエッチな事しなくていいの?」
心配になって拓音に再度確認した。だって、大金支払って、家事だけやってくれればいいだなんて、お人好しすぎる気がするんだけど。
後で変な要求されたりしないよね? されたとして断れないけど。
「いいんだよ。ちょっと元気過ぎる男の子でビックリしたけど、俺はフミの事ちょっと気に入ったし。
フミの要望通り、夜ご飯までゴロゴロしようか」
「やった!」
オレの部屋で拓音と布団に入ってゴロゴロした。拓音は「どこが楽しいのか分からない」なんて言ってる。
「こうやって、のんびーり好きな人と布団の中で過ごすのが、オレにとって一番の幸せなの」
「俺の事も好きって事?」
「拓音は優しいから好きだよ! オレの好きな人リスト増えていって嬉しい!」
「そっか。良い子だなぁ。でも、年上には敬語使った方がいいかもよ?
敬語使えないとこれから困るよ」
「あ、すみません。敬語の方が良いですよね? ちゃんと敬語使えますよ!」
てか、拓音に会った時ドン引きしたから、コイツには敬語じゃなくていっか、とか思ったんだよね。
社会出たらそうはいかないよね。オレが間違ってたな。
「いや、今までと同じでいいよ。敬語使われる方が落ち着かない」
「うん、じゃあそうする!」
やっぱり拓音の事は好きになれそう。良かった。
これで雪夜が出所するまでのんびりと待てるね。その頃はオレは十八歳か。雪夜は四十七歳になってるなぁ。
ちょっと将来の事は想像出来ないや……すやぁ……。
いつの間にか寝てたみたい。起きたら拓音いないし。一時間くらい寝ちゃってたっぽい。
部屋から出ると、拓音はリビングのソファーに座ってテレビを見てた。
「拓音、ごめんね、寝ちゃったみたいで」
「んーん。いいんだよ~。こっちおいで」
拓音が自分の膝をポンポンと叩いた。
そこに寝るように促されて、頭を拓音の膝に乗せた。
「俺、恋人とこーやって一緒にテレビ見んの好きなんだよね」
「オレ、恋人じゃないけど」
「じゃあテレビ見る時間は恋人のフリしててね。フミの仕事だよ」
「分かったよ。本当の恋人とはしないの?」
「仕事柄、恋人は作らない事にしてるんだ。色々面倒でね。もう五年フリーだよ。
でも恋人がいたらなって思う時も多いよ。こうして一人でいる時間とか」
「一人は寂しいよね」
それから二十時になるまで一緒にテレビを見た。ニュースの時は二人で議論を交わして、アニメの時は熱中した。バラエティーの時は二人で笑って、テレビを見終わってからオレは夜ご飯を作り始めた。
冷蔵庫には適当な食材が入ってたから、おかずを作って、夜ご飯を提供した。
これに関しては栞ちゃんの仕事手伝ったりしてて良かったな。
栞ちゃんは料理がそこまで得意じゃなかったお陰で、オレが調べたり、練習したりして、結局オレが栞ちゃんに教えたんだっけ。
「家庭料理で悪いけど、これで足りるかな?」
和食メインだ。サッと作ったから味が染みてない肉じゃがとか、ほうれん草のおひたしとか、もやし炒めとか、簡単なものを作った。ご飯も炊いたし、味噌汁も作った。
「十分だよ。作ってくれるだけで有難い」
「良かった。オレは拓音の後で食べた方がいいかな?」
「いや、一人で食べるより二人で食べた方が絶対美味いと思う」
「オレも同じ考え! じゃあ遠慮しないよ。オレ達、割と気が合うかもね」
「そうだな」
二人で向かい合って食事をした。やっぱり、誰かと食べるご飯は美味しいなぁ。
その後お風呂の用意して、拓音が入浴中にタオルとか着替えとか用意してあげた。
ベッドメイキングもバッチリ! 寝室に加湿器あったから一応水足して電源つけておいた。
ベッドサイドランプは埃被ってるのに、加湿器は埃被ってないから常用してるっぽいし。
今の内にランプやベッドヘッドの埃は綺麗にしておこう。他は明日やる。
拓音が風呂から上がって、パジャマ姿で出てきた。髪が全部下を向くと雰囲気が変わるなぁ。
イケメンに磨きがかかってるけど、好青年って感じでホストらしさはない。
オレはこっちの方が好きだな。
「フミ、お前意外と気が利くな」
「そうかな? あと、水を用意しておいたよ。良かったら飲んでね」
拓音はマグカップを持って一口飲むと、少し悩んだような顔をした。
「風呂上がりで暑いし冷たい飲み物がいいんだけど。氷入れてもらえる?」
「え? 風呂上がりに冷たいもの飲んだら身体に悪いんだよ? 本当は温かいハーブティーとかが良いんだけど、なかったから水にしたんだ。
風呂上がりに身体を冷やすのは健康に悪いよ」
栞ちゃんに教わったんだけど、間違ってない筈。本にもそう書いてあったし。
水、白湯、ハーブティーあたりがいいんだよね。でも今日は気温も高かったし、暑いだろうから常温の水にした。
拓音の好みに合わせるべき? でも、冷たいのはあんまり良くないんだけどな。
「それでも拓音が冷たい方が良いって言うなら氷入れるね。ごめんなさい、生意気だったね。
オレ、拓音の言う事全部聞くって言ったのに」
「いや、折角フミが俺の為に用意してくれたから飲むよ。ありがとう」
拓音がヨシヨシと頭を撫でてくれた。
凄く良い人じゃない? 器が広いんだろうなぁ。長生きしてもらいたいし、これからも拓音の健康に良い生活を送ってもらえるように、オレが全部お世話してあげるね。
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