少年ペット契約

眠りん

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一話 捨てられた日

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「お前ん家って、貧乏暇なしなんだろ?」

 ……って、クラスメイトにバカにされながら言われた。

「ううん。貧乏なだけで暇してるよ」

 お父さんは毎日飲んでるかパチンコ行ってるし、お母さんは昼過ぎになると起きて仕事に行く。
 近場で働いてるものだから、学校帰りに知らないオッサンとデート中のお母さんに出くわす事が稀にある。
 いつも楽しそうに笑ってるし、家じゃいつも呑気そうな顔してるから、忙しそうには見えないかな。

 お母さんが男の人と遊んでお金を稼ぐ仕事を始めたのは五年前、オレが七歳の時だった。最初はなんだか気持ち悪く感じたけど、それももう慣れた。
 オレももう十二歳。もう子供じゃないんだから、そんな事で気持ち悪がっていられないよ。

 でも、お母さんはお父さんがパチンコに行ってる時間に知らない男の人を家に連れ込んで、エッチをするんだ。
 それだけは未だに慣れなくて、外で遊ぶようにしてるんだ。
 皆塾とか習い事で忙しいみたいで、遊んでくれる友達っていうのは全然いない。
 でも、一人で出来る遊びって意外と多いんだ。

 本音を言えば、オレは家でゴロゴロ寝るのが趣味だから外にいたくない。
 だからお母さんが男の人と遊ぶ仕事をしない時は、家でずーっとゴロゴロしてるの。これが一番の幸せ。

 ボロくて狭くて、夏は暑くて冬は寒いアパートに住んでて、いつもボサボサの頭であんまり風呂に入れなくって、昼の給食と夜のコンビニ弁当しか食べてなくても、ゴロゴロ出来ればそれでいいの。

 両親は殆ど会話ないし、お父さんはオレを邪魔者扱いしてくるけど、お母さんが一緒にゴロゴロしてくれるから十分幸せ!
 人から見れば不幸に見えるみたい。近所の人はいつもオレを心配してくる。
 少なくともオレにとっては幸せな家庭なんだけどな。

 でも、その幸せは長く続かなかったみたい。


 ある日、学校から帰ると家の中が不思議な事になっていた。この時間、お父さんはパチンコに行ってて、お母さんはウチいなければ外でデートの筈だ。
 なのに、家具や電化製品が全てなくなっている。

 使い古されてたまに電源が落ちるテレビ、薄汚い冷蔵庫、いつもタバコの吸殻で汚いテーブル、シングルサイズの布団を二つ並べて親子三人で使ってた、万年床になってた寝具一式とかが全部なくなってるんだ。
 あるのはオレの荷物だけ。

 オレ、捨てられたっぽい?

 呆然としていると、ガチャリと部屋のドアが開く音がした。お母さんかと思って振り向いたら違った。
 見てすぐ分かるヤクザっぽい怖い顔付きの男が立っていた。しかもオレの靴を踏み付けながら土足で部屋に上がり込んできた。

「おめぇ、小山内おさないのガキだろ。あーえーと、名前なんだったっけ?」

 ガキ呼ばわりにムッとこないわけじゃないけど、表に出す勇気はない。恐怖で身を強ばらせたまま、返事すら出来ない。

「おい、聞いてるだろうが」

 怒鳴られるかと怯えていたけれど、男は落ち着いた口調だ。恐る恐る答える。

「オレは小山内文和ふみかずだよ」

「お前置いていかれたな」

 その言葉で全てを悟った。夜逃げってやつだ。朝はいたから逃げたのは昼? 昼逃げ?
 あぁ、オレは捨てられたんだなぁ。
 確かに、最近やけにお父さんが「ガキさえいなけりゃ」って呟いてたっけ。
 単なるいつもの独り言だと思ってたのにな。

「あんな親でも捨てられたら泣く程つれぇか」

 ヤクザに言われて気付いた。オレの目からポタポタと涙が零れていた。
 辛い? 違う。ただ悲しいんだ。
 他の子供みたいに、きちんと育ててくれたわけじゃなくても、お母さんとお父さんの事好きだったから。

「これからお前にはもっと辛い目に遭ってもらう事になる。俺について来い。来なけりゃ気絶させて拉致すんぞ」

「行く!」

 どこに連れて行かれるかは分からなかった。ただ、養護施設とか児童相談所とかではない事は分かる。
 これからオレ、どうなっちゃうんだろう?
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