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一章
十三話 あなたとの未来
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それから一樹は明晰夢を見なくなった。夢の中で遊べなくなったのは寂しいが、お陰で毎日快眠だ。
海斗には首輪を着けた。
普段はトイレに繋いで、キッチンまでは行ける長さのリードを首輪に付けている。玄関にも窓にも近付けない長さだ。鍵がついており、海斗一人でリードを外す事は出来ない。
叫ばれたら終わる監禁だが、海斗は絶望からか騒ぐ事がないので、今のところは繋がれたままだ。
一樹が仕事から帰ったら、睡眠以外の時間の全てを海斗に充てている。
一緒に食事をして、一緒に入浴して、夜の行為をして、一緒に寝る。
寝る時は海斗の首輪からベッドに鎖で繋ぎ、鍵を締めているので、海斗一人では外せないようになっている。
「あー、俺も仕事やめよっかなぁ。そうすればもっと海斗と一緒にいられるのにね」
「生活が出来ないだろ」
「それが問題だよね。あ、今度有給取るよ。三日くらい一秒も離れずに一緒にいたいねぇ」
「ああ」
海斗とは普通に会話が成り立つが、どことなく冷たい。全てを諦めた海斗は、とりあえず一樹を刺激しないようにするしか出来ないのだ。
それでも一樹は満足だった。一緒にいられるだけで幸せなのだ、海斗の幸せなど考えてはいない。
しばらくして、正嗣が一樹を昼休憩の時間に屋上に呼び出した。人がいたら出来ない話なのだろう、一樹は快く呼び出しに応じた。
「すみません、来てもらってしまって」
「大丈夫ですよ。どうしたんですか?」
「あの、仁科さんはもう明晰夢は見なくなったんですか? 夢の中で声掛けても全然会話成り立たなくて……」
「そうみたいなんですよね。細かく覚えてないけど、何気に夢の中でマサさんと話すの好きだったんですけどね」
「まぁ、毎日普通に眠れているなら良いですが。彼氏さんと仲直りした、とかですか?」
「そうなんですよ。海斗も海斗で大変だったみたいで。でももう大丈夫です。
俺達、愛し合ってるので」
もうすぐ昼休憩の終わりだ。一樹は出口へと向かおうとしたが、正嗣の一言で足を止めた。
「そういえば仁科さんの彼氏、部屋から出なくなりましたね? 前まで毎朝六時には家を出ていて、夜の九時には帰っていたのに」
一樹は不快感を示した。正嗣と知り合って、彼に苛立ちを覚えるのは初めての事だった。
正嗣は、海斗が今アパートの出入りをしていない事を知り、離別や同棲をやめた等の選択肢を並べずに、部屋から出て来ないと断言しているのだ。
だが一樹は湧き上がる不快感を無視して振り返ると、正嗣に笑顔を向けた。
「はい。もう心配要らないから、うちに来ないでくれます? 次来たら警察呼びますよ?」
「またまた。呼んで困るのそっちですよね?」
「警察は礼状ないと家に入れないから問題ないけど、今まで君がした事の証拠残してるんですよ、こっちは」
「俺だって証拠はあるんですよ。君が彼氏を──」
一樹は正嗣の言葉を遮り、拳を正嗣に向けた。殴りはしないが、これ以上言えば暴力も辞さないと牽制している。
「これ以上話しても無意味です。君が今後ストーカー行為をしなければあなたの罪は忘れてあげます。
出来なければ、あなたも外に出られなくしてあげますね」
「仁科さんって意外と危ない奴?」
「知らないでストーキングしてたんですか?
でも、もう幻滅しましたよね? これ以上仕事以外で俺に関わらないで下さい。
そうすれば、マシな生活を送れるんじゃないですか」
そしてお互いプライベートでは二度と関わらないと約束し合った。
本当の意味で問題から解放された一樹は、ご機嫌な笑顔で家に帰った。
「ただいまー」
帰ると、海斗が泣きながら一樹に「もう離してくれ」「自由にしてくれ」と泣き喚いた。
最近はずっと反抗する事なく縛られていたのだが、精神的に不安定なのか、たまに泣きじゃくる時がある。
「君の面倒は全部俺が見るって言ったでしょ。安心して、もう怖い事は何もないからね」
「やだ、やだ。帰りたい、家に帰りたいよぉ」
シクシクと泣く海斗に、一樹は優しい声で囁いた。
「ダメだよ、俺と海斗は一生一緒なんだから。生涯愛し合おう。俺が海斗の全てを見てあげるから」
その言葉は呪いのように心を縛っていく。海斗の絶望の目を見て、一樹は満足そうに笑みを浮かべたのだった。
海斗には首輪を着けた。
普段はトイレに繋いで、キッチンまでは行ける長さのリードを首輪に付けている。玄関にも窓にも近付けない長さだ。鍵がついており、海斗一人でリードを外す事は出来ない。
叫ばれたら終わる監禁だが、海斗は絶望からか騒ぐ事がないので、今のところは繋がれたままだ。
一樹が仕事から帰ったら、睡眠以外の時間の全てを海斗に充てている。
一緒に食事をして、一緒に入浴して、夜の行為をして、一緒に寝る。
寝る時は海斗の首輪からベッドに鎖で繋ぎ、鍵を締めているので、海斗一人では外せないようになっている。
「あー、俺も仕事やめよっかなぁ。そうすればもっと海斗と一緒にいられるのにね」
「生活が出来ないだろ」
「それが問題だよね。あ、今度有給取るよ。三日くらい一秒も離れずに一緒にいたいねぇ」
「ああ」
海斗とは普通に会話が成り立つが、どことなく冷たい。全てを諦めた海斗は、とりあえず一樹を刺激しないようにするしか出来ないのだ。
それでも一樹は満足だった。一緒にいられるだけで幸せなのだ、海斗の幸せなど考えてはいない。
しばらくして、正嗣が一樹を昼休憩の時間に屋上に呼び出した。人がいたら出来ない話なのだろう、一樹は快く呼び出しに応じた。
「すみません、来てもらってしまって」
「大丈夫ですよ。どうしたんですか?」
「あの、仁科さんはもう明晰夢は見なくなったんですか? 夢の中で声掛けても全然会話成り立たなくて……」
「そうみたいなんですよね。細かく覚えてないけど、何気に夢の中でマサさんと話すの好きだったんですけどね」
「まぁ、毎日普通に眠れているなら良いですが。彼氏さんと仲直りした、とかですか?」
「そうなんですよ。海斗も海斗で大変だったみたいで。でももう大丈夫です。
俺達、愛し合ってるので」
もうすぐ昼休憩の終わりだ。一樹は出口へと向かおうとしたが、正嗣の一言で足を止めた。
「そういえば仁科さんの彼氏、部屋から出なくなりましたね? 前まで毎朝六時には家を出ていて、夜の九時には帰っていたのに」
一樹は不快感を示した。正嗣と知り合って、彼に苛立ちを覚えるのは初めての事だった。
正嗣は、海斗が今アパートの出入りをしていない事を知り、離別や同棲をやめた等の選択肢を並べずに、部屋から出て来ないと断言しているのだ。
だが一樹は湧き上がる不快感を無視して振り返ると、正嗣に笑顔を向けた。
「はい。もう心配要らないから、うちに来ないでくれます? 次来たら警察呼びますよ?」
「またまた。呼んで困るのそっちですよね?」
「警察は礼状ないと家に入れないから問題ないけど、今まで君がした事の証拠残してるんですよ、こっちは」
「俺だって証拠はあるんですよ。君が彼氏を──」
一樹は正嗣の言葉を遮り、拳を正嗣に向けた。殴りはしないが、これ以上言えば暴力も辞さないと牽制している。
「これ以上話しても無意味です。君が今後ストーカー行為をしなければあなたの罪は忘れてあげます。
出来なければ、あなたも外に出られなくしてあげますね」
「仁科さんって意外と危ない奴?」
「知らないでストーキングしてたんですか?
でも、もう幻滅しましたよね? これ以上仕事以外で俺に関わらないで下さい。
そうすれば、マシな生活を送れるんじゃないですか」
そしてお互いプライベートでは二度と関わらないと約束し合った。
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「ただいまー」
帰ると、海斗が泣きながら一樹に「もう離してくれ」「自由にしてくれ」と泣き喚いた。
最近はずっと反抗する事なく縛られていたのだが、精神的に不安定なのか、たまに泣きじゃくる時がある。
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「やだ、やだ。帰りたい、家に帰りたいよぉ」
シクシクと泣く海斗に、一樹は優しい声で囁いた。
「ダメだよ、俺と海斗は一生一緒なんだから。生涯愛し合おう。俺が海斗の全てを見てあげるから」
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