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三十一話 惚れた弱み
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桜子は諭に勉強を教わる際、自分の部屋で勉強する方が集中出来ると気付き、それからはずっと部屋での授業をする事になった。
直陽や歌陽が、落ち着かない様子で、桜子の勉強の様子を見に来たが、桜子はすぐに追い出した。
たまに樹良も見学と言いながら入ってきたが、諭が露骨に嫌そうな顔をするので、それも断った。
二人きりになって、授業が捗るようになった。場所を自室にして良かったと桜子はそう思っていた。
ある日の事。
「こんにちは」
「あっ! 諭さん! こんにちは!」
家庭教師の為、諭が家にやってきて、桜子は嬉しくて右手を高く上げて出迎えた。
だが、何故か諭の顔は暗かった。
直陽や歌陽と顔を合わせると普段通りの明るいイケメンに戻るのだが、桜子と部屋で二人になるとまた俯いて無言になってしまった。
「諭さん? どうしたの? 怪我? 病気?」
「ごめんね、桜子ちゃん。俺、ここに来るのもうキツイかも」
今までずっと優しかった諭がそう言い出したのだ。諭以外の家庭教師が認められるわけがない。
桜子は諭の手を握って、話を聞いた。
「どうしたの? おにぃちゃんやおねぇちゃんと喧嘩した?」
「違うんだ。けど、詳しくは話せなくて……桜子ちゃんが慰めてくれたら、少しは楽になるかも」
「うん! いつもお世話になってるお礼に、私がなーんでもしてあげる!」
桜子がそう言ったのは、純粋に普段お世話になっているからだ。
成績が伸びてきたのは諭の功績があってこそで、そんな先生に何かお礼をするのは当然だ。
「じゃあ……桜子ちゃん、ベッドに座ってくれる?」
「もちろん!」
桜子はベッドの上に座った。足が机の下ではないので、開かないよう膝をピッチリと合わせた。
今日は結構なミニスカートだ。諭に下着を見られたら恥ずかしい。
すると、諭がベッドにやってきて、桜子の一メートル程遠くに座り、身体を倒した。
桜子の膝に頭を乗せたのだ。
(きゃああああっ!!)
桜子は黄色い悲鳴を上げそうになったが押さえた。
(くすぐったい。でも、諭さんに膝枕してあげるの、なんだか凄くドキドキするよ)
相手は兄の彼氏だ。そういう感情は持たないようにしたいが、感情というものは自分でコントロールするには難しい。
まして、恋心というものは抑えようと思って抑えられるものでは無い。
「疲れてるの?」
「うん」
「私の足で癒される?」
「うん」
「陽おにぃちゃんの足は?」
「好きだよ。でも、最近擦れ違いが多くて。それもストレスなんだ」
「諭さんを一人にするなんて、ダメなおにぃちゃんだね」
「陽翔は今頑張ってるんだ。カクテルの大会に出るらしくて、家でも頑張って作ってる」
「そうだったんだ。おにぃちゃん頑張ってるんだねぇ」
学生じゃなくなれば、後は仕事をして、仕事が終われば遊べるのだと桜子は思っていた。
両親が仕事で殆ど家にいないのは、仕事が趣味で、自由時間も仕事をしているのだと。
「私、ずっと自分は一生懸命頑張ってるって思ってた。でも、本当はそうじゃないのかも」
「いや。桜子ちゃんは頑張ってるよ。自信持っていい。頑張ったら、もっと頑張ろう。
桜子ちゃんがS女子に入れたら、俺も胸張って桜子ちゃんを合格させてあげられたって、陽翔に自慢できるからさ」
「うん! 私もっと頑張る!!」
桜子がそう宣言すると、諭が起き上がった。
「ありがとう。桜子ちゃんのお陰で元気出た」
「わぁ、良かったです! 私の膝くらいいつでも貸しますから言ってくださいね」
「うん。桜子ちゃんは心が綺麗で優しいね。
天使みたいなところ、陽翔に似てるよ」
「えっ!? 私が陽おにぃちゃんにですか!?」
「もしかして嫌だった?」
「ううん! 私、陽おにぃちゃんって、家族だけど遠い存在だと思ってたんです。
なんか両親よりも陽おにぃちゃんの方が凄い人のように思ってて。
似てるって言われると、ちょっと嬉しいかも。です」
だが、本当は似ていないのだと、桜子は悲しさを押し殺して微笑んだ。
(私、こんなに性格悪いの。陽おにぃちゃんには全然及ばないくらい、優しくないの。
だって私、陽おにぃちゃんに嫉妬してる。諭さんの事好きになっちゃいけないのに……)
いつもより少し遅めに授業が始まった。諭が作った問題を全問正解したが、心は晴れなかった。
直陽や歌陽が、落ち着かない様子で、桜子の勉強の様子を見に来たが、桜子はすぐに追い出した。
たまに樹良も見学と言いながら入ってきたが、諭が露骨に嫌そうな顔をするので、それも断った。
二人きりになって、授業が捗るようになった。場所を自室にして良かったと桜子はそう思っていた。
ある日の事。
「こんにちは」
「あっ! 諭さん! こんにちは!」
家庭教師の為、諭が家にやってきて、桜子は嬉しくて右手を高く上げて出迎えた。
だが、何故か諭の顔は暗かった。
直陽や歌陽と顔を合わせると普段通りの明るいイケメンに戻るのだが、桜子と部屋で二人になるとまた俯いて無言になってしまった。
「諭さん? どうしたの? 怪我? 病気?」
「ごめんね、桜子ちゃん。俺、ここに来るのもうキツイかも」
今までずっと優しかった諭がそう言い出したのだ。諭以外の家庭教師が認められるわけがない。
桜子は諭の手を握って、話を聞いた。
「どうしたの? おにぃちゃんやおねぇちゃんと喧嘩した?」
「違うんだ。けど、詳しくは話せなくて……桜子ちゃんが慰めてくれたら、少しは楽になるかも」
「うん! いつもお世話になってるお礼に、私がなーんでもしてあげる!」
桜子がそう言ったのは、純粋に普段お世話になっているからだ。
成績が伸びてきたのは諭の功績があってこそで、そんな先生に何かお礼をするのは当然だ。
「じゃあ……桜子ちゃん、ベッドに座ってくれる?」
「もちろん!」
桜子はベッドの上に座った。足が机の下ではないので、開かないよう膝をピッチリと合わせた。
今日は結構なミニスカートだ。諭に下着を見られたら恥ずかしい。
すると、諭がベッドにやってきて、桜子の一メートル程遠くに座り、身体を倒した。
桜子の膝に頭を乗せたのだ。
(きゃああああっ!!)
桜子は黄色い悲鳴を上げそうになったが押さえた。
(くすぐったい。でも、諭さんに膝枕してあげるの、なんだか凄くドキドキするよ)
相手は兄の彼氏だ。そういう感情は持たないようにしたいが、感情というものは自分でコントロールするには難しい。
まして、恋心というものは抑えようと思って抑えられるものでは無い。
「疲れてるの?」
「うん」
「私の足で癒される?」
「うん」
「陽おにぃちゃんの足は?」
「好きだよ。でも、最近擦れ違いが多くて。それもストレスなんだ」
「諭さんを一人にするなんて、ダメなおにぃちゃんだね」
「陽翔は今頑張ってるんだ。カクテルの大会に出るらしくて、家でも頑張って作ってる」
「そうだったんだ。おにぃちゃん頑張ってるんだねぇ」
学生じゃなくなれば、後は仕事をして、仕事が終われば遊べるのだと桜子は思っていた。
両親が仕事で殆ど家にいないのは、仕事が趣味で、自由時間も仕事をしているのだと。
「私、ずっと自分は一生懸命頑張ってるって思ってた。でも、本当はそうじゃないのかも」
「いや。桜子ちゃんは頑張ってるよ。自信持っていい。頑張ったら、もっと頑張ろう。
桜子ちゃんがS女子に入れたら、俺も胸張って桜子ちゃんを合格させてあげられたって、陽翔に自慢できるからさ」
「うん! 私もっと頑張る!!」
桜子がそう宣言すると、諭が起き上がった。
「ありがとう。桜子ちゃんのお陰で元気出た」
「わぁ、良かったです! 私の膝くらいいつでも貸しますから言ってくださいね」
「うん。桜子ちゃんは心が綺麗で優しいね。
天使みたいなところ、陽翔に似てるよ」
「えっ!? 私が陽おにぃちゃんにですか!?」
「もしかして嫌だった?」
「ううん! 私、陽おにぃちゃんって、家族だけど遠い存在だと思ってたんです。
なんか両親よりも陽おにぃちゃんの方が凄い人のように思ってて。
似てるって言われると、ちょっと嬉しいかも。です」
だが、本当は似ていないのだと、桜子は悲しさを押し殺して微笑んだ。
(私、こんなに性格悪いの。陽おにぃちゃんには全然及ばないくらい、優しくないの。
だって私、陽おにぃちゃんに嫉妬してる。諭さんの事好きになっちゃいけないのに……)
いつもより少し遅めに授業が始まった。諭が作った問題を全問正解したが、心は晴れなかった。
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