64 / 68
四章
四話
しおりを挟む
朝になってすぐにカメリアの町に別れを告げ、フリード達は帝都まで馬車を走らせた。
二日かかる道のりを、途中の町に寄って、泊まりながら進む。
フリードは新しい町に着く度、アグリルを連れて出歩いて、その間ジールは宿で待機していた。
酒屋で情報収集をするも、既に知っている情報ばかりだ。
それ以上は何も得られなかった。
だが、そこで不穏な噂話を聞いた。それは怪しい店が並ぶ一角を歩いていた時だ。
胸元を強調した、娼婦と思わしき二人がフリードを誘ってきた。
「ねぇお兄さん達、少し遊んでいかない?」
「私達、慣れてるから乱暴にしてもいいわよ」
女性は二人共かなりの美人だ。こんなところで客引きなどしなくても、男の方から寄ってきそうだ。
「その誘いには乗れないよ。どうして俺らに声を掛けたの?
金を持っていそうな男は他にもいるだろうに」
アグリルが訊ねると、一人の女性が悩ましげに溜息を吐いた。
「私達、別に娼婦じゃないわよ。可愛い男の子が好きで、二十歳前後の若い男と一夜限り遊びたいだけ。
相手がお金を持っているかは関係なく、顔で選んでるのよ」
するともう一人の女性も頷いた。
「そうそう。勘違いして言い寄ってくる男とか、お断りなのよね。
でも最近、若い男がいなくなっちゃってね、ここには旅行がてら、男遊びをしに来たの」
「なんか帝都で、若くて見目の良い男が連れ去られる事件が起きてるらしくて、自分がイケメンって自覚ある人は引きこもってるみたい」
「だから私達、ここまで来ないと、お遊びが出来なくてつまらないのよね。そろそろ結婚しろって神様が促しているのかもしれないわ」
女性達はそう言いながら立ち去って行った。
フリード達は宿に帰ると、その事をジールに報告した。
「帝都で若い男が…ね。まぁフリードはアグリルがいるから大丈夫だろう。
今回、スティラ村に行って身を潜めるのが第一優先だ。ルーベリアの問題はルーベリアの者が解決するだろう。
俺達が関わる事は言語道断。巻き添えを食らう前にさっさと行動した方が良さそうだな」
フリードもアグリルもそれに異論はなく、二人揃って頷いた。
そして二日かかって、ようやく帝都に着いたのだった。
帝都は今までの町と比べて別格だった。大きな広場には、旅芸人が曲芸を披露していたり、出店も数多く並んでいる。
行き交う人の数も多いので、ボーッとしていると人波に流されそうだ。
城下町の先に大きな城がそびえ立っている。ヘイリア帝国の皇城よりも一際大きな造りだ。
そして、城の対極に位置する場所に大きな教会が建っている。今までの町にも教会は建っていたが、大きさも存在感もまるで違う。
ここが本拠地なのだろう。
「そういえばジール、どうして帝都に寄ったんだ?」
フリードが聞いた。スティラ村に行くだけなら、帝都に寄る必要はない筈だからだ。ジールは少しバツが悪そうな顔で、フリードとアグリルに聞き返した。
「悪いけど寄り道していい?」
ジールが向かった先は、大通りを抜けた先だった。あんなに集まっていた人々は徐々に少なくなっていき、たまにすれ違う人がいるだけだ。
フリードはキョロキョロと周りを見ながらジールについて行き、その後にアグリルが続く。
「こっちは人が少ないんだな?」
「こっちは民家が集中してるからね。住んでる人くらいしか来ないよ。
あ、目的地はここだよ。ただーいまー」
ジールは石造りで出来た家の扉をガチャリと開き、ズカズカと入っていった。
少し困惑しながらも、その後に続いて家の中へ入った。
すると奥から初老の女性がニコニコした笑顔で出てきた。
「あれま、ジール。帰ってくるなら連絡くらい寄越しなさいよ。後ろの二人は友人かい?
狭いとこだけど、くつろいでいきなさい」
女性は奥から椅子を持ってきて、テーブルの周りに置いた。普段は二人で使っているのだろう、四つの椅子に皆それぞれ座った。
「母ちゃんありがとう」
「いいんよ、それより嫁さんと孫達は元気してるのかい?」
「うん。元気にヘイリアで食堂を営んでるよ。ヘイリアとルーベリアの問題が片付いたら、遊びに来てくれよ。
母ちゃん達、なかなかルーベリアから出ないから、全然会えなかったし」
「うんうん、そうするよ。お前の顔みたら父ちゃんも喜ぶよ」
ジールは楽しそうに母親と会話をしており、フリードもアグリルも微笑ましい顔で話を聞いていた。
「そうそう、ポッポンが手紙を置いていったよ。
ボスさんにはまだ着いてないですって返事をしておいたからねぇ」
「母ちゃん…、勝手にポッポンをボスに送るなって言ってるのに。俺がここに来たのも、ポッポンを回収する為だったんだぞ。
待たなきゃいけなくなるじゃんか」
「あらま、ごめんねぇ。私もボスさんに、挨拶がしたかったから、勝手な事をしちゃったんだねぇ」
「いいよ。ポッポンが戻るまで、ここに滞在してもいい?」
「いいよ。お友達のお二人も、ゆっくりここにいていいからねぇ」
にこにこ顔の母親が、手紙をジールに渡した。フリードは少し怪訝な顔になる。
(彼女はジールの仕事をどこまで知っているのだろうか)
ポッポンは伝書鳩で、ルーベリアにいる間、ボスとジールはそれでやり取りをすると話していた事があった。
ポッポンやボスの事を知っている限り、サマエルの事も知っているように思えたが、フリードもアグリルもその事には触れなかった。
それからフリード達三人は、昔ジールが使っていた部屋に通された。
しばらくここで宿泊する事になった。
「ジール、実家に行くならそう言ってくれよな」
フリードが文句を言うが、ジールは呑気に笑った。
「まぁいいじゃないか。ポッポンの手紙のやり取りをするのに、一度ここに来る必要があったんだ。
ポッポンはこの実家までは来てくれるけど、スティラ村までは来てくれない。
俺もスティラ村に滞在するから、ポッポンを一度村に連れて行かないと。
あくまで一度来た場所に戻るという習性を利用しているからね」
「そういう仕組みになってるんだ?」
アグリルも不思議そうに問いかけた。
「そう。だからポッポンが到着するまでここに待機だね」
「そういう事なら、俺、街の探索に行ってくるわ」
フリードがそう言って部屋を出ようとすると、アグリルも一緒についてきた。
「それなら俺も行きます!」
「じゃあ俺はここにいるから。フリードは人さらいに注意してよ。
アグリル、フリードから目を離さないように」
「はい、もちろんです!」
ジールが言うとアグリルは大きく頷き、フリードの後を追いかけていったのだった。
再び城下町へと戻っきてたフリードは、まず情報収集の為に色々な店を回った。
どこも、最近若い男性が連れ去られている話で持ち切りで、最近は子供も連れ去られる事があるようだ。
全員顔の良い男で、人通りが多い場所は男性も多いが、裏通りに行くと殆ど人の影はなかった。
夕方になると夕日も沈み、辺りが暗くなってきたところで、アグリルが帰るよう促してきた。
「フリード、そろそろ戻った方が。誘拐される可能性もありますし」
「そうだな。アグリルが誘拐されても面倒だし」
「危ないのは、俺よりフリードですよ」
「そうかな?まぁ、大体の街の地理は把握したし、帰るか」
フリードは元々自分の容姿が整っている自覚などなかったが、ウェルディスが会う度に可愛いとか、顔が綺麗だと褒めてくるので、さすがに客観的にどう見られているかを知っている。
誘拐されたところで、自己解決出来ると自信があるし、特に心配していなかった。
来た道を戻り、フリードが曲がり角を曲がった瞬間、横から出てきた相手にぶつかり、フリードは後ろへよろけた。
「フリード!?」
すぐにアグリルがフリードの肩を支えるが、ぶつかった相手は尻もちをついてしまった。
(最近よくぶつかるなぁ…)
フリードがその者に目を向けると、驚いた事にトートだった。
「あれ、トートさん!?」
「あっフリードさん!」
トートは起き上がると、驚いた顔を見せた。背後で、アグリルが警戒する。
「よくぶつかりますね、僕達」
「たまたまとはいえ、すみません」
「二度あることは三度あると言いますし、僕も気を付けます」
トートはにこにこと優しい笑みを浮かべた。
「トートさんも帝都に向かうと聞いていましたが、この広い帝都で会えるなんて、思ってもみませんでした」
「僕もです。人生でたった一人のお友達…、また会える事を楽しみにしています」
トートは右手を左胸に添えて、恐らくドルーズ教の敬礼らしき動きをした。フリードも真似する。
「ええ、また会いましょう」
トートが身を翻し、走り去った時だった。ガラガラと馬車が走る音が聞こえてきた。
その馬車はフリードとアグリルの前を通り過ぎ、トートのそばで停車すると、黒いローブを頭から被った人物が、馬車から降りてきた。
フリードはなんだか嫌な予感がして叫ぶ。
「トートさんっ!」
だが、黒い人物はトートのみぞおちを殴り、倒れ込んだトートを担いで馬車に乗ると、走り去って行った。
「アグリル!俺はあの馬車を追う!アグリルはジールを呼んで、加勢に来てくれて!」
フリードが走り出すと、アグリルはフリードのすぐ隣を走った。
「アグリル!?」
「その命令は聞きかねます」
「俺達が追ってるのは、恐らく若い男性を誘拐しているという犯人だろう。
それをジールに伝えるんだ。俺は事件解決でなく、トートさんを助ける事だけを目的にする為、深追いはしない!だから!」
「それだけなら、俺達でもどうにか出来るでしょう。
俺は騎士として、あなたの身の安全を守る必要があります。例えフリード様の命令であっても、その命令だけは聞けません!」
「ジールがいれば、良い作戦を出してくれると思ったんだが…仕方ない。
失敗して、二人とも死ぬような事があっても恨むなよ!」
「望むところです!」
フリードとアグリルは、道にかすかに残った轍の後を追った。
二日かかる道のりを、途中の町に寄って、泊まりながら進む。
フリードは新しい町に着く度、アグリルを連れて出歩いて、その間ジールは宿で待機していた。
酒屋で情報収集をするも、既に知っている情報ばかりだ。
それ以上は何も得られなかった。
だが、そこで不穏な噂話を聞いた。それは怪しい店が並ぶ一角を歩いていた時だ。
胸元を強調した、娼婦と思わしき二人がフリードを誘ってきた。
「ねぇお兄さん達、少し遊んでいかない?」
「私達、慣れてるから乱暴にしてもいいわよ」
女性は二人共かなりの美人だ。こんなところで客引きなどしなくても、男の方から寄ってきそうだ。
「その誘いには乗れないよ。どうして俺らに声を掛けたの?
金を持っていそうな男は他にもいるだろうに」
アグリルが訊ねると、一人の女性が悩ましげに溜息を吐いた。
「私達、別に娼婦じゃないわよ。可愛い男の子が好きで、二十歳前後の若い男と一夜限り遊びたいだけ。
相手がお金を持っているかは関係なく、顔で選んでるのよ」
するともう一人の女性も頷いた。
「そうそう。勘違いして言い寄ってくる男とか、お断りなのよね。
でも最近、若い男がいなくなっちゃってね、ここには旅行がてら、男遊びをしに来たの」
「なんか帝都で、若くて見目の良い男が連れ去られる事件が起きてるらしくて、自分がイケメンって自覚ある人は引きこもってるみたい」
「だから私達、ここまで来ないと、お遊びが出来なくてつまらないのよね。そろそろ結婚しろって神様が促しているのかもしれないわ」
女性達はそう言いながら立ち去って行った。
フリード達は宿に帰ると、その事をジールに報告した。
「帝都で若い男が…ね。まぁフリードはアグリルがいるから大丈夫だろう。
今回、スティラ村に行って身を潜めるのが第一優先だ。ルーベリアの問題はルーベリアの者が解決するだろう。
俺達が関わる事は言語道断。巻き添えを食らう前にさっさと行動した方が良さそうだな」
フリードもアグリルもそれに異論はなく、二人揃って頷いた。
そして二日かかって、ようやく帝都に着いたのだった。
帝都は今までの町と比べて別格だった。大きな広場には、旅芸人が曲芸を披露していたり、出店も数多く並んでいる。
行き交う人の数も多いので、ボーッとしていると人波に流されそうだ。
城下町の先に大きな城がそびえ立っている。ヘイリア帝国の皇城よりも一際大きな造りだ。
そして、城の対極に位置する場所に大きな教会が建っている。今までの町にも教会は建っていたが、大きさも存在感もまるで違う。
ここが本拠地なのだろう。
「そういえばジール、どうして帝都に寄ったんだ?」
フリードが聞いた。スティラ村に行くだけなら、帝都に寄る必要はない筈だからだ。ジールは少しバツが悪そうな顔で、フリードとアグリルに聞き返した。
「悪いけど寄り道していい?」
ジールが向かった先は、大通りを抜けた先だった。あんなに集まっていた人々は徐々に少なくなっていき、たまにすれ違う人がいるだけだ。
フリードはキョロキョロと周りを見ながらジールについて行き、その後にアグリルが続く。
「こっちは人が少ないんだな?」
「こっちは民家が集中してるからね。住んでる人くらいしか来ないよ。
あ、目的地はここだよ。ただーいまー」
ジールは石造りで出来た家の扉をガチャリと開き、ズカズカと入っていった。
少し困惑しながらも、その後に続いて家の中へ入った。
すると奥から初老の女性がニコニコした笑顔で出てきた。
「あれま、ジール。帰ってくるなら連絡くらい寄越しなさいよ。後ろの二人は友人かい?
狭いとこだけど、くつろいでいきなさい」
女性は奥から椅子を持ってきて、テーブルの周りに置いた。普段は二人で使っているのだろう、四つの椅子に皆それぞれ座った。
「母ちゃんありがとう」
「いいんよ、それより嫁さんと孫達は元気してるのかい?」
「うん。元気にヘイリアで食堂を営んでるよ。ヘイリアとルーベリアの問題が片付いたら、遊びに来てくれよ。
母ちゃん達、なかなかルーベリアから出ないから、全然会えなかったし」
「うんうん、そうするよ。お前の顔みたら父ちゃんも喜ぶよ」
ジールは楽しそうに母親と会話をしており、フリードもアグリルも微笑ましい顔で話を聞いていた。
「そうそう、ポッポンが手紙を置いていったよ。
ボスさんにはまだ着いてないですって返事をしておいたからねぇ」
「母ちゃん…、勝手にポッポンをボスに送るなって言ってるのに。俺がここに来たのも、ポッポンを回収する為だったんだぞ。
待たなきゃいけなくなるじゃんか」
「あらま、ごめんねぇ。私もボスさんに、挨拶がしたかったから、勝手な事をしちゃったんだねぇ」
「いいよ。ポッポンが戻るまで、ここに滞在してもいい?」
「いいよ。お友達のお二人も、ゆっくりここにいていいからねぇ」
にこにこ顔の母親が、手紙をジールに渡した。フリードは少し怪訝な顔になる。
(彼女はジールの仕事をどこまで知っているのだろうか)
ポッポンは伝書鳩で、ルーベリアにいる間、ボスとジールはそれでやり取りをすると話していた事があった。
ポッポンやボスの事を知っている限り、サマエルの事も知っているように思えたが、フリードもアグリルもその事には触れなかった。
それからフリード達三人は、昔ジールが使っていた部屋に通された。
しばらくここで宿泊する事になった。
「ジール、実家に行くならそう言ってくれよな」
フリードが文句を言うが、ジールは呑気に笑った。
「まぁいいじゃないか。ポッポンの手紙のやり取りをするのに、一度ここに来る必要があったんだ。
ポッポンはこの実家までは来てくれるけど、スティラ村までは来てくれない。
俺もスティラ村に滞在するから、ポッポンを一度村に連れて行かないと。
あくまで一度来た場所に戻るという習性を利用しているからね」
「そういう仕組みになってるんだ?」
アグリルも不思議そうに問いかけた。
「そう。だからポッポンが到着するまでここに待機だね」
「そういう事なら、俺、街の探索に行ってくるわ」
フリードがそう言って部屋を出ようとすると、アグリルも一緒についてきた。
「それなら俺も行きます!」
「じゃあ俺はここにいるから。フリードは人さらいに注意してよ。
アグリル、フリードから目を離さないように」
「はい、もちろんです!」
ジールが言うとアグリルは大きく頷き、フリードの後を追いかけていったのだった。
再び城下町へと戻っきてたフリードは、まず情報収集の為に色々な店を回った。
どこも、最近若い男性が連れ去られている話で持ち切りで、最近は子供も連れ去られる事があるようだ。
全員顔の良い男で、人通りが多い場所は男性も多いが、裏通りに行くと殆ど人の影はなかった。
夕方になると夕日も沈み、辺りが暗くなってきたところで、アグリルが帰るよう促してきた。
「フリード、そろそろ戻った方が。誘拐される可能性もありますし」
「そうだな。アグリルが誘拐されても面倒だし」
「危ないのは、俺よりフリードですよ」
「そうかな?まぁ、大体の街の地理は把握したし、帰るか」
フリードは元々自分の容姿が整っている自覚などなかったが、ウェルディスが会う度に可愛いとか、顔が綺麗だと褒めてくるので、さすがに客観的にどう見られているかを知っている。
誘拐されたところで、自己解決出来ると自信があるし、特に心配していなかった。
来た道を戻り、フリードが曲がり角を曲がった瞬間、横から出てきた相手にぶつかり、フリードは後ろへよろけた。
「フリード!?」
すぐにアグリルがフリードの肩を支えるが、ぶつかった相手は尻もちをついてしまった。
(最近よくぶつかるなぁ…)
フリードがその者に目を向けると、驚いた事にトートだった。
「あれ、トートさん!?」
「あっフリードさん!」
トートは起き上がると、驚いた顔を見せた。背後で、アグリルが警戒する。
「よくぶつかりますね、僕達」
「たまたまとはいえ、すみません」
「二度あることは三度あると言いますし、僕も気を付けます」
トートはにこにこと優しい笑みを浮かべた。
「トートさんも帝都に向かうと聞いていましたが、この広い帝都で会えるなんて、思ってもみませんでした」
「僕もです。人生でたった一人のお友達…、また会える事を楽しみにしています」
トートは右手を左胸に添えて、恐らくドルーズ教の敬礼らしき動きをした。フリードも真似する。
「ええ、また会いましょう」
トートが身を翻し、走り去った時だった。ガラガラと馬車が走る音が聞こえてきた。
その馬車はフリードとアグリルの前を通り過ぎ、トートのそばで停車すると、黒いローブを頭から被った人物が、馬車から降りてきた。
フリードはなんだか嫌な予感がして叫ぶ。
「トートさんっ!」
だが、黒い人物はトートのみぞおちを殴り、倒れ込んだトートを担いで馬車に乗ると、走り去って行った。
「アグリル!俺はあの馬車を追う!アグリルはジールを呼んで、加勢に来てくれて!」
フリードが走り出すと、アグリルはフリードのすぐ隣を走った。
「アグリル!?」
「その命令は聞きかねます」
「俺達が追ってるのは、恐らく若い男性を誘拐しているという犯人だろう。
それをジールに伝えるんだ。俺は事件解決でなく、トートさんを助ける事だけを目的にする為、深追いはしない!だから!」
「それだけなら、俺達でもどうにか出来るでしょう。
俺は騎士として、あなたの身の安全を守る必要があります。例えフリード様の命令であっても、その命令だけは聞けません!」
「ジールがいれば、良い作戦を出してくれると思ったんだが…仕方ない。
失敗して、二人とも死ぬような事があっても恨むなよ!」
「望むところです!」
フリードとアグリルは、道にかすかに残った轍の後を追った。
0
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説




どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる