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三章
十三話
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離宮に戻り、門を開いて庭の中に入ると侍女のヴァイオラがにこやかな笑顔を浮かべ、大きく手を振りながらフリードの元へ走ってきた。
「フリード様ぁ! お帰りなさいませぇ!」
「ヴァイオラ、走ると危な……」
止める間もなく、ヴァイオラは地面に敷かれたレンガにつま先を引っ掛けて転んでしまった。
「……ぅぎゃ!」
「ヴァイオラ!」
フリードが駆け寄ると、周りのメイドや庭師等がヴァイオラを心配して駆け寄る。
「こら、ヴァイオラ! だから走るなと何度も言っているのに!」
侍女長がヴァイオラを心配しながらも叱った。盛大に転んだ彼女は「あはは」と笑いながら上半身を起こし「すみません」と謝る。
だらっと鼻から血が流れ、全員が慌てる。
「ヴァイオラ、俺が手当しよう。部屋においで」
「いえ! これくらい……」
フリードが言うと、ヴァイオラの顔が赤くなり、必死に両手をブンブン振って拒否を示した。
その直後に侍女長から厳しいお叱りを受けてしまった。
「フリード様は何もしないでください! ほら、ヴァイオラ立てる?」
「はい。すみません、侍女長……」
謝るヴァイオラに、優しい声をかけた侍女長は、フリードに視線を向けた。
「フリード様、ヴァイオラが早く届けようとした手紙です。そちらをお持ちになってお部屋にお戻りください」
侍女長は二十代後半の女性で、普段からヴァイオラの指導をしている。キビキビした態度にキリッとした顔でヴァイオラの身体を支え、フリードに二通の手紙を渡した。
「あ、ありがとう」
「いえ! お気になさらず! ほらヴァイオラしっかり」
受け取った手紙は一通ヴァイオラの血が付いていた。
部屋に戻り、窓際の椅子に座った。まずは血が付いていない手紙だ。蝋封には見覚えのない家紋が押されている。
何の種類か分からない花の模様だ。
(誰だ?)
とにかく読めば分かるだろうとすぐに開いたが、内容を数行読んだだけで苛立ってきた。
『離宮の愛人様
家紋を見ても誰だか分からなかっただろう? だから勉強不足なんだ。その美しい毒草がキュプレ家の家紋だ。覚えておけよ』
「……あの性悪ボス」
キュプレ家は秘匿された闇の公爵だ。存在しているという噂があるだけで、実在しているかどうかは公表されていない。
ルディネスなどキュプレ家を名乗る事を許されている者はいるが、名乗る機会はそうそうない。
ウェルディスは知っているだろうが、わざわざ家紋の模様を聞いたりしなかった。
「この花の特徴からしてフェロンの花か? ……何故キュプレ家がフェロンを知ってるんだ?」
フェロンはフリードが愛用している毒殺用の毒草だ。クレイル公国の大山脈の丈夫に生息しており、採るには命懸けの山登りをしなければならない。
フェロンの葉と花弁から抽出した液体は、一滴以上摂取するとすぐに毒の効果が現れてしまうが、一日一滴ずつ毎日摂取させると、二ヶ月で徐々に病魔に冒されていくように死んでいく。
医者が診ても毒だと気付かれる事がほぼない代物だ。
フリードがルブロスティン公爵暗殺に使用していた毒薬である。難点は、大山脈の上部にあるので、死を覚悟して行かなければならない事だ。
そろそろ採りに行かなければ、と思っていた事を思い出した。
(死なない保証はないんだよな。毒草採りにいって死んだら……。
俺が死んだらウェルが悲しむ、よな?)
フリードは手紙を読まずに悩み込み、アホらしくなって悩むのをやめた。
ボスからの手紙の続きを読む。
『ルディネスの歓迎会をしようと思う。ついでにお前も歓迎してやる。
〇〇日の夕方アジトに来い。命令だ。
ハーラート』
行きたくないが、下っ端のフリードに断る事は出来ない。断ったらその後が面倒な事になりそうだ。
それなら数時間我慢をして、その後円滑に仕事が出来た方が良い。
ボスからの手紙をテーブルに放り、二通目の手紙を手に取った。
ヴァイオラの鼻血付きだ。家紋はないが、封筒の隅に「アグリル・レグタリア」と書かれていた。
「アグリル卿……そういや、離宮に招待するって言ったのに忘れてたな」
サーシュ侯爵の件が片付くまで、あまりにも忙しかったのだ。アグリル卿との約束を思い出す暇がなかった。
言い訳にしかならないが、暇になってからも忘れっぱなしだった。
『拝啓、フリード様。
いきなり手紙を送って申し訳ありません。
元気でお過ごしでしょうか? またフリード様の護衛がしたい気持ちで胸がいっぱいです。
以前、離宮にご招待いただけると仰っていましたよね? 不躾ではありますが、すぐにでも招待していただきたいです。
フリード様のお言葉が単なる社交辞令でなければ……ですが。
アグリル・レグタリア』
フリードはすぐにヴァイオラ以外の侍女を呼び、紙とペンの用意をしてもらい、返事を書いた。
そしてアグリルに返事を送るよう頼んだ。
(どうしてアグリル卿は俺の護衛がしたいんだ?)
以前、リュートがアグリルがおかしいとか、気があるに違いないと言っていたのを思い出した。
そういう風には思えないのが本音だ。同時にリュートに不信感を覚えたが。
リュートもアグリルも「変」だと感じる部分はいくつかあり、その違いに差はないと考えている。
(リュートもアグリル卿も、まだ警戒は解けない。今後付き合う上で警戒しなくていい理由が出来たら……)
前回の任務では、人を信用出来なかった事で後悔した事があった。
警戒するに越したことはない。このスタイルを変えるつもりはないが、どこまで信用していいのか見極めていこうと、考えを改めたのだった。
※
その数日後、アグリルを離宮に呼んだ。アグリルは門の中に入るなり、綺麗な花々が並ぶ庭を眺めて、ぱぁっと笑顔になった。
「フリード様! この庭凄いですね! 貴族の屋敷とか護衛や警備で行ったことがあるんですけど、ここまで凄いのは初めて見ましたよ。
さすが皇帝陛下に溺愛されているだけありますね!」
「そんな事はない。ただ、庭師の腕が良いだけだ」
「そんな一流の庭師を雇うほど愛されてるって事じゃないですか。同じですよ」
そういうものか? とフリードは首を傾げたが、そもそもマナー上の褒め言葉だろうと頷いた。
来客をもてなす為の応接室に案内し、ヴァイオラに紅茶と菓子を用意してもらう。
「離宮に招待すると言いながら忘……、呼ばずにすまなかった」
「あ、今忘れてたって言いかけましたね? フリード様もお茶目な一面があったんですね」
かなりのフレンドリーさに、フリードは圧倒された。昔からそうだ。
帝国軍第一隊にいた時からアグリルはフリードに馴れ馴れしく構ってきた。
「以前会った時、俺と話したがっていたな?
ただ、昔仲間だったからっていうわけじゃないよな? ザハード王国で護衛をした時といい、俺に対する態度はまともとは言い難い。
何が目的だ?」
「やだなぁ。俺は、ただ単に、昔の仲間に出会えて嬉しいだけです。
スパイ容疑で逮捕されて、あぁ殺されるんだなって思ってたら、陛下の愛人になってて驚いたんですよ。
興味を示すのは当然ですよ。それをまともじゃないだなんて酷いですよぅ」
眼球の動き、身体の様子、手の動き、態度、声色、どれを取っても嘘をついているようには見えない。
だが逆にそれが怪しい。嘘をついていないように見せる訓練を受けたかのようだ。
「それは失礼した。あれから、ダーズリン侯爵とはどうだ?」
「隊長、最近総隊長になられたので、 最近はあまり会ってないんですよね。
新しくルブロスティン公爵閣下が第一隊の隊長になりまして」
アナスタだ。前公爵が亡くなる前は第七隊に所属していたが、公爵を継いでから第一隊隊長に指名されたのだ。
ガタイもよく、剣技の強さも申し分なく、リーダー気質のあるアナスタだが、急に強者ばかりが集っている第一隊の隊長は荷が重いだろうと心配していた。
「そうだな。雰囲気とか変わったか?」
「ええ。若い隊長なので、最初は皆難色を示していたんですけど、最近は打ち解けてきたように思います。
やっぱり認められるには力を示すしかないんですかね?」
(公爵は何をしたんだ?)
「アグリル卿は既に認められているでしょう? 次に近衛兵に推薦されるのはあなただと前から言われていたではないですか」
「それは周囲が勝手に言ってるだけですよ。フリード様は俺の事どう思います?
俺の剣は、どれくらい強いと思いますか?」
第一隊にいた頃はよく世話になっていた。普通に強いとは思うか、強さとは相対的なものだ。
「どれくらい」と聞かれても困るだけだ。
「俺は剣とかあまり好きじゃないし、得意でもない。そもそも興味ないから分からない。
帝国軍第一隊のエース、それだけでは強い事の証明になりませんか?」
「俺は、フリードさんに強いって認めて欲しいです」
帝国軍第一隊のエースだけあって、強さを求めたいのだろう。大いに頑張ってくれ、とは思うが、アグリルの言い方には少し引っ掛かりを覚える。
違和感を無視して、答えた。
「アグリル卿は十分強いと思います。それだけではいけませんか?」
「じゃあ、俺をフリード様の専属騎士にして下さいますか」
急な要求で反応が難しい。フリードと話したがっていた目的はこれだったのだ。
すぐに頷ける問題ではない。
「──は? 俺の一存では……」
「出来るって言ったじゃないですか! フリード様が皇帝陛下に我儘を言えば、大体の事は通してくれると!
おかしいですよ、陛下に愛されている愛人に護衛がいないなんて!」
「俺に護衛は必要ありません。離宮を空ける事も多いし、任務につく場合は護衛なんて邪魔なだけです」
「フリード様が離宮で過ごされる時や、遠征に行く時だけでも構いません」
「要りません。第一隊に集中して下さい。どうしていきなりこんな事を言い出したのです?」
「俺の方が! 陛下より俺の方が先にフリード様を好きになったんだ! 俺に力がないばかりに、逮捕されたあなたを守る事が出来なかった。
あなたの愛をもらえなくてもいい、せめて、お傍に置いて下さい……。
あなたを守らせて下さい……」
「フリード様ぁ! お帰りなさいませぇ!」
「ヴァイオラ、走ると危な……」
止める間もなく、ヴァイオラは地面に敷かれたレンガにつま先を引っ掛けて転んでしまった。
「……ぅぎゃ!」
「ヴァイオラ!」
フリードが駆け寄ると、周りのメイドや庭師等がヴァイオラを心配して駆け寄る。
「こら、ヴァイオラ! だから走るなと何度も言っているのに!」
侍女長がヴァイオラを心配しながらも叱った。盛大に転んだ彼女は「あはは」と笑いながら上半身を起こし「すみません」と謝る。
だらっと鼻から血が流れ、全員が慌てる。
「ヴァイオラ、俺が手当しよう。部屋においで」
「いえ! これくらい……」
フリードが言うと、ヴァイオラの顔が赤くなり、必死に両手をブンブン振って拒否を示した。
その直後に侍女長から厳しいお叱りを受けてしまった。
「フリード様は何もしないでください! ほら、ヴァイオラ立てる?」
「はい。すみません、侍女長……」
謝るヴァイオラに、優しい声をかけた侍女長は、フリードに視線を向けた。
「フリード様、ヴァイオラが早く届けようとした手紙です。そちらをお持ちになってお部屋にお戻りください」
侍女長は二十代後半の女性で、普段からヴァイオラの指導をしている。キビキビした態度にキリッとした顔でヴァイオラの身体を支え、フリードに二通の手紙を渡した。
「あ、ありがとう」
「いえ! お気になさらず! ほらヴァイオラしっかり」
受け取った手紙は一通ヴァイオラの血が付いていた。
部屋に戻り、窓際の椅子に座った。まずは血が付いていない手紙だ。蝋封には見覚えのない家紋が押されている。
何の種類か分からない花の模様だ。
(誰だ?)
とにかく読めば分かるだろうとすぐに開いたが、内容を数行読んだだけで苛立ってきた。
『離宮の愛人様
家紋を見ても誰だか分からなかっただろう? だから勉強不足なんだ。その美しい毒草がキュプレ家の家紋だ。覚えておけよ』
「……あの性悪ボス」
キュプレ家は秘匿された闇の公爵だ。存在しているという噂があるだけで、実在しているかどうかは公表されていない。
ルディネスなどキュプレ家を名乗る事を許されている者はいるが、名乗る機会はそうそうない。
ウェルディスは知っているだろうが、わざわざ家紋の模様を聞いたりしなかった。
「この花の特徴からしてフェロンの花か? ……何故キュプレ家がフェロンを知ってるんだ?」
フェロンはフリードが愛用している毒殺用の毒草だ。クレイル公国の大山脈の丈夫に生息しており、採るには命懸けの山登りをしなければならない。
フェロンの葉と花弁から抽出した液体は、一滴以上摂取するとすぐに毒の効果が現れてしまうが、一日一滴ずつ毎日摂取させると、二ヶ月で徐々に病魔に冒されていくように死んでいく。
医者が診ても毒だと気付かれる事がほぼない代物だ。
フリードがルブロスティン公爵暗殺に使用していた毒薬である。難点は、大山脈の上部にあるので、死を覚悟して行かなければならない事だ。
そろそろ採りに行かなければ、と思っていた事を思い出した。
(死なない保証はないんだよな。毒草採りにいって死んだら……。
俺が死んだらウェルが悲しむ、よな?)
フリードは手紙を読まずに悩み込み、アホらしくなって悩むのをやめた。
ボスからの手紙の続きを読む。
『ルディネスの歓迎会をしようと思う。ついでにお前も歓迎してやる。
〇〇日の夕方アジトに来い。命令だ。
ハーラート』
行きたくないが、下っ端のフリードに断る事は出来ない。断ったらその後が面倒な事になりそうだ。
それなら数時間我慢をして、その後円滑に仕事が出来た方が良い。
ボスからの手紙をテーブルに放り、二通目の手紙を手に取った。
ヴァイオラの鼻血付きだ。家紋はないが、封筒の隅に「アグリル・レグタリア」と書かれていた。
「アグリル卿……そういや、離宮に招待するって言ったのに忘れてたな」
サーシュ侯爵の件が片付くまで、あまりにも忙しかったのだ。アグリル卿との約束を思い出す暇がなかった。
言い訳にしかならないが、暇になってからも忘れっぱなしだった。
『拝啓、フリード様。
いきなり手紙を送って申し訳ありません。
元気でお過ごしでしょうか? またフリード様の護衛がしたい気持ちで胸がいっぱいです。
以前、離宮にご招待いただけると仰っていましたよね? 不躾ではありますが、すぐにでも招待していただきたいです。
フリード様のお言葉が単なる社交辞令でなければ……ですが。
アグリル・レグタリア』
フリードはすぐにヴァイオラ以外の侍女を呼び、紙とペンの用意をしてもらい、返事を書いた。
そしてアグリルに返事を送るよう頼んだ。
(どうしてアグリル卿は俺の護衛がしたいんだ?)
以前、リュートがアグリルがおかしいとか、気があるに違いないと言っていたのを思い出した。
そういう風には思えないのが本音だ。同時にリュートに不信感を覚えたが。
リュートもアグリルも「変」だと感じる部分はいくつかあり、その違いに差はないと考えている。
(リュートもアグリル卿も、まだ警戒は解けない。今後付き合う上で警戒しなくていい理由が出来たら……)
前回の任務では、人を信用出来なかった事で後悔した事があった。
警戒するに越したことはない。このスタイルを変えるつもりはないが、どこまで信用していいのか見極めていこうと、考えを改めたのだった。
※
その数日後、アグリルを離宮に呼んだ。アグリルは門の中に入るなり、綺麗な花々が並ぶ庭を眺めて、ぱぁっと笑顔になった。
「フリード様! この庭凄いですね! 貴族の屋敷とか護衛や警備で行ったことがあるんですけど、ここまで凄いのは初めて見ましたよ。
さすが皇帝陛下に溺愛されているだけありますね!」
「そんな事はない。ただ、庭師の腕が良いだけだ」
「そんな一流の庭師を雇うほど愛されてるって事じゃないですか。同じですよ」
そういうものか? とフリードは首を傾げたが、そもそもマナー上の褒め言葉だろうと頷いた。
来客をもてなす為の応接室に案内し、ヴァイオラに紅茶と菓子を用意してもらう。
「離宮に招待すると言いながら忘……、呼ばずにすまなかった」
「あ、今忘れてたって言いかけましたね? フリード様もお茶目な一面があったんですね」
かなりのフレンドリーさに、フリードは圧倒された。昔からそうだ。
帝国軍第一隊にいた時からアグリルはフリードに馴れ馴れしく構ってきた。
「以前会った時、俺と話したがっていたな?
ただ、昔仲間だったからっていうわけじゃないよな? ザハード王国で護衛をした時といい、俺に対する態度はまともとは言い難い。
何が目的だ?」
「やだなぁ。俺は、ただ単に、昔の仲間に出会えて嬉しいだけです。
スパイ容疑で逮捕されて、あぁ殺されるんだなって思ってたら、陛下の愛人になってて驚いたんですよ。
興味を示すのは当然ですよ。それをまともじゃないだなんて酷いですよぅ」
眼球の動き、身体の様子、手の動き、態度、声色、どれを取っても嘘をついているようには見えない。
だが逆にそれが怪しい。嘘をついていないように見せる訓練を受けたかのようだ。
「それは失礼した。あれから、ダーズリン侯爵とはどうだ?」
「隊長、最近総隊長になられたので、 最近はあまり会ってないんですよね。
新しくルブロスティン公爵閣下が第一隊の隊長になりまして」
アナスタだ。前公爵が亡くなる前は第七隊に所属していたが、公爵を継いでから第一隊隊長に指名されたのだ。
ガタイもよく、剣技の強さも申し分なく、リーダー気質のあるアナスタだが、急に強者ばかりが集っている第一隊の隊長は荷が重いだろうと心配していた。
「そうだな。雰囲気とか変わったか?」
「ええ。若い隊長なので、最初は皆難色を示していたんですけど、最近は打ち解けてきたように思います。
やっぱり認められるには力を示すしかないんですかね?」
(公爵は何をしたんだ?)
「アグリル卿は既に認められているでしょう? 次に近衛兵に推薦されるのはあなただと前から言われていたではないですか」
「それは周囲が勝手に言ってるだけですよ。フリード様は俺の事どう思います?
俺の剣は、どれくらい強いと思いますか?」
第一隊にいた頃はよく世話になっていた。普通に強いとは思うか、強さとは相対的なものだ。
「どれくらい」と聞かれても困るだけだ。
「俺は剣とかあまり好きじゃないし、得意でもない。そもそも興味ないから分からない。
帝国軍第一隊のエース、それだけでは強い事の証明になりませんか?」
「俺は、フリードさんに強いって認めて欲しいです」
帝国軍第一隊のエースだけあって、強さを求めたいのだろう。大いに頑張ってくれ、とは思うが、アグリルの言い方には少し引っ掛かりを覚える。
違和感を無視して、答えた。
「アグリル卿は十分強いと思います。それだけではいけませんか?」
「じゃあ、俺をフリード様の専属騎士にして下さいますか」
急な要求で反応が難しい。フリードと話したがっていた目的はこれだったのだ。
すぐに頷ける問題ではない。
「──は? 俺の一存では……」
「出来るって言ったじゃないですか! フリード様が皇帝陛下に我儘を言えば、大体の事は通してくれると!
おかしいですよ、陛下に愛されている愛人に護衛がいないなんて!」
「俺に護衛は必要ありません。離宮を空ける事も多いし、任務につく場合は護衛なんて邪魔なだけです」
「フリード様が離宮で過ごされる時や、遠征に行く時だけでも構いません」
「要りません。第一隊に集中して下さい。どうしていきなりこんな事を言い出したのです?」
「俺の方が! 陛下より俺の方が先にフリード様を好きになったんだ! 俺に力がないばかりに、逮捕されたあなたを守る事が出来なかった。
あなたの愛をもらえなくてもいい、せめて、お傍に置いて下さい……。
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