離宮の愛人

眠りん

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二章

九話

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 フリードが歩き出すとリュートは姿を消した。監視に戻ったのだろう。近くにいるが、フリードの視界には入らない。

(好きについてくるがいいさ。これから行く場所は、どうせ入れないのだから)


 皇城の周りは濠があり、常に水が流れている。 城下町と城を隔てる橋を通ると城だが、そこから皇城の広い敷地内を全て囲うように人の倍の高さ程ある塀が、中の様子を覗う事すらさせない。
 フリードは橋を渡り、門番の兵士に挨拶をした。

「戻りました」

 兵士達は焦った様子で敬礼した。フリードの立場の者なら本来なら馬車に乗って入城する筈が、徒歩で戻ってきたので驚いているのだ。

「フリード様!? お、お帰りなさいませ」

「陛下に謁見を願う為、本城へと入りたい」

 離宮に進むなら本城へは入らず、馬車に乗って敷地の隅に向かうが、本城であればそのまま真っ直ぐ進むのみだ。

 だが、誰でも入れるわけではない。身分と用件を伝え、来客や仕事で来た者の予定を把握している門番が通せば真っ直ぐ進める。

「フリード様ならいつでも通すよう仰せつかっております」

「どうぞお通り下さい」

 フリードは城へと進んでいった。本城の扉の前に立つ警備兵も快く中に入るよう促した。
 中を歩くと、城内で働く者や、客人とすれ違う。誰もがフリードを見て立ち止まった。
 不躾な視線に晒される。

「あれって、離宮の愛人の……?」

「普段は離宮にいらっしゃる筈なのに。何故ここに?」

「陛下に呼ばれたのか?」

 聞こえないよう小声で話しているようだが、聴覚が優れているフリードには全て聞こえてしまっている。

(悪い噂とか流されてるのかな。俺は良いけど、ウェルが言われるならどうにかしないとな……)

「皇后様と鉢合わせたら、修羅場になるのでは?」

 誰かのそんなひそひそ声が聞こえた。

(皇后様? あぁ、そういえば先日結婚されたんだったか。侯爵の裁判前に城でお披露目式をしたんだっけ。
 帝国中が皇帝の結婚話と、侯爵の殺人事件で賑わっていたな)

 そのせいもあってザハード王国が宣戦布告をしようとしている、という情報を拾いそこねたのだ。
 言い訳にしかならないので免罪符にするつもりはないが。

 フリードは玉座の間へと向かった。そこでは、ウェルディスは来客の予定があると、五段の階段がある高台にある玉座に座って待ち、予定通りに来客を迎えて話をする。稀に予定にない来客の相手をする事もある。

 フリードは玉座の間の扉の前に立つ近衛兵二人に声を掛けた。

「フリードです。陛下にお目にかかる事は出来ますか?」

「お待ち下さい」

 一人近衛兵は玉座の間に入っていき、数分後に戻ってきた。

「陛下は執務室にいらっしゃいます。フリード様ならいつでも入ってきて良いと仰っております」

「ありがとう」

 フリードが微笑を浮かべると、近衛兵達は緊張した面持ちで姿勢を正した。

「いえ! 当然の事です、礼には及びません!」

 フリードは玉座の間に入った。今は来客の予定がない為誰もいない。
 その代わり、玉座の奥にある人一人が通れる小さな扉の前に近衛兵が二人立っている。
 そこは玉座への階段とは違う位置にあり、真っ直ぐと歩いていく。

 彼らはフリードが近寄ると右手を胸に添えて敬礼をした。 

「陛下がお待ちです」

 その扉を過ぎると廊下が続いていた。廊下には部屋が幾つかあり、更に近衛兵が二人立っている部屋がウェルディスの執務室だろう。
 一番奥には階段があり、最上階が皇族の居住区である。
 そこに肉便器部屋も存在していた。今は使われていない空き部屋となったが。

 執務室前に立つ近衛兵は今までの者達とは雰囲気も身なりも違う。他の近衛兵達は紺のジャケットだが、彼ら二人は白いジャケットだ。胸には名誉の証であるブルーダイヤモンドがあしらわれた徽章が飾られている。
 ウェルディスに指名された、帝国内でトップの実力のある皇帝専属の護衛騎士である。

「フリード様がいらっしゃいました」

 騎士の一人が扉をノックし、用件を伝える。

「通せ」

 とウェルディスの声。扉を開いて中に入った瞬間だった。ウェルディスが駆け寄ってきたのだ。勢いよく抱きつかれる。

「フリードぉっ!!」

「うわ、陛下? ちょ、離してください。ここは私の寝室じゃありませんよ」

「良い! ここには僕と君しかいないのだから! 今この場は僕と君二人だけの場所だ!」

 二十日近く会っていなかったのだ、ウェルディスは寂しくてたまらなかったとフリードを離すつもりがない。
 無理に離そうとするとキスをされた。ウェルディスに触れられただけで身体の力が抜けそうになるのに、キスまでされるとされるがままとなってしまう。
 扉を開いた騎士は見なかったふりをしてそっと閉めた。

「フリード。フリード。もう外に行かないと約束してくれ。僕は君がいないと生きていけそうにない!」

 ウェルディスはフリードの腕を掴んで引きずるように机の前まで連れていくと、書類やペン、インクを全て床に叩き落とした。

「おい、ウェル!?」

「ああ、君に触れたかった。君に求められたかった」

 ウェルディスはフリードの服を一瞬で脱がし、机の上に押し倒した。理性の失った獣同然だ。

「俺、なんの準備もしてきてねぇんだって! おい! ウェルっ!?」

 ウェルディスはフリードの両足を開かせると、一ヶ月近く弄っていない為、処女のようにぴっちりと閉まったアナルを舐め始めた。

「やっ……ぁっ! そこ、だめだ、ウェルに舐められると……やぁぁっ」

 腰をくねりながら拒絶するが、一切力の篭っていない拒絶など、受け入れているも同然である。
 その間に舐めたり、指で広げたりを繰り返し、あっという間に指が三本入った。

「ほらフリードはここが弱かっただろう? 僕を求めろ」

「はぁ……ぁ、ウェル……俺の中に来て。ウェルのおっきいのが欲しいよ」

「ようやく素直になってくれたな」

 我慢していたのはウェルディスだけではない。フリードが誘うと、ウェルディスはキスをしながら自身の肉棒を、フリードのアナルに擦った。
 すぐには入れない。焦らして焦らして、フリードが本気でねだるのを期待している。

 それを知っているからこそフリードはウェルディスを強く抱き締め、無理にでも自分の中に入れようとする。

「ウェル、意地悪しないで、入れて、入れてくれなきゃ、尻がおかしくなる」

「じゃあなんて言えばいいんだ?」

「い……入れてください」

 外には護衛騎士が二人いる。さすがに大きな声で言えば外に聞かれてしまう。フリードはウェルディスの耳元で小声でねだった。
 だが……。

「大きな声で言わなきゃ入れてあげない。外まで聞こえるようにな」

「うぅ。ウェルの意地悪」

「ふふ。無言のスパイさんが形無しだなぁ。本当に一年も拷問に耐えられたのか?
 こんな風に責めたらすぐに全部喋ってしまいそうなのに?」

「それは……ウェルだけ! 今までは性欲を失う毒を常用してたし、快楽を得た時に耐えきる為の肉体改造もされてるんだって」

「なんだ、その人道に反する処遇は。もうそんな目に遭わせないよ。ほら、君の望みを全て叶えてあげよう。
 大きな声で言えたらだけど」

 ウェルディスの手がフリードの肉棒をなぞった。それだけで感じてしまい、何も考えられなくなる。

「ぅ……ウェルの、おっきいの入れてくれ! 中いっぱい擦って気持ちよくして! 俺を犯してくれ」

「うんうん」

 気を良くしたウェルディスが肉棒を一気に最奥まで突き刺す。脳まで響く快楽の甘味にフリードの口からは女性のような高い艶のある嬌声が漏れる。

「はぁん、ウェル……あっ、気持ちいいっ、奥気持ちいいの」

「はぁ、はぁ、フリード。ほら君の好きなおっぱいだよ」

 ウェルディスが、繋がったまま机に膝をついて上に乗ってきた。フリードの足は高く上がる。
 関節が柔らかい為、フリードの足は顔の横に持ってこられる。目の前にはウェルディスの乳首があった。

 フリードは誘われるがまま乳首に吸い付いた。ミルクが出るわけでもないのに、乳児のようにしゃぶりつく。
 こうしていると何故か安心するのだ。

「こうされるとフリードのママになったみたいた」

 しゃぶっている最中もアナルは犯されていて、好きな乳首もしゃぶれている。精液を奥に出されると久々に満たされた気分になれた。
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