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番外編
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飯塚は人々が行き交う駅前で悠璃を待っていた。付き合って二ヶ月、いつも部屋の中で過ごすデートばかりで、なかなか外出デートが出来なかった。
今回は悠璃が見たい映画があるのだと、駅前で待ち合わせだ。
一緒に住んでいるのだから一緒に部屋を出ればいいのに、と飯塚は思ったが、悠璃が外デートは待ち合わせしたいと言い出したのだ。
「意外とロマンチスト? 可愛い、やっぱ可愛い」
ニヤけが治まらない。顔に力を入れて無表情を保つ──。
だが、それは無意味な努力である事を、飯塚はまだ知らなかった。
「お待たせ~」
悠璃の声に顔を上げる。
「……!! ゆ、悠璃!?」
「ごめん、待たせちゃったね」
そこには普段は絶対にお目にかかれない、きちんとした姿の悠璃がいた。
モスグリーンのパーカーの上着に、インナーはグレーのシャツだ。下はジーンズで、綺麗な黒いスニーカーを履いている。
伸びていた髪も首筋までカットされており、いつも生えっぱなしの髭もない。
悠璃が一番まともな格好をしている時はバイトに行く時だけなのだが、それでも上下を適当に合わせた姿である。
しかも最近バイトがなかった為、今日の朝見た時も髭をちゃんと剃っていなかったのに、綺麗になっている。
「どうしたの?」
「なにが?」
「いや、気合い入ってるなって」
「えへへ、どうかな?」
「人の目は気にしない」主義で、自分の見た目に対して何かを言われるのを嫌う悠璃だ。これではまるで人の目を気にしているかのようだ。
あまりの眩しさに、飯塚は瞬きをして、腕で目を擦った。
「綺麗だ。綺麗な悠璃がいる」
「そんなにいつも汚いか?」
「いつもは、なんか薄汚い」
「悪かったな。少しは直していくよ」
「どうして……人は人、自分は自分なんじゃないの?」
すると悠璃の頬がプクッと膨らんだ。
頬を赤く染めて、飯塚を睨んでくる。そんな顔も飯塚から見たら可愛いとしか思えないが。
「言わせんなよ。飯塚は他人じゃないから……俺のせいで飯塚まで変な目向けられるのは嫌だし」
「悠璃っ!!」
「うわっ」
ガバッと悠璃に抱きつく。胸の奥から愛が湧き出してくるようだ。その思いは押さえきれず腕に力が入る。強く抱き締めてしまうのは愛の放出なのである。
たまらなくなり、飯塚は悠璃にキスをした。
「隼人こそ人の目気にしろよ~」
悠璃と一緒だと周りが見えなくなってしまう飯塚であった。
今回は悠璃が見たい映画があるのだと、駅前で待ち合わせだ。
一緒に住んでいるのだから一緒に部屋を出ればいいのに、と飯塚は思ったが、悠璃が外デートは待ち合わせしたいと言い出したのだ。
「意外とロマンチスト? 可愛い、やっぱ可愛い」
ニヤけが治まらない。顔に力を入れて無表情を保つ──。
だが、それは無意味な努力である事を、飯塚はまだ知らなかった。
「お待たせ~」
悠璃の声に顔を上げる。
「……!! ゆ、悠璃!?」
「ごめん、待たせちゃったね」
そこには普段は絶対にお目にかかれない、きちんとした姿の悠璃がいた。
モスグリーンのパーカーの上着に、インナーはグレーのシャツだ。下はジーンズで、綺麗な黒いスニーカーを履いている。
伸びていた髪も首筋までカットされており、いつも生えっぱなしの髭もない。
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しかも最近バイトがなかった為、今日の朝見た時も髭をちゃんと剃っていなかったのに、綺麗になっている。
「どうしたの?」
「なにが?」
「いや、気合い入ってるなって」
「えへへ、どうかな?」
「人の目は気にしない」主義で、自分の見た目に対して何かを言われるのを嫌う悠璃だ。これではまるで人の目を気にしているかのようだ。
あまりの眩しさに、飯塚は瞬きをして、腕で目を擦った。
「綺麗だ。綺麗な悠璃がいる」
「そんなにいつも汚いか?」
「いつもは、なんか薄汚い」
「悪かったな。少しは直していくよ」
「どうして……人は人、自分は自分なんじゃないの?」
すると悠璃の頬がプクッと膨らんだ。
頬を赤く染めて、飯塚を睨んでくる。そんな顔も飯塚から見たら可愛いとしか思えないが。
「言わせんなよ。飯塚は他人じゃないから……俺のせいで飯塚まで変な目向けられるのは嫌だし」
「悠璃っ!!」
「うわっ」
ガバッと悠璃に抱きつく。胸の奥から愛が湧き出してくるようだ。その思いは押さえきれず腕に力が入る。強く抱き締めてしまうのは愛の放出なのである。
たまらなくなり、飯塚は悠璃にキスをした。
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