小悪魔女王様

眠りん

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前編①

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 ジリリリリリ、と目覚まし時計の音で目が覚めたみつるは、眉間に皺を寄せて再度布団にくるまった。
 布団から出たくないと考えてしまうのは、学校に行きたくないと思うからである。学校に行けばイジメ被害を受ける。それを分かっていて登校したいなど思う者がいるだろうか?
 いや、絶対に百パーセント間違いなく「いない!」と断言しよう。

 学校に行きたくない、けど行かないと母親が、いやでも……という葛藤をしている間にも時間は過ぎ去っていく。
 こうして悩んでいる時の時間の進みの早さは、時計が早送りでもされているのではと疑う。

 ギシギシ、と階段を登る音が聞こえた満は余計に布団の中で丸まった。その時、バンッ! とドアが開いて、耳障りな声が響いた。

「満! 起きなさい! 何時だと思ってるの!?」

 ここで無視をすれば、母親が心配してくれるだろうかと一縷の期待をするが、してくれない事は分かっているので、モソモソと布団から起き上がった。
 前に母親の声に反応せずにいたら、無理矢理布団を剥がされて、学校に送り出されたのだ。

「満、おはよう」

「……はよ」

「まだ寝惚けてるのね。早く着替えなさいよ、学校遅刻しちゃう」

「……母さん……、学校……」

「何?」

「ううん、今日小テストあるから憂鬱だなって」

「それなら頑張りなさい。それにしても、小テスト多いのね」

「まぁね」

 母親に悩みなど相談は出来ない。変に男のプライドが邪魔をするが、もしかしたら無理にでも聞きだしてくれるかもしれないと、言いかけてやめてしまう癖がついてしまった。

(学校、やだな)

 登校中、歯茎が痛くなる。気付くと歯を食いしばっているのだ。学校に着く頃には吐き気も感じて嗚咽が漏れる。
 そのせいで俯く事が多い為、前髪で顔半分隠れる状態だ。背も小さく、華奢な身体つきで、大人しい男子なんていじめの恰好の的だろう。

 と、いってもいじめてくるのは二人だけだが──。

「うっわ、またキモチビが歩いてるよ。お前キモいんだから俺の前歩くなよ」

 と、後ろから現れたのは悠弥ゆうやだ。
 高校デビューだろう、イタズラ好きの悪ガキだった悠弥は、入学してから髪を茶髪に染め、制服もだらしなく着ている。
 ほぼ毎日先生に叱られているが、叱られ慣れてしまっている為、聞き流している。

 前を歩いている事に不満があるのなら、と満は道の端に寄った。悠弥が先に行ってしまえば問題ないのだろう──など、楽観的な考えは無意味だ。
 満がどうしようと、なにかしら理由を付けて絡んでくるのだから。


「おい、満。何端に寄ってんの? 俺への当て付けかよ。お前は良いよな、そうやって被害者ぶってりゃいいんだからさ」

「……」

「はぁ。お前に指導してやるよ。こっち来い!」

 悠弥に腕を引かれて校舎裏へと連れて行かれた。周りは花壇があるのみで誰もいない。

「何してんだよ、俺の前歩いた罰だ、早く土下座しろよ」

 わけの分からない言い掛かりをつけて、何がしたいのか分からないが、満は嫌々ながらも地面に膝を着き、頭を下げて土下座をした。

「うわ、マジで土下座したよコイツ」

 悠弥は笑いながら満の土下座姿を写真に納めた。何度も連写される。悠弥が行ってしまうまで我慢しようと耐えていたのだが。

「本気で謝罪する気があるなら、俺の靴舐めろよ!」

 少し顔を上げて悠弥の革靴を見る。当たり前だが汚れている。舐められるとしたら正気の沙汰ではない。
 高校二年生に上がり、同じクラスになってから、悠弥からは色々な事を要求されてきたが、最近はどんどん内容がエスカレートしている。

「は、反省してます。勘弁して下さい……」

「本当に反省してるか分かったもんじゃないな」

「してます! してます!」

「だからぁ、その証拠にこの靴舐めろって言ってんの。舐めたら反省してる事信じてやるよ」

(反省してるわけないだろ。俺は何もしてないんだから)

 このままでは遅刻してしまう。悠弥は遅刻したとしても痛くも痒くもないのだろうが、満は違う。
 以前、悠弥の妨害に遭って遅刻した時に担任教師から「次遅刻したら親に連絡する」と言われているのだ。
 それ程、悠弥の妨害に何度も遭っている。

 満は覚悟を決めて靴を舐めた。悠弥が良いと言うまで舐め続けた。口の中に砂利が入る。不快な感覚に眉を顰めながら、従順さを見せた。
 ようやく許された時、始業の五分前になってしまっていた。悠弥はフラフラとどこかへ行ったが、満は走って教室に駆け込んだ。


 授業が始まると満はまた別の問題に耐えなければならなくなる。それが、満の隣の席に座っている歩恭ふゆきだ。
 眼鏡をかけて真面目そうな優等生といった外見は、何も外見だけでなく普段の素行からも頷けるものだ。身長も高く、頭のいい
 彼は学業成績が良く、教師から好かれている。

「この問題……斉藤答えなさい」

 教師に指されたのは歩恭だ。問題は結構難易度の高い数学の応用問題だ。歩恭なら解けるだろうという教師の考えだろうか。

「先生、僕にはこの問題は簡単すぎるので、隣の小谷君に答えてもらった方が、彼の勉強になると思いますよ」

「む、それもそうか。じゃあ小谷」

 満はビクリと身体を揺らした。問題を難度見返しても答えが分からない。ノートに公式を当てはめようとするが、出来ない。

(無理だよ。この公式に当てはめるとしたら数字が足りない。当てはめられないのがあって計算出来ない)

 どうしたらいいのか分からず、冷や汗をダラダラと流しながら「すみません、分かりません」と答えた。

「小谷には難しい問題だったな、じゃあ山本」

 山本は普通に答えており、教師が解説をする。聞けばなるほどと思うが、どういう思考をすればその解き方が思いつくのか分からない。

「おい、満」

 小声で呼ばれる。右隣を見ると、歩恭が意地悪そうな顔で笑っていた。

「後で解けなかった罰を与える。逃げんなよ」

 満は黙って頷いた。逃げられる筈がない。抵抗など出来ないのだ。

(あぁ、嫌だなぁ)

 昼休み、満は歩恭によって空き教室に連れて行かれた。掃除があまりされていない埃っぽい教室は、電気が点いていない事も相まって薄暗い。

「おいバカ。また不正解だったな」

「はい。バカで申し訳ありません」

「早く土下座しろよ。ウスノロ」

 何故、悠弥も歩恭も土下座を強要するのか、疑問に思いながらも満は言われた通りに土下座をする。
 こうして呼び出されるのは、満が答えられなかった時とテストで平均点以下の点数だった時だ。
 満の成績が良くならない事を分かってやっているのだ。

 歩恭は学力コンプレックスがあるらしい。自分より学力が上の生徒にストレスを感じ、その発散を満でしているという構図だ。
 条件がなければいじめてこないので、悠弥よりもマシではあるが、呼ばれた時は最悪だ。

 歩恭は思い切り満の脇腹を蹴りあげた。土下座は崩れて横に倒れる。満は自分の身体を丸めて防御態勢に入った。
 背中をガンガン踏まれたり、腹や尻を蹴られ、頭を踏みつけられる。

(痛い、痛い、痛い、痛い、痛いよぉ)

 ただ地獄のような時間が過ぎるのを待っていた時だった。ガラッと、教室の扉が開いた。
 普段使われていない教室で、誰も入る事はない筈だった。さすがの歩恭も驚いたのか、満から離れて大人しそうな顔に戻る。
 満も身体を丸めるのをすぐにやめて身体を起こす。そうでないと、後が恐ろしい。
 歩恭に「僕を悪者にしたいんだね? お仕置しないと」等と言われて、もっと酷い目に遭う想像が出来た。

「探したぜ、満!」

「ひっ!」

 入ってきたのは悠弥だ。満を探してわざわざ空き教室も確認していたのだ。

「あれ、歩恭? なんでここにお前が?」

「それはこっちの台詞。満に何か用?
 手早く済ませてよ」

「いやいや、昼休み全部使う予定だから」

「は? 満、お前って悠弥と仲良かったの?」

 歩恭に不機嫌な目を向けられた。満はビクッと身体を揺らして視線を床に落とす。普段あまり会話のなかったいじめっ子同士だったが、実は下の名前で呼ぶ程の仲だったようだ。
 満は嫌な予感を感じてビクビクとした。

「何言ってんだ。コイツは俺のオモチャだからな。仲良しなんて可愛い関係じゃねぇんだよ。
 歩恭こそ、コイツと仲良しなのかよ?」

「満は僕のストレス発散の道具だよ。仲良しなんて事あるか。コイツ、いじめても誰にもチクらないし、反抗しないし、本当良い道具だよ」

「なるほど。じゃあこれからは二人でいじめてやるか」

 満は困ったように眉を八の字にして訴えた。

「ひ、一人ずつでお願いします。言う事聞きますから」

 二人が好む土下座をして求めた。今まで耐えられたのは一人ずつだったからに違いない。
 これが毎回二人がかりでとなると、精神的負担も肉体的負担も二倍になりそうだ。

「やだよ。拒否権あると思ってんなら、躾直さねぇとな。さっきエロ本見てて勃ったからこれ舐めろよ」

 悠弥はファスナーを下ろすと、上に向いているペニスを満に向けてきた。

「ひっ!」

「靴舐められるお前なら、これだって舐められるだろ?」

 靴とペニスは比べられるものではない。確かに靴も汚いものであるが、直接地面に着いている部分は舐めない。だが、ペニスは違う。尿が出た部分を舐めなくてはならなくなる。
 生理的嫌悪感が強まった。

「おら、お前に拒否権ねぇっつってんだろ! 拒否したら拒否しただけの時間分、延長して舐めさせんぞ。授業サボってチンポ舐めたいの?」

「すぐに舐めさせていただきます!」

 満は食いつくように悠弥のペニスを舐め始めた。初めてなので舐め方が分からない。尿道口を舐めないように亀頭の周りを舐めたり、竿の部分を舐めたりしたが……。

 ガシッと悠弥が両手で満の頭を掴んできた、と思った瞬間、喉奥までペニスを容赦なく突っ込んできたのだ。

「ぅごおっ! げっ、ゲェッ」

 今にも吐きそうになって嘔吐く。喉の奥か亀頭で塞がれて、嗚咽を漏らせない。生理的に涙が浮かんだ。

「汚ぇ音出してんじゃねえよ。あ、歯ぁ立てたら、立てた分だけお前のチンコ蹴って、金玉踏んでやるから」

 恐ろしい発言に、満は顔を青ざめさせて顎を最大限広げた。
 顎が痛むが、それを訴える事も出来ない。掴まれた頭が前後に揺さぶられて、視界は悠弥の陰毛が近付いたり遠ざかったりしている。

「このオナホ最高。家に連れて帰って、毎日のザーメン処理させたいぜ」

「へぇ、それ気持ちいいんだ?」

 見ているだけだった歩恭が、興味津々に悠弥と満を見つめている。

「うん。お前も使う?」

「そうするよ」

「じゃ、少し待ってろ。もうすぐ……あ、イきそう」

 頭を揺する速さが増すかと思ったが、悠弥は満の頭を固定して、速いテンポで腰を動かした。喉の奥は完全にペニスで塞がれて、満は涙を流した。

「イく!」

 喉の奥に出せばいいものを、最悪な事に悠弥は満の舌の上に精液を出した。

「うえぇぇぇええ!!」

 その時ばかりは、満はなりふり構わず精液を床に吐き出してしまった。涙と鼻水が止まらない。
 だが、悠弥は満の頭を踏みつけた。

「何吐き出してんだよ! このグズが!
 ご主人様のザーメンは喜んで飲めよ!」

「ひっく……うぅ。や、もうヤダぁ! こんなの無理。無理。死にたい」

「じゃあ死ねよカス!」

 精液で濡れた床の上に、満の顔を擦りつけられるように踏まれる。

(汚い、汚い、汚い、汚い、汚いよぉ!!)

「まぁまぁ。死んだらもったいないじゃん。使えるオモチャなのにさ」

 助け舟のようで、そうでないものを出したのは歩恭だ。あんまり追い詰めたらいじめられなくなるデメリットを感じ取ってくれたのか、と満は歩恭にささやかな期待をした。

「それもそうかな」

「調教すれば良くない? 毎日フェラさせて、必ず精液飲ませてさ、ザーメン処理するのが当たり前になっちゃえば、嫌がらなくなるよ」

「歩恭頭いいな」

「それ程でも」

 楽しそうな二人と対照に、満は絶望で血の気が引く思いだった。
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