誰にも止められない

眠りん

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二章

小倉君⑥

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「葵唯に命令するよ。辛い時に僕に隠し事しないで」

「……え?」

 俺を受け入れてくれた莉紅だから、酷い事をしてくれると期待していたらそんな言葉を言われて困惑する。
 一気に性欲が吹っ飛んだ。

「君の心を縛っていいなら、この命令に従って」

 真面目な話をしているのに、莉紅は腰を前後に動かした。俺がどう感じるかお構い無しにガンガン突いてくる。

「あっ、あっ、ひぃっ、あっ、あっ、あぁっ」

「早く……っ、答、えて」

「は、はいぃ。俺の事縛ってぇ、身も心も、全部莉紅のものですっ」

 莉紅は俺の中に射精した。それすら嬉しくて、興奮する。

「僕が何も言ってないのに射精我慢出来て偉いね」

「んっ……」

「そうだ、あれやって。服従のポーズ」

 俺は仰向けに寝転がって両足を曲げて上にあげた。
 その両足を開いてきた莉紅は、俺のチンコに顔を近付けたと思った瞬間、パクッと口の中に入れてしまった。

「えっ、ちょっ」

「大丈夫。経験あるから」

 緑とそういう事をしたんだと分かった。胸が痛くなる。好きだった人を取られた憎い相手にフェラされてる。
 今は俺が莉紅の愛人で、莉紅のもので、莉紅の命令で動く奴隷。

 なんでだろう。凄く嬉しいの。







 思い出した。
 莉紅と初めてセックスした時、嬉しかったんだ。

 あの時から徐々に緑との思い出が薄らいでいった。それが悲しくて、忘れないようにって思って、俺は忘れないようにした。
 莉紅とのSMプレイは別として、俺も緑を抱きたかった後悔が残っていたから、莉紅に抱かせてくれと頼んだんだ。

 莉紅は迷う事なく承諾した。
 だって、莉紅は大事な人だと認識した人の為なら何でもするんだ。
 俺はそんな莉紅の優しさにつけ込んで、緑の代わりだと思い込む事にした。

 ──でも、もう、終わりにしよう。



 降りる駅に着いてから、数分歩く。幸い曇りだけどそんなに湿度は高くなかった。
 夏希ちゃんは日焼け止めを塗り直して、広い鍔の帽子を被っているけど。

 周りからカップルに見えているんだろうか。なんだか可愛い夏希ちゃんを一緒に連れている事が誇らしく思えてきた。
 可愛い彼女を隣に歩かせたい男の気持ちが少し分かる気がした。
 でも、夏希ちゃんがどんな姿でも俺は……なんて。自分でそう考えて恥ずかしくなる。


 歩いていくと海岸に辿り着いた。
 三年前の夏の終わり。まだ元気だった緑と、莉紅と、俺の三人で来た海。
 毎年三人でこの海に来ていた。でも緑が病気になって、来れなくて。

 先月夏休みに皆で海に行った時、俺はずっと緑の事を考えていた。夏希ちゃんが可愛い水着を着ていたのに。
 もっとちゃんと見れば良かったなぁなんて後悔して、バカなんだ俺は。

 その海に来た。緑が最後に皆で海に行きたいね、なんて言って、やっぱり行けなかった海に。

 俺が莉紅の愛人になってからすぐ、一度だけここに来た事がある。
 あの時は冬で、凄く寒かったけど、身体の辛さより緑がいない事の方が辛くて悲しくて、寒いとか感じなかった。
 莉紅も、自殺でもするんじゃないかって顔をしていた。

「葵唯──これからは二人で支え合ってこ」

 そう言っていた莉紅の顔が、海を眺めると記憶が甦った。

 あぁそうだ。莉紅とそういう誓いをしたんだ。
 あの時ばかりは、緑の代わりをするなんて嫌な気持ちは一切なくて、莉紅と生きようって素直に思えた。
 なんで忘れていたんだろう。

「海に来るなら言ってくれれば良かったのに」

「夏希ちゃん、俺の話を聞いてくれる?」

「もちろん」

 真っ直ぐに夏希ちゃんの目を見つめて、神様に誓うように、思いを言葉に乗せた。

「ここ、莉紅と来たんだ。愛人になった時に、二人で支え会おうって誓った」

「葵唯君……」

「でも、もう終わりにする。今日はね、誓いを立て直しにきた。好きです。俺と付き合ってくれると嬉しい。夏希ちゃんだけを見る。大事にする。絶対に」

 なんか言ってしまった後、恥ずかしさが込み上げてきた。なんか変な事言ったような気がする。
 笑われる、キモいと思われるかも。

「も、もぉ~……。あ……あお……」

 夏希ちゃんの目から涙が零れて、袖で顔を抑えて泣き始めてしまった。
 俺、痛かった!? 泣く程!?

 オロオロしていると、ポスッと夏希ちゃんが俺に身体を預けた。彼女を支えるように、ぎゅっと抱き締める。
 温かい体温。いい匂いがする。彼女と触れ合うのは幸せな事だ。

「ごめんね。嫌なら断って」

「ううん。わ、私、嬉しいの……。葵唯君、愛してます」

「俺もだよ。本当はずっと好きだったんだ」

「ずっとって、いつから?」

「……初めてセックスした日。莉紅より先に俺に抱かれたいって言ってくれた時」

 あの時、確かに夏希ちゃんは俺の中で特別な人になったんだ。
 俺の事を好きになってくれる人って今までいなかったから。気になって当然だったんだ。

「もぅっ! これからは莉紅君に邪魔されずに愛し合えるね」

「あはは、そうだね」

 夏希ちゃんの唇にキスをした。キスは何度もしていたけど、今したキスが一番尊い。
 幸福感で胸がいっぱいになった。

「葵唯君、もっと……」

 唾液を交換し合うような深いキスを交わす。愛しているという思いを込めて。
 俺の気持ちが百パーセント伝わって、夏希ちゃん、俺をもっと好きになって欲しい。

「好き、夏希ちゃんが、大好き」

「んん……葵唯君、好き。凄く好きぃ」

 その後、近くのラブホテルに入った。愛する人と、愛し合う為の部屋だ。今日は思う存分、夏希ちゃんの身体を堪能したい。

「ねぇ、こういうところって十八歳以上じゃないとダメなんだよね? 高校生はダメって聞いたよ?」

「本当はダメだけどね。今君を抱きたいと思ったんだ。待てないよ。気になるなら外でやる?」

「えっ! それなら、ここで……外はさすがに」

「でしょ。ほら、おいで俺の可愛い人」

「葵唯君、その言い方なんか擽ったいよ。普通でいいから普通で!」

「なんで? 夏希ちゃんがこの世で一番可愛いのは当然だし、俺の彼女なんでしょ? 間違った事は言ってないよ」

 夏希ちゃんったら、顔真っ赤にして可愛いなぁ。全部が愛しい。全ての細胞に至るまで、君の将来、君の人生、全て俺のだ。
 そして、夏希ちゃんに俺の全てを捧げよう。

 夏希ちゃんを布団に寝かせると、俺は覆い被さって、何度も口の中を舌で犯した。
 夏希ちゃんは可愛い声を漏らして、俺の愛に応えてくれている。

「夏希ちゃん……夏希って呼んでいい?」

「あ、葵唯君!? い、いいけど」

「葵唯だよ。はぁ、早く結婚したいね。高校卒業したら籍を入れよう。式も挙げてさ、二人の人生を作りたいね」

 服を脱がせて、乳首や脇を舐めると、夏希はいやらしい喘ぎ声を聞かせてくれる。

「ひぁっ、あっ、あん、あっ。あお……い、やめっ、汚いから、臭いから……身体洗わせて!」

「そんな事ないよ。君の匂いが臭いわけないでしょ」

「怖い、葵唯君なんか怖いよ~」

 夏希ちゃんは何故か怖がっていた。
 どこがだろう……。

「大丈夫だよ」

 キスをして、服を脱がしていく。綺麗な身体だ。
 今まで何度もセックスをしてきたけど、君だけは緑の代わりになんかした事かなかった。
 好きになれたらどれだけ良いだろうと、ずっと思ってた。

 白くて柔らかい肌。本当に女性みたい、なのに胸は平らで、股間には男と同じものが付いている。
 夏希の全てが好きなんだ。

「葵唯……君、あぁっ」

 世界で一番好きなチンコをしゃぶると、夏希が可愛い声で喘いだ。俺が君を感じさせているんだ。こんな嬉しい事はない。

「葵唯だよ、呼んで」

「あ、葵唯……」

「夏希」

 睾丸を舐めて、その下へと舌を這わせる。愛撫する度に夏希はビクビクと反応して、亀頭の先から蜜を流した。
 可愛くて、カウパーを舐める。なんとも言えないアルカリ性の味だけど、夏希のだから愛しい味になる。

 アナルの周りを舌で撫でる。ヒクヒクして、男を受け入れる準備の出来た穴だ。そこに舌を入れると、夏希の声が大きくなる。
 ここが好きなんだよね、知ってる。

「葵唯ぃ」

「ん?」

「て、手ぇ繋いで」

 上を見ると、泣きそうな顔をしている夏希が俺に手を伸ばしていた。寂しい思いをさせてしまったね。
 恋人繋ぎで離れないようにギュッと握る。小さくて可愛い手。もう離したくない。

 穴の中を解して、既に大きくなっている自分のものを中にゆっくり入れていった。
 夏希の表情の変化を見つつ、ゆっくりと抜き差しをする。

 たまらなくなって夏希にキスをした。舌が甘い。ずっとしていたくて、舌を絡めながら腰を動かした。
 夏希のチンコを上下に擦る時は痛みを感じるように強くしてあげる。

「うあぁぁっ!!」

 甘い叫び声で俺にしがみついてくる夏希。だけど、遠慮はしないよ。君の好きなプレイは莉紅だけじゃない、俺だって全部知ってるんだから。
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