紡ぐ、ひとすじ

伊東 丘多

文字の大きさ
上 下
7 / 17
中学校の話

二人の幼馴染①

しおりを挟む
「……なんか。言っちゃいけないとは、思うけどさぁ。でも、言いたいっていうか」
「じゃ、言うな」

 良太が何か言いたげにするが、尚澄はバサッと切り捨て聞こうともしない。
 柚流は、ニコニコと、首を傾げながら良太の側まできて「話を聞くよ」と寄り添ってくれるのに。

「良太、もしかして行きたいところがある?」

 柚流は、上目遣いで、キラキラと大きな瞳を輝かす。その仕草に可愛すぎて、クラリとした。
 その分、尚澄の目は暗黒と化した事には、思い切り無視をする。


 今、3人がいるのは、都心近くにある巨大アミューズメント施設。

 小学校の卒業旅行として、やってきた。
 クラスは30人ほどだが、多いと動きづらいため、3人組を10組つくり、班で行動している。

 俺は、クラスで班ぎめをする時、柚流と一緒にまわりたい、と強く思った。
 でも、当然のように尚澄がついてくるだろうし、それに関しては、完全にあきらめている。すでに悟りの境地だ。
 2人とは長い付き合いだから、こんなことの繰り返しで、がっかりもしない。

 でも、卒業だから。またとない、機会だから。
 何としてでも同じ班にしてもらおうと、最大の笑顔を作って、柚流へお願いをしに行く。決して、尚澄にではない。

 すると、軽くピョンピョンとジャンプをして「やった!」と喜んでくれた。

 どうやら、三人組の班のため、あと一人だけ入ってくれる人を探すところだったらしい。

 基本的に、みんなクラスメートとは仲が良いが、多少なりとも相性はあるだろう。
 あまり人付き合いが良くない(尚澄のせいでもある)柚流が喜んでくれたなら、嫌われてはいないという事だ。
 心から安心して、右手を差し出した。

「よろしく!」
「うん。良太と行けて、嬉しい」

 良太の手に、ふわふわで柔らかい、少しひんやりする柚流の小さな手が重なった。


 それが、卒業旅行のはじまりであった

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

代わりでいいから

氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。 不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。 ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。 他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

こうもりのねがいごと

宇井
BL
美形な主と二人きりの世界で、コウは愛され生きる喜びを知る。 蝙蝠のコウは十歳でじいちゃんを亡くしてからは一人きり。辛い環境の中にあっても誰を恨むことなく精一杯に生きていた。 ある時、同じ種族の蝙蝠たちに追われ、崖の先にある危険な神域に飛び出してしまう。しかしそこでコウの人生が大きく変わることになった。 姿が見えない人に頼まれたのは、崖下にいる男のお世話。木々に囲まれ光あふれる箱庭で新たな生活が始まる。 森の中の小屋の脇には小花、裏には透き通る泉。二人を邪魔するようににやってくる珍客達。 出会ってすぐに両想い。困難が次々とやってきますが基本はほのぼの。 最後まで死という単語が度々出てきますのでご注意を。 ご都合主義です。間違いが多々あるでしょうが、広い心をでお読みいただけますように。

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

処理中です...