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番外編 幼児の凪と春
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「今日はどんぐりころころを、踊りまーす。みんな集まって!」
幼稚園の先生が大きな声で、四方八方に散らばっている子どもたちを集める。
「お遊戯、したくないの?」
春人は小声で隣りにいる凪夜に聞く。
どんぐりをコロコロさせて、何が楽しいのか、とか、考えてそうな表情をしている。
春人は人の気持ちを考えるのが好きだ。
多分、絵本を読む感覚で人がどんな事を考えてるのか知りたいのだと思う。
絵本は何度読んでも同じ話だけど、人間は同じ話や態度をしないから飽きない。
年長組になり初めて一緒のクラスになった凪夜くんは、とても面白い。
いつも顔の表情と言葉が何となくだけど合っていない。
嘘ついてるという感じでもない。
きっと、とても優しくて気を使って話してるから、そうなるのだと思う。
「お遊戯するよ。どんぐり、好きだし」
「どんぐりが好き?」
「……まぁまぁ」
「そっかぁ」
「うん」
やっぱり言葉通りじゃないなぁ。だって嫌そうな顔してる。
春人はフワフワとした髪とパッチリとした目で、見た目が可愛いと良く言われる。
でも、性格はそんなに可愛くはない。
どちらかと言うと好きなものは好き嫌いなものは嫌い、とはっきり言ってしまうタイプだ。
「虫役なんて嫌だ。虫、嫌い」
次のお遊戯会は、アリとキリギリスの劇に決まった。
登場するのは、ほぼ虫だ。
だから、つい言ってしまった。やりたくないって。
この話は絵本で読むのは好きだけど、自分が虫だと思いたくない。
先生たちは困っていて、どうしようか考えている。
でも、やりたくないものは、やりたくない。
そしたら、凪夜くんが手を上げた。
「アリとキリギリスだけじゃなくって、蝶々とか他の虫もいたら楽しいと思います」
その発言に先生達が相談している。
さすが年長組1番の優等生だ。先生への影響力がすごい。
「そうね。春ちゃん、蝶は平気?」
大きくうなずく。
蝶はキレイだから好きだ。
凪夜くんは、やっぱり面白い。
お遊戯会なんてどうでも良さそうなのに、誰よりも話に参加して頑張ろうとしてる。
もっと、知りたくて仲良くなりたくなった。
「ねぇ、凪夜くん。友達になろう?」
「もう、友達だと思ってたけど」
凪夜は不思議そうな顔をする。そして、すぐに悲しそうな顔をした。
もしかして、誤解させたかもしれない。
「違うよ?今までも友達だけど、もっとだよ。友達の上!」
「親友?」
「そう。それそれ」
「……良いよ」
言葉はそっけないけど、顔はとても笑顔だ。
春人は嬉しくなって、その場で何回もジャンプする。
「じゃ、これからも、よろしくね!」
幼稚園の先生が大きな声で、四方八方に散らばっている子どもたちを集める。
「お遊戯、したくないの?」
春人は小声で隣りにいる凪夜に聞く。
どんぐりをコロコロさせて、何が楽しいのか、とか、考えてそうな表情をしている。
春人は人の気持ちを考えるのが好きだ。
多分、絵本を読む感覚で人がどんな事を考えてるのか知りたいのだと思う。
絵本は何度読んでも同じ話だけど、人間は同じ話や態度をしないから飽きない。
年長組になり初めて一緒のクラスになった凪夜くんは、とても面白い。
いつも顔の表情と言葉が何となくだけど合っていない。
嘘ついてるという感じでもない。
きっと、とても優しくて気を使って話してるから、そうなるのだと思う。
「お遊戯するよ。どんぐり、好きだし」
「どんぐりが好き?」
「……まぁまぁ」
「そっかぁ」
「うん」
やっぱり言葉通りじゃないなぁ。だって嫌そうな顔してる。
春人はフワフワとした髪とパッチリとした目で、見た目が可愛いと良く言われる。
でも、性格はそんなに可愛くはない。
どちらかと言うと好きなものは好き嫌いなものは嫌い、とはっきり言ってしまうタイプだ。
「虫役なんて嫌だ。虫、嫌い」
次のお遊戯会は、アリとキリギリスの劇に決まった。
登場するのは、ほぼ虫だ。
だから、つい言ってしまった。やりたくないって。
この話は絵本で読むのは好きだけど、自分が虫だと思いたくない。
先生たちは困っていて、どうしようか考えている。
でも、やりたくないものは、やりたくない。
そしたら、凪夜くんが手を上げた。
「アリとキリギリスだけじゃなくって、蝶々とか他の虫もいたら楽しいと思います」
その発言に先生達が相談している。
さすが年長組1番の優等生だ。先生への影響力がすごい。
「そうね。春ちゃん、蝶は平気?」
大きくうなずく。
蝶はキレイだから好きだ。
凪夜くんは、やっぱり面白い。
お遊戯会なんてどうでも良さそうなのに、誰よりも話に参加して頑張ろうとしてる。
もっと、知りたくて仲良くなりたくなった。
「ねぇ、凪夜くん。友達になろう?」
「もう、友達だと思ってたけど」
凪夜は不思議そうな顔をする。そして、すぐに悲しそうな顔をした。
もしかして、誤解させたかもしれない。
「違うよ?今までも友達だけど、もっとだよ。友達の上!」
「親友?」
「そう。それそれ」
「……良いよ」
言葉はそっけないけど、顔はとても笑顔だ。
春人は嬉しくなって、その場で何回もジャンプする。
「じゃ、これからも、よろしくね!」
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