何でもない日の、謎な日常

伊東 丘多

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会議

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「では、第1回、山のミステリーを解き明かそう会議を行います!」

 しばらく生徒達は桃夢の協力をしてくれるらしい。
 解決の糸口もないので、ありがたい。
 夏葉が司会進行をつとめてくれるようだ。

「はい。藤森先生が校舎裏で何かあやしげな動きをしてるのを見ました」

 凪夜がいきなり問題発言をする。
 それには全面的に同意だ。
 絶対に何かを隠している。
 ただ、聞いても答えないだろうな、と傍観をきめこんでいる。

「私も、それは思うけど。普通に考えたら、こんな重要なこと素人に頼まないわよね。まぁ、それを考えてもしょうがないので、ひとまず置いといて。他にはありますか?」

 丈一郎がスッと手を挙げる。

 今日は火曜日だから店が休みで参加できる日だ。
 丈一郎はしっかりしていて頼りになる。
 桃夢は前もって相談していた。
 プライドよりも頼れるものは頼って解決する方が良い。

「当時のことを、祖父に聞いてみました。山の工事中は体調不良者が多数でて騒ぎになったそうです。次第に山へ入る人が少なくなり木や雑草が伸びて、道がなくなったから、その話は自然と無くなったらしいですけど」
「やだなぁ。そんな話。きっと建築工事への反対運動とかで流した嘘だよ」

 凪夜が不安そうに頬杖をつきながら、意見を言う。

「そうね。まぁ遠回りにはなるけど車道もあるし、無くなっても問題はないわよね。そもそも、あの参道を使う人って今もいるのかしら」

 そう言って、夏葉はチラッと桃夢を見る。

「いや、俺は塾長がこの道を通れって言うから、通勤してるだけなんだよ。鳥居近辺の掃除も気になるしさ。それに、なりより運動を定期的にして健康になった。良いことだらけだ」
「はーい。他には、ありませんか?」

 桃夢は完全に無視をされてしまった。

「あの、そもそもなんだけど、桃夢先生はあの道を週2は通っていて体調に問題ないんですよね。だとしたら何が問題なの?」

 春人が、根本的な質問をしてきた。
 そうだ。確かに、今は御神木を植えるのが目的だった。
 オカルト要因が気になって本末転倒していた気がする。
 ただ、そうなると調査が行き詰まってしまう。

「何が、問題なんだ?」
「先生が、それを言わないで下さいね」

 夏葉があきれたように、ため息をつく。
 そのまま脱線をしながらも会議を続けられたが、みんなが途中で飽きてしまい、しまいには中秋の名月に食べる餅についての話題になっていた。
 今日は満月らしい。食べなくちゃね、とみんなが話している。

「先生?じゃ、そろそろ時間だから帰るね?」

 ふと、生徒たちの話をBGMに考え事をしていたら、もう下校時間になってしまったようだ。凪夜が、黙ってしまった桃夢を不思議そうに顔を覗き込んでいる。
 外はもう、青は消えて赤くなっている。

「もう、そんな時間か。みんな、気をつけて」

 生徒たちがいるのに、ぼんやりしてしまった、と反省しつつ慌てて手を振る。

「はーい。さようならー」

 パタパタと足音が去っていく。何となく色んな意見を聞いて、整理をしていたら、少しだけ開けたような気がする。

「満月か。よし、参道に行ってみようか」

 桃夢は大きな独り言を言い、いきおいよく椅子から立ちあがった。

 学校から下りる道は滑りやすいので、転ばないように足元に気を抜けながら歩く。
 いざという時用にライトも持っているが手がふさがれてしまうため使っていない。

 すると少し平地になる所へ出てきた。
 この平地は鳥居があるという目印にしている。
 前を見ると人影が静かに動いているのが見える。
 まさか幽霊?と考えがよぎるが、それにしては見たことがある後ろ姿だ。

「藤森先生。こんばんは。月が明るいですね」

 間違っていないだろう、もしかしたら居るかもしれないと思っていた人物の名前を呼ぶ。
 藤森は、ゆっくりと振り返り、安心したように微笑んでいた。

「いらしたんですね。思ったとおりの結果が出たようです。篠田先生のおかげですよ」
 
 そう言いながら、こちらへゆっくりと歩いてきた。

「何も俺はしていないですが」

 信用を全面的にしていないため、少しだけ警戒しながら答える。

「いえいえ、自分だけだったら無理でした」

 いつの間にか緊張で息をつめていたらしい。
 深呼吸をして藤森の目の前に立ち、はっきりと聞く。

「そろそろ何を考えてるのか、教えて下さい」
「もちろん。良いですよ」
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