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有毒植物
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無料の情報誌であるにも関わらず、読み応えがある内容となっている。
さらには、ハイキングでの危険行為の禁止、ゴミは持ち帰るように、などの最低限のマナー、それに持ち物リストまで……かゆいところに手が届く。
おまけに鎌倉の歴史のこぼれ話まで、可愛らしいイラストとともにユーモアもかかさない。
しかも、このイラストも丈一郎の手書きらしい。
これは、若いのにしっかりしてるな、と感動してしまうくらいのレベルだ。
桃夢は、会ってもいないのに尊敬をしてしまった。
基本、単純な人間である。
次はハイキングコースの案内にページを進む。
知らないルートも多く、細かく見ていくと、長くなりってしまいそうだ。
それは、さすがに部員をいつまでも放置しては悪いので、後で読もうと雑誌を閉じる。
顔を上げて、生徒たちに声をかける。
「どうやって毒殺するか、考えたかー?」
その不穏な言葉は、隣の部室に人が居たら警察を呼ばれそうだ。
「桃夢先生、そんなに簡単にアイデアは出ませんよ。でも、美味しそうに見えて、食べられない実があるのは興味深かったですね。鎌倉にもたくさん生息してるらしいし」
夏葉が指先を口にあて、悩んでいる。
何か、レシピでも考えているのだろうか。
確かに美味しそうなのに、毒が入っているのは困る。
桃夢は学校に来るときに、異常に腹が減って食べ物を探す時が多い。
その時に食べてしまいそうだ。
凪夜が、そんな事を考えている桃夢を見ながら、頭の中を想像したのか、ため息をつく。
「先生、山の植物を勝手に食べちゃダメですよ?死なれたら悲しいです」
そう言って、イラストと共にこのあたりにある有毒植物をまとめてくれている。
桃夢が覗き込むと、やたらと緻密なイラストがすごいスピードで描かれてゆく。
「お前、何でも出来るんだなぁ」
凪夜を褒めると、まぁね、と気のない返事が帰って来た。
春人をちらりと見ると、すごいよねー、と軽く受け流されてしまった
言われ慣れてるやつは、褒めがいがない。
その時、渡瀬が何かを思い出したように大声をだす。
「あぁ!スッキリした。!」
全員が、ビクッと肩を動かす。
「近藤丈一郎。どこかで聞いたことあると悩んでいたのだが、鎌倉駅前でハイキングルートやら観光地の地図なんかが乗ってる冊子を配ってたやつだろう。確か、そこに連絡先も乗っていたような」
ごそごそカバンの中を探し、奥の方にグシャッと入っていた冊子をテーブルの中央に置いた。
丈一郎のイラストも描いてあり、手に取りやすい明るい色合いの表紙が目立つ。
「これ、僕のクラスにも置いてあるよ」
春人も鞄から取り出す。
凪夜は軽くため息をついて、冊子をパラパラとめくる。
「クラスでも誘ってくるよ。悪い人間ではないんだろうけどさ。実際、僕は鎌倉観光に興味ないんだよね。……そうなると、ありがた迷惑っていうか、さ」
冊子を1枚開くと、ようこそ。鎌倉へ!おすすめのルートです!と書かれ、くわしく見どころが書いてある。
情報誌とは変えてあるようだ。仕事がこまかい。
凪夜の言う通り、確かにのんびり自分のペースで歩くのは良いが、スタンプリーみたいに動かされるような観光は嫌という人は多いかもしれない。
ふらふら迷いながら、たまたま見つけた神社が意外と風情があって良かったりするものだ。
桃夢は、渡瀬から要らないからあげますよ。と言われ、その冊子を貰った。
その後は、課題の話題に戻り、みんなで協力して毒殺について討論をすることにした。
ミス研は、個性豊かな生徒ばかりで、いつも、ぶつかり合いながらも、それでうまくやっている。
確かに、誰かに何かを押し付けられるのは、みんな、苦手かもしれない。
さらには、ハイキングでの危険行為の禁止、ゴミは持ち帰るように、などの最低限のマナー、それに持ち物リストまで……かゆいところに手が届く。
おまけに鎌倉の歴史のこぼれ話まで、可愛らしいイラストとともにユーモアもかかさない。
しかも、このイラストも丈一郎の手書きらしい。
これは、若いのにしっかりしてるな、と感動してしまうくらいのレベルだ。
桃夢は、会ってもいないのに尊敬をしてしまった。
基本、単純な人間である。
次はハイキングコースの案内にページを進む。
知らないルートも多く、細かく見ていくと、長くなりってしまいそうだ。
それは、さすがに部員をいつまでも放置しては悪いので、後で読もうと雑誌を閉じる。
顔を上げて、生徒たちに声をかける。
「どうやって毒殺するか、考えたかー?」
その不穏な言葉は、隣の部室に人が居たら警察を呼ばれそうだ。
「桃夢先生、そんなに簡単にアイデアは出ませんよ。でも、美味しそうに見えて、食べられない実があるのは興味深かったですね。鎌倉にもたくさん生息してるらしいし」
夏葉が指先を口にあて、悩んでいる。
何か、レシピでも考えているのだろうか。
確かに美味しそうなのに、毒が入っているのは困る。
桃夢は学校に来るときに、異常に腹が減って食べ物を探す時が多い。
その時に食べてしまいそうだ。
凪夜が、そんな事を考えている桃夢を見ながら、頭の中を想像したのか、ため息をつく。
「先生、山の植物を勝手に食べちゃダメですよ?死なれたら悲しいです」
そう言って、イラストと共にこのあたりにある有毒植物をまとめてくれている。
桃夢が覗き込むと、やたらと緻密なイラストがすごいスピードで描かれてゆく。
「お前、何でも出来るんだなぁ」
凪夜を褒めると、まぁね、と気のない返事が帰って来た。
春人をちらりと見ると、すごいよねー、と軽く受け流されてしまった
言われ慣れてるやつは、褒めがいがない。
その時、渡瀬が何かを思い出したように大声をだす。
「あぁ!スッキリした。!」
全員が、ビクッと肩を動かす。
「近藤丈一郎。どこかで聞いたことあると悩んでいたのだが、鎌倉駅前でハイキングルートやら観光地の地図なんかが乗ってる冊子を配ってたやつだろう。確か、そこに連絡先も乗っていたような」
ごそごそカバンの中を探し、奥の方にグシャッと入っていた冊子をテーブルの中央に置いた。
丈一郎のイラストも描いてあり、手に取りやすい明るい色合いの表紙が目立つ。
「これ、僕のクラスにも置いてあるよ」
春人も鞄から取り出す。
凪夜は軽くため息をついて、冊子をパラパラとめくる。
「クラスでも誘ってくるよ。悪い人間ではないんだろうけどさ。実際、僕は鎌倉観光に興味ないんだよね。……そうなると、ありがた迷惑っていうか、さ」
冊子を1枚開くと、ようこそ。鎌倉へ!おすすめのルートです!と書かれ、くわしく見どころが書いてある。
情報誌とは変えてあるようだ。仕事がこまかい。
凪夜の言う通り、確かにのんびり自分のペースで歩くのは良いが、スタンプリーみたいに動かされるような観光は嫌という人は多いかもしれない。
ふらふら迷いながら、たまたま見つけた神社が意外と風情があって良かったりするものだ。
桃夢は、渡瀬から要らないからあげますよ。と言われ、その冊子を貰った。
その後は、課題の話題に戻り、みんなで協力して毒殺について討論をすることにした。
ミス研は、個性豊かな生徒ばかりで、いつも、ぶつかり合いながらも、それでうまくやっている。
確かに、誰かに何かを押し付けられるのは、みんな、苦手かもしれない。
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