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女神の出来心

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それから、どれくらいの間、2人で見つめ合っていたのだろうか。
パチャッという、水音がなければ永遠だったかもしれない。

「こんばんは。せっかくの能力もエイルが使わないから。出会うのが遅いわよ。」
沈黙を破ったのは、湖に映った月から浮かび上がってきた女神だった。

その姿は神々しく、白銀に光っていた。
魔王も勇者も、世界で自分が1番強いと思っていた。
その常識が覆されるくらいに偉大で、すぐに、この存在には敵わないと理解をする。

「私を知っているの?」
エイルが聞く。
「じゃ、魔王って言う?私に会いに来たのでしょ。勇者は何度か来てくれてたけど、魔王は初めてね。はじめまして。」
だから、良くないけど出てきちゃった、と屈託なく笑う。
エイルは、挨拶も忘れて問いかける。
「聞きたいことがあるの。」
「なあに?何でも聞いて。聞くのは今のうちよ。」
あなたが私を作ったのですか?という質問を考えていたのに、口では違うことを言っていた。

「この勇者は、たった今、私の世界すべての存在になったの。立場上として許されることでは無いと思うけど、どうしたら離れないで、ずっと一緒にいられるか、分かる?」
女神は、キョトンとして苦笑いする。
「そうなるよね。もともとセットで作ったから。」
「ふざけないで教えて!この感情を作られたとか、言われたくない。」
ここでアズールと離れたらもう、2度と会えないだろう。
なんとしてでも、後悔しないように行動しなければ。

「すまない、女神。」
「なぁに?勇者。」
ずっと黙っていたアズールが口を挟む。
「この土地を貸しては頂けないだろうか?ここで魔王と生活をしたい。」
「良いわよ。来るのは、あなた達ふたりだけだし。私の居場所がわかるのは、魔王と勇者だけに設定しておいたの。」
あんまり、うるさいのも嫌だしね。
と、頬を膨らませている。

実際は、この湖は少しの啓示だけを授ける場所らしい。
こんな風に現れるのは、本当にいけないことのようで、女神の気まぐれに感謝する。
ともかく言質はとった。
ありがたくここで住まわせてもらおう。
魔王城へは信頼できる配下もいる。しばらくは問題ない。
「ありがとう!えっと、女神様っていうのも言いづらいから、ルーンって呼ぶわね!私は…女神様は知ってたわね。エイルよ。」
「俺は、アズールだ。」
アズール。
これから、永遠に呼びかけることになるんだろう、その名を大切に、1度つぶやく。
それから、たまらない嬉しさで何度も、アズール、と口に出して発音する。

私達はこの森で暮らすことにした。
規約を守るためか、ルーンはそれから1度も湖から出てこない。

それから、ずっと、誰からも邪魔されないで、私達は愛し合った。
私達以外のことを全て忘れて。
それが永遠に続くと思っていた。
しかし、ある日、この湖がある森に侵入者がきて事態が変わる。
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