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その後

開通 4

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「みなさーん。離れてくださーい」

 一応だが。
 グランが関わっている事は内緒なので、外に音が漏れ出る訳にはいかない。
 騒ぎになって、人が押し寄せてきたら隠し通せないだろう。
 そのために、安全に安全を重ねて大掛かりな防護結界をはり音はおろか風さえも防いでいる。

 その上、自己防衛も大事だ。
 中にいる自分の体には防御魔法をかけ安全を守る。
 自分を守れないと、何かあった時にまわりを助けられない。

「ちゃんと、山の出口のほうまで結界が作用してるかな?」

 山の中やまわり、出入り口も調査のためという名目で警備兵に頼み完全に封鎖をした。
 万が一、ふらりと入った人がいたら怪我をする可能性もある。
 グランも念入りに生命反応がないか、再度、確認する。

「うん。魔物はアルフが制御してくれているみたいだし。迷い込んだ人もいない」

 後ろのフォンシルに向かって、オーケーの合図をするため腕で丸を作ると、うなずいてくれた。

 よし。

「こういう時、やっぱり王族がいると話が早いな。普通、トンネルを作るなんて簡単に許可がおりないよね」

 自分だって王族なのに、思いっきり棚に上げておく。

 そして、石で作った長い紐状のものを入れた小さな穴の隙間に、たくさんの水を注入した。
 外からは分からないけれど、中には線と水が浸っているだろう。
 もちろん線に合わせて酸素も閉じ込めた。
 酸素がないと爆発しないからだ。
 あとは、威力の高めた爆発が起こるまで待つだけ。

 すこし、聞き耳を立てて待つ。
 するとバチバチッと音がなりはじめ、次第に山が揺れた。

「よし。くる!」

 その瞬間、バァン!!と大きな音と同時に、人が通れるくらいの穴が空いた。
 防御していなければ、あっという間にグランを吹き飛ばしていただろう暴風は背後で結界に当たり、大きな風音をたてる。

 全て、計算通りだ。

「うんうん。良い感じ!……あと、山への影響はどうかな?」

 崩れる可能性もあるため、注意をしながらトンネルの側面を確認する。
 魔法で空間探索を出口まで行うと、問題なくつながっているみたいだ。
 後は歩きながらトンネル内を崩れないように形を作って固めていけば良い。

 成功したと報告するために、振り返り、再度フォンシルに大きく手を振る。

 その瞬間、キラキラとまわりを囲んでいた光が舞い散った。
 防御結界が解けたのだろう。

「みんなー!!バッチリ!村まで道が出来たよ」

 グランが、腰に手を当てて偉そうに言う。
 正確には石の力だが。

「わー、天才!次期国王!」
「すごいすごい、村の救世主!勇者!」

 ユーディアとエンジュが、手を叩きながら褒めちぎってくれる。
 偉そうにしたのは冗談ではあったが、悪い気はしないので、照れてしまう。

「やだなぁ。褒め過ぎだよ」

 誰しも、褒められるのは嬉しい。

「そんな事ない。今は一瞬で終わらせたけど、普通じゃ半年はかかる所だ。グランにしか出来ない」

 フォンシルも、真顔で褒めてくれた。

「そ、そう?」
「あぁ。間違いない」

 まだ褒められたい気持もあるが、村のみんなにはすぐに道を通すと言ってある。
 急いだ方が良いだろう。
 にこにこ笑顔で、次の予定をつげる。 

「じゃあ、ユーディアとエンジュは先に村に戻って、村長に道を作る事を伝えておいて。……ごめん。ピーターは2人の警護役でお願い」

 一番うしろに控えていたピーターに伝える。

「分かりました。殿下はグラン様がお守り下さい。」

 ピーターの本来の仕事を外させるので当然だ。
 グランは、大きくうなずく。

 きっと、フォンシルには一緒にいたほうが良いと思う。

 実際、補強は一人でも出来るが、村に王子として既に有名なフォンシルがきたらパニックになるだろう。
 事前に、姉妹に歓迎は不要と伝えてもらいたい。

「わーい。行きましょ。ピーターさん」
「トンネルの中、楽しみ。私、一番乗りね!」

 ユーディアとエンジュが走り出してしまった。

 多分、爆発と同時に軽い補強をしておいたから崩れることはない。
 でも、あまり振動をかけて欲しくはないのだが。

 ……そのスキップはこわいな。

 そうチラリと思ったが、とまぁ、大丈夫だと想定して、よろしくー、と手を振った。

 ふと、斜め下を見ると、フォンシルは意識を集中させて、村までの距離を測っている。

「グラン。村までは遠いと思ったが、山を突っ切って走ったら30分くらいで着けそうだ……。ここから、森の先が見える」
「ですね。直線だとこんなに近いなんて。これで物流が盛んになると良いのですが」
「それは、問題ないだろう。すぐに村に人が戻ると思う。…………トンネル。立入禁止。幻覚」

 まだ危険だからと、壊してしまった結界を新しく入口だけ再構築する。
 とても気が利くな、と感心する。
 やっぱり、フォンシルが国王になった方が良いと思う。
 だが、なんども本人に向かって繰り返した話なので…口には出さなかったが。

「綺麗な結界ですね。ありがとうございます。では、行きましょうか?」
「ああ。そうしよう」

 馬車が通れるくらいの大きさにするのがグラン。
 トンネルが崩れないように補強するのがフォンシルと役割分担を決めて進むことにする。

「初めて村を出た時は、あんなに大変だった山越えがが、こんなに早く着けるようになるなんて不思議です」
「そうだな。私とグランが初めてあった村は、もう行くこともないかもしれないな」

 フォンシルは、残念そうな顔をする。
「きっと、また行く機会はありませすよ。……今度は、視察を兼ねて行きましょう?」

 すると、フォンシルは徐々に嬉しそうな表情に変わった。

「それは、楽しみだ」


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