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わちゃわちゃ Ⅲ

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「ただいまー」

 細かい話し合いが終わり、やっと食堂宿に戻ってきた。
 ちょうど、ランチが終わったらしく、ディナータイムまでの休憩時間のようだ。

 入口を入るやいなや、パタパタと駆け寄る音がする。

「おかえりーーー!!」
「良かったーーー!!」

 二重音声で、右と左から挟まれる。

「わあ。ちょっと、苦しいです」

 そんなにきつく挟まれてはいないが、女の子2人から密着させるのは恥ずかしいので、すごく困った顔をして離れてもらう。

「どうだった?お城」
「……ちゃんと、グラン説明して?」

 ……あれ?ユーディアとエンジュは、どこまで知っていたのだろうか。
 まあ、いいや。

「次期、国王になりました」

 何事もないように、サラッと言う。
 こういうのは言葉を溜めないほうが、驚かれないはずだ。

 ユーディアが笑い飛ばそうとしているが、グランがこういう場所で冗談をいう人間を知っているので、どういう反応をしていいのか、迷っている。

「……本当に?」
 年上のユーディアよりも、ややしっかりしているエンジュが見たこともない真顔で聞いてきた。

「説明すると、長くなるけれど」

「良くわからないけど、……なんで?グランが遠くなっちゃう」
 ユーディアが、悲しそうな顔をしている。

「グランのお嫁さんにしてもらおうと思っていたのに………身分違いの恋は悲恋への始まり………!!!」
 エンジュが、エプロンで自分の涙を拭き始めた。
 え?エンジュ、そうなの?
 嬉しいが、思っても見なかったから少し慌てる。

「ご、ごめんなさい。いや、正しいことをしたと思うから謝りたくないけど、びっくりさせたのは事実……」

 ドキドキして、あたふたと自分でも良くわからない説明をし始めると、後ろからアルフとアダマス、そして、フォンシルもやってきた。

 ちなみに、この時点で様子をうかがっていたジャスパーとフローは、おそれ多いと言いながら休憩室に入っていってしまった。
 気持ちはわかる。

「グランとの婚姻は、血筋的に問題ないのではないだろうか。仮にも公爵令嬢の娘であるし、祖父に頼めば貴族にもなれるであろう?」
 アルフが、面白そうに、話をややこしくしてくる。

「アルフ!もう、やめてください。2人が混乱します」

「え?お母様、公爵令嬢なの?ユーディア、知ってた?」
「知らないわ。……確かに、他の村の子供より躾が厳しかったけど。え?え?」

 ほら、混乱した。

「駆け落ちしてな。あれは、大変だった」

 驚きを通り越して、宇宙を見ているようだ。
 確かに、あの義父では……。
 グランも、うんうんとうなずく。

「……ねえ。それよりも。グラン、アルフ様に馴れ馴れしくない?」
 ユーディアが混乱の中、姉らしく指導をしてくる。
「確かに、グランにしてはめずらしいかも」
 エンジュも我に返って同意する。
「あ、そうですよね。アルフ様、すみません」

 遺伝子と幼い頃しか世話になっていないとは言え、有効的な態度をしてくれたのでグランは、いつの間にか心を許していたようだ。
 なんだか、気恥ずかしいが言葉を改めよう。

「いや、息子なんだから、そこは自然体でいこう。な、アダマス」
「そうね。グラン、良かったら母と呼んで」
「私も父も呼んで欲しいな」

 朗らかに笑いながら、アルフがグランの頭をなでながら言う。
 仲良くはなったが、いまさらその距離感は無理だと、丁寧に拒否をする。
 
 横では、さらにユーディアとエンジュが遠いところを見ていた。
「え?グラン、魔族の子供なの?国王なの?どっちなの?」
「ちょっと待って、アーちゃんって、結局、何才?」

 ……これは、一つ一つ、説明をしていく必要があるようだ。

 でも、これだけは言いたい。
 横を見て、フォンシルと目を合わせて、しっかりと話す。

「また、フォンシルとジャスキル石を集めに行く」

 石をすべて失った。
 でも、これからは、誰よりも強くなって、今まで以上の石を集めたい。
 必要がないものかもしれないが、きっと、集めるための行為に意味があるものだと思うから。

「……同じ宝石を、またくれる?」
「あと、必ず、頻繁に顔見せてね」

 それなら良いよ、と。
 グランは、優しい言葉に力づけられる。
 きっと、これからは、今まで以上に幸せに過ごせるだろう。

 そんな、予感がした。


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