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残った問題 ⑤

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 黒いモヤをいきおいよく吸い込み、飽和状態になった所で石を割る。
 あんなに時間をかけて採ったジャスキル石が一瞬で砕け散るが、虚しさよりも達成感でグランは満たされた。

 弾けた石のかけらがキラキラと舞って消えるのを待つ。
 キレイだな、と、この場所にそぐわぬ光に目を奪われる。

 するとしだいに、負のエネルギーが占拠していた場所が見通し良くなり、光とは真逆の今にも目を背けたくなるような暗黒の塊がゆらりと動いた。

「ここからが、本番だ」

 アルフが声を出し、グランに注意を促す。
 軽くうなずき、気を引き締める。

 まだグランの中の魔石は使っていない。
 だが全ての闇を吸収できるほど減らせては、いない。

 ……何百年もの間、封印されていた闇だ。
 簡単にはいかないだろう。

「フォンシル、ユーディア、エンジュ!」

 人に対してではなく、名付けた石に対して叫ぶ。
 すると、グランの中から石が浮かび出る。
 聖なる加護付きの石とその複製は、待っていたかのように輝き始めた。

 即座に、スポンジのように吸収する付加をつけて闇に投げ込む。
 絶大な効果があったようで、あっという間に聖と闇とが中和されていった。

「みなさん!そろそろ最後です。もし無理そうだったら、アルフに残りを託します!」

 あえて、軽い口調で話す。
 明るい気持ちで挑まないと、闇に飲み込まれそうだ。

 鑑定をし、ザッと計算するとグランの魔石に吸収するのに問題なさそうだ。
 一息をつき、グランは両手で小さくなった闇を抱きしめる。

 ……う、なんか、気持ち悪い。

 恨みや悪意、そんな人間の嫌な気持ちがどんどんと中に入ってくる。
 中和されたとしても、まだ残る闇。

 グランはあまりの不快さに意識を失いかける。
 たが、こうなる事は予測していた。
 最後に残していた自分の清廉潔白の加護がついた石を胸の前に置き、闇を濾過させていく

 自分には加護がかからなかったが、どうやら効果があるみたいで、ほっと安心する。
 少しだけ穏やかになった気持ちで、奥底で凝縮された負のエネルギーを閉じ込めていった。

「……入れ!」

 最後に抗っていた小さな黒い点を、何とか吸収することに成功した。
 ギリギリだ。

 何かが、ひとつでも足りなかったらアルフに託して、父を消滅させてしまったかもしれない。

 安心感で倒れ込みかけるが、まだ重要な事が残っている。

 この胸の中の魔石を割る事だ。

 さもないと、自分が誰にも制御できない魔物になって世界を滅ぼすだろう。

 グランはうずくまり、心臓のあたりを手でおさえる。

「……くっ!……痛っ…、」

 魂と密着していた魔石は分離するのに苦痛を伴う。
 痛みに耐えて、何とか自分の魔石を捉えて魔力を流し込む。

「砕け散れ!」

 その瞬間、自分の中で何かが割れた音がする。
 まだ体内で突き刺さるような痛みは続いているが、成功はしたようだ。

 残り少ない精神力で、自分を鑑定する。

「……良かった」

 前に感じたような心臓の中の魔石は無くなり、少しだけ体が重くなったような気がする。

 目の端で、みんなが自分に駆け寄るのが見えるが少しも動けない。
 そのまま、痛みに流されて意識を失っていった。


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