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端折り ③

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 その言葉を聞いて、フォンシルが、焦りながらアルフとグランの間に入り込む。

「そうしたらグランはどうなるんですか?無事でいられるのか、少しでもリスクがあるなら他の方法を考えて欲しい。情報が少なすぎる!危険だ!」

 心配してくれているのか、少し青ざめた顔で訴える。

 すると、アルフは魔法球を空中に浮かびあがらせた。
 よく見ると、石が鎖のようなもので幾重にも封印されている。

「……これは?」
 グランがアルフに聞く。

「今までの研究結果だ。この闇の魔力は人間による負のエネルギーから出来ている」
「人間の?」
「そうだ。これは、王族として見過ごすわけにはいかない。……だから、これ以上、増やさないように封印をしている」

「もしかして、この国の犯罪率が少ないのは創造神が負のエネルギーを操作しているから?」
 そして、この場所へ集めているのだとしたら……。

「……さすがだな。国王にも確認したが正解だ」
「しかし、神のプログラムだとしたら、何故、こうなるまで負のエネルギーを放っておいてるのでしょうか。もう限界まで溢れ出ているのに」

 創造神が黙っているのは理由があるのか。
 それとも、放置されているのか。
 アルフは横に顔を振る。

「創造神は創るだけで、後は人間たちに任されている」

 事実、国王以外、誰も啓示を受けることが出来ない。
 ただ、神は象徴として信仰されているだけだ。

 アルフは、おもむろに何も吸収されていない魔石を出して負のエネルギーを入れ込んだ

「そして……破壊」

 その言葉が合図となったのか、パリンと砕け散り、その石は無となる。

「最後に割らないと、魔石が異質なものに変化し、強い闇の魔物が産まれてしまう」
「ダンジョンの、異質な魔物たちは……」
「そうだ。私は、この負のサイクルを停止させたい。このままだと今まで人間が出した闇を、後世の人間が負担することになる」

 人間の負のエネルギーを集めて、魔物から得た魔石に吸収させる。
 そう、創造神は設定したらしいが結果的に、人間たちの元に負のエネルギーが戻るという自業自得に陥ろうとしている。

 上手くいくと思ったのだろう。
 だが、誤算だったのは誰もジャスキル石が意味ない物と考えた点だ。

 集めているグランでさえ、便利アイテムをつくる加護持ち素材だと勘違いしていたのだから。

「……じゃあ、何で、グランの中にある魔石を?魔物をたくさん倒して魔石を集めれば良いじゃないですか!」
 そこで、まだ納得できないように、フォンシルが言う。

「足りないんだ。負のエネルギーを吸収する量は魔物のランクに比例する。生きている高ランク魔族が吸収しなければ、取り残してまた増えるだけの繰り返しになる」

 アルフは、自分で魔物になり試したのだろう。
 こっそり鑑定したら浄化された魔石がアルフの中から見えた。

 グランは、フォンシルを落ち着かせるように穏やかな表情でゆっくり伝える。

「フォンシル様。お気遣いありがとうございます。でも、やってみます」
「………グラン」
「今、自分の体の中を鑑定しましたが、自分の心臓の中に魔石が隠れているようです。意識しなかったので今まで気づきませんでしたが」
「……本当に、大丈夫なのだろうか」
「僕は、完全に人間となってみんなと生きたい。このチャンスを逃すと後は無いから。だから、やります」

 グランは笑って、答える。

「そうか。それなら、少しでも負担を減らす方法はないのだろうか」

 妥協案として、表情を少し明るくしフォンシルが考え始める。

「グラン。上の階のラスボスの魔石はどうだろうか。かなり上質の魔石を持っていそうだった」
「あ。そうですね。忘れてました」

 まだ封印されているだろう、魔物を思い出す。
 ただ、負のエネルギーを消すには代償として石が必要だろう。
 でも、それでもお釣りが出るような、強い魔物だった。

 するとアルフとアダマスが、長年集めてきたジャスキル石を取り出し、外へ出ようとする。
「それは私達が担当しよう。長年、集めてきた石を使う。最後の回収だけ来てくれ」
「はい。わかりました、後で行きます」

 ……あとは、ずっと気になっていた事を聞くために、グランはフォンシルに伝える。

「ピーターに急いで、ユーディアとエンジュに渡した石の複製を持ってきて貰いたい」

 ハッと気づいたように、フォンシルもグランに勝手に名付けられた石の複製を握りしめる。

「そうか。この石には聖の加護がついてる。これは、かなり使えそうだ」
「……でしょう?ガーゼルはアルフの方に行っているから、アダマゼインについてもらうように準備をしましょう!」

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