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やっと、登場 ①

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 予想外な空間が広がっていた。

 まず目に飛び込んできたのは大きなダイニングテーブル。
 そして奥の方には天蓋付きのベッド。
 スモークのガラスで囲まれているのは風呂場とトイレだろうか。

 間違いなく、グランの住んでいた家よりも豪華だ。

 しかも、よくよく見るとダイニングテーブルにはグランの作った肉を焼くための石版が置いてある。

 アダマゼインが、待っている間に食事でもしていたのだろうか。

 久しぶりに花瓶にいけた花の香りを感じて、ふかふかの絨毯に足をのせると、今までの不安と緊張の連続からの感情の揺れに情緒がおかしくなる。

「フォンシル様。アルフは快適空間で封印を抑えていたようですね」
「………………想像とは違ったが、つらい思いをしていなかったのなら良かった」

 長い沈黙が動揺を物語っている。

「……遅かったわね。待ったわよ」
「良かったです。そういう事にならなくて」
 アダマゼインとガーゼルが、のんきに奥の空間から出てきた。
 グランはその姿を見て、駆け寄って問いかける。

「聞きたい事は山ほどありますが、まずアルフとアダマスは、どこにいますか?」

 もしかして結界の中にいて、気配を探れないのかもしれない。
 挨拶もせずに、問い詰める。

「今、私たちが出てきた場所の更に奥にいるわ。封印をしてる。」
「……2人とも、無事なんですね」
「もちろん」

 その言葉に、フォンシルは安堵からか、しゃがみ込む。

「……そうか。良かった」
「察知できない原因は分かりませんが、まずは会ってみましょう」
「そうだな。アルフに会うのは久しぶりだ」
「僕は、父と母に会うのは初めてです」
 グランは、フォンシルに笑って対抗する。

 旅をしている途中で、両親の事を徐々に理解していった。
 とりあえず、記憶はないけれど感謝を言いたい。

 奥に進んで行くと、何重にも結界がはられて中に入る事が出来ない空間になっていた。
 破られては封印をするの繰り返しだったのだろう。
 いくつもの魔法陣の残骸があたりに感じる。

「アルフ!!」
 人影が見えて、フォンシルが叫ぶ。

 すると中から結界の隙間をぬって、ゆっくりと人影が見えてきた。

 アルフとアダマスに違いない。
 フォンシルは、グランに気を使って最初の挨拶をゆずってくれた。
 その気持ちに感謝して、グランから声をかける。

「……はじめまして。父上、母上」

 グランは、あえて父と母と読んだ。
 もう、ここまで来たら直球で確認した方が良いだろう。
 この挨拶の言葉は間違っていると思うが、なんと言ったら良いのか分からない。
 すると、2人としては正解だったようで嬉しそうに笑った。

「グラン。いつも成長を見ていたよ。それに、私の思った通りに育ってくれた」
「そうね。私の教えた事をちゃんと忘れずに、頑張ってくれてありがとう。……あと、ダンジョンでは、楽しそうだったわね」

 ………なんだろう。
 この、いつも見てたよ風のメッセージは。

「もしかして……?ずっと、僕のこと見てました?」

 それは、こわい。
 両親と言えども、ものすごくこわい。

「アダマゼインを通して、ずっと見てたわ。ダンジョンの中は通信球でね」

 それが当然かのように、アダマスは、にっこりと笑う。

 何だろう。
 盗み見は悪いという常識の方が、間違っているのだろうか。

 横を見るとフォンシルが、信じられない顔でこっちを見るので、自分の考えが正しい事に少し安心する。

「……比喩ではなく、見守って下さってありがとうございました。……では、フォンシル様。お待たせしました」

 やや硬い声で感謝を述べる。
 感動の再開にしては短いが話すこともないので、ここへ来る理由であったフォンシルに挨拶を代わる。

「会話をさえぎってしまって、申し訳ありません」

 フォンシルの方は、少しだけかしこまった声で話した。

「ここへ来た理由ですが、アルフに次期国王へとなって頂きたいのです!」

「それは、無理だ」

 申し訳無さそうな顔をしながらも、即答でアルフが返す。
 フォンシルから言われるのが分かっていたかのようで、悩まずに間髪入れず答える。

「……どうしてですか?ここの封印の事でしたら、私が引き継ぎます」
「そうじゃない。もう、資格がもうないんだよ。私は魔族になった」
「え?」

 ……王族の気配が無くなったのは、それが理由だったのか。

 その事を聞いたフォンシルの様子がおかしい。
 普段は何にも動じないのに、国についてになると感情がおさえられないようだ。

「フォンシル様?」
 グランは、たまらず声をかける。

「私には国王になる資格がないんだ。すると後継者が誰もいないということに。そんな事は絶対に許されない。」
「フォンシル様!!」
「グラン……どうしたら」

 ゆっくりと落ち着かせるように、フォンシルの背中をポンポンと叩く。

「まだ、アルフが話があるみたいです。聞きましょう」


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