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一旦保留 Ⅵ

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 しかし、魔物を鑑定しても石の名前は出てこなかった。
 それどころか、魔物の情報さえも分からない。
 石は持っていそうだが、HPや弱点が不明だとジャストキルが不可能に近い。
 これは、諦めるしかないのだろうか。

「フォンシル様。……これは、予想外ですね」
「あぁ、せめてアルフが一度でも倒していると思ったが、まさか」
「この世界で、誰も倒したことがない魔物なんて……」

 90層にいた魔物も滅多に地上にはいない魔物だが、長い歴史の中で、昔、誰かが戦っていたことがあった。
 一度でも戦えば、鑑定の情報が入るのだが、目の前にいるのは正真正銘、人類初めての魔物らしい。

 どう戦おうか迷う。
 すべての属性の攻撃をして確かめてみるしかないのだろうか。

「フォンシル様。何か、こういう時に対応するための情報を持っていますか?」
「ない。……固有種だな。このダンジョンの中で進化をした魔物だろう」

 やはり、そうか。
 この黒いモヤがいくつも重なり合って出来た姿を見る限り、物体がないように感じる。
 地上には、そんな魔物はいない。

 手だと思われるものも、よく見ると向こう側が透けて見え、物理攻撃が効かないのが分かる。
 顔だって、あってないようなものだ。
 人の形のようではあるが、すぐに影は散って翻弄するように動きながら固まる。

 今までの魔物の違和感は、この魔物からきているのだろう。
 少しだけ、どの魔物にも黒いモヤの気配を感じた。

 しかも、こうしている合間にも、ほんの少しずつだが増えている。

「倒せる可能性があるとしたら、光魔法か」
「わかりました!僕もやってみます」
「出来るのか?」
「……王都で検査してもらったことはありませんが、きっと僕は無属性です。だけれど、訓練で全ての属性の魔法は模倣出来ます」
「模倣か……、それで使えるのはすごいな」

 覚えてはいないが、父と母に魔法の基礎を教えられたのだろう。
 物心ついた頃には、やり方は分かっていた。
 あとは森の魔物に対し、身に付いているものの応用を繰り返すだけだ。

「……どうでしょうか。複雑ですけどね。僕は人じゃないんですから」
「何を言ってる?同じじゃないか。私たちは」
「そう、思って頂けるのは嬉しいです。ありがとうございます」

 そう、何でもないかのように言うが、それはグランには本心に聞こえた。
 きっと、フォンシルは種族、性別、身分など、フラットに物事を考えるのだろう。

「では、やるぞ。……光のヴェール!!」

 その言葉を聞き、即座にグランは、クリアーなボックスを作成する。

 フォンシルがヴェールを出した時点で分かった。
 きっと、黒いモヤを閉じ込めるつもりだ。
 このままだと、どんなに攻撃しても霧散してしまうだけだろう。
 その事を、きっと懸念している。

 だから、グランは多い囲むための箱を作った。
 威力は弱いが補佐くらいなら出来るだろう。

「うん。グラン。さすがサポートが完璧だ」
「想像していたことが同じだっただけです」
「……煙のようなものだと考えて良さそうだな。広がるのが落ちついた」
「……あとは、どう、消すかですね」

「まて。アルフが抑え込んでるのはこれじゃないのか?」

 そうだ。
 10年ほど前から現れていたのなら、もっと大きいはず。
 このラスボスのような魔物は、抑えきれなくて漏れ出したものなのだとしたら。

「きっと、そうでしょう」
「となると、私たちだけで消滅させるのは無理だな」
「はい」

 フォンシルが、黒いモヤに近づき、光のヴェールのかかったボックスをチェックする。

「作動してますか?」
「大丈夫だ。ちゃんと、閉じ込められてある」
「………やっぱり、思ったより難しそうですね」

 倒し方が見当がつかない。
 光魔法では、何も変化がなかった。

 入口のスライムは、この魔物の影響が大きかったのだろう。
 弱い魔物ほど抵抗力が少なく、大きな魔力に影響を受けやすい。

 色々な偶然が起きて、このダンジョンは完成されていた。
 それは創造神の思い通りなのか、偶然なのは分からないが。

「行きましょう。謎の解明をするために!」















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