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能力は惜しみなく Ⅴ
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各階、同じことを繰り返して地下98階まで進んだ。
次の階層で最後だ。
すでに石は今までの人生で取ってきた量と同じぐらい大量の数を手に入れている。
なにかに必要だとしても、これくらいあれば十分だろう。
……確かに下層に行くにつれ、魔物は徐々に強くなっていた。
だがグランは思い出すのも嫌だと、ため息をつく。
「結局、入り口付近のスライムが攻撃が効かず、一番、手こずりましたね」
「あぁ。もともと、ここは冒険者が入るためのダンジョンではなく、何かを封印するための所なのだろう」
「……そうですね。最初にあのスライムじゃ、もう、先へ進もうなどとは思えない。牽制の役割でしょう」
アルフの近道の入口は地下2階にあった。
このダンジョンの意図を理解して、あえて冒険者を攻撃力の低い、だが倒せないスライムと敵対させたのだろう。
もう来ないように。
完全に人間を拒否するためのダンジョンなどありえない。
この世界は、意味のないものなど作られていないからだ。
創造神の遊び心なのかと言うようなダンジョンもあるが、ここはそうではない。
そうなると、何かを隠しているとしか思えない。
……下に行くに連れ違和感は強くなる。
グランは、アイテムボックスに入手した石をつめこみ、魔力感知で他に魔物がいないかを探す。
唸る声は聞こえてくるが、あえて見逃すことにした。
魔物討伐をするのが目的ではないからだ。
「フォンシル様。では、下の階へ行きましょう」
「あぁ。……ここはどこか異世界のような、不思議な感覚があるな」
フォンシルも、自分と同じこと感じていたらしい。
「はい。でも、全く知らないという訳でもない気しますよね?」
「……あぁ。確かに」
心当たりがあるのか、腕を組み考え込む。
グランも悩みつつ考えていることを整理しようとするが、言語化が出来ない。
「うまく、言えないのですが……」
「そうか」
「申し訳ありません。」
「いや、全てはアルフに会えれば分かるはずだ。もう少しだから、頑張ろう」
話しながら下層に降りるための扉を開けると、また新たな魔物が唸り声を上げながら襲ってきた。
「……今度は一体だけ、か。強そうだな」
「はい。フォンシル様。では、一気に倒してしまいましょうか?」
「この魔物のジャスキル石は良いのか?かなり珍しい物が手に入りそうだが」
それは欲しいが、今まででかなり時間をかけてしまった。
きっと、この強さだと長期戦になるだろう。
これ以上は、何に役立つかわからないものに迷惑をかけられない。
「ただ、もう半日はたっているので……。アダマゼインを待たせているの考えると」
「うん。そうだな。……じゃ、こうしないか?ガーゼルに先に最下層へ降りてもらい状況を説明してもらうというのは」
「フォンシル様は、一緒に戦ってくれるのですか?」
「もちろんだ」
この洞窟では闇属性のガーゼルの闇魔法は不利だ。
さほど戦力的には、いなくても問題ないだろう。
上の階の魔物を片付け、階段を降りてきたガーゼルにそのことを確認する。
「はい。では、2人がなかなか下に降りてこなかったら、そういう事になったと思いますね」
そういう事ってなんだ。
助けに来てはくれないのか。
「僕たちをを何だと思ってるんですか。勝ちますよ」
「もちろん、分かってます。では……」
笑いながら、するりとラスボスの横を通り抜け最下層への扉を開けた。
その扉が閉まるの見届け、体中に魔力をまとわせる。
地上では会うことのない強い魔物に、グランはワクワクした。
「楽しくなってきました。不謹慎ですかね?フォンシル様」
「いや、同じ気持ちだと思う。……いこう、グラン!!」
洞窟内に、光が満ちた。
次の階層で最後だ。
すでに石は今までの人生で取ってきた量と同じぐらい大量の数を手に入れている。
なにかに必要だとしても、これくらいあれば十分だろう。
……確かに下層に行くにつれ、魔物は徐々に強くなっていた。
だがグランは思い出すのも嫌だと、ため息をつく。
「結局、入り口付近のスライムが攻撃が効かず、一番、手こずりましたね」
「あぁ。もともと、ここは冒険者が入るためのダンジョンではなく、何かを封印するための所なのだろう」
「……そうですね。最初にあのスライムじゃ、もう、先へ進もうなどとは思えない。牽制の役割でしょう」
アルフの近道の入口は地下2階にあった。
このダンジョンの意図を理解して、あえて冒険者を攻撃力の低い、だが倒せないスライムと敵対させたのだろう。
もう来ないように。
完全に人間を拒否するためのダンジョンなどありえない。
この世界は、意味のないものなど作られていないからだ。
創造神の遊び心なのかと言うようなダンジョンもあるが、ここはそうではない。
そうなると、何かを隠しているとしか思えない。
……下に行くに連れ違和感は強くなる。
グランは、アイテムボックスに入手した石をつめこみ、魔力感知で他に魔物がいないかを探す。
唸る声は聞こえてくるが、あえて見逃すことにした。
魔物討伐をするのが目的ではないからだ。
「フォンシル様。では、下の階へ行きましょう」
「あぁ。……ここはどこか異世界のような、不思議な感覚があるな」
フォンシルも、自分と同じこと感じていたらしい。
「はい。でも、全く知らないという訳でもない気しますよね?」
「……あぁ。確かに」
心当たりがあるのか、腕を組み考え込む。
グランも悩みつつ考えていることを整理しようとするが、言語化が出来ない。
「うまく、言えないのですが……」
「そうか」
「申し訳ありません。」
「いや、全てはアルフに会えれば分かるはずだ。もう少しだから、頑張ろう」
話しながら下層に降りるための扉を開けると、また新たな魔物が唸り声を上げながら襲ってきた。
「……今度は一体だけ、か。強そうだな」
「はい。フォンシル様。では、一気に倒してしまいましょうか?」
「この魔物のジャスキル石は良いのか?かなり珍しい物が手に入りそうだが」
それは欲しいが、今まででかなり時間をかけてしまった。
きっと、この強さだと長期戦になるだろう。
これ以上は、何に役立つかわからないものに迷惑をかけられない。
「ただ、もう半日はたっているので……。アダマゼインを待たせているの考えると」
「うん。そうだな。……じゃ、こうしないか?ガーゼルに先に最下層へ降りてもらい状況を説明してもらうというのは」
「フォンシル様は、一緒に戦ってくれるのですか?」
「もちろんだ」
この洞窟では闇属性のガーゼルの闇魔法は不利だ。
さほど戦力的には、いなくても問題ないだろう。
上の階の魔物を片付け、階段を降りてきたガーゼルにそのことを確認する。
「はい。では、2人がなかなか下に降りてこなかったら、そういう事になったと思いますね」
そういう事ってなんだ。
助けに来てはくれないのか。
「僕たちをを何だと思ってるんですか。勝ちますよ」
「もちろん、分かってます。では……」
笑いながら、するりとラスボスの横を通り抜け最下層への扉を開けた。
その扉が閉まるの見届け、体中に魔力をまとわせる。
地上では会うことのない強い魔物に、グランはワクワクした。
「楽しくなってきました。不謹慎ですかね?フォンシル様」
「いや、同じ気持ちだと思う。……いこう、グラン!!」
洞窟内に、光が満ちた。
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