誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多

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スライム、良いよね Ⅰ

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 この世界は謎だらけである。

 太古の昔、突然、世界が出来て、国を治める王と魔物を統率する魔王が何者かによって決められた。

 その王と魔王を中心として世界が徐々に構築され、次第に勝手に人間たちと魔物たちが、生活圏を分け合って生活をしていく。
 それは何かに導かれるようであり、川が下流へ流れていくように自然なものであった。

 何もわからないから、すべての謎は「そういうものなんだ」という言葉で解決されるしかない。

 アダマゼインが過去を話した後、数日間歩くとグラン達は目的地に難なく着いた。
 だから、その調子のまま、緩んだ気持ちでダンジョンに入った直後に、自分の考えが甘かったことに気づく。

 これは、そういうものなのだ、では済まされない。

 王族の中でも力が強いアルフが、手をこまねいているものを簡単に解決できるわけが無かった。
 そんな単純なものなら、もっと事態は簡単だったはず。

「いやいや。こんな魔物が存在しちゃいけないでしょ!」

 そう言いながら、ゆっくりとグランは後ずさる。

 その姿を見て、アダマゼインはドヤ顔で見てきた。

「ね?これは、放っておけないでしょ?とりあえずは倒すのを諦めて封印強化の方法を取ってるけど」

 魔王が、諦めてどうする。
 なんとかしてもらわなきゃ、困る。

 この魔物らしき存在を見たら、この旅に出る前に頑張ろうと思った気持ちもしぼんでいった。

 それくらい、目の前の「何か」は鑑定結果が振り切っていた。

「こっちには、スライムの上位互換がいる!」

 フォンシルは、普通のスライムなら一瞬で魔法で倒せるはずなのに、このスライムらしいものは効果がない。

「うわぁぁぁああ!」
「ピーター!!!入口に戻れ!」

 あああ、ピーターが足手まといになると察したフォンシルが撤退を命令してる。

 攻撃スキルに全振りして、回避スキルが低いことが裏目に出たようだ。

「ちょ、ちょっと!アダマゼイン、どうすりゃいいんですか?この状態」

 あたりは、パニックである。

 物理攻撃も、魔法攻撃も、効かない。
 ただ向こうの攻撃力はレベル相応なので防御は出来るが、倒す糸口が見えない。

「何だと、思う?」
「は?こんな時に何言ってるんですか?早く教えてください!それでも、おばあちゃんですか?」

「うんうん。その呼び方は二度としないでね?……まず、自分にバリアをはって、」
「はい!しました。次は?」

「逃げる!!」

 えええええー!!!

 それだけ?

 動揺している間に、アダマゼインはダンジョンの奥へ行ってしまった。

 仕様がない。
 ピーターに出入り口を見張っていてもらうように通信魔法をして、行くしかないようだ。

「フォンシル様!逃げ切るしかないようです!」

 グランは遠くまで聞こえるように、大声を張り上げる。

「あ、あぁ……、ちょっと、待て」

 フォンシルが、スライムに絡まれている。





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