誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多

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謎を一部、解決します ②

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「しかも、誰よりもグランを大切にしている最大の味方だから」

 そう言って、アダマゼインは最初の森で出会った時の、恥ずかしそうな顔でグランを見る。

 その表情からは愛情のようなものを感じ、戸惑う。
 どこかで出会っただろうか。

 確かに、村を出て初めて出会った不思議な存在。
 なのに、警戒はあったものの普通に喋ることが出来た。
 その不審者に悪意がないと、何故、信じられたのだろう。

「……では、昔話をするね。愛するグラン」

 あたりに防音結界を張り巡らせながら、自分に不思議に思っているグランに対し、ポツリと話し始めた。

 何を聞かされるのだろうかと、グラン、フォンシル、ピーターの3人は緊張をして耳を澄ます。


 10年前。

 20才だったアルフは国を守るためにダンジョンの調査をしていた。
 フォンシルという後継ぎが出来たので、思う存分、昔からやりたかった冒険者の道へ進むことにしたようだ。
 そして、魔王城のそばにあるダンジョンでアダマスという女性と恋に落ちた。

「アダマス!!結婚しよう」
「ええ!アルフ!!」

 そして、アルフは私の娘と結婚してグランが産まれた。

 ………!!!!!

「ちょっと、アダマゼイン!話を中断して下さい!」

 いや、アルフの息子というのは想定内だ。
 だが、まさか自分の母親が魔王の娘で、祖母が魔王というのは聞き捨てならない。
 フォンシル達も、信じられないようにグランを見てくる。

「……これから、良いところなのに?まだ、序盤よぉ?」

 不服そうだが、一度、確認させて欲しい。

「じゃあ、アダマゼインは最初から僕を知っていたんですね」
「最初って?」
「初めての森から!」
「違うわよ。産まれる前から追いかけてたわ」

 ……恐怖である。

「……何で?そんな事に?!」
「だから、今から話すのよ」

 そうだ。
 話を端折ったのは、グランである。

「すみません。では、続きを」


 そう。
 そんなこんなで、3年くらいがたった。
 その頃のグランはとても可愛くて、素直で、今みたいに腹黒く無かった。

「グラン。コントロール力を身に着けろ。見知らぬ魔力がこの国に入り込んだようだ。それに対抗できるのはジャスキル石しかない。」
「大丈夫よ。私とアルフの子供ですもの。きっと、この封印もきっと、グランが成長すれば……」

 まだ魔法を理解をしていなかったけれど、本能で魔力を使っていた小さいグランを育てて、もちろん、私もずーーーっと、目で追い続けた。

 でも、封印が抑えきれなくて、グランを安心な所に預けようと決めた。
 だから、遠くの村に住んでいたアルフの親戚の元公爵令嬢へお願いしようと思って……、


 …………???

「ごめんなさい!!ちょっと、ストップ、ストップ!!!」

「また?これからが、本番よ」
「……お義母さんは、王家に連なる血筋って事??」
「ステキよね。森で出会って、そのまま駆け落ちですって。そのまま、平民になるなんて」

 どこをどうしたら、そうなる?
 あの義父に、そんな魅力があるとは思えない。
 他にも色々とツッコみたいが、とりあえず黙ろう。

「……次、どうぞ」

「でね、次は私がグランと離れたくなくて、村で見守っていたの。だから、アルフとアダマスからは、うらまれて追いかけられてるけどね。あっ、村の結界は私達の全勢力を使って作ったのよ」

 ……フォンシルが、苦い顔をしている。
 そうか、その結界に困らせられたから。
 でも、かなうわけないだろう。

「……アダマゼイン、そこら辺は置いておいて、その封印について説明してくれますか?」

 多方面に詳しく話を聞きたいが、一度、置いておこう。

 一番大事なのは、そこだ。





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