誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多

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一気に、大人数 Ⅺ

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 グランが借りている部屋の片隅に、転移装置を作る。

 ジャスパーとフローに、転移魔法とは言わずに、簡単な魔法陣を構築しても良いかと聞くと簡単に了承を得られた。
 家族以外には、魔法陣は見えないし、干渉も出来ないようにはしている。
 だが、この建物自体を壊されてしまうと、どうなるか分からないので、許可は得ておくに越したことはない。
 さすがに、高度すぎる魔法は驚かせてしまうので真実は言えなかったが。

「えーっと、何でしたっけ??合図、忘れてしまいました」
「もうー、グラン。パンを転移させるんでしょ?きっと、今なら夕ご飯の時間だから家の魔法陣のそばにみんながいるわ」

 そうそう。
 長旅で忘れてしまっていた。
 家族への愛情はあるのだが、色々あったから仕方ないと自分に言い訳する。

 小走りでキッチンへ行き、取ってきた残り物の乾燥したパンを、ポトンと魔法陣で囲まれた石の上に落とす。

 すると、パァっと光り、一瞬で消えていった。

「きれいな光。やっぱりすごいね。もう村に行ったのかな?本当に不思議だよ」
「問題ないはずで、……っわあ!!」

 は、早い!!!

 目の前に、義父が立っていた。

「おおおおお!!グランにユーディア!!元気だったか?王都では、今、何が流行ってる?夜遊びに行かないか?酒場とやらに行ってみたいのだが。そうか、グランは飲めないな!ハッハッ!」

 テンションが高い。
 それに、その大きな荷物は……。
「まさか、しばらく居座るつもりですか?」

 目を細めてまさかと思いながら聞くと、義父は横を向いて音が出ない口笛を吹いている。
 うん。
 正解だろう。
 何も聞かない風で、ユーディアに村で採れた果物を渡しているが、グランは誤魔化されない。

「はい、安全確認は出来たので戻って下さい。これは、遊びに使うために作ったんじゃないですよ。ユーディアに村へたまに帰らせてあげる装置です」

 世話にはなったが、これはこれである。
 ちょくちょく来られては、不思議がられるだろう。
 この転移魔法は内緒のものだ。

「ええ、そんな……、グラ……!!!おっと!」

 ………あぶない!!

 後ろから、誰かが転移してきたみたいだ。
 義父にぶつかりそうになり、避けようとして倒れ込むのを慌てて抱きとめる。

 グランより少しだけ身長が高い、柔らかくて桃色の髪の女の子。
 顔は見えないが、彼女しかいないだろう。
「………エンジュ?」

 淡いブルーの瞳がキラキラと輝いて、グランを嬉しそうに見る。

「うん!来ちゃった!!」




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