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入り込んだ道 Ⅸ

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 旅立つ日は、まだ数日先らしい。

 フォンシルは、大したことのないように性転換魔法をしていたが、やはりそんな簡単に変えて良いものではなかったようだ。
 しばらく、父である国王と会議という名の説教を受けるらしい。

 それも、そうだろう。
 使い方によっては、あの能力で王家が途絶えてしまう。
 もとはと言えば、血が途絶えないように先天的に得た魔力と言われているのに、うまくいかないものだ。
 どうして途絶えることになるのか理解できずフォンシルに聞くと、それは想像力にまかせると言われてしまった。

「アルフには、私が小さい頃に旅に出てから城にはあまり戻らず、数回しか会っていない」
「え?」
「そうか。グランは村の結界の中にずっと居たから、王族のスキルも使えなかったのか」
「……はい。察知は出来ませんでした」

 いまだ誰か分からない母親は、アルフと旅に出ると比較的すぐに村で自分を産んだということだろう。
 グランの年令的にも、それで間違いなさそうだ。

「帰ってこない理由は、どうやら冒険先で何かを問題を見つけたようで、解決するまでは帰ってこないと言っている」
「何か、って?」
「分からない。魔王城の近くのダンジョン内である事は確かだが。ずっと、アルフはその中から動かない」

 そういって、フォンシルは腕を組み小首をかしげている。

 魔王城近くのダンジョンならアダマゼインが何か知ってそうだが、これからアルフのもとに行くなら聞かなくてもよいだろう。
 グランは勝手に納得して、次の話に移る。

「では、これからの目的をまとめますね」
「頼む」
「まずアルフに会い、一緒にその問題とやらを解決した後、城に戻り皇太子になってもらう、という事で良いでしょうか?」
「それで良い。私が強行突破で女性になった事により、他の貴族からの私を皇太子に押す意見も消えたし問題ないだろう。」

 ふと、疑問に思って問いかける。
「また、男性に戻るように言われたりしないですか?」
「まぁ、当分はないな。頻繁にやると細胞がうまく変化できずに死ぬ」
「えっ?」
「そんな何度も簡単に変えられるものでもないんだ」

 それは、そうだが。
 そんな危険な事だというのに、いとも簡単に性転換した事にモヤモヤしてきた。
「……全て僕が悪いんですけど」
 自虐的に、小さくつぶやいた。

 フォンシルはその言葉を拾ったようで、グランの肩に手を置く。
「私が決めたことだ。気にするな。……それに、内心、少しだけホッとしている」
「……?」
 どういうことだろうか。

「じゃあ、私は説教を受けに行く時間だ。グランは、姉君と今後について相談が必要だろう?」

 そうだった。

 何をしに王都の中心部へ来たのか、目的を忘れてしまった。
 ……石集めだ。
 そうなると、これからの旅は正解なのだろうか。

「あー、はい」

 ぼんやりとした返事に苦笑しながら、フォンシルがうなずく。
「話がまとまったら、また城に来てくれ。いつでも、入れるようにしておく」

 ……あぁ、どうしようか。
 明日から、食堂の手伝いもしなくちゃいけないのに。



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