誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多

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宿と食堂 Ⅳ

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「こんにちは!ここで、働かせてもらうユーディア・ミライトです」
「同じく、グラン・デディーリエです」

 働く時は、第1印象が大切だと自分の持っている最高の笑顔で扉を開けた。

 ……………あれ?

「グラン、ね、店主さん留守かなぁ」
「……人の気配はしてます。奥を見てきますね」

 平均的な国民の魔力量くらいの力が、奥から流れてくる。

 そっと、隣の休憩室らしい扉を開ける。

 なんとそこには、

 中年の男女が倒れていた……!

「大丈夫ですか?!具合でも悪いのですか?今、回復魔法をかけます!」

 ポゥっと、手のひらに光を集め全身を鑑定しつつ回復してゆく。

「あれ?悪いところはないな」

 でも、まだ、目覚めない。

「どうしたの?グラン。……きゃっ!え?え?人が倒れてる!」
「落ち着いて下さい!それが、どこも怪我をしていない。もしかしたら、何か大きな事件?」

 予想できる事案を一所懸命考えている時に、ふわりと男女が同時に立ち上がった。

「さわがしいなぁ。もう、ディナーの時間か」
「うーん。……あら?誰?」

「私達はここで働かせて貰いに来ました。……大丈夫ですか?!」

 不思議そうに夫婦らしき2人がうなずく。

「何かね。厨房は食材が痛むから温められないし、足もとが冷えて調子が悪いのよ。元気なんだけど」
 女性の方が、足を擦りながら答える。

「良かった。病気とかじゃないんですね」

 一安心だ。

 そうだ。自己紹介がまだだった。

「僕は、グランです。こっちが、義姉のユーディアです。よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします。こっちの旦那がジャスパーで料理人。私がフローよ。店の全体を仕切ってるの。あなた達には、これから新規で行う併設の宿と食堂を手伝って貰う予定よ」

 そう言って、にっこりと笑う。
 やはり、ここの食堂の店主だ。
 事前に仕入れていた情報を整理する。
 やさしそうな人で良かった。

「あの!これ、お土産なんですが……」
 グランは石版を取り出そうとするが、良い事を思いつく。


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