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分かれ道 Ⅲ
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「わあー!ここが、王都の中心部ね。すごい。思ってたより大きい!」
ユーディアが、嬉しそうに飛び跳ねている。
一番栄えている王城のある中心部へは、王都への入口で見せた通行許可証の他に、身分証明書が必要になる。
これに関しては、グランが住んでいた村でも発行が可能で、年に一回ほど王城からきた役人が、必要な村人に作成するのだ。
王都に住んでいなくとも見捨てられる訳でもなく、国民はすべて守られている。
反対に言えば、犯罪人や他の国から密入国してきた人間を調べる目的や、不自然な動きをしている人物を監視されているとも言えるが。
ちなみにフォンシルはこれを調べ上げてグランを突き止めたのだが、何故だか不思議な結界に阻まれグランを捕まえる事が出来なかったらしい。
だというのに、森を出た途端、時期を待ってフォンシルとグランを出会わせてくれたようなタイミングが、何か意図的な感じもする。
ともかくメリットとデメリットは表裏一体。
今は、この身分証明書のおかげで身の潔白(表向きではある)が出来て、堂々と中に入れるのだ。
「アーちゃん達はどうする?私達と一緒に食堂で働く?」
魔王(仮)が、給仕なんてするものだろうか。
いや、しないだろう。
きっと、その日のうちに皿が全滅する。
「ううん。私達、実は、ある人物から逃げてるの」
「えぇ?アーちゃん、おたずね者だったの?」
「違うぅ。何か、いつも面倒事を言われるから。嫌で、逃げちゃった」
魔王が、逃げなきゃいけない相手とは誰だろうか。
いや、いないだろう。
きっと、勇者くらしいしか勝てやしない。
まて?
「身分証明書は、どうしたんですか?偽造ですか?」
グランは、自分の事を棚に上げて聞く。
「だから、人間相手に悪い事はしてないし。私もれっきとした国民。私の身分証明書を見てよぅ?」
あまりに堂々と見せてきたので、しっかり見させて頂く。
………そこには、やっぱり。
コンドーラル国 国民
魔王族 魔王 アダマゼイン
犯罪歴無し
と記載があった。
ユーディアをチラリと見ると、土産物屋でアクセサリーをみている。
グランは誰にも聞かれないうちに小声でたずねる。
「魔王、なんですね」
「あ、バレちゃった?」
ガーゼルが、あきれたようにため息を付く。
だが、予想していた行動のようで止めなかった。
グランには隠す必要がないと、あきらめたのだろう。
「まぁ、知ってましたけど」
「グランも王族でしょ?何で、ここにいるの?」
そっちも、わかっちゃってたか。
「さっき、王族って知ったばかりなんで。自分じゃ、良くわかりません。それに、身分証明書には記載なく、ただの村人です。」
ツンと、そっぽをむいて答える。
「ふぅーーーん。あやしい。そんなこと言って、私を捕まえるつもり?」
何で、アダマゼインを捕まえなきゃいけないのだろうか。
「良くわかりませんが、魔王に興味はありません。もしかして、森を出たあと助けてくれなかったのは、理由があるんですか?」
「内緒。じゃ、私は行くわね。用事もあるし」
そう言って、ユーディアの側に駆け寄る。
仲が良くなったもんだ。
「もう、行っちゃうの?」
「うん。近くにまだいるから、すぐ会いに来るよ。私の名前の石の複製渡しておくから、何かあったらこれに願って?すぐ来るから」
「あ。グランが集めている石と一緒ね。通信石にもなるなんて、便利」
その返事に、ニコッとアダマゼインは笑って手を振る。
「じゃ、ね。ユーちゃん。旅一緒に出来て、楽しかったよ」
「うん。アーちゃん」
「グラン。ご飯、ありがとうね。美味しかったぁ」
そう言いながら、夕焼けに向かって後ろ向きに歩いていく姿を見送る。
アダマゼインは見えなくなったが、飛び跳ねながら追っていく黒い影はガーゼルだろう。
だが、別れという感じはまったくしなかった。
結局、あんなに都合よく、森に入ったばかりに魔王が出てきた理由も分からないままだ。
またすぐに会えるだろうな、という予感しかない。
久々に、ユーディアと二人きりになる。
「ユーディア、何か、急にさみしくなってしまいましたね」
「でも、最初は二人だけだったもんね」
「はい。照れますね」
「ふふっ」
そう言って、久しぶりに二人は顔を見合わせ笑いあった。
まだ1ヶ月と少ししかたっていないのに、頭の中がゴチャゴチャだ。
一度、気持ちを整理させようと、ユーディアの生活の場となる食堂へ向かい休憩をしよう。
たくさんの石版をたずさえて。
ユーディアが、嬉しそうに飛び跳ねている。
一番栄えている王城のある中心部へは、王都への入口で見せた通行許可証の他に、身分証明書が必要になる。
これに関しては、グランが住んでいた村でも発行が可能で、年に一回ほど王城からきた役人が、必要な村人に作成するのだ。
王都に住んでいなくとも見捨てられる訳でもなく、国民はすべて守られている。
反対に言えば、犯罪人や他の国から密入国してきた人間を調べる目的や、不自然な動きをしている人物を監視されているとも言えるが。
ちなみにフォンシルはこれを調べ上げてグランを突き止めたのだが、何故だか不思議な結界に阻まれグランを捕まえる事が出来なかったらしい。
だというのに、森を出た途端、時期を待ってフォンシルとグランを出会わせてくれたようなタイミングが、何か意図的な感じもする。
ともかくメリットとデメリットは表裏一体。
今は、この身分証明書のおかげで身の潔白(表向きではある)が出来て、堂々と中に入れるのだ。
「アーちゃん達はどうする?私達と一緒に食堂で働く?」
魔王(仮)が、給仕なんてするものだろうか。
いや、しないだろう。
きっと、その日のうちに皿が全滅する。
「ううん。私達、実は、ある人物から逃げてるの」
「えぇ?アーちゃん、おたずね者だったの?」
「違うぅ。何か、いつも面倒事を言われるから。嫌で、逃げちゃった」
魔王が、逃げなきゃいけない相手とは誰だろうか。
いや、いないだろう。
きっと、勇者くらしいしか勝てやしない。
まて?
「身分証明書は、どうしたんですか?偽造ですか?」
グランは、自分の事を棚に上げて聞く。
「だから、人間相手に悪い事はしてないし。私もれっきとした国民。私の身分証明書を見てよぅ?」
あまりに堂々と見せてきたので、しっかり見させて頂く。
………そこには、やっぱり。
コンドーラル国 国民
魔王族 魔王 アダマゼイン
犯罪歴無し
と記載があった。
ユーディアをチラリと見ると、土産物屋でアクセサリーをみている。
グランは誰にも聞かれないうちに小声でたずねる。
「魔王、なんですね」
「あ、バレちゃった?」
ガーゼルが、あきれたようにため息を付く。
だが、予想していた行動のようで止めなかった。
グランには隠す必要がないと、あきらめたのだろう。
「まぁ、知ってましたけど」
「グランも王族でしょ?何で、ここにいるの?」
そっちも、わかっちゃってたか。
「さっき、王族って知ったばかりなんで。自分じゃ、良くわかりません。それに、身分証明書には記載なく、ただの村人です。」
ツンと、そっぽをむいて答える。
「ふぅーーーん。あやしい。そんなこと言って、私を捕まえるつもり?」
何で、アダマゼインを捕まえなきゃいけないのだろうか。
「良くわかりませんが、魔王に興味はありません。もしかして、森を出たあと助けてくれなかったのは、理由があるんですか?」
「内緒。じゃ、私は行くわね。用事もあるし」
そう言って、ユーディアの側に駆け寄る。
仲が良くなったもんだ。
「もう、行っちゃうの?」
「うん。近くにまだいるから、すぐ会いに来るよ。私の名前の石の複製渡しておくから、何かあったらこれに願って?すぐ来るから」
「あ。グランが集めている石と一緒ね。通信石にもなるなんて、便利」
その返事に、ニコッとアダマゼインは笑って手を振る。
「じゃ、ね。ユーちゃん。旅一緒に出来て、楽しかったよ」
「うん。アーちゃん」
「グラン。ご飯、ありがとうね。美味しかったぁ」
そう言いながら、夕焼けに向かって後ろ向きに歩いていく姿を見送る。
アダマゼインは見えなくなったが、飛び跳ねながら追っていく黒い影はガーゼルだろう。
だが、別れという感じはまったくしなかった。
結局、あんなに都合よく、森に入ったばかりに魔王が出てきた理由も分からないままだ。
またすぐに会えるだろうな、という予感しかない。
久々に、ユーディアと二人きりになる。
「ユーディア、何か、急にさみしくなってしまいましたね」
「でも、最初は二人だけだったもんね」
「はい。照れますね」
「ふふっ」
そう言って、久しぶりに二人は顔を見合わせ笑いあった。
まだ1ヶ月と少ししかたっていないのに、頭の中がゴチャゴチャだ。
一度、気持ちを整理させようと、ユーディアの生活の場となる食堂へ向かい休憩をしよう。
たくさんの石版をたずさえて。
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